「・・・・・・・・流石は貴族。デカい屋敷だ な」
俺はホームズ家の屋敷に来ていた。理由は単純 。依頼の品と神崎・H・アリアが どんな人間か見るため。本当は他の奴と同じよ うに輸送で済ませる筈だったが、 教授が『ここは一つ、貴族というのを見てきな よ』と言われたのだ。
ちなみに今の俺の出で立ちはいつもの黒服にロ ングコートと手袋を付け足した物。 当然ジャンヌ達のプレゼントだ。あとは右手に ある紙袋ぐらい。中には箱が有り、 その中に依頼の品が入っている。
ピンポーン
俺はチャイムを鳴らした。だが、誰も出て来な い。
「・・・・・・・留守か?仕方ない、5分経って も来なかったら日を改めるか」
俺は、楽な姿勢で待つことにした。ぼーっとし ながら待つ。
(・・・・・・・そう言えば、変なの予言した な)
それは今日の朝、教授に研磨し終わった刃物を 渡して、部屋を出ようとした時、 立ち眩みがしたかと思うと、頭の中にあるシー ンが流れた。
12人の人が立っている。4人は女性。残りは 男性。 その前に俺が立ち、何かを喋ろうとした。
そこでシーンが途切れた。 自分でやるのと違って、今回のは突発性だった 。
(・・・・・・・時々来るが慣れないな。それ より、あれは誰なんだ?)
その時扉が勢い良く開き、亜麻色の何かが見え た。
ドゴッ!
鈍い音がしたな、と思った時俺は宙を飛んでい た。そして迫ってくるトラックのナ ンバープレート。そして、
ドゴッ!
また鈍い音が。俺は先程よりも勢いが付いた状 態でまた飛んだ。
グシャッ!ズル、ドサッ。
近くの壁にぶつかり、俺は落ちた。
「・・・・・・カッ、ガハッ!」
意識が朦朧する中、俺はジャンヌ達に感謝した 。コートが無かったらもっと酷かっ ただろう。手探りで紙袋を探す。すぐ近くにあ った。箱も壊れてないところを見る と俺が無意識に自分をクッションにしたらしい 。
(・・・・・・・中は大丈夫だろう。中は発泡 スチロールで固定している)
朦朧としていた意識がハッキリしてきたので、 俺は立ち上がった。 身体に異常はないみたいだ。打撲程度だろう。
「・・・・・・・一体何があったんだ?」
そう呟いて、取り敢えず俺は先程いた屋敷に向 かう。トラックはどっか行ったよう だ。まあ、あれは悪くない。歩きながらさっき の事を思い出す。
(・・・・・・・・確か、扉が開いて、亜麻色 の何かが・・・・・亜麻色?)
そこで最悪な可能性にぶち当たる。そうじゃな い事を祈りつつ、俺は屋敷に着いた
(・・・・・・ビンゴ)
俺の視線の先には母親と娘の姿。怒っている母 親はカメオの人で、かなえさんだろ う。そして、怒られている娘は、アリアって所 か。俺がさっき見た亜麻色はあいつ の髪だろう。取り敢えずその2人に近ずく。あ と一メートルって所で2人は俺に気 付いた。
「あ、お客様でしょうか?」
母親は接待モードで俺に話しかけてきた。母親 って怖いな。声色する変わってる。
「誰よ。あんた」
娘の方は対照的な接待だ。親に怒られて不機嫌 な顔だ。敵意を出している。
「・・・・・・通常なら依頼の品は壊して一生 ホームズ家からは依頼を受けない 事にしますが、顔を立ててあげますか」
「何意味分かんない事言ってんのよ!こっちは 忙しいのよ!?あんたなんかの 相手をする暇は無いわ!」
犬歯を剥き出して、俺を睨んでくる。
「・・・・・・・吹き飛ばされて、トラックに 轢かされて、壁に激突させられた のにも関わらず依頼されたガバメントを直々 に届けた自分に拍手したい」
「で、ではあなたが『神師』ですか!?」
「・・・・・・・そうです。初めまして。」
「ウソ!あんたまだ子供じゃない!」
「・・・・・・・罵倒する前に普通、謝るもん でしょう?」
「す、すいませんでした!私の娘が無礼なこと をしてしまいまして」
「・・・・・・・俺としてはこいつに謝って欲 しいのですが」
頭を下げるかなえさんだったが、俺は俺の持っ ている袋に目を向けているアリアに 見る。
「アリア!あなたも謝りなさい!」
「・・・・・・・ごめんなさい」
ブスッと顔を背けながら謝るアリア。かなえさ んが何か言おうとしたのを、手で 制して袋から箱を出し、開ける。
「・・・・・・確認を」
白銀と漆黒のガバメントを取り出し、アリアに 渡す。 アリアはそれを奪うかのように受け取り、スラ イドさせたり、グリップの感触を確 かめたりする。最後にカメオを見る。
「凄い!ママにそっくり!」
「・・・・・・・・不備があるようでしたら送 り返して下さい。では、これで」
「あ、あの。何かお礼を。事故に遭わせてしま いましたし・・・・」
かなえさんが申し訳なさそうに言ってくる。加 害者は、目を輝せてガバメントに夢 中だ。
「・・・・・・・・気にしないで下さい」
そう言い残し、俺はその場を後にした。その時 、後ろから2人の会話が聞こえた。
『ママ!見て見て!』
『良かったわね、アリア』
微笑ましい光景だろう。その光景が2年後に壊 れることも知らないで。
「・・・・・・・・ただ今戻りました、教授」
「ご苦労だったね」
俺はアリアに渡した後イー・ウーに戻った。
「・・・・・・・・いえ。それより何かあった んですか?」
この潜水艇には長い間いる為雰囲気が変われば すぐ分かる。
「ブラドだよ」
「・・・・・・・誰ですか、それ」
「理子君を監禁していた吸血鬼さ」
「・・・・・・・ああ。あのストーカーですか。 それで、理子は?」
「戦っているよ。君も分かってるだろうけど負 けるよ」
「・・・・・・・でしょうね」
理子は10歳の時にここに来た。その前の生活 は教授から聞いている。
「・・・・・・・どうします?」
「君が追い払ってくれ。当然、『神魂』として ね」
「・・・・・・・わかりました。準備が整い次 第・・・・追い払う?」
「そうだよ。殺しては行けない。彼は使えそう だからね。痛めつけて適当な陸地 に放って置いてくれ」
「・・・・・・・分かりました」
教授部屋を出た俺は自室に向かう。そして、コ ートを脱ぎ、タンスに閉まっている 漆黒のローブを取り出す。
「・・・・・・・吸血鬼、どれほどのものか」
目と髪の色が変わり始める。
「我が確かめよう」
声は地獄から響いてくる様な低く、目と髪は漆 黒となる。
「峰・理子・リュパン4世。コートの礼をする 」
我は黒い金属のデスマスクを顔に付け、吸血鬼 が暴れている闘技場へと向かう。
「ゲバババババ!分かったか4世!お前は俺に 勝てねえよ!」
「う・・・・!」
闘技場に着けば、デカい笑い声が聞こえてきた 。
「だが、お前がここまで成長するとはな!4世 、お前にチャンスをやろう!」
「チャ、チャンスだと?」
「そうだ!もしお前が初代リュパンを越える存 在になれば、手出しはしねえ! 一生な!」
「ほ、本当だな」
「ああ、約束しよう」
あっさり信じるのも人間か。我は理解できん。
「さて、俺はここのボスにも用があるんだ!4 世!居場所を教えろ!」
だから我に頼んだな、教授。まあ、良い。実行 する。
「きょ、教授は滅多に現れない」
「何だそりゃ?だったら俺様直々に出向いてや ろう」
我は歩を進める。他の者は我の気配を恐れ、道 を開ける。我が闘技場に出たとき、 吸血鬼はもう片方の入り口に向かう所だった。
「止まれ」
我が発した声に吸血鬼は振り返る。
「何だ?お前が教授か?」
「否、我はその教授に依頼された者。名は『神 魂』」
その言葉に他の者はざわめく。理子も驚きなが ら我を見ている。
「ほう、お前が『神魂』か。で、何するんだ? 教授の所まで案内してくれるの
か?」
「否、我が頼まれた事はこうだ。『ブラドを追 い払え』」
「ゲバババババ!俺様を追い払う!?お前がか !?ゲバババババ!」
「我に勝てたら、教授の所まで案内しよう」
「良いぜ!俺が勝ったらてめえは俺の繁殖用牡 犬になれ!」
「良かろう。では、行くぞ。現れよ、我が『屍 葬杖』」
我の手に、錫杖が現れる。先端に黒い宝玉があ り、下に螺旋を引く白い線。 長さは我と同じくらいだ。
「ゲバババババ!そんなチンケな杖で何が出来 る!」
「いつもならさっさと貴様の魂を破壊するのだ が、今回は追い払うのが仕事。 貴様の相手はこやつ等だ。冥界より出よ、我 が下部達。 アル・ガタシ・ソセビ・アルジオ」
杖を床に突き立てる。すると床に黒い穴が出て くる。そこから骸骨兵が大量に 這い出てくる。それぞれの手に刀や銃、槍など が握られている。
「何だ・・・・・これは?」
理子がまだ男喋りで声をだす。目の前の光景が 信じられないようだ。 我はただ見ているだけだ。吸血鬼はどんどん壊 しているが、バラバラになっても そやつ等は動き続ける。
「ぐ、くそ!てめえ!」
「いい加減諦めよ。そやつ等は不死身。魔臓を 狙え、兵達」
骸骨達は魔臓がある目玉模様を突き刺す、撃つ 。
「ゲバババババ!4つ目も見つけてみろ!無理 だが・・・・・・・!?」
「そんな物、我はとうの昔に知っている」
ブラドのデカい口に屍葬杖が突き刺さっている 。それを手に持っている我。
「て、てめえ。いつの間に俺の後ろに・・・・ ・・ゲバッ!」
「我は影を通し、移動する事が出来る」
我は杖を抜き、骸骨兵達を戻す。
「殺しはしない。我は約束を守る」
倒れているブラドの頭を掴み、引きずっていく 。
「ご苦労だったね」
「否、我は頼まれた事をしたまで」
「いつも思うけど雰囲気と口調の変わりように ビックリだよ」
「仕方あるまい。我々の力を使う代償の様なも のだ。それより話があるのだ」
「なんだい?」
「前にも話したが我、否。我等は人間を見極め る為にこの者となった」
「目には目を。人には人」
「そうだ。だが、この者になった為、この世で しか見れない。他の世が見れぬ」
「他、俗に言う平行世界って所かい?」
「そうだ。そこで案を思いついた」
「良いよ。君の好きにすると良い。この世界に 影響が出ないならね」
「感謝する。では、我はこれで」
話を終えて部屋を出る。そして廊下を自室に向 かおうと歩き出し、止まる。
「我に何か用か?峰・理子・リュパン4世」
部屋を挟んで逆方向の廊下の曲がり角に向かっ て訪ねる。
「・・・・・・・・別に」
その角から理子が出てくる。
「我は暇ではない。これより案を実行せねばな らぬ」
そう言ってまた歩き出す。後ろから理子が何か 言いたそうな雰囲気を感じるが 無視する。我は少し先の角を曲がり、影を通し 、部屋に移動する。
「・・・・・・・始めるか」
元の髪と目に戻った俺はさっそく準備を始めた
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夏休み・・・・か?