No.450909

エニグマ 矛盾編(仮タイトル)

無名図書さん

未完成。未推敲。少しづつ書いていきます。随時更新していき次第upします。

2012-07-11 05:20:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:416   閲覧ユーザー数:414

 

 彼がまだ少年だった頃、生まれて初めて矛盾と言う言葉の話をを知った時、少年はこんな風に思った。

 

(そんな事しないで、どっちも買えばいいのに)

 

 少年は幼く純粋だった。だったが故に誰もが気づき嘆く事、それができなかった。

 

 そんな物が存在するはずがないと

 それがただの謳い文句だと思えずに

 ただ純粋に、羨ましく惹かれた。

 

 力が欲しいと。

 

 

 

「で、今日の呼び出しは次のお仕事って事でいいのかしら?」

 

 紺色のスーツに身を堅めた女性が一人。会議室の扉を開くなり第一声を発した。薄暗い室内でスクリーンのように眩しく光る窓、そこで人影が微かに揺らめくと、それは応じるようにして振り向いた。

 

「ええ、そうね。単刀直入に言うわ。次のターゲットは矛盾。矛盾のマードック」

 

「うへぇ~、マジで言ってんの?」

 馬鹿(ばっか)じゃないのと言いたげな素振りに紺色スーツの女は天を仰ぐようにして左手で額を覆った。

 

 手のひらから見える景色は薄暗い闇で、それは何というか、ほんと、お先真っ暗って感じの憂鬱な雰囲気を醸しだしていた。

 

「貴方には役不足だったかしら?」

 

「いやいやいや、荷が重いって言ってんのよ」

 

 ジャッジの嫌みを軽く往なしながら、丁重にお断りする。

 

「うん。慎重な貴方ならそう言うと思った。だから今回は相棒を一人つける事にするわ」

 

 一呼吸おき、訝しげるようにジャッジの顔を覗き込み、双眸の中の真意を探る。

 

「ふ~ん、相手はあの矛盾よ。大丈夫なんでしょうね」

 

「ええ、その点に関しては十分な人材を準備したわ。彼の名前はニーア。ニー『違う』……。」

 

 突如として、ジャッジの声を遮るようにして低く通った声が響いた。

 

「俺の名はフールだ。間違えるな」

 

 その声は会議用に並べられた机の一角に、ポツリと置かれたイヤーセットから響いていた。

 

 キョトンと見つめる私に声は話しかける。

 

「何も言う必要はない。お前の言いたいことはわかる」

 

 たかだかイヤーセット如きにお前呼ばわりされた挙げ句、私の事がわかるとまで言われ、その癖、自分を愚か者呼ばわり。じゃ~、私は一体何なのよ!!

 なんとも言えない怒りがふつふつと煮えたぎるにはさほど時間はかかりはしなかった。

 

「はぁ?な『んですって、私の気持ちがわかるですって」か……』

 

「訂正する。俺はアンタの気持ちはわからない。わかるのはアンタの言いたい事だけだ」

 

 …………

 

 ……

 

「あーーー!!、イライラする。隠れてないで、『はぁ~』とっとと出てきなさいよ」

 

「それはできない。君の癇癪は俺にとって危険極まりない。よってその提案は却下させてもらう」

 

 あ~、イライラする。落ち着け……。落ち着け私、落ち着いて全力で遣るのよ。

 

 私は机の上に置かれたイヤーセットをおもむろに掴み取ると、力任せに床に叩きつける事にした。

「あ……」という声が微かに聞こえたが、そんな事で留まる余裕は、今の私にはなかった。 

 

 《ガシャ》

 

 室内に鈍い音を響かせると、イヤーセットは赤い絨毯にめり込み、中の配線をちらほらと覗かせる。

 

「あ~、高かったのに……」

 

 それが絨毯なのか、イヤーセットの事だったのかはわからないが、私はしてやったり顔でジャッジに向き直った。

 

「さぁ~、ジャッジ、とっととあいつを私の前『それは、許可できない』連れ……」

 

 はっとなり、声のした方へ注意すると、ジャッジの右手には新しいイヤーセットが握られており、声はそこから発せられていた。

 

 あまりの用意周到さに、なにもかも見透かされているよう感覚に陥り、なんだか白けてしまう。

 

「もう、いいわ、続けて」

 怒るのも、なんだか馬鹿らしくなってしまい、諦めたように説明を促すと、ジャッジはニヤニヤしててこちらを見ている。

 

 気だるげにポケットからタバコを取り出し火を点すとジャッジに向き直り、ジロリと睨みつけながら「何?」と聞くと、「何でもない」と返ってきた。意味わかんない。

 

「彼の能力はfuture view(フューチャービュー)未来視よ」

 

「そう、で、どれくらい視えるの?」

 

「あら、あんまり、驚かないのね。そうね。どうなのかしら?」

 

「近い未来だけだ。せいぜい2、3秒ってところだ」

 

「そう、私の、能『その必要はない、あんたの能力はジャッジから聞かされている』あっ、そう」

 

「ところで、ジャッジ、今回の対象理由」

 

「聞きたいの?」

 

「当然、ハンターともあろう私が理由も知らずに狩るなんて、ありえないでしょ」

 

「そう、そうね。あの男、今TI(テクニカルインプラント)にいるのよ」

 

「TIね~。それもエネミー関連なわけ?」

 

「そうね。まだ確かな証拠があるわけじゃないけど、怪しいのは確かね。何より……一般企業がマードックを雇う必要はないでしょうし、何かしらの裏があるのはたしかね」

 

「あぁ、なるほどね」

 

「そろそろ、今作戦の概要について説明するわ。今回、ハンターとフールの二人にははマードックの破壊を依頼します。尚、何らかの理由により対象を破壊できないのであれば、足止めだけでも構いません。その間に別の者が研究所の破壊します。作戦の日時については追って連絡しますので、当面は現地にて待機となります。何か質問があれば、どうぞ」

 

「俺達はどれくらい時間を稼げばいい?」

 

「そうね。sec.900もあれば充分じゃないかしら」

 

「わかった。善処しよう」

 

「ヤルノハワタシダケドネー」

 

「否定する、俺のサポート無しでは3分も保たないだろう」

 

「何を!?」

 

「も~、仲良くしてよね」

 

「既知、当然そのつもりだ」

「わかってるわよ。プロをなめないで欲しいわ」

 

「なら、いいんだけど。他に質問はあるかしら」

 

「はいは~い、ジャッジの実際のとこの歳はいくつですかぁ?」

 

「え!?」

 

「だって、気になるでしょ。初めてあったときからまったく成長していないじゃない。胸だってぺったんこだし。その調子じゃ、下の毛も生え揃ってるんだか心配だわ。何食ったらそんなに育たないのよ」

 

 そう早口にまくしたてると、ジャッジの顔は見る見るうちに赤く染まりだす。

 

「そ、そんなどうでもいい事はどうでもいいでしょ」

 

「え~、気になるでしょ。実際」

 

「気にならない。全っ然気にならない。フール!!」

 

「否定だ。君は何も言っていない」

 

「と、とりあえず、TIについての説明に入ります」

 

「え~、そんなのどうでもいいじゃない」

「どうでもよくないです。ちゃんと聞いてください。TI、表向きは世界機構に属するインプラント技術の向上を目的とした研究機関です。現地に潜むエイダー(協力者の総称)からの情報では、潜入調査の為に協力試験に参加したエイダー1名、他11名が未だに帰ってきていないそうです。不信に思ったメンバーが調べてみると、そのような記録は現在残っていないそうです。それから数日後、研究施設郊外の荒野にて、見知れぬ金属片が発見されます。それには引っ掻いたような字で12名の名前が彫り込れていました。その中には試験に参加したエイダーの名前も確認できました。私たちはこれが彼からメッセージではないかと判断し、徹底的に調べ上げ、そして、わかった事が2つ、まず一つ目がそこに記されていた人物全員に行方不明者がいました。二つ目に、その行方不明者の御家族の方々も皆、行方知れずでコンタクトがとれませんでした」

 

「あ~、なんだかきな臭い感じね」

 

「偶然にしては出来過ぎています。黒い噂がたたないのも徹底しているからの事でしょうから、呉々(くれぐれ)も、油断はしないようにお願いします」

 

 

 
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