No.464940

真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第十話 初体験!!??

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

来週から投稿速度ががくっと落ちてしまいます。なので、今日明日で二話あげたいと思い、今日とりあえず一話あげておきます。


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2012-08-04 19:31:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3218   閲覧ユーザー数:2610

~聖side~

 

「よしっ、次の話だ。 俺はこの世界に来た目的は分からないが、この世界でやることは決まっている。 それは天下平定。これはさっき言ったな?? 今の時代は後漢末期、漢王朝は崩壊の兆しを示し、人々は飢饉や重税に苦しみ、中枢にいる一部の高官の奴らだけが私腹を肥やしていると言った状況。 お前も見てみれば分かると思うが、各村ではその日暮らしもままならない家庭ばかりだ…。それほどの重税にも関わらず、縋りつけるのは漢王朝のみ…。その貧窮に耐えれなくなった民が暴徒化して、黄巾賊を名乗り村を襲っているのが現状だ…。 俺は事情があるとは言え、こいつらを許すことは出来ない。だから、この前千人近い賊を殺した。これに関して、俺は何も悪くないと思っている。今ここで殺しておかなければ、俺の理想、『和を以って貴しと為す』に繋がらないと考えたからだ。 …ふぅ、さて、ここまで良いか?」

 

「……。ここは三国志の時代…。つまり戦時中なんだよな…。だから人を殺すのが当たり前…。」

 

「そうだ。」

 

「……。でも、それって本当か? 本当に殺さなきゃいけないのか? 他の方法があった『黙れ!!』…。」

 

「お前のくだらん理想を聞く気などない!! それに、そのような甘い考えがあれば直ぐに殺されるぞ。」

 

「甘い考えで何が悪いんだよ!! 人殺しの正当化なんてどうやったって出来るわけがない!!」

 

「…。」

 

「…。」

 

「そうだ…。 その通りだ…。 人を殺すことを正当化することは出来ない。だからこそ、その罪の重さをしっかりと受け止め、且つせめてもの贖罪として…死んだ人の思いを、代わりに俺たちが受け継がなければならないんだ。」

 

「…。」

 

「湿っぽい話になっちまったな。すまん…。ただ、分かってくれ。俺たちはこれから戦乱の世に巻き込まれていくと言うことを…。」

 

「あぁ、肝に銘じとく。」

 

「そうしてくれ…。 さぁ、俺からの話は以上だ…。何か言いたい事がある人はいるか?」

 

「聖様、これからこのお方をどうなさるおつもりで?」

 

「俺はこいつも一緒に連れて行くつもりだ…。 勿論、一刀が望めば…だけどな。」

 

「望むも何も、頼れる人間が聖しかいないんだ…。嫌でも付いて行くよ。」

 

「だそうだ。芽衣、橙里もそれで良いか?」

 

「分かりました。ならば、仲間の証として名を名乗りましょう。我が名は徐庶、字を元直。真名は芽衣です。」

 

「姓は諸葛、名は謹、字を子瑜。真名は橙里なのです。」

 

「芽衣さん、橙里さん、これからよろしく。俺は北郷一刀。字も真名も無い。強いて言うなら、一刀が真名に近いかな。まぁ、呼びやすいように呼んでよ。」

 

「…ふぅ。 どうやら、悪い人ではなさそうですね…。」

 

「えっ!? 何のこと…??」

 

「奏の真名をいきなり呼んだと言うから、どんだけの畜生なのかと…。」

 

「あぁ…。奏さん、本当にあの時は申し訳ない…。」

 

「良いってことさ。済んだことだろ。」

 

「さて、じゃあ皆に渡すもんがある。と言っても、既に奏には渡したが…。」

 

「“あの”指輪のことですか~?」

 

「…気付いたの?」

 

「いえ、さっき奏が自慢してたので…。」

 

「奏~??」

 

「いやっ、嬉しくて…つい…。」

 

「まぁ、良いや。奏には青の指輪を渡した。後は三つ。赤、緑、白だ。三人にはこの指輪のどれかを着けてほしい。それが、俺の仲間の印であって、この五人の絆だ。」

 

「聖様は着けないのですか?」

 

「俺はこの金の指輪をしてるから良いんだよ。何でも店の親父が言うには、方角の四神を示してるらしいぜ。」

 

「へぇ~…。じゃあ、青龍、朱雀、白虎、玄武か…。」

 

「それだと、先生の金色ってなんですか?」

 

「なんでも、中央にあるお宝とか言ってたが?」

 

「ふむっ~…。それよりも、陰陽五行説のほうが何かしっくり来ますね…。」

 

「あぁ…。火、水、土、金、木だっけ?」

 

「はい…。 火は赤、水は青、金は金、土は白、木は緑となるなら、それぞれの色も分かりますし…。」

 

「う~ん…。まぁ、細かいことは気にするな!! 皆それぞれしたいのしてくれれば良いし。」

 

「じゃあ、私は赤にします~。」

 

「じゃあ、緑にするのです。」

 

「じゃあ、俺は白かな…。」

 

「よしっ、全員に行き渡ったかな…。じゃあ、今日は一刀も疲れてるだろし休むことにしよう。一刀は明日から俺に付け。この世界での色々なことを教える。後の人は水鏡塾の手伝いをしてやってくれ。 皆異論は?」

 

「「「…。(フルフル)」」」

 

「無い様だからこれで解散。」

 

皆はそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。

 

俺は一人、事務机について自分の勉強をする…はずだったが…。

 

 

「…なんで居るの??」

 

「先生!! 久しぶりに授業をしてほしいのです!!」

 

「授業ねぇ…。まぁ、良いか。特に予定はないし…。」

 

「じゃあ、お願いしますなのです。 …先生、どうして泣いてらっしゃるんですか?」

 

「んっ? 泣いてなんて無いはずだが…。」

 

「でも、目に…。」

 

「…本当だ…。 一刀を見てて、懐かしくなっちまったのかもな。」

 

「北郷さんをですか?」

 

「あぁ、あいつの理想は、初めてこの地に降り立った俺と同じだった…。正義感に溢れ、固い意志を持つ危なっかしい思想…。 なんか、それを見てたら嬉しくてな…。俺とつくづく同じだなって。」

 

「じゃあ、北郷さんも先生と同じく旗をあげるのでしょうか?」

 

「どうだかな…。俺は、このまま俺の所で俺の右腕として働いてほしいけどな…。俺の理想を思い出させる者として…。」

 

「そうなるといいですね…。」

 

「あぁ。 さて、授業だっけ? え~っと…確か、前は孫氏呉兵法書だったっけ?」

 

「そうです。今日はその続きからやるのです。」

 

「はいはい。じゃあ、机について。」

 

「じゃあ…。 失礼しますなのです…。」

 

 

…………。

 

「何で俺の膝の上なのさ??」

 

「先生の膝の上って座りやすいですね。」

 

「答えになってないし…。」

 

橙里の柔らかい肢体の感触が、服越しに伝わってくる…。

 

いっ…いかん!! 素数を数えるんだ。 2、3、5…。

 

「……まぁ、橙里がそれで良いなら良いけど…。」

 

「えへへなのです♪」

 

「おいおい、あんまり暴れるなよ? 暴れるなら降ろすからな。」

 

「は~いです♪」

 

「分かってんのかな…。さてと、じゃあ授業を始めるか…。 え~っと…。」

 

「ここです、ここからです。」

 

橙里は俺の手をとって指し示す場所まで持って行く。

 

「『故兵以詐立、以利動、以分合爲變者也、故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷震、掠郷分衆、廓地分利、懸權而動、先知迂直之計者勝、此軍爭之法也』か…。 つまり…。」

 

「戦術と言うものは、敵を欺くことを旨とし、自軍に有利な状況を作るために行動し、戦況の変化に応じて自由自在に兵を分散、集結させなければならない。故に、行動するときは風のように素早く、静まるときは林のように静かに、攻め入るときは火のように勇猛果敢に、動かないと決めたら山のようにずっしりと、時には闇に潜んだように身を隠し、動く様は雷のように響き渡る。敵の村を襲ったなら、戦利品は皆でわけ、領地を奪ったなら、それは領主だけが利益を得ることの無い様にする。常に公平に分けなければならない。迂直の計を先に知る物は勝負に勝つ。これが兵法と言うものである。 と言う意味ですかね?? どうですか先生?」

 

「……良いんじゃないか?」

 

十分理解していると思いますよ…。

 

「やったぁ!! 褒められたのです!!」

 

そう言って、俺の手に胸を押し付けるようにして抱き締める橙里。

 

うぉ~!!!むっ胸の感触が~…。いかん、俺の愚息が…。 そっ…素数を…。

 

「そっ…そこまで分かってるなら俺が言うこと無くないか?」

 

「いえ、これはあくまで文章。つまり机上の論を抜け出せないのです。やはり、実際の戦場においての考え方を聞かなければしょうがないのです。」

 

「そういうもんかね…。と言っても、俺もそんなに場数を踏んでいるわけではないんだが…。」

 

「では、呉での賊退治の時のことを教えてください!!」

 

「あぁ、あの時か…。 確かあの時は、初めは兵を引きずり出して前後で挟み撃ちにする予定だったっけ?」

 

「はいです。それこそ、自軍に有利な状況を作るために動いたのです。」

 

「そしたら、相手の数が多すぎて逆にこっちが不利になったんだよね?」

 

「うぅ~…。 …その通りです。」

 

 

ふぅ…。だいぶ落ち着いてきたぞ…。このまま精神を落ち着けて…。

 

 

「俺はそこで救援に行こうと思ったんだけど、それだけだとこっちの不利は変わらないわけだ…。 なんと言っても数では圧倒的に負けてたからね…。 寡兵で勝つためには、その人数で勝てる状況を作らなければいけないわけだ。 だから、まずは峡間に相手を引き込みたかった。これは、橙里でも分かるよね?? で、それだけでも何とかなるかもしれないけど、より安全に勝つために、伏兵として弓兵を岩上においてってとこかな…。」

 

「『善守者蔵於九地之下、善攻者動於九天之上』。 よく守る者は九地の下に(かく)れ、よく攻むる者は九天の上に動くですね。」

 

「そうなるのかな…。 まぁ、よく守ったと言えるかどうかは微妙だけど…。」

 

「でも、あの奇策のお陰で私は生きることが出来たのです。 …初の参軍に浮き足立っていた私には、あの状況では死の考えしか浮かびませんでした。 …もの凄く…怖かったです。」

 

「橙里…。」

 

「あの時…死を覚悟したとき…先生が助けに来てくれて…本当に嬉しかったです。 今思えば、私は三回も先生に助けてもらってるのですね…。」

 

橙里は、膝の上で体の向きを変え、俺のほうに向き直る。

 

「これは、そのお礼なのです。」

 

チュッ♪

 

「っ!!!!」

 

「…。( ///)」

 

橙里の唇が~!!!!

 

柔らかかったな…。

 

いかん、また愚息が…。落ち着け俺!!

 

「さっ…さぁって、次は…。」

 

「むぅ~…。先生!!!!」

 

「はひぃ?!」

 

「…私は…魅力無いんでしょうか…。」

 

「えっ??」

 

「ぐすっ…こんなに…先生を誘惑しても…ひくっ…先生は…先生は…。」

 

「ちょ!!ちょっと待った!! 話が繋がらん!!」

 

「先生……わ…私は先生のことが好きです!! 大好きです!! …初めて会ったその日から…命を助けてもらったあの日から…あなたのことが好きなんです!!」

 

「…。」

 

「先生の周りには芽衣や奏がいて…正直勝ち目があるとは思いません。 二人とも私よりも優秀なのです。 でも、諦めるなんてできないのです…。 なら…少しでも近くに居たいから…先生に教えを請う形で近くにいました。 …このままの関係でも良いと思える時もありました。でも、物足りない感情が私の中を埋めつくしてきました。 …もう、耐えられないんです。あなたの事が…好きで好きで、この気持ちを押し殺すことが出来なくて!! …辛いんです。一方通行の恋がこのまま続くのが辛くてしょうが『ギュッ』…っ!!!」

 

「ゴメンな、橙里。 橙里がそこまで俺のこと好きでいてくれてるのに、俺はまったくそれに答えてやれなくて…。俺もはっきりと言うな…橙里…好きだよ。 そう言えば、昼間の答えを聴いて無いや…。俺の大切な人として、傍に居てくれるかい?」

 

「うぅ~…ぐすっ…ずずっ…。んぐっ…はぁ…。はいっ…。もぢろんでず!!」

 

「はははっ、そんなに泣かないでよ。ほらっ、これで涙を拭いて。」

 

「は…い…。 ぐす…。はぁ~…。 すいません、少し落ち着きました…。」

 

「よかった…落ち着いたみたいで…。」

 

「あのっ…先生…。」

 

「んっ??どうした?」

 

「その…もう一度…抱き締めてくれませんか?」

 

「…良いよ。(ギュッ)」

 

俺の胸にすっぽりと納まる形で、橙里と抱き合う。

 

「…温かいです……先生…もう一つ…お願いが…。」

 

「…何だい??」

 

「口付け…してくれませんか?」

 

「…うん、喜んで…。」

 

……。

 

ふと、目を覚ますと辺りは真っ暗。

 

隣には橙里が可愛らしい寝顔を浮かべている。

 

つまりは、そういうことで…。今は事後にあたるわけで…。深く追求されることを俺は拒絶する!!

 

俺は、橙里を起こさないように寝台から降りると、上着を羽織り、扉をゆっくりと開け、庭に出る。

 

夜空には綺麗な満月が昇り、辺りには静けさが漂う。

 

しばらく夜空を見つめていると、後ろから抱きつかれる。

 

「…橙里か…。」

 

「よく…分かったのです…。」

 

「そりゃあ…さっきまで抱き合ってたからね…。」

 

「…そっ…そうだったのです…。( ///)」

 

しばらく、そのままの状態が続く…。

 

お互いに黙ったまま、橙里は俺の体に抱きつき、俺は橙里の頭を撫でる。

 

「…幸せです。 幸せすぎて嘘みたいです…。」

 

「嘘じゃないよ。幸せに、人は誰でもなれるんだ。」

 

「ふふふっ。先生はやっぱり、私を不幸から救ってくれたのです。」

 

「俺じゃないよ。橙里が自分で掴んだんだ。」

 

「そう…しといてあげます…。」

 

「実際そうだと思うんだけどな…。」

 

「先生…?」

 

「ん?? なんだい??」

 

「…大好きです。」

 

「…俺もだよ。」

 

師弟の仲から発展した二人を、満月の光がただただ優しく包むのだった。

 


 
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