第十四話 …あれ?!俺がこの中では一番変態なのでは!?
「と、いう訳で…。お前のおかげでこいつ等のリンカーコアを簡単に手に入れることが出来るぜ。あたしはヴィータっていうんだ♪」
「そんな…。クロウ君が…」
「うん?何がどうしてこうなったかは分からんが…。B太。俺達は敵じゃなかったか?」
自分の友達であるクロウがあっさり負けたことを未だに受け入れきれていないなのはとは対照的に、滅茶苦茶嬉しそうな顔をして俺に話しかけてくる赤い女の子。B太。
A太やC太いるのか?
特にC太。
飛○石は持っているか?あるのなら。そして、できるなら譲ってくれ。ガンレオンに組み込むから。絶対バ○スなんて言わないから…。
「・・・」
「・・・え?そうなの?」
「・・・っ。お、お前のリンカーコア。魔力を頂くぜ!あ、あとあたしはヴィータだ!」
顔を赤くして俺から離れるB太もとい、ヴィータ。
(この子。うっかりさんだね、お兄ちゃん)
アリシアの言う通り。ヴィータは本当にうっかりさんだ。
なのはとクロウから光の球を搾り取れる確約が取れたことがよほど嬉しかったのか本当に
…いつの間に取引したんだ、この幼女共。
「…悪いけど魔力は渡さない。今度は手加減しない。俺の魔力は俺の新しい家族の命そのものなんだ」
リンカーコアとスフィアはとても似ている。
プレシアからそう聞いた。
リンカーコアは魔力を。スフィアは未だに研究中だが似たような物らしい。
特にアリシアに癒着した『傷だらけの獅子』のスフィアは俺のリンカーコアとの相違点は0.01%未満。殆どリンカーコアと同じだ。
しかも、俺とユニゾンしたアリシアの中にある『傷だらけの獅子』のスフィアは殆どリンカーコアと融合している。もし、このユニゾン中の状態でリンカーコアを奪われたらアリシアは死ぬかもしれないんだ。
マグナモードを使ってでも。
…ヴィータ。お前を殺してでも奪わせたりはしない。
クロウの場合。ブラスタが解けた後にビームを喰らった所為か『揺れる天秤』の気配がクロウからではなく、ブラスタ(待機状態)のほうから感じ取れた。
まあ、それは置いといて。現実問題に目を向けるか。
「…新しい。…家族」
「…ヴィータ?」
「え?ほかにもロボットさんがいっぱい?」
ヴィータは俺の言葉を聞いてヴィータの表情が曇った。
そして、見当違いなことを気にしているなのははガンレオンがいっぱいいる姿を思い浮かべたのだろう。
俺も想像してみる。
(…ちっこいガンレオン。…チビレオン(仮)がいっぱい。…そんなチビレオンに囲まれるガンレオン。というか、俺。…なんか萌えr)
(チビレオンが一斉にマグナモード!)
怖っ!
アリシア、俺の妄想に余計な設定を加えないで!
チビレオンが一斉に襲い掛かって俺を解体し始める残虐ショーを脳内上映してしまった。
すんげぇえ怖い!
(お兄ちゃんには私だけでいいの!)
(へんなやきもちの妬き方をするな!)
意識下で俺とアリシア言い争っている間にヴィータは何かを感じ取ったのか。不意に空を見上げた。
「…魔力反応。あたしの結界に五、六…。ちっ。管理局か」
「…え」
「…管理局。あ、やばっ」
そういえば、プレシア関係で俺の存在も管理局にばれたらいけないんだった。
「…その魔力、いったん預ける!絶対に奪ってやるからな!」
ヴィータは俺達の目の前にバスケットボールくらいの大きな光の球を出現させると爆発させた。
待った!俺達も逃げる!
俺はチェインデカッターを起動させて、地面を切り裂き、地下へ通じる下水トンネルに突入。そこからは一気にガンレオンのアクセルをふかせてその場から全力退避した。
それから、結界がとかれたところで人気のない地上に出る。
しばらくして、急に消えた俺達探していたプレシアと合流。
魔力を感じ取られるとマズイということで他の世界に転移することはやめて、今日は隣町のホテルで一泊することにした。
タクシーでホテルに向かっている最中にアリシアは眠ってしまう。
俺もヴィータとクロウの二連続戦闘後だったので疲れて寝てしまった。
それから一週間ほど管理局の様子を見る為に学校を休んだ。
学校には親戚の行事に参加しいたということで休みを入れた。
「…本当にこれで大丈夫なのか?なんだったら転校してもいいんだぞ?」
俺はプレシアにリミッター機能を追加されたガンレオンを渡された。これで少なくてもガンレオンがデバイスであることはばれないだろう。
アリシアにも同様の機能がついたリボンの形をしたリミッターを渡した。これはスフィアの力を感じさせないものらしい。スフィアは未だに研究中なので不安材料が残る。
なので、ガンレオンにはプレシア特製の
アリシアに何かがあったらすぐにでも俺が転移して対処すればいい。まあ、武力行使になるだろうけど…。
「…一応ね。それにこのタイミングで転校したり失踪したらあなたまで疑われる。明日からはあのマンションに戻ってアリシアとあなたは学校に通いなさい」
「今さら?」
七日目の夜。ホテルの片隅でプレシアと話し合っていた。
プレシアの抱える問題に俺は片足どころか頭の先までどっぷりつかっている気がするよ。
「一度大きな
「まったくだ」
「…手厳しいわね。未だに私達。いえ、私の味方をするのが不思議だわ。スフィア。…アリシアの事があるとはいえ…」
「事故とはいえ、俺だって俺の都合で二人を巻き込んだんだ。ここまで来たら一蓮托生。とまではいかなくても、少なくてもスフィアの事が解決するまでは付き合うさ。…アリシアの
プレシアは未だにフェイトの事もアリシアには伝えていない。
家族とはいえ、義理の家族になった俺としてはもう一人の家族。フェイトの事は早めに解決してほしいと思っている。
正直、彼女の事を思うとプレシアの事を母さんと呼ぶこと遠慮というか、心に引っ掛かるものがある。
それを知ってか知らずか。プレシアは次の話を切り出す。
「…マグナモードの後遺症以外のアレね」
『傷だらけの獅子』のもう一つの問題点。
ゲームでも、そしてこの世界でも起こった死者蘇生。
これによって、ゲームでは『傷だらけの獅子』を取り込んだメールは生き返りはしたが、成長が止まり永遠に子どもな躰に縛り付けられていた。
ゲームのエンディングではその呪いは解けて成長すること(髪が伸びただけ)が出来た。だけど、ゲームと現実は違う。
ゲームではお互いに協力していた『揺れる天秤』のクロウ。現実は仲違いしたまま。
アリシアの成長日記。とふざけたものをつけている俺とプレシアだが、結構これは重要なことだ。
周りの人間が成長していくのに一人残される孤独感。
せっかく生き返ったのならば謳歌してほしい。
「他のスフィアリアクターに。黒の放浪者。あなたも結構大変ね」
「全くだよ」
俺とプレシアはそこで会話を終了して明日に備えて眠ることにした。
俺はベッドの中で今後のことも考えながら他のスフィアのことについて考え直していた。
俺が知っているスフィアはあと五つ。
『悲しみの乙女』『偽りの黒羊』『尽きぬ水瓶』。あと、黒の放浪者アサキムの持つ『知りたがりの山羊』と『他の何か』の二つ。
アサキムはアリシアのことがあるので論外として、最初の三つ。
この三つが三つとも厄介だし、出来ることなら『尽きぬ水瓶』以外には関わりたくないのが本音だ。
だって、『うつ病確定』『嘘つき』『自己犠牲』の三人で一番まともなものは『尽きぬ水瓶』だもの。
まあ、友人になる人間がそれだと心配も増えるわけだから…。やっぱりスフィアにまともな物は無いな…。
『揺れる天秤』『傷だらけの獅子』は『即断即決考え無し』『一人SMプレイ』だし…。
・
・・
・・・
…あれ?!俺がこの中では一番変態なのでは!?
「…鬱だ」
「天気がいい日に何暗いことを言っているのよ?そんなんじゃ、私達まで暗くなるでしょ」
俺は一週間空けていた学校に登校した。
教室にある自分の机に突っ伏しながら気づきたくなかった事実を受け止めることが出来ずにいた。
いや、あれは事実ではないっ。
それが真実だとしても俺は超える!このスフィア(只今、幼稚園に出張中)の力で!
…不安になった。だって原因が原因だもの。
「ほっといてくれ。俺の今後の人生に関することで重要なことに昨晩気付いてしまったんだから…」
「たかが小学三年生の分際でそこまで自分を悟ったの!?」
「…ごめん。アリサ。今日は本当に放っておいてくれ」
「…あんた。本当に大丈夫?」
俺が彼女の名前をいじらないことで俺の心配をしてきたアリサ。
「お前、良い女になるよ。…ツンデレだけど」
俺の一言に顔を赤くしたアリサ。その様子を見ていると落ち込んだ俺の心も少しだけ安らいだ。
…いや、ツンデレだからこそか?
ポグッ。
と、約一週間振りに受けるアリサの左フックのダメージが少ないと思ってしまうあたりに彼女の優しさを感じてしま…
はっ!?
既に俺はスフィアの副作用(一人SMプレイ)に蝕まれている!?
「…鬱だ」
「…沢君。本当に大丈夫?」
「今日はこいつに触れないでおきましょう」
「…そ、そうだね」
ちなみに俺の席はなのは。アリサ。すずか。の真ん前。アリサの前の席だ。
しかし、なのはの声は少しばかり浮かれているようにも気がする。
クロウが復調したのか?まだ学校では会っていないぞ?
プレシアがスフィアの力を使って起動させたデバイスで彼のデータは入手済み。
え、不正入手ですが何か?
生きていく為に(殺されるかもしれないので)必要な事なんだよ。
あれだけズタボロにされたからそうそう復帰できるわけもないか…。
ガラッ。
なんて、考えていたら教室と廊下を繋ぐ扉が開いた。いつの間にか、朝一番のSHRが始まる時間帯だった。
田村先生と一人の女子生徒。
俺はその少女の顔を見て更に気分が暗くなった。
目の前にとてもそっくりな子を俺は知っている。
というか、今朝。幼稚園に送ったよ!
顔見覚えのある髪と瞳の色。違うのは髪型と身長だけの少女。
…俺ってば『悲しみの乙女』のスフィアでも持っているのか?
「フェ、フェイト・テスタロッサです。宜しくお願いします」
俺のこと嫌いだろ!
俺はこの日、改めて女運最高が逆転したことを再認識した。
Tweet |
|
|
8
|
5
|
追加するフォルダを選択
第十四話 …あれ?!俺がこの中では一番変態なのでは!?