No.446427

悪魔に転生した彼は老衰を望む

むう。今日はここまでにしようかな。

2012-07-05 14:19:43 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3477   閲覧ユーザー数:3398

あれから時も経ち、俺は8歳になった。キツイ修行の成果も出たのか体も同年代にしては程よく締まり、やはり人とは違うのか背丈の成長を阻害することがないのか身長も順調に伸びていった。最近は父さんに全力の4割を出させるようになり、自分の努力が報われていると実感した。

 

 さて、そんな俺はこの8年間において最大の危機に瀕している。なぜか、それは…

 

 「ほう、悪魔の餓鬼か。しかも髪が亜麻色か。奴の親戚か?くくっ、どちらにせよ奴への手土産にしてやるか…」

 

 なんか強そうな堕天使が俺の前に居るからだ。しかも敵意むき出しだよ!とりあえず俺はなんでこんな展開になったかを回想することにした。

 

 

 

 

 あの状況から3日前の事。俺は8歳の誕生日を迎えていた。この8年で分かった事を報告しようと思う。

 まず一つ目は、父さんがバアル家の人間ではなかった。父さんはグレモリー家の人間だったようだ。(しかし父さんの家系図を辿っていくと、バアル家と結婚した方がいて先祖返りというやつだった)。グレモリー家は血を重んじていて、『番外の悪魔』である母さんとの結婚を許容出来なかったようだ。母さんは『番外の悪魔』という72柱の悪魔に入ってはいない上級悪魔の家系だったが、グレモリー家としては『番外の悪魔』との結婚を許すことは出来なかったらしい。しかしその仲を応援してくれる人が居た。それは意外にもグレモリー家の当主だった。その方は俺の祖父にあたる人だが、性格は非常に温和で他の親戚達が反対する中で皆を説得してくれたらしい。しかし条件があり、一つは『どんな時もグレモリー家を頼らない。』二つ目は『グレモリー家とは縁を切る』ということだった。

 母さんは、父さんが家を捨てるのを反対したらしい。私なんかと結婚して家を追い出されるなら結婚しなくてもいい、と。しかし父さんは、グレモリー家との縁を切っても君と結婚したい、とかイケメンなセリフを言い、やっとのことで結婚したらしい。とは言いつつも、父さんは当主である祖父と連絡を取り合ってるらしい。なんかよく分からんが、グレモリー家とは縁を切ったが父上と縁を切った覚えはないんでね、だそうだ。

 二つ目は、俺の魔力の性質についてだ。俺には滅びの魔力があると言ったが、もう一つの性質があった。空間という原作には出てこない性質だが、これは母さんの先祖が創った

性質で、母さんの家系にのみ使用出来る性質らしい。母さんはかなり自由に空間を操れるが(前に父さんを潰していた見えない壁はこれだったのだろう)俺は練度の違いもあるが上手く操れない。理由は単純で、俺の魔力の性質が“滅び:空間=7:3”の比率だからだ。(ちなみにこの比率は髪の毛にも表れていて、俺の髪の色は亜麻色に黒を7:3で混ぜたような色だった。ちなみに混ざっていると言っても、亜麻色の髪の中に黒い髪のメッシュが所々にあるという感じだ)。なので、滅びも空間も1流にはなれない。しかも滅びならともかく空間に関しては、簡単な空間操作しか出来ないらしい。

 しかし俺にとってはありがたい。少しでも生きる道が増えた気がした。なにせ簡単な空間操作だけでも強力なのだ。複雑なことは出来ずとも空間を操作出来るというアドバンテージは、そうそう破られるものではないからだ。滅びには足りないところを空間でカバーする。くくく、戦略が増えれば生存確率も上がるぜっ!

 

 さて、話が長くなったが続きを話そうか。誕生日を迎えた俺は、家族で旅行しようということになった。勿論毎年の恒例行事という訳ではなく、そろそろ外の世界も体験した方がいいからだそうだ。外の世界といっても異世界なんかではないことを一応言っておく。

 

 そして旅行先に選んだのが魔物が多く生息する森、通称『魔の森』と呼ばれる場所である。

 

 え?俺を殺したいの?誕生日に何たる仕打ち!

 

 父さんは、そろそろ外の(殺伐とした)世界を体験したほうがいいという意味だったらしい。母さんも同意見のようで、特に反対するわけでもなく了承していた。くそっ!神は俺を見放した!まぁ悪魔だから見放すもくそも無いんだが。

 

 という訳で3『魔の森』にいる俺だった。そこで俺は父さんに

 

 「3日たったら迎えに行くから生き残れよ」

 

 と言われて、置いてかれました。

 

 what?

 

 おいおい!アンタ俺を殺したいのかよ!なんて思っていたが流石悪魔の体、今までの努力もあってか危なげなくも3日を生き残れた。ちなみに一番苦労したのは、初めて体験した“殺す”ということだった。最初に魔物に襲われた時とっさに魔物を斬り殺した。俺は吐いてしまった。いつかは通る道だっただろう、殺した後にくる嫌悪感や罪悪感に苛まれながら1日目を終えた。

 

 2日目からは殺しに慣れないにしても、最初のような吐き気は無くなった。しかしこの心に残る嫌悪感や罪悪感は忘れないようにしたいと思う。それを忘れたら、何か大切なモノを失う気がしたから…。俺は殺したモノに敬意を払うことに決めた。それが俺に出来る唯一の事だから。

 

 そして3日目。そう、問題の3日目である。やっとこの生活からおさらばだぜ!とか思いつつも俺は親に感謝していた。この体験を早い段階にさせてくれたことに。しかしその考えも脆くも崩れ去る事になった。

 

 「はぁ、父さんまだかな…」

 

 俺は父さんが迎えに来るのを待っていた。ちなみに俺の所持品は

 

 ・そこらに落ちていたナイフ

 ・潰れると臭い木の実

 ・魔物を狩って手に入れた肉

 ・魔物の牙など

 

 である。父さんは何も持たせず置いて行ったので、全て現地調達だった。(ちなみに木の実は魔物除けに重宝した)

 

 俺が父さんを待っていると、奥の方から気配がした。この3日で鍛えられた気配察知能力はなかなかのモノであると自負している。

 

 そして現れたのは、カラスのような羽を持った人型の生物。それは堕天使と呼ばれる者だった。

 

 

 

 

 ここで冒頭に戻るわけであるが、非常にまずい。堕天使とは天使から堕ちた者達の総称で、天使では無いものの悪魔にとって有害である光の力を使える。堕天使は昔から悪魔と地獄の覇権を争っているので、その仲は険悪である。

 

 「なぜ堕天使がここにいる?」

 

 俺は強気に言ってみた

 

 「ふん。ある奴を殺そうと思ってな、その道中で貴様に会っただけだ。」

 

 「ふーん。そんなこと俺に言ってもいいの?」

 

 その堕天使は気にする様子もなく

 

 「なに、貴様は殺すから大丈夫だ。お前の首を奴の元へ持っていったら、どうなるだろうか。くくくくっ。」

 

 と、不気味に笑いながら言った。

 

 …どうする、俺。逃げ場はない、勝てない相手かもしれない。でも

 

 「俺は死ぬ気もないし、負ける気もない!」

 

 俺は先手必勝とばかりに堕天使へ切りかかった


 
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