~アヴァタール地方・冥き途~
新たなメンフィル皇女、プリネが生まれて数年後リウイはペテレーネ、カーリアン、ファーミシルス、そして幼い娘のプリネを連れて死した命が集まる場所、冥き途にイリーナの魂の行方を門番に聞きに来た。
「あら、お久しぶりですね。またお妃様の行方を聞きに来たんですか?」
「……久し……ぶり……」
リウイ達の姿を見つけ、姿を現したのは冥き途の門番であり神殺しの使い魔であり、魔槍の使い手、リタ・セミフと、同じく神殺しの使い魔であり、ソロモン72柱の1柱、魔神ナベリウスが姿を現した。
姿を現した2人にリウイは魂の行方を聞いた。
「イリーナの魂はあれから何かわかったか?」
「………何年か前に……北……行って……消えた……場所………深い……そこで…魂……感じにくい……」
「数年前に北のほうへ行って魂が消えたそうです。場所はどこか地下深くに潜ってしまってそこから魂の反応が感じとりにくいそうです。」
独特の話し方をするナベリウスを補佐するようにリタが説明した。
「消えたって……もしかして、魂が消滅したってこと!?」
カーリアンは説明を聞き焦った。
「いえ、魂が消滅したのならナベリウスが感じ取ります。ナベリウスが存在を微かに感じましたから恐らくですが神の墓場のような別次元の世界に行って彷徨っているか、そこで新たな人間に転生したかもしれません。」
「別次元の世界か……それにここから北の地方なら我が領土であるし、地下深くならブレア―ドの迷宮に手がかりがあるかもしれんな。」
「ええ、あそこは全ての階層は制覇しましたが、転移門に未だ謎の部分がありますから可能性はあるかもしれませんね。」
リタの説明でリウイは場所を推測しまた、ファーミシルスもリウイの考えに賛成した。
「そうだな……ならば国に戻り次第、迷宮の探索隊を再び結成し調べてみるか……」
リウイは少し考えた後これからの方針を決めた。
「あ……よければこれをどうぞ。」
ペテレーネは荷物からお菓子を出し門番の2人に渡した。
「……甘い……匂い……あり……がとう……」
「わあ、ありがとうございます。エクリアちゃんやマリーニャちゃんのお菓子もおいしいですけどこれもおいしいから気にいってるんですよ。」
「気にいって頂けたのなら何よりです。」
ペテレーネは2人の様子を見て笑顔になった。
そこに興味深そうに周りをみていた母と同じ髪を持つ娘、プリネが2人と母のところに来た。
「ねえねえおとうさま、おかあさま~この人達、だれ~」
娘の素朴な疑問を聞きペテレーネは優しく答えた。
「この人達はお母さん達の友達のようなものよ。ほら、挨拶をしなさい。」
「わかった~メンフィル皇女、プリネ・マーシルンです~よろしくおねがいしま~す。」
「よろ……しく……」
「わあ、かわいい。ペテレーネちゃんの子供ですか?私はリタ、こっちはナベリウスよ。よろしくね。」
幼いながらもたどたどしい礼儀で挨拶をしたプリネに2人は自己紹介をし、少しの間おしゃべりをした。
「……そろそろ国に戻るぞ。」
「はい、リウイ様。お2人ともお世話になりました。プリネ、帰りますよ。」
「わかった~じゃあ、またね。リタちゃん、ナベリウスちゃん。」
「ええ、無事見つかる事をお祈りしておきます。」
「……また……会う……」
門番の2人に別れを告げたリウイ一行は祖国、メンフィルに戻った……
~ブレア―ド迷宮・地下100階層・野望の間~
広大なレスぺレント地方にある古代の迷宮”ブレア―ドの迷宮”に帰還したリウイは調査隊を結成し
迷宮内の奥深くを調べて、そこでメンフィル機工軍団の団長、古代の兵器でもある機工種族の
シェラ・エルサリスより報告をうけていた。
「謎の転移門だと?」
「ハ、調査隊の一部が調べましたところ、現在登録済みの転移門のほかに記録されてない新たな転移門が見つかり現在、その門の先を探索中です。」
「そうか……では、ほかの調査隊をもそちらにも廻してその転移門の先を重点的に調べるようにしておけ。」
「御意。」
淡々と報告するシェラにリウイは新たな命令を出した。
~メンフィル王都・ミルス城内~
そして数日が経ちリウイは謎の転移門から帰還した調査隊の隊長より報告を受けていた。
「……別次元の世界だと……?」
「ハ、謎の転移門の先を調べました所、別の世界につながっておりました。最初はほかの大陸かと我々は疑いましたが、調査しましたところ、この世界とはあまりにも違う文明が発達しておりました。さらにそこにも信仰されている神はいたのですが”空の女神(エイドス)”という聞いたこともない神しか信仰されていなく”軍神(マーズテリア)等の
他の神の名を出しましたが全く知らない様子でしたので別次元の世界だと我々は判断致しました。」
「光の勢力で最も知られている”軍神”も知らぬとはな……それは信憑性が高そうだな……ほかに報告はないか?」
リウイは新たな世界が存在することを知り、内心驚いたが心の奥深くに止め、先を促した。
「ハ、あの門には欠点がございました。」
「欠点だと?」
「我々先行隊より後に来た部下達が申すには我々とは異なった場所に出たようです。ただ、向こうからこちらに戻ってくる門は何ヵ所かに固定されているというおかしな現象がございました。」
「その異なった場所というのは全く違うのか?」
「いえ、調べました所、”ロレント”という街の近くの森に全て出ましたのでそれほど離れてはございませんでした。魔術師達の話ではもうすぐ出る場所の固定は出来るそうです。」
「そうか……御苦労、下がっていいぞ。」
「ハ!失礼いたします!」
隊長はリウイに一礼した後部屋を後にした。
「リウイ、やったじゃない!もしかするとそこにイリーナ様がいるかもしれないわね。」
報告を聞いていたカーリアンは喜んだ。
「まだ、断定はできん。だが、可能性は出てきたな。しばらくはその世界に拠点を作り調べるとするか。」
カーリアンの言葉を否定しながらもリウイは微かな希望を持ち、笑みを浮かべた。
~ブレア―ド迷宮・謎の転移門前~
そこにはリウイ一行のほか、リフィア、エヴリーヌ、シェラとファーミシルスの副官、ティルニーノエルフのルースがいた。
「では、これより別次元の世界の調査及び拠点作りに我々が先行する。みな、準備はいいか。」
「いつでもオッケーよ。」
「こちらも万全です。」
「ふふ、腕がなりますわ。」
3人の頼もしい言葉を聞きリウイはリフィアとエヴリーヌの方に顔を向けた。
「……どうしてもお前たちもついてくるのか?」
「当たり前であろう!別世界に余の名を知らしめしてくれる!」
「エヴリーヌはお兄ちゃんといっしょならなんでもいい……プリネとお留守番もいいけど、すぐ帰ってくるんでしょう……?」
「……仕方のないやつらだ。絶対に俺達から離れるなよ?」
おいていってもついてきそうな2人にリウイは溜息をつき注意をした。そしてシェラとルースに顔を向けた。
「いつでも軍は出せるようにしておいたか?」
「ハ、機工軍団は問題ありません。」
「こちらも問題なく迷宮の外に待機させています。みな、リウイ様の久しぶりの出陣に勇んでおります。
かく言う俺も楽しみなのです。」
淡々と報告するシェラと年甲斐もなくワクワクしているルースの言葉にリウイは頷き背を向けた。
「では、みな行くぞ!」
そしてリウイ達は門の先に進み光につつまれた……
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第3話