第十五話 今日は徹夜でフェイト会議だからな!
彼女の事を見ると胸が苦しくなります。
彼女の事を思うと思わず胸を抑えたくなります。
彼女が笑うと切なくなります。
人はそれを『恋』だというだろう。しかし、それは状況による。
俺は彼女がお母さんと呼んだ人に引き取られています。
彼女はその人に捨てられたようなものです。
(ワンストライク)
彼女の必死な献身さも知っています。
それが報われずに非業の別れになった。
(ツーストライク)
そして、彼女の代わりに俺がそこに納まっている。
そう、本当なら彼女が家族として受け入れられるはずなのに!
何故か、俺がそこにはまっている!
(Threeストライク。バッターアウト!)
俺の場合。『良心の痛み』という奴です。
俺、沢高志。
今日、放課後になったらマグナモードを試すんだ。
この心の痛みを耐えきれた俺なら…。
きっとマグナモードだって耐えきれる。
「…まあ、冗談なんだけどね」
俺はそうぼやきながら仲良くなった肌が黒くて小学生にしてはがっちりした体格の北海君。細身で肌の白いメガネな沖縄君とで弁当を食べていた。
いやあ、彼等と一緒に食事をするのは良いね。
俺とどこか似ていて、どこにでもいそうな地味な顔つき。二人とも黒髪・黒目だし、目にも優しい。
…実に落ち着く。
「沢、その唐揚げと何かトレードしない?」
俺は仲良くなった男の子二人と一緒に中庭で腰を下ろして昼飯を食っていた。
三人娘と転校生(フェイト)は屋上でご飯を食べている。
正直な話、他の二次創作小説みたいにあの四人と一緒に食事をしていたら俺は確実にストレスで昼飯を吐いていた。
「おう、それじゃあ…。その沖縄君の白米とトレードだ」
「本当にいいの!?
沖縄君は自分の弁当の中にあった鮭の切り身を要求されると思って準備していたらしいが、まさかの変化球に驚いた。
「今、とても胃が痛いから脂っこいのが食えないんだ。北海君、そのキャベツをくれるか?この卵焼きとトレードだ」
午前中の授業。俺の隣に座ってたフェイト。
俺の隣の席にしか空いていないから机をくっつけて教科書を見せていた俺。
先生も「転校生同士なんだから仲良くね♪」なんていうから、フェイトも他のクラスメートよりも若干多めに接してきた感じがした。
でもそれは授業中のみでフェイトが質問攻めにあう前に俺はトイレに逃げ込んだ。
他の休み時間はなのは達とおしゃべりするので早々に切り抜けたけど…。
フェイトが少しぎこちないながらも笑いながら「教科書を見せてくれてありがとう」って、言うたんびに心が痛いんだよ!
プレシアァアアアア!今日は徹夜でフェイト会議だからな!
「…いや、ただでやるよ。あと、保健室に行け。先生には言っておくから…。そのかわり…」
「その代わり?」
「今度の移動教室の席を代わってくれ!テスタロッサさんの隣の席を譲ってくれ!」
「ずるいぞ北海っ!というか、沢っ。それだったら俺と交代してくれ!お前の席だと月村さんが…」
ははん。お前等、あの子たちに惚れているな?
まあ、確かにあの三人娘&フェイトはかなりの美少女だろう。俺も同年代だったらコロッといっていたかもしれない。
将来、あの子たちは美人にもなるだろう。
それ故に残念だ。俺、お姉さん系が好きだから…。
あの四人は精神的には年下だし。アリサ以外は皆妹属性。アリサもどちらかと言えばそっちに近い気がする。
「いいぞ、でも俺の席は一つしかないかr」
「「デュエル!」」
ドゴスッ!
俺が言いきる前に北海君と沖縄君の拳がお互いの顔面を捉えていた。
最近の子どもは話し合いをしないで武力行使に出る体育系が多いのか?
ゆとり教育とは真逆だ。さすが私立の学校。
北海君の体格でパンチを撃たれたらひとたまりもないが、沖縄君もただやられたわけでは無い。腰を捻り且つ自分の攻撃力を最大にしながらも体を前に押し出しているので北海君の攻撃が最大になる前に自分の顔面で受け止めた。
…結果。
「…先生。胃薬下さい。あと、そこの二人をお願いします」
WKO。勝負はお預けになった。
北海君と沖縄君は仲良く保健室のベッドを占領していた。
「なんで胃薬?」
「次の授業で確実に痛めるからです」
「…は?」
保険の先生は疑問に思いながらも胃薬を渡してくれた。
キーンコーンカーンコーン♪
「きりーつ、礼、さようなら」
「はい、それじゃあ皆車に気をつけるのよ」
「お疲れさんでした!」
「沢君!廊下を走らない!」
「大丈夫!今の俺はきっと軽自動車までなら殴り飛ばせるから!」
「そういう問題じゃありません!」
「すいません、今の俺には家で腹を空かせている妹がいる設定なんです!」
「設定と言いましたね!その発言はアウトです!」
「勘弁してください田村先生!」
私の学校生活初日。
実は少し不安になってきた。
…なんだか、隣の子に私は嫌われているのかな?
隣の子から教科書を見せてもらいながら授業を受けていたけど…。あれは確実に私から離れようとしていた。というか、怯えていた?
「フェイトちゃん。どうだったこの学校での授業は?」
「…あ、なのは。うん、大丈夫だよ。読めない漢字がまだいくつかあるけど…」
「フェイトちゃんは勉強もスポーツも出来るからね」
「…それより、あいつ。明らかにフェイトを避けていたわね」
…あう。やっぱり。避けられていたんだ私。
帰りの挨拶をまだかまだかと待っていた様子だったし…。
私が落ち込んだのを察してかすずかがフォローを入れてくれる。
「あ、アリサちゃん。そういうのはフェイトちゃんの前で言うこともないでしょ」
「気になるのよ。あいつの態度。朝から変だったけどフェイトを見ないように明らかに視線を逸らしていたし…。ねえ、フェイト。あいつに何かした?」
「…ううん。あの子と会うのは初めてのはずだよ」
「…うーん?あ、もしかしてフェイトちゃんに一目ぼれしたとか」
「っ?!そ、それこそありえないよ!?アリサやすずかやなのは見たいに私は可愛くないし!?」
「そんなことないのっ。フェイトちゃんは可愛いの!」
「なのは!?」
大声でそんなことを言われても…。
…困る。
…あ、もしかして。
「あれ、フェイトちゃん。何か思い出した?やっぱりどこかで沢君と会った?」
「…う、あ、その。…ううん、やっぱり思い出せないや」
もしかしたら、ジュエルシードを集めている時に私が魔法を放っているところを見たことがある子なのかな…。だから、怯えていたとか。
「そう、まあいいわ。あいつのことより今日も翠屋に行かない?あそこで少しお茶しながら皆で宿題をしましょう。とくになのは。この間みたいにすずかから宿題丸写ししないようにね」
「…にゃあ」
「…なのは。私も一緒に頑張るから」
なのはの事を見ても何もなかったからたぶん、なのはと戦う前か戦うことが無かったところで私の姿を見つけたとしたら…。
今度、あの子のことについてリンディ提督に相談してみよう。
「…うう、わかったの」
「それじゃあ、翠屋に行くわよ」
「アリサちゃん待って。ほら、フェイトちゃんも行くよ」
「うん、わかったよ。すずか」
…あの子とも仲良くなれるといいな。
私となのはみたいに。
私はそう思いながらなのは達に連れられて教室を出た。
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第十五話 今日は徹夜でフェイト会議だからな!