No.463431

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 215

soranoさん

第215話


シルヴァン達との会話で流れるBGMは”英雄集結”。シルヴァン達が”ある人物”の話を始めた時に流れるBGMはVERITAの”それでも生きる”が流れると思って下さい♪

2012-08-01 19:50:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:991   閲覧ユーザー数:928

~離宮内・メンフィル皇帝夫妻の客室~

 

「あ、あはは………それにしてもどうして、メンフィルの王様とお妃様があたしみたいな身分のない小娘に会いたいと思ったんですか?」

シルヴァン達の客室に入り、席に着いたエステルは苦笑しながら尋ねた。

「フッ…………」

「フフ………」

エステルに尋ねられたシルヴァンとカミ―リは口元に笑みを浮かべた。

「へ?あ、あの………あたし、何かおかしな事を言いました??」

2人の様子を見たエステルは首を傾げて尋ねた。

「フフ………おかしいも何も、貴女、私の両親達を呼び捨てにしているそうじゃない。あの父さんすらも気軽な態度で呼び捨てにできるのに、父さんの子供である私達に対しておじげづいているなんて、おかしな話よ?」

「カミ―リの言う通りだ。………それにお転婆娘(リフィア)と妹(プリネ)の身分を知っていながら、対等な友人になったという君とは一度、話したくてな。カミ―リの言う通り、おじげづく事はない。………私達の事は君の友人のただの親、もしくは兄姉と思ってもらえばいい。」

カミ―リは笑いながら答え、シルヴァンは優しさが籠ったような笑みで答えた。

「ハハ………メンフィルの皇帝陛下達に気軽な態度で接してくれなんて事を言ってもらえるなんて、お前さんぐらいだよ。」

「フフ………エステルさんには本当に驚かされますね。」

「ハッハッハ!さすがはエステル君だよ♪」

その様子を見たジン達はそれぞれ笑いながらエステルに感心した。

「う、う~ん………あたしはそんな大した事はしていないんだけどな…………えっと、お久しぶりです、大将軍さん。」

ジン達の言葉を聞いて苦笑したエステルはファーミシルスを見て、挨拶をした。

 

「………そうね。しばらく見ない内に随分と腕を上げたようね。」

「あはは………大将軍さん達と比べれば、あたしなんてまだまだですよ。………その。お礼を言うのが遅くなりましたが………”百日戦役”の時、お母さんを助けてくれてありがとうございました。」

「………私はリウイ様の命に従ったまで。感謝をするのなら、あなたの母親の傷を癒して救ったリフィア様とペテレーネに感謝をしなさい。」

お礼を言うエステルにファーミシルスは何でもない風に答えた。

「もちろん、2人にもお礼を言いました。………それでもお礼を言いたかったんです。本当にありがとうございました。」

「………………………そこまで言うのなら、貴女の感謝の言葉は受け取っておくわ。」

律儀にお礼を言うエステルをファーミシルスは静かに答えた。

「それにしても、お二人とも帯剣をしている所を見ると、やはり武を嗜んでいるのですか?」

そしてクロ―ゼはシルヴァンとカミ―リがそれぞれ装備している武器を見た後、尋ねた。

「まあね。イーリュンの信徒のティア姉さんを除いて、私達マーシルン家の者はみんな、父さん達に鍛えられているからね。護身にもちょうどいいし。」

クロ―ゼの質問にカミ―リは頷いて答えた。

「………とは言っても、父上達と比べれば私達の武はまだまだだ。」

「そうですね。………いつかは父上達の領域に達しないと………」

「フフ………リウイ様達の血を引く陛下達なら、いつか必ず到達しますわ。」

シルヴァンとサフィナの呟きを聞いたファーミシルスは不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

「さて………ヒルダ女官長から話は聞いてはいたが、私宛に届いた脅迫状の件で尋ねて来たのだったな?」

「あ、はい。王国軍の依頼ですが、中立の立場をとっている遊撃士協会としても見過ごせる話じゃありません。どうか、ご協力をお願いできませんか?」

シルヴァンに話をふられたエステルは頷いた後、尋ねた。

「別に構わないが………生憎ながら我々メンフィルには心当たりは一切ない。なんせ、他の3国と違ってメンフィルは異世界にあるのだしな。」

「ですよね~………」

シルヴァンの答えを聞いたエステルは肩を落として頷いた。

「フム………ならば貴方達、メンフィルに恨みを抱いている者達や今の政権に反対している者達の可能性はどうですかな?」

「ちょっと、オリビエ…………」

そこにオリビエが質問し、オリビエの質問を聞いたエステルはジト目で睨んだ。

「メンフィルに恨みを抱いている者や現政権に異を唱えている者等、数え上げればキリがない。眷属の中でも人間との共存を嫌う者……それとは逆に眷属を恐れ、共存に反対する人間………光勢力に一部の光の神殿………過去の戦で我々に敗れた者達等、星の数ほどいる。………最近で言えば、”百日戦役”で我等の力を見せつけ、逆らう気力もなくすほど叩きつぶしたエレボニアと言った所か。」

「フッ。これは手厳しい。」

不敵な笑みを浮かべたシルヴァンに見られたオリビエは悠々とした表情で頷いた。

 

「そ、そんなにいるんですか!?………けど、どうしてみんな、仲良くできないんだろう………?種族は違えど、みんな同じ”人”なんだから、きっと解り合えると思うのに………」

シルヴァンの話を聞いたエステルは驚いた後、悲しそうな表情をした。

「「……………………」」

「……………フフ、なるほど。さすがは父さん達が一目置いている娘ね♪」

「はい。………プリネ達は本当によき友を作りましたね………」

エステルの言葉を聞いたシルヴァンとファーミシルスは驚いた表情をし、カミ―リは口元に笑みを浮かべて答え、サフィナも笑みを浮かべてカミ―リの言葉に頷いた。

「あの………あたし、何か変な事をいいました?あたしにとっては当然だと思うのですけど…………」

シルヴァン達の様子を見たエステルは首を傾げて尋ねた。

「いや………君の言う通りだ。お互いに嫌い合っている者達や我等を目の仇にする光の神殿の者達に君の言葉を聞かせてやりたいぐらいだよ。」

「フフ………我が国にとってぜひ、欲しい人材ですわね。」

シルヴァンは口元に笑みを浮かべて答え、ファーミシルスも笑みを浮かべてシルヴァンの意見に同意した。

「それにしても、”あの方”と似たような考えを持っているなんて、本当に驚きね♪」

「”あの方”??」

カミ―リの言葉を聞いたエステルは首を傾げた。

「………カミ―リ姉上。」

「あら。つい、口が滑っちゃったわ。ちょっと、不味かったようね。」

サフィナに咎めるような目線を向けられたカミ―リは気不味そうな表情をした。

「…………私達が言わなくても、リフィアがいつか口に出していただろう。……………エステル。君達の修行の旅にリフィア達が同行していた時、父上――リウイの正妃の話をリフィア達はしたかな?」

「あ、はい。少しだけですが。………あの。ずっと気になっていたんですがリウイの正妃様ってどんな方だったんですか?」

シルヴァンに尋ねられたエステルは頷いた後、尋ねた。

「………話しても構わないか?ファーミシルス。」

「………私はメンフィルの将。私ごときに許可等取らず、陛下のご判断でお話し下さい。」

「………わかった。……………………………」

ファーミシルスの言葉を聞いたシルヴァンはしばらくの間考えた後、やがて口を開いた。

 

「父上の正妃様………正妃様が持つ優しさは聖母のような包み込むような優しさと聞いている。……敵国の民にも我等メンフィルが制圧した後、危害を加えない事を伝える為に自ら民に声をかけていたと言われている。そして誰よりも人間と闇夜の眷属の共存を願い、争いのない世界を心から願っていた方にして父上を誰よりも心から愛していた方だ。」

「………”覇王”と称されるリウイ皇帝陛下を支え、”国”に拘らず民を思う本当に素晴らしい方だったのですね。」

シルヴァンの話を聞いたクロ―ゼは眩しそうな目で頷いた。

「制圧直後の敵国の民に自ら声をかけまくるなんて、中々度胸のある妃殿だったのですな。」

「フッ。ぜひ、一度お会いしたかったよ♪」

ジンは驚き、オリビエは表情を緩めた。

「………正妃様はその優しさから皆からこう称されていた。”聖王妃”と。」

「”聖王妃”………”闇王”とか”覇王”とか称されているリウイとは真逆ですね。名前はなんという方なんですか?」

エステルはリウイの愛妻の二つ名に呆けた後、名前が気になり、尋ねた。

「………”イリーナ・マーシルン”。………その方が父上の愛妻にして、メンフィルの歴史に伝えられる伝説の妃だ。」

(……ん?どこかで聞いた名前だね?)

「”イリーナ・マーシルン”………あれ?確か、リフィアの本名で同じ名前があったような………?」

シルヴァンから告げられたリウイの愛妻――イリーナの名を聞いたオリビエは首を傾げ、エステルは呆けた後、ある事に気付いて尋ねた。

「………あの娘には父上と共に人と魔の共存を目指した方を忘れて欲しくなくて、イリーナ様の名を頂いた。………あの娘もそれをわかっているのか、”イリーナ”という名前が自分にある事に誇りを持っている。」

「そうね。人と魔の共存を願ったイリーナ様のようになるためなのか、あの娘ったら光と闇………両方の魔術を収めているからね。………イリーナ様はあの娘が尊敬している数少ない方よ。」

「そうだったんですか……………」

リフィアの本名の真実を知ったエステルは驚いた表情をしていた。

「話がそれて悪かったな。」

「そ、そんな!凄く貴重なお話が聞けて、凄くよかったです!」

軽く謝るシルヴァンにエステルは恐縮しながら答えた。

「さて………話はこれでお終いかしら?」

「あ、ちょっと待って下さい。まだ、聞きたい事があるんです。」

そしてエステルはレンの両親の事をシルヴァン達に説明した。

「ハロルド・ヘイワーズ………悪いが心当たりはない。私達は最近、こちらの世界に来たばかりでな。どちらかと言うと、父上の方が知っている可能性がある。」

「やっぱり、そうですか…………ご協力、ありがとうございました。」

シルヴァンの答えを予想していたエステルは納得した後、お礼を言った。

 

「ふむ………代わりと言ってはなんだが、君が引き取った竜の娘の親友――ツーヤのその後の話なら教えられるが?」

「え!?本当ですか!ツーヤ、あの後はどうしているんですか!?ミントも凄く気にしているんです!」

シルヴァンの話を聞いたエステルは身を乗り出すかのように尋ねた。

「ツーヤという女性だが………才能があるのか、淑女や侍女見習いが学ぶ礼儀作法は数日で極め、武も相当の腕を持っていて、ファーミシルスが直々に鍛えた親衛隊員と遜色ない強さになり、皇女であるプリネの傍仕えとして相応しい者だよ。」

「ツーヤちゃん、プリネさんの傍にいる為に凄く頑張ったんですね………」

「ふえ~………それを聞いたら、ミントも凄く喜ぶだろうな………ってあれ?”女性”??ツーヤの見た目は”女の子”なんですけど。」

ツーヤのその後を聞いたクロ―ゼは感心し、エステルは驚いた後、シルヴァンの言い方に首を傾げた。

「ああ、言い忘れていたな。父上やリフィア達が君が頼んだ剣の修復の為に、旅に出た事は知っているか?」

「あ、はい。ルースって人から教えて貰いました。」

「………そう言えば、私達が居ない間の大使館の守りの指揮を執っていたのルースだったわね………」

エステルの話を聞いたファーミシルスは数か月前の事を思い出していた。

「目的を果たした父上達が最近、帰還したのだが………その際ツーヤという少女は大人――女性に”成長”していた。」

「え、えええええええ~!?」

「数ヶ月前は子供だったのに、今は大人だなんて、いくらなんでもおかしいと思うのですが………」

シルヴァンの説明を聞いたエステルは声を上げて驚き、クロ―ゼは信じられない表情をしていた。

「私も自分の目を疑ったが事実だ。………これがその証拠だ。プリネの隣に写っているのが今のツーヤだ。」

そしてシルヴァンは一枚の写真をエステル達に渡した。

 

「うわっ………!プリネの隣に写っているこの人、ツーヤが大人になったら、まさに!って思うぐらいツーヤの面影がある………!」

「この間まで子供だったのに今は大人だなんて、やはり”竜”の成長の仕方は私達と違うんですね………」

「ほお~………これはまた、とんでもない美人になったものだな。」

「おおう………!今すぐにでも、ボクの愛を届けたいよ♪」

写真――プリネとプリネの隣に写っている黒髪の女性――ツーヤを見たエステルやクロ―ゼは驚き、ジンはツーヤの容姿を見て感心し、オリビエはだらしない表情になっていた。

「フフ………それにしても母さんや私をも超えるスタイルに成長しちゃったのを見て、私も少しショックを受けたわよ。スタイルには自信があったのに、その娘ったら、私達を完全に越えちゃったもの。さすがは竜といった所ね。」

「カミ―リ姉上。種族と身体つきは関係ないと思うのですが………」

カミ―リの言葉を聞いたサフィナは呆れていた。

「し、信じられない………!と言う事はミントも成長したら、ツーヤみたいに凄く美人で立派なスタイルになっちゃうのかな……?だとしたらあたし、女として完全に負けるよ~!ううっ……親としては成長して欲しいけど、そこまで成長されたら正直、複雑な気分よ………」

「エ、エステルさん。ミントちゃんがツーヤちゃんと同じように成長するとは限らないと思いますし、元気を出して下さい。」

ミントが成長した時の姿を想像したエステルはショックを受け、その様子を見たクロ―ゼはエステルを元気づけていた。

「その写真はプリネから私達がグランセルに来た際、君達に会うような機会があれば渡すよう、伝えられている。持っていくといい。」

「あ、ありがとうございます。ミントやティータも驚くでしょうけど、喜ぶと思いますし。」

シルヴァンの言葉を聞いたエステルはお礼を言った後、懐に貰った写真を収めた。

「話の続きになるが………プリネの傍仕えとしてそれなりの身分と名を与えるよう、リフィアから頼まれていてな………ツーヤに与える名も決まったし、近い内、位と名を与えるつもりだ。」

「そ、そこまで立派になるんだ、ツーヤ………ちなみに名前を与えるって言ってますけど、何か意味があるんですか?」

ツーヤの未来を聞いたエステルは驚いた後、ある事が気になって尋ねた。

「当然あるわよ♪この娘に与える名は父さん――リウイの側室の方の家名だから、私達マーシルン家に連なる者になるようなものだから、プリネの傍仕えをしても、誰にも責められる事はないわ。」

そしてエステルの疑問にカミ―リがウインクをして答えた。

 

「……もし、よければツーヤちゃんが今後名乗る名を聞いてもよろしいでしょうか?」

カミ―リの言葉を聞いたクロ―ゼは尋ねた。そしてクロ―ゼの質問にシルヴァンは答えた。

「”ルクセンベール”。それがその娘に与える家名だ。」

「”ルクセンベール”………あれ?確かその名前、サフィナさんのお母さんの名前じゃあ………?」

シルヴァンの話を聞いたエステルは名前を復唱した後、ある事を思い出して、サフィナを見た。

「ええ。少し事情があって私は母上の名をミドルネームとして使っていますが、普段は名乗っていないのです。……母上が父上の”竜騎士”として誓ったように主君であるプリネに誰にも負けぬほどの忠誠を持っているその娘なら与えてもいいと思って、私も許可しました。」

エステルの疑問にサフィナは微笑みながら答えた。

「そうなんですか………あの、今日は本当にありがとうございました。」

「お忙しい中、時間を取って頂いて本当にありがとうございました。」

エステルとクロ―ゼはシルヴァン達に頭を下げてお礼を言った。、

「何、私達もリフィア達の友人になった君やこちらの世界で唯一の同盟国の姫とも話せたし、有意義な時間になったよ。」

「遊撃士の仕事、頑張ってね♪」

「エステル殿達の活躍を今後も楽しみにさせて頂きます。」

「はい!………それじゃあ、あたし達はこれで失礼します。」

そしてエステル達はシルヴァン達にお辞儀をした後、客室を出て行った。

 

「…………それにしても、レン様の事は教えなくてよかったのですか、陛下。」

エステル達の気配がなくなった頃、黙っていたファーミシルスはシルヴァンに尋ねた。

「……構わん。レン自身からも何故”これ”を送ったのかも”これ”とは別の手紙に理由が書かれてあったしな……どちらに転ぼうが我々にとって損にはなるまい。ようやくできた”アレ”の”実験”もできる事だしな。」

「……にしてもあの娘ったら、年の割にかなり黒い事を考えるわね~。本当に11歳かしら?」

ファーミシルスの問いにシルヴァンは懐から脅迫状を出して静かに答え、カミ―リは呆れて溜息を吐いていた。

「まあ、今はそれはいい。………サフィナ、事の成り行きはお前に任せた。万が一、王国側が劣勢になる時があれば連れて来たお前の部隊全員を使って加勢しても構わん。」

「ハッ。」

シルヴァンの指示にサフィナは敬礼をして、了承した。

 

~グランセル城内~

 

「いや~、さすがは”大陸最強”を誇るメンフィルの王様達ね。あたしでも3人が凄く強いのを感じたわよ。」

「ああ。俺達を軽く超えているように俺も感じたよ。さすがは”剣皇”達の血を引く子供達と言ったところか。」

「「………………………」」

エステルとジンがシルヴァン達に会った感想を言っている中、オリビエとクロ―ゼは黙っていた。

「あれ?2人とも、どうしたの?」

2人の様子に気付いたエステルは尋ねた。

「いや、何。…………こんな形で現メンフィル皇帝陛下達と出会えるとは思わなくてね。ボクにも色々思うところがあるんだよ。」

「アンタが~?どうせ、皇妃様とサフィナさんに見惚れていたんじゃないの~?2人とも美人だったし。」

オリビエの言葉を聞いたエステルはジト目でオリビエを睨んだ。

「ハッハッハ!さすがはエステル君だよ♪共に旅をしているお陰でもう、ボクの事はなんでもお見通しかな♪」

「ふざけた事言ってんじゃないわよ!」

酔いしれた様子のオリビエを見て、エステルは怒鳴った。

「……………」

一方クロ―ゼは浮かない様子で黙っていた。

 

「どうしたの、クローゼ?」

「あ、いえ……。シルヴァン皇帝陛下達の雰囲気に呑まれてしまって……口調はリウイ皇帝陛下と比べればどこか優しく感じましたが、陛下達が無意識に出す雰囲気を感じるとやはり私など足元にも及びませんね……お祖母様の域で対等な形で接しているのですから、私のような未熟者には無理と感じてしまって………陛下達の雰囲気に呑みこれまれないお祖母様の凄さを改めて実感してしまいました。………もし、私が女王になれば、将来シルヴァン陛下達と何度も会談する機会はあるでしょうし……その時、私は陛下達の雰囲気に呑みこまれてしまうのではないかと、恐れているんです。」

「あ……」

苦笑して説明しているクロ―ゼを見て、エステルは心配そうな表情で見た。その様子を見たオリビエは唐突にクロ―ゼに質問した。

「ふむ、姫殿下。女王陛下は幾つの時に即位されたんだったかな?」

「あ、はい。20の時だったと思います。」

「で、姫殿下は幾つだい?」

「16になりますが……。……あ……」

オリビエの質問に答えたクロ―ゼはある事に気付いた。

「フッ、そういうことだ。陛下も即位された当初から今の政治手腕を振るい、さまざまな貴族、王族の者達と接してきたわけではないだろう。まして今の貴女は、陛下が即位した時よりも若いんだ。比べても仕方ないだろう?」

「武術における『理』の境地は『器』のあるものにしか至れない。その『器』を持っていても一歩一歩の積み重ねがなければ絶対に到達することはできない。そして、陛下はあなたに『理』に至る『器』を見出した。焦ることはないと思いますぜ。」

「皆さん……。……ありがとうございます。」

自分を元気づけるオリビエとジンにクロ―ゼはお礼を言った。

「ふふ、2人ともいいこと言うじゃない。伊達に年は食ってないわね。」

「失敬な……。ボクはまだ25歳だよ?ジンさんよりも5歳も若いのだからね。」

「失敬なのはお前さんの方だろうが……」

エステルに言われたオリビエは心外そうな表情でエステルを見て指摘し、オリビエの指摘を聞いたジンは呆れた。

「クスクス……。とりあえず、これでお祖母様とヒルダさん、シルヴァン陛下達から話が聞けましたね。」

「うん……。そろそろ市街に戻ろっか?」

 

そしてエステル達はグランセル城を出た………………

 

 


 
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