(人間はやはり滅ぼすべきだ!)
(そうだ!人間は争いしか生まない愚かな生き物だ!)
(確かに人間は争いを生み、憎しみを作ります)
(けど、それ以上に愛や美を生み出しています)
(だが、その為に海を汚し)
(空を汚している)
話し合いは続く。いつもの繰り返し。
(また、決まらずに時が来たか)
(やむを得ないな)
(また、一年。見守りましょう)
「・・・・・・・またか。何時まで続くんだ?」
俺は目を覚ました。自分の部屋、テーブルの上に昨日造りかけた部品が置いてある 携帯を見ると、6月24日6:04。何時も通りだ。
「・・・・・・・・顔、洗うか」
洗面所に向かい、鏡を見る。いつもの女っぽい顔。長い髪。その髪と目はどちらも燃え るように赤い。取り敢えず、顔を洗い、髪を櫛で軽くとく。
「・・・・・・・そろそろ」
その言葉に反応したかのように部屋の扉がノックされる。
「・・・・・・・・分かった、すぐ行く」
「まだ何も言ってないぞ」
そう言って扉を開けたのは、銀髪の髪を二本の三つ編みをつむじの辺りにあげて 結っている白人の少女。体の部分をいつもの西洋の甲冑が覆っている。
「・・・・・・教授の呼び出しだろ」
「何時も思うが何故分かるんだ?」
「・・・・・・・気にするな。あと、服を着替えるから出てくれ」
言われて、出て行きながら扉を閉める少女。俺はいつもの黒い服に身を包む。
「・・・・・・行くか」
「やあ、来たね」
部屋に入ると20歳の男性がいた。いや、実際はもっとあるがな。
「・・・・・・・・・何のようですか、教授」
「言いたいことがあってね。12歳の誕生日、おめでとう」
「・・・・・・・・・ありがとうございます」
「君も遂に12歳か。早いもんだね」
「・・・・・・爺臭いですよ。一応外見は20歳なんですからそれらしく話ましょうよ 。体が二十歳で言葉は爺、心はガキ。奇天烈にも程があります」
「何気に酷い事を言うね。それより、どうだい?審判は下ったかい?」
「・・・・・・下っていたら俺はここにいませんよ」
「そうだね。さて、君にプレゼントだよ」
そう言って、机の下から取り出したのは、
「・・・・・・・・苛めですか?」
大量の注文書。一枚が1ミリの紙が30センチまで積んである。一枚が一件の依頼 なので、約300件の依頼が来ているってことだ。これを喜んで受け取る奴は絶対にい ない。
「まあまあ、『神師』は世界中から頼りにされてるんだから仕方ないよ」
「・・・・・・・解っていても嫌ですね」
「まあね」
そう言って苦笑を浮かべるのなら減らして欲しいよ。
「・・・・・・・人間がそこまでの推理力までいったら神の域ですよ」
「君が言うと説得力があるね」
「・・・・・・・後で今日受けるのを報せます」
大量の注文書を両手で持ち、部屋を出ようとする。
「ああ、待ってくれるかい?実はこれを研いで欲しいんだけど」
そう言って差し出したのは何時も持っているステッキ。
「・・・・・・・・分かりました。後で受け取りに来ます」
今度こそ部屋を出る。手は使えないので足で扉を開ける。
「・・・・・・・・では、失礼します」
廊下を歩き、自分の部屋に向かいながら一番上にある注文書に目を通す。 内容は特注の黒と銀のガバメントを元にしたカスタム型を作って欲しいとの事。
「・・・・・・・・銀にはグリップに女性の顔を彫ったピンク貝のカメオを付け る?」
注文書にはその女性の顔写真も付いていた。柔らかな曲線を描く長い髪にオニキス のような瞳。美人だ。
「・・・・・・・期限は明後日か。これを第一にするか」
そして、頭の中で行程を建てる。
(・・・・・・・・カメオは無かったな。後で支給しないと)
部屋にたどり着き、扉を開ける。当然、足で。
「・・・・・・・何の用?」
中には先ほどの少女と金髪のツインの髪型で背が低い少女がいた。
「いや、その」
銀髪が口ごもったので、金髪がフォローするように口を開ける。
「今日って誕生日でしょ?だから、プレゼント上げようと思って」
「・・・・・・・そうか、ありがとな。金髪、銀髪」
「ちょっと待って!?今、髪の色で呼ばなかった!?」
「・・・・・・・?」
「いや、?、じゃないから!いい加減覚えてよ!」
「長い間一緒に住んでいながらまだ覚えてないのか?」
呆れ顔で見てくる2人。
「・・・・・・・ちゃんと覚えている。金髪とぎんぱ」
「「だからそれは髪の色!!」」
「・・・・・・・ジャンヌ」
「そうだ」
「・・・・・・・理子」
「そうだよ。いい子いい子」
「・・・・・・・理子、抱きつくな」
「く~、3時間の努力の結果だよ」
「・・・・・・力を強めるな」
「理子、何時まで抱きついている」
「ジャンヌ、妬かない、妬かない」
「妬いてなどおらん!」
「・・・・・・・喧嘩なら余所でやってくれるか」
理子のを取って、離す。理子は不満顔だが素直に離れる。
「・・・・・・・俺は仕事が有るからこれぐらいで」
「その前に、はいこれ!プレゼント!」
差し出されたのは少し大きい箱。 開けて、開けてというふうに見てくるので開ける。中には、黒いロングコートと手 袋が入っていた。手袋は手の甲の部分に赤い丸が付いていて、そこから指一本一本 に赤い線が延びている。取り敢えず着てみる。
「・・・・・・・どうだ?」
「似合ってるよ!ねえ、ジャンヌ!?」
「うむ、造った甲斐があると実感できる」
「・・・・・・・・造ったの?これ」
「そうだよ。私とジャンヌでね」
「デザインに手間取ったがな。どんな感じだ?」
「・・・・・・・・気に入った。2人とも」
手袋をはずし、ちょいちょい、と手でこっちに来るように合図する。
「「?」」
?マークを頭の上に出しながら来る二人を、
ぎゅっ、と抱き締める。
「ふぇ!?」「な、なななにを!?」
「・・・・・・・・ありがとな、2人とも。大事に使う」
2人の耳に囁いて、抱擁を止める。2人とも顔を真っ赤にしてフリーズしている。
「・・・・・・俺はこれから仕事が有るんだが」
「そ、そう!邪魔になんないように出ようか、ジャンヌ!」
「そ、そうだな!が、頑張れよ!」
2人は銃弾並の速さで、
「・・・・・・・止めて、一緒に紅茶で飲もうと思ったんだが」
誘いを言う前に出て行ってしまった。仕方ないので仕事を始める。 先に仕事内容を確認する。大抵は、刃物の研磨だった。 逆の刃物の製造が20件ほど。あとは武器開発が18件ほど。
「・・・・・・・・武器開発はパスだな。前回はろくな物を造んなかったし」
そして、武器開発の注文書を持って、また教授の部屋に向かう。
「・・・・・・・失礼します」
今度はちゃんと手で開ける。中から墨の匂いがした。
「・・・・・・・研磨の依頼の刃物を取りに来ました」
「ああ、そこに有るよ。さあ、できた」
長方形の二つの箱を指さし、持っていた筆を置く教授。
「・・・・・・何がですか?」
「君へのプレゼントだよ。そのコートはジャンヌ君達からのかい?とても似合って るよ」
「・・・・・・ありがとうございます」
「ところで、僕からのプレゼントをあげる前に少し話をしようか。君に来ていた 依頼で、女性の顔写真がなかったかい?」
「・・・・・・・・ありました。ガバメントのグリップにカメオを付けてそれに その女性を彫ってくれという依頼でした」
その女性がどうかしたのかな、と思いながら答える。
「その女性は僕の子孫を産んだ人なんだよ」
「・・・・・・・・・・・別に歴史的な事では無いと思いますが」
「・・・・・・・僕が誰か忘れてないかい?」
「・・・・・・身体は大人。心は子供」
「その名は、名探偵ホームズ!」
丸眼鏡をかけ、こちらにビシッと指を向ける教授。
「・・・・・・大の大人が小学○年生の真似事ですか。吐き気がしますね」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・床に突っ伏してないで話を戻しましょうか」
「そ、そうだね」
結構ダメージが大きかったようで、よろよろと起き上がる教授。
「さっきも言った通り、彼女は僕の子孫、シャーロック・ホームズ4世を産んだ女性だ よ。そして、この子がその4世だよ」
渡された写真には、金糸のような亜麻色のツインテールでサファイアのような紺碧 の瞳をしている女が写っていた。
「名は神崎・ホームズ・アリア。今は武偵として活動中。僕の推理では再来年からロン ドン武偵局に入る子だよ。彼女は僕のように推理力は無いよ。その代わり、直感力だけ は凄い素質を持っている」
「・・・・・・・彼女に緋緋色金を継がせる気ですか」
「その通りだよ」
「・・・・・・・それで、俺は何を?」
「君には3年後、東京武偵高に入って貰うよ。その一年後、その学校にアリア君をおび き寄せて、武力の急騰(パワー・インフレ)を用いるよ」
「・・・・・・・世界の為ですか。一世紀前の世界があなたを必要だったように彼女を 世界の人柱にするつもりですか?」
「そうだよ。色金を、世界の悪魔のような人間から守るために、世界を守るために僕は 悪魔となるよ」
「・・・・・・・もし、彼女がその意志を継がない場合はどうします?」
「それが世界の選択ならば、それに従うよ」
「・・・・・・・・分かりました。話を戻しましょう。おびき寄せると言いました がどうするおつもりですか?」
「彼女の母親、かなえ君に武偵殺しとして罪を被って貰う」
「・・・・・・・・そして、本物の武偵殺しを日本で活動させるんですか。俺はその役 ですか」
「いや、それは理子君にやって貰うよ。君にはただ武偵として人間を見て欲しいだ けだよ」
「・・・・・・・分かりました。その依頼受けましょう。して、プレゼントとは」
「名前だよ。君は名前が無いだろ?」
「・・・・・・・必要性を感じませんから」
「学校に通うのならばそうは行かないよ。これが、君の名だ」
そう言って、机の上にある紙を俺に見せる。その紙には、筆で、
『神苑 澪瑠』《しんおん みおる》
「・・・・・・神苑澪瑠、俺の名は、神苑澪瑠」
後書き
神師(かみし)と読みます。
神魂(しんこん)
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
神々はいつも見ている。人間の姿をして見ている。
そして一年に一度、会議を開き、あることについて話し合う。
人間を滅ぼすか、そのまま生き残らせるか。
続きを表示