No.461926

魔法少女リリカルなのはmemories 第三章 蘇る記憶(メモリー) 第二十四話

J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

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2012-07-29 19:47:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1688   閲覧ユーザー数:1652

 その頃、戦艦のメインルームで幼馴染だったフィルノと再会したなのはは艦船内の一室にあるベッドの上に座っていた。

 

「はぁ~」

 

 しかしなのはは先ほどから溜め息を吐いてばかりでいた。理由はなのはが右手に持っている物に対してだ。

 それはフィルノが管理局から盗んだものであり、まだなのはが一人で行動する前にユーノから聞いたロストロギアだった。もう片方を合わせて使うものだとその時ユーノに聞いているので、現に形は元々翡翠色の丸い宝石型であったような感じで、それが割れたかのような欠け方をしていた。

 

「どうしてこれを持っているように頼まれたのだろう?」

 

 疑問に思っていた。フィルノはなのはが持っているロストロギア、テュディアについて全く教えてもらっておらず、どうしてなのはに持たされたのか不思議であった。

 ユーノからテュディアの使い方は聞いていなかった。ユーノから聞いたのはフィルノがテュディアを盗んだぐらいしか聞いていないのだ。あの時はなのはに掛けられていた魔法の正体について聞くためだったので、そこまで詳細に聞いていなかったのだ。だから、いつの時代に作られて何に使われた事などという事をなのはは知らなかった。

 そしてまた、どうして自分にこのテュディアを持たされたのかは教えてくれなかった。再開した後、すぐにフィルノは艦船出て行ってしまったのだ。余り再開の時間を与えずに。

 ちなみに、デュナ・シルフィアは別の一室でリィナ・シルフィアの面倒を見ている。フィルノの話ではリィナは気絶しているらしく、少し時間が経てば意識が戻るだろうとという事らしい。

 

「まぁ、これについてはフィルノが後に教えてくれると言ってくれたから、余り自分で考えないでその時まで待っていようかな」

 

 テュディアについてあまり考えない事にし、なのははそのままベッドへ倒れる。

 それからテュディアを持っていない左手を上に上げ、少し前の事を振り返っていた。

 エメリアの研究所でたくさんの人を自分の手で殺した。怒りに任せて殺していたようなものだったが、今振り返れば胃液を吐きたくなる程ではあった。っというより、先ほどこの部屋に来た時に部屋に会った洗面所ですぐに吐いた。一人になるまでずっと我慢し続けており、この部屋で一人になった時に耐え切れなくなったのだ。

 

「……私は、初めて人を殺した。今まで私は管理局というのは正義だと思い込んでいた。けど私は管理局の実態を知ってしまい、今まで何の為に生きていたのだろうと思ってしまった」

 

 独り言を言い始める。今までのなのはは、自分が正義の為に戦っているのだと思っていた。しかし、そんな事は自分の妄想のような事に過ぎなかった。管理局の正体はなんとも気にせずに違法実験を密かに行い、被験者になんも思わずに実験を繰り返すというものだった。多分、そんな事を知っている管理局員はかなり少ないだろう。しかし知ってしまえば、管理局になんかで仕事なんか出来る訳がなかった。

 なのは自信、最初はどうするか悩んでいた。本当の事を言えばそんな事を信じたくなかったのだ。だからデュナの妹のリィナの事を聞くまではかなり悩み、管理局を信じてみたかったのだ。しかし結果的にそれは裏切られ、エメリアの妹が人体実験として使われていると聞いたときにぶち切れてしまったのだ。こうなってしまった以上はもう管理局に戻るなんて言う事は出来る筈がなかった。

 

「もう、私の手は血で染めてしまったのだから、管理局に今更戻るなんて言う事は出来ない」

 

 なのははそう言い、そして上に上げていた左手を握りしめる。

 

「けど私は後悔していない。管理局から離反してからは何故かすっきりしてる私が居る。これでよかったのだと私は思った。フェイトちゃんやはやてちゃんたちには悪いけど、私はもう戻れない所まで来てしまっている。敵対する事にはなると思うけど、これが私の信じる信念なんだから」

 

 そしてなのはは再度決意する。たとえフェイトやはやてだろうと、自分は手加減しないと。情に流されず、自分の信念を通して、フィルノと一緒に行動するという事を。

 そう決意すると、突然この部屋の扉が開き始めた。なのははすぐに起き上がり、扉の方へと顔を向けた。

 

「ちょっといい?」

 

 部屋に入ってきたのはアリシアであり、顔だけ見れば四年前のフェイトに全くそっくりだった。一瞬フェイトだと思ってしまったが、すぐにアリシアだと分かった。

 なのはは持っていたテュディアをポケットに入れ、要件を聞く。

 

「一体、何の用?」

「別にこれと言って大したことではないよ。唯、この組織の事を言っておこうと思ってね。多分、エメリアからは目的ぐらいしか聞いていないと思うから」

「確かにその通りなの。だから私としても教えてくれると嬉しいのだけど」

 

 なのはは組織の目的はエメリアから聞かされていたが、その目的の為にどのような行動をしているのかという事を全く知らない。普段はどのような事をしているのかという事を。

 元々組織について教えるために来たので、アリシアはなのはに話し始める。

 

「私達の組織はフィルノ・オルデルタを中心に作った組織、ツュッヒティゲン。意味は断罪という意味を現しているの」

「断罪?」

 

 どうして断罪という意味を付けたのか、なのはは不思議に思った。

 断罪、言い換えれば裁き。要は裁く者、断罪者という事である。この場でいう裁く対象は一つしか指さない。

 

「管理局を裁くという意味で付けられた名前らしい。それ以外に妥当なものは思いつかなかったからこのまま組織の名前になっているのだけど」

「それで、どんな活動をしているの?」

「それは結構たくさん。簡単に言うと、背後に管理局の影響を受けている研究所の破壊や、なのはが持っているテュディアなどのロストロギアの回収、管理局を崩壊させたいと思っている仲間集めなどをしているの」

 

 アリシアの言葉に、なのはは一言も言わずに黙って唯聞いていた。その様子を見て、アリシアは話をさらに続ける。

 

「その三つの中で一番最初に言った事を主に行動しているの。ロストロギアは必要なものしか集めないとフィルノは言っているし、私たちの仲間になる人間も余り少ないの。犯罪を犯した以外で管理局に恨みを持っている人間はごく少数に絞られるからね。この時点で質問ある?」

「今のところは特にないけど……」

 

 この時点で質問は無かったので、なのはは首を横に振りながら言った。

 ロストロギアは必要不可欠以外な物も集めてしまっても全く意味がないし、管理局に恨みを持っている人間なんてアリシアの言った通り少数に限られているのだろうと思った。管理局に恨みを持っていない人間に管理局の正体をなのはみたいに言って、仲間にするという方法もあるが、正直これは好ましくない。無関係な人間も巻き込んでしまうという事もあるし、そんな事を繰り返してしまえばスパイが入り込んでもおかしくなかったからだ。

 なのはもその無関係の一人に該当していた。特に管理局に恨みがあったわけではなく、唯フィルノの幼馴染だという事だけなので、ある意味フィルノが企んでいる目的に巻き込まれたに等しい。だからエメリアの研究所を知り、その研究所に行ってしまった事は予想外な出来事であったのだ。フィルノ自身は元々なのはを仲間に入れるつもりだったかもしれないが、もしそうだとしてもどうして自分だけ特別だったのかという疑問になる。けどそうならば、後でフィルノに聞けばいいだけの話なのだが。

 

「そう。簡単に説明したけど、大体こんな感じだから」

「分かった。私も同じことをやらされるのでしょ?」

「そうなると思うよ。さて――」

 

 アリシアが何かを言おうとした瞬間、突然空気が一変した気がした。すぐになのはも気づいたが、その空気は嫌な予感しかしなかった。しかも、アリシアがなのはに向かって微笑んでおり、更に嫌な予感を漂わせるのだった。

 

「エメリアの研究所で怒りに任せて殺していたよね? しかも、怒りに任せたせいで人質を取られるという」

「え、えっとそれは……」

 

 右手の人差し指で頬を掻き、アリシアから目を逸らそうとする。怒りに任せて魔法を使った事にはなのは自身反省しており、怒られても仕方ないと思っていたのだが、アリシアの顔を見ると何故か怖いという言葉しか浮かばなかった。

 そしてアリシアはなのはへ近づき、右手でなのはの左肩を掴むのだった。

 

「さて、覚悟はしておいてね♪」

「だ、誰か助けて――」

 

 その後、艦船内全ての場所でなのはの悲鳴が聞こえてきたという。


 
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