第一章少年期
四話「旅立ち」
「そういやお前なんて名前なんだ?」
俺はさっきぶつかってしまった奴と店に入り飯を食べていた時、自己紹介がまだな事に気づき、聞いてみた。
「ん? 俺か?
俺は華陀、字を元化。流れ者の医者さ」
………………まさかの超大物でしたよパターン………。
「! なるほど、お前があの名医華陀だったなんてな。
俺は「あぁ、お前は名乗らなくてもいいぞ? お前の事は知ってるからな」……なんで俺の事を知ってんだ?」
俺の問いに華陀はニヤリとしながら言った。
「簡単だ、この大陸には、もうお前の事を知らない人間はいないってだけだよ、『白銀の弧子狼』北翔 郷牙。
真白い服、三本の刀、黒髪黒目、俺と同じ歳くらいの少年、外見はすべて一致している。
何より、闘気は押さえ込んでいても、押え切れずに漏れ出しているその覇気、結構な武の実力者や俺のような気に扱いに長けた者なら一瞬でわかるぞ?」
「…………なるほど、よく分かった。
だが、気が漏れ出しているのはお前も同じじゃないのか華陀?」
俺は仕返しとばかりに、皮肉一杯に言ってやった……っが、
「あぁ、そうだぞ。
俺はまだまだ未熟だ、……だから北翔、お前を探していた」
華陀は涼しそうな顔で、だけど真剣に訴えかけてきた。
「……どういう事だ?」
質問の意味が分からない。
華陀ほどの人物が、何故俺を探していたんだ?
「まぁ、意味が分からなくて当然だな。
実は…………
――――――――華陀、説明中。 詳しくは三話をご覧ください。――――――――
…………っと言う訳だ」
うむうむなるほどなるほど、つまり華陀はお師匠様の予言を聞いて俺を探していたと……。
「お師匠様の予言は外れた事がない、お前と共に行動すれば俺は更に腕を磨く事が出来るんだ!
1人でも多くの人の命を救いたいんだ!
だから、だから頼む、……俺をお前の旅に同行させてくれ、この通り!!」
華陀は座りながらではあるが、今にも土下座しそうな勢いで頼み込んできた。
……暑い、俺はかつてこれほどまでに真剣で暑い思いを持った奴を見たことがあったか?
……いや、無い!!
ここまで人の為に、命を助けるために真剣になれる奴は、俺はこの世界に来てから5人しか知らない。
こいつは、華陀は、……俺がこの世界で信用できると思った6人目の人間だ。
それに出会って半刻(1時間)も経っていないが、会話し、観察する事で、華陀という人間を作り出している大部分の思いを理解する事ができた。
〝自分の信念を曲げず、思った通りに行動する〟
これが華陀という1人の人間を作り出している思い…………いや、華陀という1人の人間そのものなんだろう。
どんなに自分が危機の淵に立たされても、目の前の患者を見捨てない。
華陀が『名医』と呼ばれ、未来では『神医』と呼ばれるのは……、華陀が欲を持たない根っからの善人だからなのだろう。
「…………これから俺は、……多くの命を奪っていくと思う………。
何千、何万、何億、もしかしたら指令の命を奪うかもしれない。
……お前の理想と反対の事を、俺はこれからやっていく。
……それでも、……それでもお前は、俺と隣に来る覚悟はあるか?
俺の側で、人殺しに加担する覚悟はあるか?」
俺は静かに、ゆっくりと、だけど力強い言葉で華陀に言った、……だが、当の華陀は笑顔で俺の問い掛けに答えた。
「そんなのは当に覚悟している、お前の存在を知り、お前を探し……、そして今日、お前と出会った時、俺はすべての覚悟を決めた。
お前と共に命を奪う事も、お前の隣にいる事も、……そして、お前が間違った道へ進もうとした時は、……俺が、お前を全力で止めるという覚悟もな!!
なぜなら俺は……………
〝お前の唯一無二の親友だからな!!〟
………………………」
…………あぁ、……やっぱり、華陀を信用してよかった………。
瞳から熱いモノが込み上げそうになるのを必死で堪えながら、俺はこの世界での信頼の証を華陀に預ける事にした。
「…………〝一刀〟(ボソ」
「……え?」
「俺の真名、一刀だ。
これを信頼の証としてお前に預ける。
もし受け取るのなら、もう後戻りはできないと思えよ!」
俺は横を向きながら華陀に言った。
顔が真っ赤になってるくらい自分でも分かる、こんな顔を華陀には……親友には見せたくないからだ。
なんだよ! 文句あるのか!!
あぁそうだよ! 嬉しいよ!
嬉しくて嬉しくてしょうがないよ!!
この世界に来て初めて信頼できる親友ができた事が嬉しくて嬉しくて堪らないんだよ!!
おい、……今『WW』とか『^^』とか思った奴出て来い!
鉄砕牙の錆にしてやる!!!!
「……あぁ、分かった。
その真名、確かに受け取った。
俺の真名は〝凱〟。
この真名、信頼の証として一刀に預ける」
俺が心の中で大騒ぎしているのを察したのか、華陀……凱は静かにそういった。
「…………わかった。
俺もその真名、確かに受け取った」
改めて俺は、凱に向き合い真名を受け取った。
「あぁ、これからよろしくな〝一刀(しんゆう)〟!」
「そっちこそ、後悔するなよ〝凱(しんゆう)〟!」
………………………………………………
………………………………………
………………………………
………………………
………………
………
……
…
そして翌日、……俺達は陳留を立った。
「おぉぉ、綺麗な所だな一刀!」
「あぁ、そうだな凱!」
陳留を立つにあたって、俺達はある場所に立ち寄った。
泊まっていた宿のおばちゃんに、
「この街の西門から少し山を登った所にこの季節限定で、そりゃぁもう綺麗な所があるんだよ! よかったらこの街に着た思い出に寄ってっておくれよ!」
……っと、言われたのでどんな所かと思ったけど、…………これは想像以上だ。
俺達を囲むようにして、辺り一面に、満開の薄桃色の花をつけた木が何十本と植えられてた。
「…………〝桜〟だな……」
「あぁ、見事な桜だ。
それに数も多い。
これだけの数の桜の木を見るのは、俺も初めてだ」
まさかこの時代に来て、桜が見られるなんて思わなかった。
俺達はしばらく桜を眺めた後、満開の桜並木の中心に座り、杯二つと酒瓶を取り出した。
「…………やっぱり緊張するな、こういうの……」
「あぁ、そうだな……」
やっぱり緊張で会話が続かない。
俺はこの空気を脱するために、凱に話しかけた。
「なぁ、凱。
昨日も言ったけど、本当にいいんだな?
俺と共に来て……」
俺の言葉に、凱は呆れたような顔を俺に向けた。
「なにを今更……。
昨日も言ったはずだぞ?
俺はお前の親友だ、お前と共に罪を背負い、お前を隣で支え続ける。
……それが、今の俺の覚悟だ」
「…………わかった、……その覚悟、もう一度受け取った。
これで結盟だ!」
俺が笑顔で杯を掲げながら言うと、凱も笑顔で杯を掲げた。
そして2人同時に言葉を交わす。
『我ら2人! 姓は違えど、義兄弟の契りを結びしからは!』
お互いの思いを感じながら…………、
『この先待ち受けるどんな苦難も、支え合い、助け合い未来へと歩みを進んでいく!』
お互いの覚悟を確かめ合いながら…………、
『同月、同日、同時に生まれること適わすとも!』
互いを信じ、互いに協力し合って生きていく事を…………、
『願わくば、同年、同月、同日、同時に死せん事を』
ここに我ら二人は…………硬く、硬くここに誓う…………。
『………………………………乾杯…………』
「さぁ行こうぜ! 凱!!」
「あぁ、行こう! 一刀!!」
今日という日が俺達の中から消える事はないだろう……。
熹平14年、4月15日、前の鳥刻 零針。
俺達は、〝桃園の誓い〟ならぬ、〝桜園の誓い〟を交わした。
そしてこれが、俺達の未来への第一歩になった。
この先どんな未来が待っても、俺は歩みを止めることはない。
だって、俺の隣には、頼もしい〝相棒(とも)〟がいるから……。
……だが俺は気づけなかった。
後に、華琳たちに別れを言わずに旅にでた事を激しく後悔することを…………。
END
あとがき
えぇーーー、まず始めに言っておきます。
私が書く小説には腐女子がおいしい思いをするお話は一切存在しません。
今回の一刀と凱の描写は、あくまで一刀の初々しさをだしたいと思ったからです。
ですので、勘違いしないでください。
もしも勘違いして感想に『腐ッ腐ッ腐ッ……』っとか『腐サイコーーーーー!!!』とか送って来たりなんかしたら、その時は…………オット、ここから先は禁則事項だぜ☆
ハイスイマセン、調子扱キマスタ。
この小説ではオリジナル?っかどうかはわかりませんが、十二支を時計の『時針』、零針から壱拾壱針を『分針』っとなり、前の○刻が午前、後の○刻午後っというようにします。
一刻は2時間、半刻は1時間、四半刻は30分はそのままです。
アンケートの結果は、
1が6票 2が13票 計19票になりました!
まだまだ募集中します!
ではでは皆様、また次回お会いましょう!
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一刀と華陀の行方やいかに!