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十三年前のあの日。
僕が思っていたことは、部屋にテレビがあってよかった、だった。
中学校最初の夏休みと同時に始まった、僕のひきこもり生活。
移ろう世界から隔絶されて僕は、一人自分だけの世界に没頭した。
テレビを日がな一日眺め、網膜に次々と変化する光を焼付け、内向的な世界に没頭する。テレビは形だけの変化を与えるのみだったけど、それだけでも、部屋にあってよかったと思った。
考えることは何か?
単純明快。
いじめ被害者のご多分に漏れず、僕だって自殺や復讐のことしか、考えていなかった。
人が死ぬには、どれが一番楽なのか。
首吊り。
リストカット。
飛び降り。
入水。
有名どころの自殺方法を頭の中で列挙し、そして次々否定していく。
どれをとっても痛いし、苦しいし、辛いし、やっぱり死にたくない。
それなら、どうやって復讐するのが、一番効果的なのか。
……僕には、思いつかなかった。
いや、思いつくのだけれど、一つに絞れなかった。
だってどの方法も、やつらが苦しんで、苦しんで、苦しんで苦しんで苦しんで死ぬには、一度殺したんじゃ到底追いつかなかったからだ。
入学当初の集合写真。
兵藤と中川の顔のところに何重にもバツを書き、ナイフで突き刺し、突き刺し、突き刺す。
ノートを開いて日記を書けば、「殺す」と「怨み」の字しか出てこない。
毎日そんな風に、過ぎていく。
そんなだけが、僕の生活。
ドンドンドンと、時折響くノックの音。
外へいざなうその音を、僕は背後に聞いて全て無視をし……。
その頃僕は
暗転した暗闇の世界から
さらに深く落ちるなどと
知る由もなく――
誰か知っているなら教えてほしかった。
だから僕は、取り戻すために光をつかんだ。
結城重幸二十六歳。
その日彼は、十年前の過去へと跳んだ。
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タイムトラベルSF小説
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