No.447511

乱世を歩む武人~第ニ話~

RINさん

応援・・・されてるんですかね?
とりあえず要望がありましたので次話も投稿させて頂きます。

※若干のアンチが入りますでご注意ください。

2012-07-06 21:37:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5861   閲覧ユーザー数:5144

想像以上に簡単な仕事だった。

 

あの黒髪の女性には感謝の一言だ。

 

女将さんの話を承諾後自身でもっていた弓と矢を持ち裏口から屋根へと登る。

 

とりあえず後ろから射抜ける場所まで飛び移り見つからないよう隙をみて矢を撃ち込んだのだ。

 

本来は影に隠れて野次馬にも見つからないよう気を配るところだったのだがあの黒髪の女性が視線を一手に引き受けてくれた。

 

更には持ち前の殺気をもち相手の後ろへの注意を完全に逸してくれた。

 

ここまでやってくれればあとは正面の殺気に隠れて賊を射抜くのみ。流石に超長距離は無理だが屋敷3つ分程度の距離ならば十分狙いをつけることができる。

 

倒れたのを確認しさっさと撤退。野次馬たちがいきなり死んだ賊を囲んで何やらうるさいがそこまでは知らん。

 

彼女には怪我もなく死人は人を襲うことは出来ない、これなら文句はないだろう。

 

それにしてもあの黒髪の女性は何者なんだろう。あの規模殺気は一線を超えた強さでしか存在し得ないものだが・・・

 

そんなことを考えつつ私は女将さんの所へ荷物を取りに戻る。

 

徐栄

「じゃあ女将さん。約束通り助けたんで行かせてもらうぜ。ごちそうさん。」

 

女将

「あ・・・ああ、ありがとう。道中気をつけて。」

 

ちょっと引きつった顔をしている女将さんに片手を上げることで返事をする

 

厄介事になると面倒なのでさっさと立ち去ろうとしたところで

 

 

 

???

「まってくださーい!」

 

 

 

後ろから3人の女性が追いかけてきた。

 

2人はさっき自分から人質になるといっていた女とそれを助けようとしていた黒髪の女性だ。

 

もう1人の女は小さい赤髪のちびっ娘だ。

 

たしか・・・劉備だったか?あの娘は?

 

劉備

「私は劉備、字は玄徳って言います。・・・先程はありがとうございました!」

 

劉備さんが笑顔でペコりと頭を下げてくる。

 

徐栄

「はて・・・なんのことでしょうか?」

 

黒髪の女性

「とぼけなくてもいい。あの時私はあなたの姿を確認している。」

 

逆光で見れないかなぁと思ってたが・・・甘かったかな。

 

関羽

「我が名は関羽。字は雲長だ。姉の危機を助けて頂き礼を言う。貴方がいなければどうなっていたか・・・」

 

張飛

「鈴々は張飛っていうのだー!お姉ちゃんを助けてくれてありがとうなのだー!」

 

と続いて黒髪の女と赤髪のちびっこもこちらに頭を下げてきた。

 

ふむ・・・関羽さんというのかあの人は、それに張飛という嬢ちゃん相当の手練だな。動きに武人特有のそれが見える。

 

劉備

「あの・・・お名前を聞かせていただいても・・・?」

 

劉備さんがおずおずと訪ねてくる。

 

徐栄

「私は徐栄といいます。怪我は・・・なさそうですね。無事ならそれでいいのです。」

 

劉備

「はい!おかげさまで・・・徐栄さんお強いんですね!」

 

徐栄

「いえいえそんなことは・・・それに貴方を助けたことのも自分のためです。どうかお気になさらずに」

 

実際食事代の代わりなのだからあまりお礼を言われても正直困る。

 

劉備

「でも、私を助けてくれたことは事実です!」

 

徐栄

「・・・そうですか。ではそのお気持ち、確かに受け取りました。」

 

このままでは譲り合いになる気配がしたので区切りを入れるため気持ちだけ受け取っておくことにした。

 

劉備

「はい!そして徐栄さん。貴方にお願いがあるんです!」

 

先程までの笑顔を引っ込め真面目な顔でこちらを見つめてくる。

 

その雰囲気には引きつけられそうな何かがあった。

 

徐栄

「・・・お伺いしましょう。」

 

こちらもまじめに聞く姿勢を作る。

 

劉備

「今、国は腐敗の一途をたどり世の中は乱れ、何の罪も無い民が苦しんでいます」

 

関羽

「宦官は私腹を肥やすことだけを考え賊の討伐一つままならない始末・・・」

 

張飛

「そんなの許せないのだ!鈴々達はみんなに笑顔でいて欲しいのだ!」

 

劉備

「ですから、そんな国を変えたいのです。私は、みんなが笑って暮らせる世の中を作りたいんです!だから徐栄さん・・・私達の仲間になってください!」

 

・・・表情を見るに彼女たちは本気のようだ。その雰囲気には英雄たる何かが備わっていた。

 

彼女達とともに歩むこともまた一つの生き方なのだろう。

 

 

だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐栄

「悪いが断らせてもらいます。私にはとてもじゃないが無理な話です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の理想は私が歩める道ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劉備

「無理・・・ですか?」

 

劉備さんが首を傾げながら聞き返す。

 

徐栄

「ええ、やらない、のではなく無理、です。そうですね・・・例えばの話になりますが」

 

私は彼女の目を見て語り始める。

 

徐栄

「川に2つの船が浮かんでいるとしましょう・・・一つは100人の民が乗っている船です。もう一つはそうだな・・・重症を負った関羽さんがのっているとでもしましょうか。

 

どちらの船にも穴が開いていて自分が持っている材料ではどちらか片方しか船を直すことが出来ない。どちらかに向かえばどちらかが船を直している間に沈んでしまうと考えればいい。

 

さて・・・貴方どちらを助けますか?」

 

 

劉備

「どちらも助けるに決まっています!」

 

彼女はきっぱりと断言する

 

徐栄

「ええ・・・貴方の理想のためならばそれ以外の選択は存在しない。たとえそれが僅かな可能性でも、仮にどちらの船も沈没という結末になっても。だから無理なのですよ劉備さん。私にはその選択肢は絶対に取れない」

 

続けて私はこう語る

 

徐栄

「私は違う。貴方の立場ならば必ず関羽さんを助けに行く。あるかもしれない程度の理想より確実に一人を助ける十全を選択する。それが例え100人の民の家族全てから恨みを買う結末になっても・・・ね。

 

私はそういう人間です。ですので貴方のいう「全てを救う」理想に手を貸しすることは出来きません。」

 

ふと気づくと関羽さんの雰囲気が険悪なソレに変わっている。どうやら理想を侮辱されたと感じたようだ。

 

徐栄

「誤解があるようなので言っておきますが別に貴方の理想が悪いと言ってるわけではないんです。その理想は素晴らしいものだ。貫き続けて欲しいとも思う。

 

ーーーーーーーーだが私には手伝うことが出来ない。それだけの話です。」

 

 

 

 

そこまで言い終えた時点改めて三人の方を向いたらーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー関羽さんが偃月刀を振りおろそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

徐栄

「・・・?」

 

私は剣を持ちそれを防ぐ。彼女も実際に当てるつもりはなかったのだろう。その一撃は軽いものだ。

 

劉備

「愛紗ちゃん!?」

 

劉備さんは突然の行動に驚いているようだ。その声に答えず関羽さんはこちらを向いたまま

 

関羽

「徐栄殿・・・貴方にはそれだけの力がある。それなのに貴方はその力を万民のために使おうと思わないのです?眼の前で苦しんでいる者を救おうという心は・・・貴方にはないとおっしゃるのですか?」

 

そう語りかけてくる。

 

彼女もまた英傑たる才能があるのだろう。その言動には冗談をいう間は存在しない。

 

だからこそ私はーーーーーーーーーーーー

 

 

 

徐栄

「ええ。全くもってありませんね」

 

 

 

劉備・関羽・張飛

「「「!?」」」

 

 

 

バッサリとこう返す。ここで曖昧な返事をしようなら引きずり込まれかねない。

 

ソレは困る。私にはやるべきことがあるのだから。

 

徐栄

「苦しんでいるのが身内なら過程、方法を問わずに助けますよ。それこそ万民を敵に回したとしても・・・ね。

 

元来器が小さいのですよ。身内以上の人間のことに気を配るなんてとてもとても・・・この話はここまでにしましょう。これ以上はお互い熱くなって何が起こるかわからない」

 

正直お互いというよりあっちが何をしてくる分かったもんじゃないと言いたいが。

 

私は彼女からにじみ出る威圧感を意に介さずに彼女たちの横を歩き抜けていった。

 

コツコツ・・・と歩く音だけがする。数歩ほど離れた頃に私は思い出したかのようにこう告げる。

 

徐栄

「ああそうそう、劉備さん。貴方がもし人の上に立つようになれば今の質問と似たような事態に必ず何度も遭遇することになるでしょう。今のうちに大いに悩んでおくといい。

 

答えを出しておけば迷っているうちに船が2つとも沈没・・・なんて事にはならないでしょうからね。」

 

そう言い残して今度こそ彼女たちから遠ざかっていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐栄

「ん~・・・あの様子だとあの娘達幽州にとどまり続けるよな。」

 

まいった。本来ならばここの太守のところへ行き、兵卒でもやって路銀を稼ごうという魂胆だったのに。

 

あれだけのものを持ってる人間だ。おそらく義勇軍でも立ちあげようと考えているのだろう。

 

正直会いたくない。あんなことを言った後だし気まずいなんてもんじゃない。

 

徐栄

「しかたない・・・少し遠いが涼州にでもいくか。そんだけ離れてればもう会わないだろう。」

 

 

 

 

 

 

また長旅になる・・・。そう心に影をさしつつ私は長距離移動のための準備をはじめるのであった・・・・・・

 

 


 
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