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仮面ライダークロス 第三十一話 Kが求めたもの/迫る、決戦の刻(とき)!

RIDERさん

今回は二話完結形式の前編です。

2012-06-30 05:35:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:714   閲覧ユーザー数:709

ガイアメモリがもたらす犯罪は、とどまるところを知らない。俺達の街のシンボルも、無惨な姿にされた。光輝が直してくれたからよかったものの、もし光輝がいなかったらどうなっていたか…。

 

 

 

いつものように報告書を書く翔太郎。今回の内容は、大道克己率いるNEVERとの戦いについてだ。原作を見た方ならわかると思うが、このいわゆるAtoZ事件において風都タワーは破壊されており、復旧には一年の歳月を要した。だが、今回は光輝がいたためにすぐ復旧され、復旧の一年はなくなっている。

 

 

 

そんな彼のもとへ、一人の依頼人が訪れた。

 

 

 

 

そして、この依頼人によってもたらされる戦いの中、

 

 

 

 

 

 

 

 

翔太郎を含めた風都の住人達は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かけがえのない存在との別れを強いられることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトは一枚の紙を読んでいた。紙には、『最高の思い出を作るためのデートスケジュール』と書いてある。光輝が消滅するという話を聞き、はやてが考案したデートスケジュール表だ。はやて曰く、『このスケジュール通りに行動すれば、最高の思い出を作れる』らしい。

「光輝…」

フェイトは思う。AtoZ事件のゴタゴタで忘れそうになっていたが、光輝はもうすぐ消えてしまうのだ。

「何で…何で…そんなこと…!」

フェイトは涙を流した。彼女は今、神という存在を心底恨んでいる。神がこのようなシナリオを書いたがゆえに、自分は最愛の人物と別れるはめになってしまったのだから、当然と言えば当然だが。

 

しかし、嘆いている暇はない。

 

今日は光輝とのデートの日。楽しい日にしなければ。

 

まず第一項目を読むフェイト。項目には、『相手の最も好む服装で悩殺すべし!』と書いてあった。この項目を実行するために、光輝からはあらかじめ、どんな服装が好きか聞いてある。フェイトはその時のことを思い出す。

 

 

 

 

『えっ、どんな格好が好みか?僕はフェイトがするならどんな格好でも好きだけどなぁ…』

『嬉しいけど、それじゃ駄目なの。一番好きな格好を言って?できるだけ具体的に。』

『…じゃあ、清楚な感じかな?派手すぎず飾りすぎず…僕はそういった格好が好みだよ。』

『髪型とかは?』

『いつものロングでオッケー。』

 

 

 

 

「派手すぎず飾りすぎず…」

デートまではまだ時間があるため、ゆっくりと服を吟味するフェイト。

「…こんな感じかな?」

やがてフェイトが選んだのは、水色のワンピースだった。それから残った時間で髪型も念入りに手入れをし、持ち物も確認。最後に水色のパンプスを履いて、出かけた。

 

 

 

 

 

待ち合わせ場所の公園では、白いシャツに青いジーパンを着用した光輝が、既に待っていた。

「光輝ー!」

手を振りながら呼び掛けるフェイト。気付いた光輝は笑顔でフェイトを見るが、次の瞬間、光輝はあっけに取られたような顔で固まる。

「ごめん。待った?」

近くまで来ても、光輝は固まったまま。

「…光輝?」

「…えっ?あっ、ううん!全然!こっちも今来たところだし、まだ早いから…」

光輝はようやく反応し、再びフェイトの格好に釘付けになった。

「…似合ってる。すごく似合ってるよ」

「え…」

次に発された言葉を聞き、

「そ、そうかな/////」

赤くなるフェイト。

「じゃあ、行こうか。」

手を差しのべる光輝。フェイトは迷うことなくその手を取り、

「うん!」

二人は手を繋いで歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

その光景を監視する影が、いくつか。

「どうにか、うまくいきそうだね。」

「うん。つかみはバッチリや!」

言ったのは、なのはとはやてだ。なぜ彼女達がいるのか。当然、面白半分である。ちなみに、来ているのは二人だけではない。シグナムにヴィータ、照山もだ。

「主はやて。これは…その…」

「やっぱやめた方がいいって!なのはも!」

止めようとするシグナムとヴィータ。しかし、

「大丈夫だよ。二人とも優しいし、見つかっても平気。」

なのはは聞かない。照山は呆れる。

「お前らも好きだよなぁ…そんなことして何が楽しいんだ?」

「わかっとらんなぁ照山くんは!光輝くんはもうすぐ消えてまうんよ?だったら、最高の思い出づくりに協力するんが、友達ってもんやないか!」

はやては正論を言うが、悲しいかな、はやてなのでいまいち発言に説得力がない。

「私なのでって何や私なのでって!あんた私のことどう見とんねん!?」

「誰と話してんだ?」

「え、ああ、何でもあらへんよ?」

照山に訊かれ、慌てて取り繕うはやて。

「はやてちゃん。フェイトちゃん達行っちゃうよ?」

「何やて!?今すぐ追うんや!!」

なのはに言われて、はやては仲間とともに追跡を再開した。

 

 

 

 

 

(…バレバレなんだけどね)

光輝は心中呟く。彼ははやて達の尾行に気付いている。

(邪魔してこなきゃ別にいいけど)

「光輝?」

「ん?どうしたの?」

「光輝が黙ってたから…」

「ああごめんごめん。それで何?」

「…光輝は、あとどれくらいで神帝に覚醒するの?」

聞かれて、光輝は黙った。先日の戦いで、彼はエターナルメモリとインフィニティーメモリを使わず、アンリミテッドフォースで肉体を硬化した。あの時セクレタリーが放った攻撃は、鋼鉄すら両断するほど。光輝は、それを防ぎきれるくらいまでに肉体を硬化したのだ。わずかに傷を負ったが。無限の使徒に覚醒したての頃なら、そこまでアンリミテッドフォースを扱えはしなかった。

 

当然のことながら、神帝への覚醒が近付けば近付くほど、アンリミテッドフォースの扱いはうまくなる。ここまでアンリミテッドフォースを扱えるようになったということは、神帝への覚醒は間近ということだ。

「わからない。でも、たぶんもうすぐだと思う。」

「…そう…」

フェイトは暗くなった。今のこの一時が、もうすぐなくなってしまうのだ。彼女にとって、これほど悲しいことはない。

「…でも、今日はデートだから、そういうことは忘れようよ!」

「…うん。そうだね!」

光輝はフェイトの手を引き、フェイトは光輝に手を引かれる。二人は、今日という大切な日を謳歌するために歩いていった。

 

 

 

 

 

ここは星降谷と呼ばれる場所。翔太郎、亜樹子、一真の三人は、依頼人、轟響子に連れられてここに来ていた。

 

依頼の内容は、琉兵衛がここでなくした『イーヴィルテイル』という謎の物品を見つけることである。響子は琉兵衛と加頭がその件について相談している場面を目撃しており、えらく取り乱している様子だったからという理由で、翔太郎達に依頼したのだ。響子にとって琉兵衛は憧れの人らしく、なんとか探しだして琉兵衛に届けたいとのこと。翔太郎達も琉兵衛に迫れるかもしれないという理由で、依頼を引き受けた。ちなみに一真がここにいる理由だが、今日行われるデートのことを知っており、邪魔をするわけにもいかず、暇になったという理由で、依頼を手伝いに来たのだ。

 

 

やってきたはいいが、星降谷内部はあちこちが土砂で埋もれており、どこをどう探していいかわからない。

「こんな時フィリップの検索が使えりゃなぁ…」

翔太郎はぼやく。フィリップの地球の本棚では、琉兵衛を含めたミュージアム関連の情報は検索できないのだ。

「心配ないわ!」

言ったのは亜樹子。

「こんな時こそ…ダウジングよ!!」

そう言って亜樹子が出したのは、スリッパだった。なぜかスリッパでダウジングする亜樹子。響子はついていく。一方、一真は頭をひねっていた。翔太郎は訊く。

「おい。さっきからどうしたんだ一真?」

「…イーヴィルテイル…でしたっけ?なんかどこかで聞いた覚えがあるような気がして…」

 

 

 

 

 

その頃、フィリップは検索をしていた。だが本棚がフリーズを起こし、検索できない。

「やはりミュージアム関連の情報は、僕には閲覧不可能か…」

一度光輝にも頼もうと思ったフィリップだが、光輝はもうすぐ消える運命にあり、今日はフェイトとの大切なデートの日。邪魔をするのもはばかられたため、やめておいた。諦めて検索を中止しようとするフィリップ。

 

 

 

だが次の瞬間、突然フリーズが治まり、本棚が消えていくつかの本が現れた。

 

 

 

「まさか…これが園咲家の情報!?」

驚くフィリップは、そのうちの一冊を手に取る。表紙にはローマ字で、『ライト ソノザキ』と書いてあった。

「ライト ソノザキ……僕の…本!?」

園咲来人。それがフィリップの本名であり、つまりこの本は、フィリップの情報の全てが記された本。フィリップがずっと読みたいと思っていた本。

 

だが、フィリップは唐突な恐怖に駆られた。これを読んでしまったら、取り返しのつかないことになるような気がして。

「う…うわっ!!」

フィリップは本を投げ捨て、地球の本棚から出た。

 

それからすぐ、若菜が現れる。

「意気地がなーいんだ。せっかくセキュリティを外してあげたのに…」

 

 

 

 

 

 

翔太郎達が亜樹子のスリッパダウジングを頼りにイーヴィルテイルを探すこと数分。

「反応あり!」

亜樹子が言い、

「おい。なんかあるぞ!」

翔太郎が砂に埋もれている箱を発見し、書かれている文字を読み上げた。

「イーヴィルテイル…これだ!」

「本当!?」

響子は翔太郎の手から箱をひったくり、調べる。

「鍵がかかっているわね…」

「よし。ならぶっ壊して…」

「駄目よ!中身が傷付いたらどうするの!!」

翔太郎の提案を即行で却下する響子。

 

その時、

 

「危ない!」

一真が響子を突き飛ばした。スミロドン・ドーパントが現れて、箱を奪おうとしたのだ。

「幹部か!フィリップ、変身だ!」

 

〈JOKER!〉

 

「「変身!」」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

「仮面ライダー!?」

翔太郎がWに変身したことに驚く響子。

『敵はスミロドンだ。』

 

〈XTREAM!〉

 

Wは素早く動き回るスミロドンに対処するため、サイクロンジョーカーエクストリームに強化変身。

「検索を終了した。」

「「プリズムビッカー!!」」

 

〈PRISM!〉

 

Wはプリズムビッカーを召喚してプリズムソードを抜刀。

「そこか!」

飛び掛かってきたスミロドンに対し、一撃を見舞う。だが、スミロドンのスピードは検索結果のデータより速く、そのため、浅いダメージしか負わせられなかった。

「検索結果より反応速度が速い?そんなはずは…」

疑問に思うフィリップ。

 

 

その時、洞窟の天井からテラーフィールドが染みだしてきた。

「これは…あの時の…!」

驚くフィリップ。そこへ、テラー・ドーパントの声が響く。

「まさか君達が見つけてくれるとは…探す手間が省けたよ!」

「この声…館長!?」

響子も驚く。テラーの声はさらに続けた。

「さぁ、それを渡してもらおうか。それは私達のガイアインパクトに必要なのだ!」

「ガイアインパクト?」

テラーが発した謎の言葉に、翔太郎は警戒する。一真はブレイバックルを取り出すが、フィリップがやめさせた。

「待ちたまえ剣崎一真。今ここで戦っては不利だ」

フィリップの言う通り、こちらには亜樹子と響子がいる。このまま戦ったら巻き込んでしまう可能性が高い。

「ここは一度退くべきだ。」

「くっ…わかりました…」

一真は亜樹子と響子を連れて、Wとともに脱出した。

「逃がしたか…だが、イーヴィルテイルのありかがわかっただけでもいい。あれが揃えば、ついに…」

テラーは意味深な言葉を告げ、スミロドンは手で顔を洗っていた。

 

 

 

 

 

光輝とフェイトは順調にスケジュールをクリアしていき、今はベンチで休んでいた。

「あー面白かった!こんなに楽しいデートは初めてだよ。」

「ふふ。喜んでくれて私も嬉しい」

フェイトは微笑む。彼女は光輝の過去を聞いた時から、なんとかして光輝を幸せにしたかった。他人への思いやりが人一倍強いフェイトである。

「ねぇ光輝。」

そこでフェイトは光輝に訊いてみた。

「何?」

「…今、幸せ?」

「幸せに決まってるでしょ?」

答えて光輝は、フェイトを強く抱きしめた。

「気遣ってくれてありがとう。君はやっぱり、最高の女性だ。」

「光輝…よかった…」

愛する人の温もりを感じながら、フェイトは喜んだ。と、

(…あれ?)

突然フェイトの視界がぼやけてくる。

(なんだか…眠く…)

あまりにも強い睡魔。抗うこともできず、フェイトは眠りについた。

「…ごめん。フェイト…」

光輝はフェイトをゆっくりと放し、ベンチの上に寝かせる。アンリミテッドフォースを使い、彼女を眠らせたのだ。

「…行ってくるよ。」

歩き出す光輝。その先には、隠れて二人を尾行していたはやて達がいる。彼女達もまた、既に光輝の手によって眠っていた。

「…あとはお願い。」

静かに言ったあと、光輝は駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

宿敵と決着をつけるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!」

アクセルトライアルに強化変身したアクセルは、スミロドンに追い詰められていた。琉兵衛を逮捕するため翔太郎や一真とともに博物館へ乗り込んだ照井は、琉兵衛と対面したのだが、琉兵衛のテラーメモリが持つ恐怖を操る能力によって翔太郎は戦意を喪失。特殊体質なためテラーメモリの影響を受けない照井がアクセルに変身して戦いを挑むも、乱入してきたスミロドンとの戦いに突入し、現在に至るというわけだ。ちなみに、一真は翔太郎の様子を見させるため、博物館に置いてきている。

 

アクセルトライアルとスミロドンのスピードは、おおむね互角。だが、反応速度はスミロドンが上回っており、アクセルはスミロドンに翻弄されている。

「照井さん!」

そこへ翔太郎と一緒に来た一真。

「変身!」

 

〈TURN UP〉

 

ブレイドに変身し、アクセルに加勢する。だが、やはりスミロドンには追いつけず、圧倒されてしまう。

「…」

翔太郎はそんな光景をぼんやり眺めていた。

「照井…一真…」

そこへ、

「翔太郎!」

フィリップが来た。

「翔太郎!何をしているんだ!」

その言葉で我に返る翔太郎。

「!!何やってんだ俺…フィリップ!変身だ!!」

 

〈JOKER!〉

〈CYCLONE!〉

 

「「変身!」」

 

〈CYCLONE/JOKER!〉

 

二人はWに変身。

『翔太郎。僕に考えがある』

「フィリップ?」

『敵を人間だと考えていたのが間違いだった。』

 

〈METAL!〉

〈CYCLONE/METAL!〉

 

Wはサイクロンメタルにハーフチェンジし、メタルシャフトを抜いて目の前で何回か振り、

「ミック。静かに!」

メタルシャフトで一ヵ所を指し示した。すると、指し示した場所にスミロドンがお座りをしたではないか。

 

〈STAG〉

 

Wはスタッグフォンにギジメモリを装填し、メタルシャフトに装着。

 

〈METAL・MAXIMUM DRIVE!〉

 

さらにメタルシャフトにもメタルメモリを装填。

「『メタルスタッグブレイカー!!』」

Wはメタルシャフトの先端から、クワガタの角を模したエネルギーの角を生み出し、スミロドンのドライバーを狙って挟み込んだ。

『少し我慢して。』

フィリップが言い、ドライバーが砕け散り、メモリもブレイクされる。スミロドンは変身が解除され、ミックに戻った。

「猫が…敵組織の幹部だと!?」

「猫に負けてたとか…ショックだよ…」

驚くアクセルとブレイド。Wは変身を解き、目を覚ましたフィリップがミックに向かって歩く。

「今のは、特別なごちそうをあげる時の合図だ。お前は僕の猫だった」

フィリップはミックを抱き上げる。

「これでもう、ドーパントになることもないよ。」

「フィリップ…お前、自分の本を読んだのか!」

翔太郎は帰ってすぐ、フィリップから自分の情報を閲覧できるようになったことを聞いていた。

「…ああ。」

フィリップが答えた時、

 

 

 

「おめでとう来人!」

 

 

 

テラーフィールドが出現し、テラー・ドーパントが現れる。ミックはフィリップの腕を抜け出し、逃げ去った。

「父さん…」

「ようやく知ったな。自分の過去を」

ゆっくりと歩み寄ってくるテラー。

「翔太郎!変身だ!翔太郎!」

フィリップは翔太郎に呼び掛けるが、

「ハァ…ハァ…!」

翔太郎は震えながら後ずさるばかりだ。

「無駄だ。彼はもう、二度と私の前に立つことはない!」

勝ち誇るテラー。その時、アクセルがエンジンブレードの衝撃波で、ブレイドがサンダーディアーのカードを使った電撃で、それぞれテラーを攻撃し、テラーはテラーフィールドで壁を作って防いだ。

「あいにくだが、俺にはそいつほどの効果はないぞ。」

「俺も平気だ!」

アクセルは特殊体質ゆえ、ブレイドは肉体に宿っているパーフェクトジョーカーのカードの効果で、テラーの能力が効いていない。

「そうそう。そういう体質だったねぇ!そっちは、無限の使徒から受けた加護のおかげか。だが、私のテラーメモリを精神攻撃だけのメモリと思うかね?」

言い放つテラー。すると、

「ぬおおおおおおおおおおおおお!!!」

テラーの頭部から王冠が分離し、巨大な竜、テラードラゴンとなってアクセルとブレイドに襲いかかった。

「うわっ!!」

テラードラゴンの尾に弾き飛ばされるブレイド。アクセルはスピードでテラードラゴンを翻弄するが、すぐに噛みつかれ、空中で振り回される。

「君は噛み砕いて差し上げよう。物理的にね!」

「うわあああああああああああああ!!!!」

テラードラゴンに咀嚼され、苦悶の声をあげるアクセル。アクセルトライアルは装甲が薄いので、受けるダメージが大きい。

「あの怪物が…館長!?」

近くに隠れて様子を見ていた響子。しかし、

「お父様。ネズミよ」

突然響子の背後に現れた若菜によって、つまみ出される。同時に、響子が隠し持っていた箱が落ちる。

「おお!イーヴィルテイル!」

「まずい!翔太郎!」

再び呼び掛けるフィリップ。若菜はフィリップに言う。

「一緒に行きましょう来人。読んだはずよ、自分の本を…」

「あんなの…あんなのウソだ!!!」

頭を抱えるフィリップ。そんな彼に、テラーは残酷な真実を告げた。

 

 

「ウソではない。お前は死んだのだ来人!十二年前に。」

 

 

「!?」

驚いてフィリップを見る翔太郎。

「どういうことだよ…フィリップ!」

「…今あの人が言った通り…らしい…僕は…十二年前に……死んでいる…」

 

 

 

今から十二年前。園咲家は、泉と呼ばれる地球意思との接触ポイントを発見し、家族全員で発掘に赴いた。その際、フィリップは泉の中に誤って転落してしまい、死亡したのだ。しかし、消滅した肉体は膨大なデータによって再構築され、かろうじて人間として暮らせるようになった。それが現在のフィリップなのである。

 

 

 

〈PERFECT JOKER!〉

 

「ウェェェェイッ!!!」

ジョーカーフォームに強化変身したブレイドは、ジョーカーソードでテラードラゴンを弾き飛ばした。アクセルは吐き出され、テラードラゴンはテラーに向かって飛んでいく。しかしテラードラゴンはテラーにぶつからず、テラーの王冠、テラークラウンに戻って、テラーの頭部に収まった。

「ふむ…やはり、厄介だな…」

ブレイドを睨み付けるテラー。

 

その時、

 

 

 

 

 

「ついに自ら行動を起こしたな。園咲琉兵衛!」

 

 

 

 

 

光輝が現れた。

 

 

 

「…ほほう…無限の使徒か…!」

ブレイドから光輝に視線を移すテラー。

「光輝!どうして…」

驚くブレイド。

「…これだけは…僕自身の手で決着をつけなければいけないんだ。」

光輝はクロスドライバーを装着。

「わかってくれ。一真」

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

 

〈CROSS!〉

 

クロスに変身し、

 

〈UNLIMITED!〉

 

一気にクロスアンリミテッドに強化変身する。

「お父様!」

駆け寄ろうとする若菜だが、テラーは片手を若菜に向けることで若菜を制し、クロスに言う。

「そうだね。私も、君だけは私の手で始末しようと思っていたところだ。」

言って、テラーは改良型ガイアプログレッサーを取り出す。

「若菜に融合しているものと同型のガイアプログレッサーに、大幅な改良を加えた特製の、ガイアプログレッサーだ。融合に、ジーンメモリは必要ない!」

テラーは自分の胸に改良型ガイアプログレッサーを当て、融合を開始。

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」

辺りが緑色の光に包まれ、光が消えた時、テラーの肉体には変化が起きていた。

 

クレイドールエクストリームと違い、大きさこそ変わっていないが、全身に、そしてテラークラウンにも、木の根を模したような緑色の刺青が施されている。

 

 

テラーエクストリーム。テラーは今、フィリップや若菜と同じ、いや、それ以上の力を手に入れたのだ。

「小細工を…うおおおおおおおおおおお!!!」

クロスは駆け出し、アンリミテッドフォースによって350000tの領域まで強化された拳を放つ。対するテラーは、テラーフィールドで壁を作る。

「無駄だ!!」

構わず拳を放つクロス。あらゆるものを粉砕できるパワーを秘めた拳だ。テラーフィールドの壁など、一撃で貫く。

 

 

はずだった。

 

 

クロスの拳はテラーフィールドを貫けず、受け止められてしまったのだ。

「なっ!?ぐああっ!!」

それだけでなく、クロスは電撃にでも打たれたようなダメージを受け、弾き飛ばされる。テラーは説明した。

「今融合した改良型ガイアプログレッサーには、対アンリミテッドフォース用の処理が施されていてね。このテラーエクストリームフィールドに触れた瞬間、アンリミテッドフォースの発動は無効化される!」

「何だと!?」

「それだけではない。ぬおおおおおおおおおおお!!!」

再びテラードラゴンを出現させるテラー。しかし、ただのテラードラゴンではなく、全身にテラー同様の刺青が刻まれ、大きさが何倍にも巨大なものとなっているテラーエクストリームドラゴンになっていた。

「光輝!!」

割って入り、テラーエクストリームドラゴンに戦いを挑むブレイド。先ほどとは違い、能力を数倍に増幅されたテラーエクストリームドラゴンが相手では、さすがのジョーカーフォームでも苦戦を強いられる。

「ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

テラーはテラーエクストリームフィールドを空中に生成し、球状に集束。破壊エネルギーに変換し、

「どああああああああああああ!!!」

巨大エネルギーボール、デスゾーンボンバーをクロスに向けて放った。

「うわあああああああああああああああああああああ!!!!」

あまりの破壊力に変身を解除されるクロス。

「そんな…白宮光輝でも駄目だなんて…」

絶望するフィリップ。

 

だが、恐怖の帝王に挑む戦士はまだいた。

 

「やってくれたな!」

「これ以上はやらせねぇ!!」

ダンテとバージルである。彼らはテラーが改良型ガイアプログレッサーと融合した時の光を目にし、ここへ来たのだ。

 

〈SLASH!〉

〈BLAST!〉

 

「「変身」」

 

〈SLASH/BLAST!〉

 

早速ソウガに変身して立ち向かうダンテとバージル。群雲を抜いて斬りかかるが、その前にベルセルクが立ちはだかり、アームズベルセルク ソードモードで群雲を受け止めた。

「木林影斗!?」

「てめえ…ここに来てまだ邪魔するつもりかよ!?」

「…」

ベルセルクは無言でソウガを弾き飛ばし、テラーに言う。

「やりたいことがあるんだろ?今回限定で守ってやるから、さっさとしな。」

「!?」

テラーは驚く。

「…君は、私が憎くないのかね?君を強化戦士に改造し、君の命を狙っているこの私を…」

「憎いに決まってんだろ!!今すぐぶっ殺してやりてぇよ!!」

怒るベルセルク。

「…だがな。今の俺には、やるべきことがある。あんたを殺すのは、その後だ。」

ベルセルクはソウガに挑んだ。

「…千載一遇のチャンスだね。」

テラーは翔太郎とフィリップを見る。

「翔太郎!変身だ!」

「あ、ああ…」

二人はWに変身し、テラーに戦いを仕掛ける。だが、実力はもはや天と地ほどの差がある。

「終わりにしよう。」

テラーはテラーエクストリームフィールドをWにぶちまけて(テラーエクストリームドラゴンと分離していてもテラーエクストリームフィールドが出せる)ダメージを与え、変身を解除させた。

「ようこそ、私の世界へ!君は一生、恐怖の中で生きることになる!」

テラーは翔太郎に言い放ち、

「うわあああああああああああああああ!!!」

翔太郎は恐怖から慟哭をあげた。イーヴィルテイルを回収したテラーはテラーエクストリームドラゴンを呼び戻し、光輝に言った。

「君を始末してあげようと思ったが、今君に構っている暇はない。全てが終わった暁に、私の手で、隼人君と優子君のもとへ送ってあげよう。」

「さぁ、いらっしゃい来人。」

若菜もフィリップを回収。

「待て!!」

斬りかかるブレイド。しかし、二人はフィリップを連れ、テラーエクストリームフィールドを使って消えた。

「今回はここまでだ!」

ベルセルクもスタングレネードを使って逃げる。

 

 

 

 

 

テラーはクロスをも超える力を身に付け、フィリップを奪っていった。完全敗北である。

「くそ…くそ…!!」

「光輝…」

変身を解除する一真。しかし、光輝のもとへは近寄れない。何と声をかけていいかわからなかったからだ。

「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

目の前に両親の仇がいながら、復讐を果たせなかった光輝。

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

かつてないほどの屈辱を経験した彼は、両親の仇を討てるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

怒りとも、苦痛とも、悲しみとも取れる慟哭を前に、誰もがかけるべき言葉を失っていた……。

 

 

 

 

 

************************************************

次回、

仮面ライダークロス!!

 

フィリップ「僕の家族が…揃った…!」

影斗「俺も、もう限界か…」

光輝「さようなら…フェイト…」

フェイト「光輝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

第三十二話

燃え尽きるC/神に近付きすぎた者の末路

 

これが裁きだ!!

 

 

テラーエクストリーム

 

テラー・ドーパントが、改良型ガイアプログレッサーと融合することによって強化変身した姿。大きさは変わっていないが、全身に木の根を模した刺青が刻まれており、能力が数十倍に高まっている。

 

テラーフィールドが進化したテラーエクストリームフィールドを使う。これは触れただけでアンリミテッドフォースを無効化する機能があり、パンチやキックの威力をアンリミテッドフォースで強化していた場合、威力が本来のものに戻る。また、本来テラーフィールドに攻撃力はないが、テラーエクストリームフィールドには、攻撃力がある。テラードラゴンも本来の何倍もの大きさを持つテラーエクストリームドラゴンに進化しており、さらに強力な攻撃手段になっている。分離中でも、テラーエクストリームフィールドでの攻撃は可能。テラーエクストリームドラゴンも、口からテラーエクストリームフィールドを吐く。

 

テラーエクストリームフィールドを破壊のエネルギーボールに変えて放つ『デスゾーンボンバー』が必殺技。

 

ちなみに、改良型ガイアプログレッサーとの融合に伴って、琉兵衛の肉体年齢は十五歳ほど若返っている。

 

 

 

改良型ガイアプログレッサー

 

若菜が融合したものと同型のガイアプログレッサーに、大幅な改良を加えた特製のガイアプログレッサー。対アンリミテッドフォース用の処理が施されており、融合にジーンメモリを必要としない。


 
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