No.463304

真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第九話 似た境遇

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前話で遂に登場した彼!!

しかし、大分空気でしたね…。しかし、今話からようやく彼に触れ始めます(笑)

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2012-08-01 12:09:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3052   閲覧ユーザー数:2685

~聖side~

 

賊の男たちは、東の方に歩いていった。これで更正してくれれば良いんだがな…。

 

 

「お頭、辺りを見てきたけど、他に賊はいない様だよ。」

 

「分かった、ありがとう奏。」

 

「あっ…あの~…。」

 

「あぁ、悪かったな、ほったらかしにしちまって。大丈夫だったか?」

 

「はい、おかげ様で怪我も何も無いです。」

 

「なら良かった。お前はこんなところで何してたんだ?」

 

「それが、俺にも良く分からないんです。気付いたらこんな荒野のど真ん中に…。」

 

「ほぉ…。その服はお前のか?」

 

「えっ!!あぁはい。この服は俺の学生服です。」

 

「そうか…。」

 

「さっきからこの服ばかり皆に聞かれるんだけど、ここでは、ポリエステルってそんなに珍しいものですか?」

 

「あぁ、珍しいな。」

 

「そうなんですか…。」

 

「お頭、こんな奴の言ってることをまともに信じるのか?? あたいには、何言ってるか分かんないから胡散臭いぞ??」

 

「まぁ奏待て。もしかしたらこいつは『え~っと、そちらの方は奏さん??』…。」

 

あっ!! こいつやりおった…。

 

ぶんっ!!!

 

ガキンッ!!!

 

奏が振るう槍を磁刀で受け流す。

 

「えっ!!ちょっ!! 危なっ!!!」

 

「お頭!!!なんで止めるんだ!!! こいつはあたいの真名を勝手に呼んだんだぞ!!」

 

「落ち着け、奏。 …おい、そこのお前!! 殺されたくなかったら、今すぐ謝れ!!さもないと俺も長くは止めんぞ…。」

 

「えっ!! なんだか良く分からないけど…とりあえず、さっきのは無しで!! そしてごめんなさい…。」

 

「こいつもそう言ってる…。ここは、俺に免じて許してやってくれないか?」

 

「…次は無いと思いな。」

 

どうやら、奏も怒りを納めてくれたようだ…。

 

「ふぅ~…助かった…。」

 

「…お前、日本人だな?」

 

「あぁはい、そうですが?」

 

「名前は?」

 

「北郷一刀。東京都浅草生まれ、聖フランチェスカ学園の二年生。」

 

「そうか……北郷、俺の名は徳種聖。某大学の三年だ。ただ、この世界だとそんなの関係ないがな…。」

 

「どういう…意味ですか?」

 

「あぁ、まずは敬語無しで良いぞ。その方が話しやすいだろ?」

 

「助かるよ。その方が俺も喋りやすいんだ。」

 

「まぁ、まずは落ち着いて聞けよ……ここは日本ではない。」

 

「日本じゃない!! そんな馬鹿な!!」

 

「残念だが…事実だ…。」

 

北郷は明らかに動揺している。まぁ、俺も最初はそうだったな…。

 

「じゃあ…見た感じ、中国かそこ等辺なのか?」

 

「あぁ、遠く無い答えだ。今俺たちがいるのは紛れも無く中国だ。ただし…現代から約1800年前、中国の三国志の時代のな。」

 

「そっ…そんな…!!!」

 

「俺だって初めは驚いたさ…。じゃあ、これを聞けば信じるか? …奏!!自己紹介してやれ。」

 

「…お頭がそう言うなら…。あたいは姓は凌、名は統、字は公績。」

 

「っ!!!凌統だって!!! 三国志に出てくる呉の武将の名前じゃないか!!」

 

「そういうことだ…。ただ、どういう訳か武将が全員女の子なんだわ…。」

 

「なんという夢のような話…。」

 

「一応、ほっぺ引っ張ってやろうか?」

 

「いやっいいよ…。目で見てるこれが現実なのだろうから…。」

 

「ほう、これだけの説明でよくそこまで順応できるもんだ…。良い才能の持ち主かもな。もしくは途方も無い馬鹿か…。」

 

「ははっ、才能の持ち主の方が良いな…。」

 

「さぁな…。奏、こいつのこと許してやってくれ。こいつは真名のことを知らなかったんだ。」

 

「凌統さん、本当にすいませんでした。」

 

「真名を知らないなんて…そういえば、お頭も前そんなこと言ってたっけ?」

 

「あぁ、こいつは俺と同じ国出身らしい。だから、真名の習慣が無いんだよ。」

 

「何!! ってことは、こいつも天の御使い!?」

 

「かもしれんな…。まぁ、今は俺が天の御使いってことになってるから、その座を譲る気は無いがな。」

 

「…お頭はこいつをどうする気で?」

 

「そろそろこいつって呼ぶのをやめて欲しいな…。俺には北郷一刀って名前があるんだから。」

 

「…。 じゃあ、北郷をどうする気で?」

 

「そうだな~。北郷、お前はこれからどうする?」

 

「どうって言われても…。地理も何にも知らないのに、こんなところでどうしろって言うのさ…。」

 

「確かにな…。じゃあ、俺たちと一緒に来るか? これも何かの縁だ。」

 

「良いのか?」

 

「あぁ、俺はな…。 奏、お前は?」

 

「…良いんじゃないか…。こんなとこに置いとくのもなんだし…。」

 

「だそうだ。良かったな北郷。」

 

「ありがとう、凌統さん。それから徳種さんも。」

 

「聖で良い。俺にとっちゃあ『聖』は親から貰った大切な名前だから、この世界で言う真名に当たるんかな…。 良いか、北郷。この世界の人間は、心を許した人にだけ呼ぶことを許す、親から与えられた神聖な名前がある。それが真名だ!! 俺はお前の言葉、お前の言ったことが真実だと信じる。真名はその証にお前に授ける。」

 

「そんな大切な名前を、俺に預けてくれるのか? 会ったばかりの俺に?」

 

「あぁ、どうやらお前も似たような境遇らしい。俺と良く似てる…。」

 

「…そうか…聖も経験したんだ…。じゃあ、俺も一刀って呼んでくれ。お前の信頼に答える為に。」

 

「分かった…一刀、よろしくな。」

 

「あぁよろしく、聖。」

 

二人は固い握手を交わした。夕焼けをバックに映るこの光景は、青春ドラマを感じさせた。

 

「なんだよ、お頭が真名を預けるんならあたいも預けるよ。あたいの真名は奏。よろしくな。」

 

「ありがとう、奏さん。俺の方は呼びたいように呼んで。」

 

「分かった、じゃあ一刀って呼ぶな。」

 

「俺の仲間には後二人いるんだが、帰ったらそれぞれと挨拶を交わしておけよ。」

 

「…因みに誰と誰?」

 

「徐庶と諸葛謹と言えば分かるか?」

 

「また有名な人たちが…因みにその人たちも…。」

 

「あぁ、女だ。二人とも美少女だぞ。」

 

「美少女三人に囲まれるなんて…聖、お前はモテモテだな…。」

 

「お前も今日からその仲間だぞ!? 嬉しいか?」

 

「嬉しいっちゃあ嬉しいが…。」

 

「まぁ、口説いても良いが無駄なことだぞ。」

 

グイッ!!

 

急に奏の手をとって引き寄せる。

 

ギュッ!!

 

「ちょっ!!お頭!!!」

 

「奏を含め、皆俺の大切な人だからな…。」

 

「…。( ///)」

 

奏は俺の胸の中で顔を真っ赤にさせながらも、嬉しそうな顔をしている。

 

「その言葉を肝に銘じておくよ…。手を出したら聖に殺されかねないな…。」

 

「殺しはしないさ。ただ、半殺しくらいなら…。」

 

「やるの!?」

 

「俺の気分次第かな。」

 

「……。」

 

「はははっ。まぁ、悔しかったら一刀も皆から好かれるようになりな。お前にもし、英雄の兆しがあるなら、皆お前に集まるだろうからさ。」

 

「そうなりたいもんだね。(#` 皿’)」

 

「なんだよ? 怒ってんのか?」

 

「怒ってないよ!!!」

 

「拗ねんなよ。楽しくいこうぜ!!」

 

「はぁ~…。」

 

この後、一刀を馬に乗せて一路水鏡塾へと向かった。

 

聞いた話では、馬に乗ったことが無いので、一人では乗れないそうだ…。

 

まぁ陽華を貸して、乗れるまで練習させれば良いか…。

 

 

一刀は所謂普通の高校生。

 

俺と違うのは、一刀は博物館にある銅鏡を見ていたら銅鏡が輝きだし、気付いたらあの荒野にいたと言う。

 

実家は剣道の道場で、北郷一刀流を幼いころから習っていたとか…。

 

「なぁ、聖ここって??」

 

「ここは、今俺が世話になってる女学院だよ。」

 

「女学院になんでお前が世話になってるのさ?」

 

「う~ん…。まぁ、助けられたと言うのが一番正しいが…。」

 

「何そのアニメ的展開…。」

 

「良いんじゃねぇ? アニメ見たいなもんだし。」

 

「メタ発言ですか!!?」

 

「まぁ、それは置いといて…。」

 

「置いとける問題なのか…。」

 

「お前もその名前くらいは聞いたことあるだろう。ここは『水鏡塾』」

 

「水鏡塾!! …と言うことは、諸葛亮や龐統もここに!?」

 

「いやっ…。居なかったよ。まぁ多少、俺たちの知る三国志から変更されてるみたいだし、そこは良く考えないといかんな…。」

 

「成程…。見知った知識で動くと帰って酷い目に遭うってことか。」

 

「そういうことだ…。 あっ、水鏡先生。すいません、客人なのですが…。」

 

「あらっ、御使いさん。と…そちらがお客さん?」

 

「北郷一刀と申します。」

 

「私は司馬徽、号の水鏡という名前を使って、ここで塾をしております。而して、今日はいかがした用事でございますか?」

 

「水鏡先生。 実は、こいつは俺たちとしばらく一緒に行動することになりまして…。ですので、ここに一緒に泊めてあげて欲しいんですが…駄目ですかね??」

 

「大丈夫ですよ。一人分位なら直ぐに部屋を準備出来ますし。 誰かある!!」

 

「お呼びでしょうか、水鏡先生?」

 

水鏡先生が呼ぶと、奥から簡擁ちゃんが走ってくる。

 

「直ぐに部屋を一つ準備してもらえる? 準備が出来たら、こちらの方をその部屋へと案内してあげて。」

 

「分かりました。」

 

簡擁ちゃんは頷きを一つ返すと、走って奥の部屋へと向かっていった。

 

「なぁ、聖。今の子も武将か?」

 

「『武』って言うか『知』将だな」

 

「名前は?」

 

「簡擁だとさ…。」

 

「蜀の武将…いやっ知将か…。」

 

「ここにいる将は、大体蜀の人たちだったぜ。」

 

「じゃあ、いずれ蜀に参軍するんだね…。」

 

「そうかも知れん…。優秀な文官が揃う面では蜀はやっぱり凄いな。」

 

「一つ聞いても良いか?」

 

「何だ?」

 

「聖はこれからどこかの国に入るのか?」

 

「言ってなかったか…。俺は自分で旗を揚げる。そして、自分の勢力でこの世の乱を鎮め、平和な世とする。これが俺の目標だ…。」

 

「そうか…。良い目標だな。」

 

「ありがとうな。」

 

「あの…。お部屋の準備が整いましたが…。」

 

「あぁ~簡擁ちゃん。こいつの名前は北郷一刀。好きなように呼んで良いってさ。」

 

「おい!!勝手に『でも、合ってるだろ?』…。」

 

「くすっ。お二人とも仲がよろしいのですね。」

 

「似た物同士なんだよ、こいつと俺は…。」

 

「確かに…少し似たような気配が致しますね。」

 

「そういうこと。」

 

「そうですか…。そう言えば、まだ自己紹介してないですね。姓名は簡擁、字は憲和です。」

 

「よろしくね、簡擁ちゃん。」

 

「一刀、悪いが後で部屋に来てくれるか? 色々と聞いておきたいし、俺の仲間も紹介したいしな。」

 

「分かった。」

 

「簡擁ちゃん。悪いんだけど、後で俺の部屋まで、一刀を案内してあげてくれないか?」

 

「はい、分かりました。では、北郷さん。お部屋へ参りましょうか。」

 

一刀が部屋へと連れて行かれる中、俺は自分の部屋へと帰った。

 

部屋へと帰ると、芽衣、奏、橙里が話し合っていた。

 

俺が部屋へと入ると、皆俺へと向き直って話し始めた。

 

「聖様!! 何でも天から別の人間が来たとの事でしたが!? その方はどちらに!?」

 

「あぁ、一刀は一旦部屋へと行かせた。後でここに来て貰う事になってるから、その時にでも色々と聞くつもりだよ。」

 

「でも、それって本当の話なのですか? そんな境遇の人が二人もいるなんて信じられないのです。」

 

「う~ん。まぁ、日本の事とか知ってたし、この世界の人ではないことは確かかな…。」

 

「いきなり真名を呼ぶような奴だから、二人も気をつけな。」

 

「奏は良く許しましたね…。」

 

「あたいだって器が広いことを見せなきゃね。」

 

「切りかかったのは誰だったか…。」

 

「何のことだい?お頭??」

 

「まぁ…そうしたいなら良いが。俺は嘘をつく奴が大嫌いだからな。それだけは覚えとけよ。」

 

「うっ…。すいませんでした…。」

 

「素直でよろしい。(ナデナデ)」

 

「…。( ///)」

 

「あぁ~!!! 奏だけずるいのです!!」

 

「そうですよ。言いましたよね? 私たちはあなたのもの…。皆に平等に愛を注いでいただかなくては困ります。」

 

「はいはい…。じゃあ、二人もこっち来て。」

 

「「は~い!!」」

 

「やれやれ…。(ナデナデ)」

 

「「♪♪」」

 

「あ~ぁ…。え~っと、聖? 今は止めといたほうが良いか?」

 

「おう、一刀。まぁ、いつもの事だから気にせず入れよ。」

 

「そうなのか? …なんか、めちゃくちゃ睨まれてるんだが…。」

 

「まぁ、お前が来た事で、一気に話し合いのムードになってるからな…。」

 

「それだけじゃない気がするが…。」

 

「そうか? 俺には分からん。」

 

 

あぁ…でも確かに、明らかに芽衣と橙里が不機嫌だ…。

 

また後でなでてあげれば機嫌も回復するかな…??

 

 

「あっそ…。で、そちらの二人が徐庶ちゃんと諸葛謹ちゃんで良いのかな?」

 

「…そうですが…。あなたが、先ほど話題にあがった、天から来た二人目の人、でよろしいのでしょうか?」

 

「…そう…らしいね…。その、天って言うのが日本だって言うなら。」

 

「何故あなたは、この世界に来たのですか?」

 

「さぁ…。実は、まったくもって分からないんだ…。 何のためにここに来たのか、誰が俺をここに呼んだのか…。」

 

「境遇としては俺と同じだ。俺も何故来たか分からないからな。だから、一刀が何か知ってるなら、教えてもらおうかと思っていたが…。どうやら、無理らしいな…。故に、俺もお前に教えてやれない。それはまず分かってくれ。」

 

「成程…分かった。」

 

そんな悲しそうな顔するなよ…。俺だって出来るなら教えてやりたいんだから…。

 

少し残念そうな顔をした一刀に対して、申し訳なさが浮かぶ聖なのであった…。

 


 
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