No.446129

黒神家のちょっと普通なお兄さん 第四話/ 動物以上に注目されるのは恥ずかしい

風雅さん

文ですので余り期待はしないでください。感想やアドバイスや誤字報告などは受けつけてますが、罵詈雑言の感想は受け付けません。それでは、お楽しみください!

2012-07-05 00:17:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:849   閲覧ユーザー数:822

 

本日、俗にゴールデンウィークと呼ばれる連休の初日。

天気は快晴、降水確率0%。

絶好の行楽日和であった。

何処も彼処も親子連れで賑わい、騒がしいながらも和気藹々とした雰囲気に満たされていた。

 

 

それはこの動物園も同様であった。

ただし、その入り口では既に一騒動起こってはいたが。

 

 

「さあ着いたぞ! 動物たちを愛でて撫でて遊んでやろう! 皆私に続くがよい!」

 

 

「待ってー!」

 

 

先陣を切って動物園に吶喊してゆくめだか。

その後を楽しそうに追いかける善吉。

 

 

「いつもの凛としためだかちゃんも可愛いけど、動物目当ての無邪気なめだかちゃんも可愛いなあゲフェッ!」

 

 

「邪魔だから前でグネグネしてんなよ馬鹿兄貴。つか私は勉強の途中だったんだがな」

 

 

深すぎる妹愛に悶える真黒。

兄の背を蹴り飛ばし睥睨するくじら。

 

 

そして最後に――

 

 

『お前ら他の人たちの迷惑になるから余りはしゃぐなよー!』

 

 

寝癖が残った頭を掻き、欠伸を噛み殺している鯱。

 

 

なんとも個性的すぎるこの五人組も、休日ということで動物園に繰り出したのだ。

 

 

 

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いつものように我が家で善吉とめだかと俺。

遊びの内容を決めようとしたのだが、偶然点いていたテレビにめだかが釘付けになった。

つられて見やれば、行楽地の特集をしているらしく、動物園を背景にリポーターが通りかかった親子に話を聞いてていた。

 

 

「動物園か……」

 

 

「鯱くんは行ったことある?」

 

 

『そういえば行ったことないなー。善吉は行ったことあるのか?』

 

 

「うん、お母さんと一緒に行ったことあるよ」

 

 

動物さんがいっぱいいたよー、と当たり前な感想を言う善吉。

――あの瞳先生と一緒に?

俺は想像した。

善吉と手を繋いで動物園を歩く瞳さん。誰が見ても姉と弟だ。

きっとお金も子供料金で入ったのだろう。

 

 

「――ぃぞ」

 

 

『どうしためだか?』

 

 

 黙ってテレビを見ていためだかがぽつりと呟いた。

 

 

「私も動物園に行きたいぞー!」

 

 

『それじゃあ、ゴールデンウィークの時に真黒とくじらも連れて行くか』

 

 

 

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『……何度も思うけど、あれはやりすぎだろ』

 

 

 ちらり、と今しがた降りた車を見る。

 動物園に似つかわしくない黒塗りのリムジンが威風堂々と停車していた。

 周囲には人だかりができ、写真を撮る者まで現れる始末。

 

 

『動物以上に注目されてるし』

 

 

「兄貴、突っ立ってないで私らも行こう」

 

 

呆れていても仕方がない。くじらに促されるまま、俺も動物園に足を踏み入れる。

 

 

『あれ?めだかと善吉は何処に行った?』

 

 

「大方興奮してあっちこっち走り回ってんだろ」

 

 

『まったく・・・あいつらは迷子になったら探すのは俺なんだぞ・・。くじらはどの動物を見るんだ?』

 

 

「私は爬虫類館を見に行くけど兄貴も一緒に行くか?」

 

 

『いや、俺はいいよ。俺は他の場所をブラブラしてくるから』

 

 

俺はそう言ってくじらと別れて、その辺をブラブラすることにした。

 

 

『はぁ~。一人でブラブラするのは暇だなー、くじらと一緒に爬虫類館に行けばよかったかな?』

 

 

そう言いながら俺は周りをキョロキョロしていると俺はあるものに目が止まった。

 

 

『あれ?あの女の子もしかして迷子なのか?』

 

 

俺が見た先には周りをキョロキョロしながら誰かを探しているように見える女の子がいた。

『迷子かもしれないから話しかけてみよう』と思った俺は女の子に近づいていった。

 

 

『あのー。そこのキミ俺の勘違いだったら悪いんだけどもしかしてキミは今迷子なのかな?』

 

 

俺がそう言ったら迷子(?)の女の子がこちらを向いた。

 

 

「あれ?私がアイス屋に走って行ったらいつのまにか皆が周りからいなくなってる~。まったくみんな

迷子になるなんて子供だな~」

 

 

『いやそれ皆が迷子じゃなくてキミが迷子になってるから!?』

 

 

思わずツッコンだ俺は悪くないはずだ。もしかしてこの子バカなのか?

 

 

『それでキミはアイスを買ったのかい?』

 

 

「アイスはお金がないから買ってないよー。もしかしてアナタが買ってくれるの?」

 

 

この子はバカだ!これほどのバカは見たことないぞ。

 

 

『いや俺はお金を持ってるけど、アイスを買わな「買って・・くれないの?」わかった!わかったから

その泣きそうな顔はやめてくれ!それじゃあ、アイスを買ったら俺と一緒に迷子センターに行こう』

 

 

「いえーい。アイスゲットだぜ!さあ早くアイスを買いに行こう早く行こう!」

 

 

さっきまでの泣き顔が嘘みたいに笑顔なんですけど・・・

アイスを買ったあとは迷子センターに行きながら、女の子の名前を教えて貰った。

女の子の名前は都井岬眠歌《といみさきみんか》とゆう名前らしい、眠歌ちゃんは五人の友達と動物園に来たらしい。

そのあとは普通にお喋りをしながら眠歌ちゃんを迷子センター連れて行った。

 

 

『いや~あ。まさか世の中にはあんな面白い子がいるなんて思いもしなかったぜ。それにしても

なんか静かすぎるな・・・・・って動物がいなくなってる!?』

 

 

いつのまにか檻の中はもぬけの殻となっていた。

一つに近寄って見てみるが、鳴き声はおろか気配すら感じない。

俺の横を、ただならぬ様子の係員が無線機に喚きながら走っていく。

 

 

『ひとまず善吉たちと合流するか。真黒とくじらもめだかのところにいるんだろうし』

 

 

入口からここまで会うことはなかった。ならばこのまま進んだ先に三人がいる可能性は高い。

 

 

 

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幸いにも、四人とはすぐに合流を果たせた。

だが、様子がおかしい。

あれだけはしゃいでいためだかは傍から見てもわかるくらいに落胆し、隣にいる善吉に話しかけられても肩を震わせるだけで何も言わない。

その善吉の顔も悲しげで、必死にめだかを慰めようとしている。

 

 

『真黒、これはどういう状況なんだこれは?動物たちがいなくなってるんだが』

 

 

「ああ鯱くん……実はこれはめだかちゃんが原因なんだ」

 

 

『めだかの?』

 

 

「めだかちちゃんの圧倒的存在感――威圧感のせいで動物たちが怯えてしまったんだ」

 

 

『それでこの有様かよ』

 

 

改めて、めだかの異常性には驚かされる。

万能であるがゆえに孤独で、完全であるがゆえに孤高で、完成しているがゆえに孤立する。

望んで生まれ持ったわけではないだろうに。

 

 

『めんどくさいけど何とかしてみるか』

 

 

「何をする気だい鯱くん?」

 

 

『まあ見とけよ。俺なりに妹を慰めてくるからよ』

 

 

くじらと真黒をその場に残し、めだかたちに歩み寄る。

 

 

「鯱くん・・・・」

 

 

「兄様ぁ・・・・」

 

 

『ひどい顔だな二人とも。それはさておき』

 

 

 めだかの背を押して、檻に近づける。

 

 

「グスッ……何のつもりですか兄様。こんなことをしても動物が出てきません」

 

 

『いいからそこにいとけ』

 

 

檻の前まで来て息を一吸い、そして…………

 

 

『ぴぃ~』

 

 

俺は口笛をした。これは獣笛と言って、動物と意思疎通を図ることができるんだ。まあ俺にしかできな

いんだけどな。

俺が獣笛した後、檻の奥から動物たちが出てきた。

 

 

「わあー、ライオンさんだー!」

 

 

善吉は両手を挙げて喜んでいるが、めだかは信じられないらしく呆けている。

ライオンはめだかに縋り付くような視線を投げかけ、自ら頭を垂れて服従の意を示した。

めだかが恐る恐る手を延ばして頭を撫でても、されるがままだ。

 

 

「善吉! 触れたぞ!」

 

 

「よかったねーめだかちゃん!」

 

 

「一体何が……」

 

 

「兄貴は一体何をしたんだ?」

 

 

『簡単に言ったら俺にしかできない特技を使ったとしか言えないな』

 

 

俺たちはそのあと動物園を皆で歩きながら楽しんだ。まあ、めだかのテンションが高すぎて疲れたけど

な。でも、とても楽しめたな。

 

 

 

―――――――――おまけ―――――――――

 

 

 

「お、いたいた!まったく眠歌ちゃん急にいなくなったからビックリしたけど、迷子のお知らせで眠歌

ちゃんの名前が聞こえたからよかったよ!」

 

 

「まったく眠歌さんはすぐいなくなるから困ります」

 

 

「まあ、見つかったからいいんじゃねえの?」

 

 

「『ねえ、眠歌ちゃん。どうしてアイスを手に持ってるの?確かみんなのお金は蛾ヶ丸ちゃんが持って

るんじゃなかったけ?』」

 

 

そう言って眠歌に近づいてくる四人。一人は着物を着けている女か男かわからない子。二人目は眼鏡を

掛けていて、携帯ゲームを持っている男の子。三人目は何故か釘バットを持っている女の子。四人目は

喋る時に『括弧つけて』喋る男の子。

 

 

「それはね~。私が迷子の時に助けてくれた男の子に買ってもらったの~」

 

 

「よかったね眠歌ちゃん。その人にはちゃんとお礼を言ったかい?」

 

 

「うん!ちゃんと言ったよ~鬼海さん」

 

 

「よくできました」

 

 

そう言って眠歌の頭を撫でる鬼海。

 

 

「あれそう言えば軍時《ぐんじ》の奴はどこ行ったんだ?さっきまでいたのに、球磨川さんアイツが

どこ行ったか知ってる?」

 

 

「『僕も分かんないよ。軍時ちゃんは眠歌ちゃんの次に迷子になるからね。』」

 

 

「そういえば志布志さん。軍時さんならさっき『よし!ライオンをペットにしたいから盗んで来よう』

って言ってましたよ」

 

 

「うわぁ~。軍時くんはやろうとすることが凄すぎるね。眠歌ちゃんの次は軍時くんかよー。皆がん

ばって探すぞ~」

 

 

「「「「『えぇ~』」」」」

 

 


 
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