No.450933

ベン・トー ~狩人の名を持つ狼~ 第6話 訪問者

師咲集さん

「俺は最低の二つ名の狼だ」 
烏田高校に転校して旧友である佐藤洋に出会う。佐藤の所属する部活「ハーフプライサー同好会」で起きるいろいろな出来事。それがこの物語の始まりである。 

自分に文才がないのでわかりにくいところもあるかもしれませんが頑張りますのでよろしくお願いします。

2012-07-11 07:09:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:972   閲覧ユーザー数:972

第6話 訪問者

 

 

俺、洋が落ち着くと今回の弁当の成果をお互い確かめ合った。

俺は獲ってないけど。

そして、温められた弁当がテーブルに置かれる。

 

「さて、次は佐藤の分だな」

「翔太はあの様子だと獲ったようには見えないしな」

あやめにそう言われると俺は何も言えなかった。

「あ、僕は今日、獲ってませんよ」

そう洋が言うと槍水先輩が電子レンジの上に置かれていたレジ袋から何やら丼のようなものを取り出した。

「半額神からのお恵みだ。陳列する際に床に落として廃棄品扱いになっていたものだそうだが・・・まぁ、食べてしまえば同じだろう。ありがたくいただけ」

そういって手渡されたものは・・・争奪戦の前に見た、不可思議なあら汁だった。

その丼の中には、鮭、大根、ニンジン、里芋、キノコ、刻みねぎが入っていたがその中に俺の知らないものが入っていた。

そして俺が、槍水先輩に聞きかけた時、洋が変わりに聞いた。

「何です、この具の下にある透明なゼリーみたいなのは?」

「あれ?佐藤、翔太、知らないんだ?」

あやめが言うには、あら汁をゼラチンで固めたものだと言う。

「それじゃあ、ゼリー感覚で食べられるわけ?」

そう俺が言うとあやめが「うん」とうなずいた。

そうすると槍水先輩が俺と洋の丼を電子レンジに放り込んだ。

 

1分後

槍水先輩が丼を返した。

それは温める前ゼリー状だったのに液体に変わっていた。

「ゼラチンは温度によって簡単に溶解するんだ。学校で習わなかったか?」

槍水先輩が言うと俺と洋は「・・・・す、すげ~・・・・」と口を合わせて言った。

俺らはそれを食べるとものすごく旨く大根、ニンジンなどの野菜も絶妙な味で何より汁がおいしすぎる。

俺が「うめぇぇ」と言うと洋も同感したらしく頷いていた。

そうすると洋は槍水先輩の方を見ている。

何をしているんだ?こいつは。

その後、洋はあやめの方を見る。

あっ!そういうことか弁当が欲しいんだ。欲張りなやつだなぁ。

「著莪、お前にはこの前の豆腐ハンバーグの貸しがあるわけだが」

「あやめ!お前そんな事してたのか?」

「わかったよ、しょうがないな」

そう、あやめは言うと箸で挟んで洋の前に差し出した。

差し出したのは・・・焼き豆腐だった。

と言うか普通に考えて か・ん・せ・つ・キ・ス

「普通、ここは卵が絡んだ肉とか、ご飯の上に乗せられた肉とか、あと肉とかじゃないか?」

そんなことより間接キスだからな。

間接キス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「あやめ!頼む!俺にも少しくれないか」

「別にいいけど。どうしたのいきなり?」

言えないよな、洋がうらやましかったなんて口が裂けてもいえない。

 

そんな話をしていると、槍水先輩とあやめが仲良く話している。

 

意外とあの二人、気が会うのかなぁ。

槍水先輩はこのスーパーの半額神、マッちゃんのことを話していた。

「最強ってことは魔導士

ウィザード

よりもですか?」

「あくまで東区内でだな。ただこの麗人のように正規に申し込んできたものではなく、あくまで偶発的に出会い、そして行われた戦いだったと聞いている。ただ、あの人は昔からそうだったらしい。フラッと遠方の店に現れてはそこの縄張り所有者を打ち倒していくスタイルなんだ。美学なんだろう。二つ名を有する名うての戦士ではなく、あくまで一匹の狼であり続けようとした、と当時を知る者は語る」

「一匹の狼としてか」

その時、なぜか俺は拓の顔が浮かんだ。

「それで対決はどうなったんですか?」

白粉が興味津々というふうに尋ねる。

「残念ながら私はその場に居合わせなかったんだが、凄まじかったと聞く。・・・・まだ偶然居合わせただけなら良かったんだろう。問題はその時、最高の半額弁当を示す月桂冠が出たしまったことだ。当然、月桂冠が出た以上誰しもがそれを狙う。当然、魔道士との正真正銘の直接対決になった。どのような戦いが行われたかは・・・わからない。彼女も魔道士も、そしてその場に居合わせた狼でさえ全員が今に至るまで口を閉ざしている。まるで自分たちだけの宝物だというかのように、尋ねれば誰しもが笑顔で”凄かった”とだけ返すんだ。

・・・・対決は魔道士が月桂冠を獲った。だが・・その夜、路上で倒れているところを発見され、手当てを受けている。近くに空の弁当の容器が落ちていたそうだ」

「はっ?」俺らは口をそろえていった。

「これは本人から聞いたんだが、どうも家や部屋に帰るだけの体力が残っていなかったそうだ。それで薄れゆく意識の中で弁当だけは残すまいと、路上で倒れたまま食べきったらしい。その戦いから少しして、彼女は学生結婚し、一線から身を引いた。そして・・・新設されたこの店の半額神となったんだ。若いながらスーパーの知識と経験のある人だからな。しばしの研究の末、この店の名物となるザンギ弁当を開発して、一躍有名になった」

「あの~さっきからずっと気になってたんですが、そのザンギ弁当ってなんですか?」

「俺も気になってたんですよ」

そう俺が言うと

「それはね」と女性の声がした。扉のほうを見てみるとマっちゃんだった。

「濃いめの下味を付けた鶏の唐揚げのこと。ワタシの生まれは北海道なんだけど、そこでは給食に出るくらいメジャーな料理なの。よかったら今度狙ってみなさい。味は保証するから」

あやめがクスリと笑った。

「とはいっても、ほとんど残っているのを見たことがないけど。残った時もさ、必ず月桂冠じゃん。獲ろうとと思ってもとれないって」

「へぇ~そんなに旨い弁当なのか、それは是非とも食わせてやりてぇな」

「さて、そんじゃ、ぼちぼち送るわよ。あんたたち未成年なんだから。さっさと寝なさい」

俺たちは、アパートが近くにあるあやめと別れ、槍水先輩、白粉、洋と共にマっちゃんの自動車の元へ向かう。

「全員シートベルトを締めなさい。後部座席もきちんとね。これ、基本ルール」

車に乗っていると洋がいきなり。

「何でマっちゃんという名で呼ばれているんですか?やっぱ二つ名から来てるんですか?」

「うーん、二つ名から来ていると言えば来ているし、そうじゃないといえばそうじゃないんだよね。ワタシの旧姓って松本だから子供の頃からずっとマっちゃんってあだ名だったし。っていっても今の姓も松葉だから、マっちゃんなんだけどね」

「二つ名は何と?」洋が聞くと

「『オオカバマダラ』カナダからメキシコへ大移動する蝶の名よ。ワタシってどこの店って決めずにちょこちょこ出歩いてたし、髪の毛も見ての通りマダラな模様になっちゃてるから、そのへんから来たみたい」

そんな話をしながら車は進んで行き俺は車から降りた。

「ありがとうございました」

「気よつけて帰りなさい」

「じゃあまた明日学校で洋、先輩、白粉」

そう俺が言うと車は発進していった。

 

 

 

 

俺は家までの道のりをちょっと歩いている時、一人の男とすれ違う、その男はすれ違いざまに俺に何かを言ってきた。

その言葉は、はっきりとは聞こえなかったがある一部は聞こえた。その言葉は。

「貴••ら••ての••を••望させ••••る」

その言葉を聞き後ろを向くと誰も居なかった。

「まさか、あいつがこの町に居るわけないよな」

その時、俺はあの時の男の顔が浮かんだ。『ディスペア』の顔が。

 


 
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