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十年前時間、七月五日午前七時半。
井原葵は枕元に置いてあった、「現在」連絡用のインカムの呼び出しベルで目が覚めた。寝ぼけ眼をこすりつつ、インカムを装着する。
「あい、なんでしょう」
『君の言うとおりだった。おそらくは結城重幸はコレを目指し、そっちに跳んだものと思う。十年前の七月五日、午後十八時二十四分。彼の隣人であり、幼馴染の野添智美が事故で死んでいる。彼女はひきこもり生活にあった結城を励ましていたそうだ。結城の両親によると、「おそらくは精神的支柱だった」そうだ。彼女のパーソナルデータや事故当日の足取りは端末に送る。結城はおそらく、彼女の行く先に現れるだろう。時間がない、確保を頼む。彼が改変しようという過去はこれに……』
「間違いないでしょうね」
情報を伝える浦沢の声に、葵はどんどんと頭が冴えていくのを感じていた。
野添智美の死んだ事故は、十年前時間の十八時二十四分に起こる。
過去を改変させるわけには行かない。
残された時間は、十時間と少しだ。
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タイムトラベルSF小説
ノーテンキなママが出てきます
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