No.447211

兎男と虎娘

無名図書さん

生まれて初めて書いた短編です。タイトルは適当なので、タイトル詐欺なのは言うまでもないです。これだ!!ってタイトルが思い浮かばないです。

2012-07-06 13:19:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:413   閲覧ユーザー数:413

私は彼を待っていた。

ただ、息を潜め、ひたすらに待つ。

私にできることは、ひたすらに待つことだけだった。

それだけは、得意だと自負している。

 

 

時は過ぎ、ゆったりと日も落ちかけた頃だろうか、

伸びきった身体のバネが軋み、動き出すのも億劫に思う

 

そんな中、彼が現れた。

 

彼はこちらに気づく気配もなく、だんだんとこちらに近づいてくる。、

私は、はやる気持ちを抑え、待った。

時間にしたら、何秒間かの出来事だったと思う。

だけど、その時は10分も20分も待っているような気がした。

 

だんだんと近づいてくる彼を目前に控えながら、冷え切った身体はその時を、

 

今か?

 

今か?と待った

 

彼を射程に捉えた瞬間、わたしは抑えていた気持ちを解き放ち、力の限り抱きついた。

 

「痛ッ!?」

彼は、咄嗟のことに叫び声をあげた。

 

しがみつく私から逃げようともがくが、逃がすまいと食い下がる私のほうが強かったようで、しばらくすると抵抗しても無駄とわかってか、だんだんと力が弱くなっていった。

 

私の中では、念願の彼を捕まえた達成感と、明日になれば、すべてが終わり。、彼とはもう二度と会えない気持ちで、頭の中がグルグル回りぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。

 

 

翌朝、主様が来て言いました。

「やっと、捕まえたのか」

私は、ただただ、だまる事しかできなかった。

返事がないのが返事だとわかると、主様は、私から強引に彼を奪っていった。

私は、こうなることを初めからわかっていた。

彼を捕まえれば、もう2度と会えないことに……。

 

そして、また

 

『私は彼を待っている』

 

 

 

 

兎とトラバサミ 完

 


 
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