No.448782 恋姫外伝~修羅と恋姫たち 六の刻南斗星さん 2012-07-08 04:41:44 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:5085 閲覧ユーザー数:4727 |
【六の刻 新たな出会い】
疾風が愛紗達と分かれて一月ほど立った。
疾風が村を去ったのを知った鈴々や子供達は一晩中泣き腫らした物だが、大人達の大部分はほっとしていた。
あれほどの物を見せられたのだから仕方ないとはいえ、そんな大人達の態度に釈然としない物を感じながら引き止めることの出来なかった自分自身を見ると、情けない気持ちになる愛紗だった。
「疾風…あやつ今頃どうしているだろうか。」
また行き倒れてたりしないだろうか?と、どこか遠い空の下にいるであろう疾風を心配する愛紗であった。
所変わって、荊州長沙
「ぐ、ぐわー」「でやんす」「なんだな~」
黄巾を巻いた賊らしき、ノッポ、チビ、デブの三人組が、一人の無手の男…疾風に叩きのめされていた。
「まだやる?」
疾風は特に凄むでもなく飄々とした感じで賊達に問いかけた。
「く、くそー覚えてやがれー!!」「あ、待ってくだせえ、兄貴ー」「なんだなー」
と、小悪党丸出しの捨て台詞を吐いて逃げ出そうとする、ノッポ、チビ、デブの三人組。
「あ、忘れ物だよ」
そう言ってヒョイっと男達が取り落とした武器を投げてよこす。
ガン「痛てー」ギン「おぶっ」ゴン「なんだな~」
それぞれ投げられた武器を頭に受け、痛さにのた打ち回りながらそれでもなんとか逃げ出していく賊達
すると周りから「「「わあああー!!」」」と歓声が起こった。
「お兄ちゃ~ん」
するとそんな歓声の中から一人の少女が飛び出し疾風に飛びついた。
どうやらこの五歳くらいの女の子を、あの賊達が攫おうとした所に偶々通りすがった疾風が助けたようである。
「大丈夫だったか」
と疾風が少女の顔を覗き込むように問うと
「うん!」と元気よく答える少女だった。
「そうか璃々ちゃんはお母さんと逸れちゃったのか。」
疾風が璃々と名乗った少女の手を引きながら問うと、璃々は心細げな顔で頷いた。
「今日はお母さんがお仕事お休みだったから、街に連れてきてもらったの。でも人がいっぱい歩いていてお母さんの手、璃々と離れちゃったの。」
うぐっと涙声になる璃々
そんな璃々を疾風はヒョイと自分の肩に乗せた、所謂肩車というやつである。
「よしならば、早くお母さんを探さないとな」
と疾風が飄々とした様子で笑いかけると、安心したのか璃々は
「うん!」
と笑顔を見せた。
璃々の母を2人で捜し始めて幾許か立った頃、辺りを見廻しながら近づいてくる胸の豊かな女性を見て、璃々が歓声をあげる
「お母さん~」
「璃々!!」
疾風から飛び降りた璃々は、母親らしき女性に飛びつくように抱きついた。
「もう璃々あれほど逸れないように言ったのに、心配したのよ」
「ごめんなさい~お母さん」
ニ人がお互いの無事を喜んでるの確認した疾風は、その場を離れようとしたが
「あの、娘が大変お世話になったようで、ありがとうございます。」
と言う女性の声に引き止められていた。
「たいしたことはしてないよ。」
と片手を振りその場を辞そうとした疾風だったが、
「いえ、聞けば娘を連れてきてくださっただけでなく、娘が攫われそうになったのを助けていただいたとか、是非にお礼をさせて下さいな」
そう言って引き止める女性の言葉に、疾風は少し悩んだ後
「じゃあ、メシ食わせてくんない?腹減っちまった。」
と腹を撫でながら片目を瞑りそう言った。
それを聞いた女性は、一瞬呆けた表情を浮かべた後
「ふふ、わかりましたわ我が家でご馳走させていただきます。」
と口元に手を置きながら楽しそうに笑った。
するとそれまで母親に抱きついていた璃々が顔を上げ「お兄ちゃんお家来るの?」と無邪気に喜び目を輝かせ満面の笑みを浮かべた。
女性はそんな愛娘の様子に目を細め、頭を優しく撫でながら
「そう言えばまだお名前を伺っていませんでしたね?私はこの長沙の太守韓玄の配下で名を黄忠 字を漢升と申します。改めて娘がお世話になりましたこと、お礼申し上げますわ。」
と優雅に頭を下げてきた。
そんな女性…黄忠の態度に疾風は少し照れた様子で
「俺の名は陸奥 疾風と言う、姓が陸奥で名が疾風だ、字は事情があって無い。そう畏まられるのは苦手だから普通に接してくれ」
と肩を竦めながら言った。
それを受けて黄忠は
「ふふ、判りましたわ。でもこの話し方は地なのでお許しくださいね。」
と、世の男を虜にするような妖艶な笑みを浮かべた。
こうして新たな恋姫と縁を結ぶ陸奥。
果たしてこの先どのような波乱が巻き起こるのであろうか……。
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