~グランアリーナ・選手控室~
「……どうしよう、エステル?仕事の相談をするつもりが変な話になっちゃったけど……」
クルツ達が去った後、ヨシュアは放心しているエステルに尋ねた。
「……えへへ…………。……むふふ…………」
しかしエステルは顔を下に向けて、ぶつぶつと何かを呟いていた。
「ママ?」
「エステル、だ、大丈夫?」
エステルの様子がおかしいことに気付いたミントやヨシュアが尋ねた時
「来た、来た……。キタ――― ―――!!!」
「ぬおっ!?」
「「キャッ!?」」
「いきなり声を上げて、うるさい………」
エステルは顔を上げて、絶叫した。エステルの奇声にリフィアやプリネ、ツーヤは驚き、エヴリーヌは顔をしかめた。
「そうよ、そうなのよ!やっぱりそーこなくっちゃ!ああん、女神(エイドス)様に聖女様!大いなる加護を感謝いたします~!」
「…………………………。エ、エステルが壊れた……」
「マ、ママ………?何か変なものでも食べたの……?」
「へ~……話には聞いていたけど、本当にペテレーネの事を慕っているのね。」
エステルの様子をヨシュアは哀れなものを見るような目で見て、ミントは戸惑い、カーリアンはエステルを珍しいものを見るかのような目で見ていた。
「考えてもみなさいよ。武術大会に出られるのよ!?困ってるジンさんに協力できる……。あたしたちは城に堂々と入れる……。ついでに白熱したバトルもできる……これぞまさに一石三鳥!」
「そ、そんなに出たかったのか……。まあ、優勝できると決まったわけじゃないけど……。僕達の手で、依頼を達成できる可能性が出てきたのは嬉しいな。」
「依頼というと、女王陛下に会う事ですか?」
エステルとヨシュアの言葉から察したプリネは尋ねた。
「うん!女王様に博士から頼ま……モガ。」
プリネに尋ねられたエステルにヨシュアは両手でエステルの口を塞いだ。
(ちょっと、何するのよ~!)
口を抑えられたエステルは抗議するように、ヨシュアを睨んだ。
(エステル、ここにいるのは僕達だけじゃないよ。)
(あ!)
ヨシュアに言われたエステルはカーリアンを見て、ヨシュアを睨むのをやめた。
「わざわざ私に秘密にしなくても大丈夫よ。大体の事情はプリネ達から聞いたし、リウイから今のリベールの状況も聞いていて、知っているから。」
「あ、そうなんだ。」
「相談もなく事情を説明してしまって、すみません……せっかくカーリアン様がいらっしゃるのですから、今の状況が何とかならないかと思ったんです。」
プリネは申し訳なさそうな表情でエステルに謝った。
「大丈夫、問題ないわ!……そう言えば自己紹介がまだで……えっと……いいんですよね?」
エステルはカーリアンの身分を思い出して、言い直した。
「別に私の事も呼び捨てで呼んで貰って構わないわよ?第一あなた確か、リウイの事も呼び捨てにしているんでしょ?だから私の事も気軽に呼んでくれていいわ♪」
「あ、そうなの?あたし、エステル・ブライト!」
「ヨシュア・ブライトです。よろしくお願いします。」
「ミントだよ!」
「……プリネ様に仕えているツーヤと申します。」
カーリアンに言われ、エステルはすぐに気楽な態度で接し、ヨシュア達も自己紹介をした。
「カーリアンよ♪それで貴女がペテレーネが嬉しそうに話していたツーヤね。」
「え……あたしの事、ご存じなのですか?」
カーリアンの言葉に驚いたツーヤは尋ねた。
「ええ。学園祭に行った時の土産話に貴女の事をペテレーネが嬉しそうに話していたわ。プリネを慕う娘がいるって。それにしてもリウイったら酷いのよ!?プリネが参加している劇なんて面白い出来事を、この私に何も言わずに行ったんだから!もし、知っていたらついて行ったのに!」
「カーリアンを連れて行ったら、やっかいな事を仕出かすと思って、リウイは言わなかっただけだと余は思うぞ?」
「なんですって~!?いっつも私達に迷惑かけているアンタにだけは言われたくないわ!」
カーリアンはリフィアに近付いて、リフィアの頭をグリグリした。
「い、痛い、痛い!痛いのじゃ~!」
「自業自得。」
カーリアンの行動にリフィアは呻いて、じたばたした。その様子をエヴリーヌは素知らぬ顔で呟いた。
「まあまあ、カーリアン様。エステルさんもいるんですから、そのくらいで……」
「全くしょうがないわね~。」
プリネに宥められたカーリアンは溜息を吐いた後、リフィアから離れた。
「リ、リフィアが一方的にやられている所なんて初めて見たわ~。」
「ハハ……さすがの彼女も肉親には弱いんだろうね。」
カーリアンとリフィアの様子を見たエステルは驚き、ヨシュアは苦笑した。
「それでエステルさん。先ほど仕事の相談とおっしゃいましたが………」
「あ、うん。その事なんだけど………」
そしてエステル達はリフィア達の所に来た理由を説明した。
「なるほどな………しかし、エステル。それなら先ほどの遊撃士達が言っていたように、お前達があのジンとやらに助力して、優勝すればいいのではないか?」
「ええ、そうよ!だから、この話はお終い!」
「ハハ……エステル、もう優勝した気分でいるんだ。」
「何よ~?今からそんな弱気になって、どうするのよ!」
苦笑しているヨシュアをエステルは睨んで言った。
「フフ……今回の大会は今までの中でもかなり楽しい大会になりそうね♪あなた達と対戦する時を期待して、待っているわ♪」
「ふふ~んだ!相手が誰であろうと、絶対勝って見せるわ!」
カーリアンは挑戦的な目でエステルを見て言い、見られたエステルは胸を張って答えた。
「余達も忘れてもらっては困るぞ?カーリアン、今度こそお主に敗北を味あわせてやろう!」
「まっ、ほどほどに楽しませてもらうね。」
「な~に、生意気言ってるんだか。ま、いいわ。じゃあね♪手合わせを楽しみにしておいてあげるわ♪」
リフィアとエヴリーヌの言葉を聞いて溜息を吐いたカーリアンは気を取り直して、エステル達に軽く片手を振った後、控室を出て行った。
その後エステル達は大会に向けて、街道で魔獣達と戦闘して自分達の状態を調整するリフィア達とプリネについて行ったツーヤと別れて、ジンを探し始めた………
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第118話