No.450419

残念美人な幼馴染が勇者として召喚された 第4話

ぷにぷにさん

口癖は「飽きた。」熱しやすく飽きやすい幼馴染と俺が、異世界に勇者として召喚された。・・・俺はオマケだったらしいが。・・・だけどさぁ、この『残念美人』を制御出来ると思ってる訳?最悪の場合、コイツに色々されて世界滅ぶんじゃないの?しょうがない、俺が手綱を握ってやるかね。

2012-07-10 16:00:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:888   閲覧ユーザー数:864

「・・・つまり、こういうこと?キミは確かに女王だけど、この国の実権を握っているわけじゃないと?唯のお飾りの王様だっていうこと?だから、勇者召喚をするということも知らなかったと?」

 

 凛音はロリっ子が言った事を確かに正確に纏めてくれたが、もう少しオブラートに包んで喋ったほうがよくないかい?・・・ほら、ロリっ子がまた涙目になってる。

 

「ま、確かにキミみたいなお子様に実権を握らせる訳がないか。・・・で、実質の国王は誰なの?」

 

(言うことがキツイな。何時もはもっと淡々としているんだが・・・まだ怒ってるのか?)

 

 ただ、ロリっ子のほうも負けてはいなかった。涙を服の袖で拭い、凛音を睨む。その姿は、幼いながらも王族としての資質を感じさせるものだった。先程、あんなに恐ろしい目にあったのに、その原因に屈しないというのは中々出来ることじゃない。ロリっ子はロリっ子でも、気丈なロリっ子だった。

 

「実権を握っているのは『リンドラ』という大臣です。」

 

(へぇ・・・リンドラねぇ・・・?ん?何処かで聞いた名前だな)

 

 と考えていたら、凛音がアッサリと答えを出した。

 

「あ、龍騎が殴り飛ばしたメタボじゃん。」

 

 成程、と手を鳴らした。俺たちが召喚されたその場に居たあの偉そうなオッサンだ。兵士の一人が「リンドラ大臣」と叫んでいたのを聞いた覚えがある。

 

「・・・つまり、もう復讐は果たしたということだな。」

 

「じゃあ、さっさと食事をしてあのメタボをもう一度ぶちのめしてから帰ろっか。」

 

 さ、流石の凛音さんやで・・・。壁にめり込ませただけじゃ物足りないというのか・・・!あのオッサンも可哀想に。凛音を召喚さえしなければこんなことにはならなかっただろうに。

 

「じゃ、俺たちはもう行くから。怖い思いをさせて悪かったな嬢ちゃん。」

 

 ポンポンとロリっ子の頭を叩く。昔、よく凛音にしてあげていた行動だ。すると、ロリっ子は何故かまた泣きそうになってしまった。

 

「え、ちょっと待ってくれよ。俺何かしたか!?強くやりすぎたか!?」

 

 幼女を泣かせたとか凄い罪悪感を感じるんだが!?それでなくとも、俺は女性の涙に弱いのだ(といっても、交友関係が狭すぎるので(主に凛音のせいで)親しい女性なんて母親と妹と、凛音しかいないんだけど)。

 

 どうにかしてロリっ子の涙を止めなければと焦る俺に、泣いていたロリっ子は泣き笑いの表情を見せる。

 

「ご、御免なさいです。お父さんに、雰囲気が似ていたので・・・つい懐かしくなってしまいました。」

 

 鼻水まで垂らして泣いていたロリっ子は、それに気が付いて慌てて鼻をかむと、弱々しく微笑んだ。

 

「キミの家族は、何で死んだんだ?」

 

 だが、凛音の一言でその顔が更に歪む。

 

「おい凛音。そんなデリケートな話題を・・・!」

 

 少なくとも、家族の事を思い出して悲しんでいる子供の前で言うことじゃないと思った俺は、凛音を叱ろうと振り向いた。だが・・・

 

「・・・!」

 

 彼女の瞳は、これ以上無いほどに真剣だった。決して、このロリっ子を虐めるだとか、唯の興味本位だとかいう目じゃない。これは・・・この目は・・・・・・

 

「言ってみろ。普通に寿命で死んだのか?事故か?病気か?・・・それとも、殺害されたのか?」

 

 最後の言葉を聞いた瞬間、ロリっ子の体がピクリと動いた。

 

「やっぱりね。・・・そもそも変だと思っていたんだ。どの国でも、王政を取っている国では、跡継ぎが何らかの事故などで途絶えてしまうことを危惧して、常に『予備』の子供を作っているものだ。子供の量を増やすために、側室まで作ってね。それなのに、キミみたいな小さな子供が、国王の証である王冠を身に付けている。勿論、キミしか子供が出来ないうちに両親が死んだ可能性もあるが・・・それよりは、コッチのほうが確立高いよね?」

 

 そこで一度言葉を切り、一つ呼吸する凛音。俺は彼女の言っている事の意味が分かって戦慄していた。・・・権力に魅入られた人間とは、そこまでするものなのかと。隣で小刻みに震えているロリっ子の手を、強く握りしめる。

 

「キミ、最初は何人家族がいたの?」

 

 その言葉が決定打だった。ロリっ子は俺の胸に縋り付いて、盛大に泣き始めた。

 

「・・・・・・。」

 

 俺は、何も言わずに抱きしめ、頭を優しく撫でる。そして、凛音を見た。

 

「・・・。」

 

 多分、俺以外の人間には、さっきまでと変わらないように見えるのだろう。でも、長年一緒にいた俺だけは分かる。今のコイツの目は、数々の事件を解決してきた時の目と同じ。普段は飽きやすく、最後までやり遂げることなどない彼女が、最後まで全力を尽くして叩き潰すと決意した時の目だ。

 

「ククッ・・・。」

 

 誰にも聞こえない程に小さく笑う。今のコイツは、昔まだ俺たちが幼かった頃に俺が憧れたヒーローそのものだ。また、コイツ(ヒーロー)の手伝いが出来る。それが、最高に嬉しいんだ。

 

(あぁ・・・本当に残念だったなリンドラ大臣。お前ほど運が無い男も珍しい。何度も言うが、間違いなくお前は運が悪いよ。天上凛音の逆鱗に触れる人間なんて、そうそういないんだから)

 

 そう、だから、コイツを本気で怒らせた人間の末路は唯一つ。

 

(お前の人生は、もう終わっちまったよ) 


 
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