クウガ~アギト
時間軸:アギト終盤。話数で言うとアギト47話以降、最終回より前。
紛らわしいので前述しておくと、仮面ライダーアギトに変身する記憶喪失の青年を津上翔一。
黒服の青年に従う謎の男を沢木哲也、と明記します。
冒険の最中、五代雄介は友人から日本でアンノウンという怪人による連続不可能殺人を知る。
五代雄介はダグバとの戦いで変身ベルト:アークルを破壊され、既に変身不能に陥っていたが、雄介は帰国を果たす。
そして雄介は元の部署に戻ったかつての戦友:一条薫と再会する。
「…一条さん…また戦いが始まったんですね」
「五代。お前は元々民間の協力者だ。戦う義務なんて最初からない。お前は充分戦った」
五代には戦いが似合わない。それは五代雄介を知る誰もが思う感想だ。
戦いを続け、戦いに苦痛を感じながらも誰かの笑顔のために戦った彼を誰も責めはしない、五代雄介本人以外は。
「…安心している自分が…俺の中で笑ってるんです。
変身できないから戦わなくていい…他の誰かに戦わせて自分は笑ってていい、そう思う自分が…!」
一度戦いに身を置いた五代雄介は、表には出さないが心に大きな傷を負っていた。
その傷は闘いから離れることでのみ癒えるものだったが、その時間がなく次の戦いが始まってしまった。
見ず知らずの誰かに戦いを押し付ける苦痛は、その精神をさらに傷つけていた。
そんな中でも、雄介は妹が勤める幼稚園に来園する。
年月が経ち、子供たちも卒園して顔ぶれも大きく変わっていたが雄介は変わらず二千の必殺技を見せて笑顔を作り出していく。
そんな中で無理に笑っている少年、ケンジに出会う雄介。
彼の父親はアンノウンによって殺されており、“アンノウンは殺害した人物の親族も襲う”という法則からケンジ自身も狙われることを示唆していた。
その恐怖の中でも、父親との誓いを守って笑い続けているケンジを雄介は抱きしめる。
「父さんがずっと笑ってろ、って言ったんだ…」
「泣きたいときは泣いたっていいんだよ。そのあとしっかり、心の底から笑えるようになるんだから」
溜まりに溜まった涙を流すケンジ。
胸で受け止める雄介は、その涙を止めることができなかったことを自責する。
数時間後、幼稚園に迎えに来た母親ともども、サイ種アンノウン、リノケロース・フォルティトードーとリノケロース・ウェロキタースに襲われる。
護衛についていた警官と一緒に五代も立ち向かうが、生身では太刀打ちできず、投げ飛ばされて足腰立たなくなる。そこに現れたふたりの戦士。
「金色のクウガと青いクウガ…? いや、違うッ」
アギトとG3-Xは、連携して二体のアンノウンと戦う。
圧倒的な怪力と防御力、さらに前後に重なって時間差攻撃を掛けてくる二体のアンノウンの前に苦戦するダブルライダー。
しかし、遅れて現れた三人目の仮面ライダー=ギルスの奇襲によってその連携が崩される。
そのタイミングでG3-XのGXランチャーがフォルティトードーの装甲の一部を剥ぎ取り、そこにアギトのライダーキックが炸裂、フォルティトードーの撃破に成功した。
ウェロキタースは退却し、それを言葉も交わさずに追って行く三人の仮面ライダーたち。
後に残されたのは、傷ついた幼稚園と重傷の警察官、泣き叫ぶ子供たち。
自分にもっと力があれば…三人の颯爽とした姿に自分の無力を苛み、雄介はその苛立ちを吐き出すようにバイクを飛ばす。
「うぁあああああッッ!」
目的地もなく走り回り、夜の闇の中、閉店間際の飲食店で食事をしようと立ち寄る雄介。
そこは仮面ライダーアギト=津上翔一が手伝っている店だった。
「…悩んだら空を見ればいいんですよ、五代さん」
「空は俺も好きです。なんか…スッキリとしますよね」
何か通じ合うもののあるふたり。
そのとき、笑顔が消えて何か虫の知らせでもあったかのよう翔一が店を飛び出し、バイクに飛び乗った。
雄介もそれを追う。目の前でアギトへと変わる翔一に驚くが、アギトの乗っているマシントルネイダーのスピードに振り切られる。
追いつくこともできない無力感は、雄介をさらに追い詰めた。
自分への怒りが雄介の体中に浸透する中、現れたのは謎の男:沢木哲也。
雄介は直感的にその人物がただの人間でないことを察する。
「あなたは?」
「私は…人の可能性を信じている男だ。君にも…希望を見せて欲しい」
「…え?」
いとも容易くアークルを修復する沢木。
驚く雄介だが、理由を沢木に問う間もなく闇夜に響く悲鳴にその身体は動いていた。
「変身ッ!」
アークルが強い閃光を放って肉体は瞬く間に変わり、その姿は赤き正義の戦士:クウガそのものだった。
クウガが駆けつけると、既に戦いは始まっていた。
先ほどのサイ種アンノウン:リノケロース・ウェロキタースと、相対する仮面ライダーは双頭の槍を振り回すアギト・ストームフォームだ。
「あなたは…新しいアギト?」
「超変身ッ!」
新たなライダーの出現に驚きはしたものの、アギト=翔一は、フォームチェンジしたクウガ・ドラゴンフォームと轡を並べる。
ストームハルバードが、ドラゴンロッドが、二本の青い素早い衝打がウェロキタースを追い詰める。
そしてクウガはアメイジングマイティへとフォームチェンジし、アメイジングマイティキックを炸裂させる。
「…やった…! やりましたよ、アギトさん! 俺、やれましたよ!」
「あなたひょっとして…さっきお店に来てた五代さん…?」
気配で正体に感づくアギト=翔一。そのときクウガ=雄介に異変が起きる。
アメイジングの全身に金色の皹割れ、中から一回り大きな戦士が蛹から成虫になるように現れた。
それは、無力な自分を捨て去り、他者を守るために敵を倒せることによるフラストレーションの解消。
五代雄介が優しすぎる故に発生した一瞬の緩み。
他人を守るために自分を犠牲にできる純粋さも、言い換えればエゴにすぎない。
綺麗事ばかりだと笑われたこともある。無償で傷つきながらも戦うという健全すぎて常人には到達できない英雄的精神力。
それこそが五代雄介の究極の光であるが、陰陽は常に表裏一体。同時に究極の闇でもあった。
黒い眼をした電影を纏う究極の闇。クウガ・ライジングアルティメット。
「うぉルァアアアーーッッ!」
ライジングアルティメットが本能のままに放った拳を受け、ストームハルバートは真っ二つに折れた。
弾き飛ばされて変身が解除してしまう翔一。かつてない衝撃に翔一は意識を失った。
ライジングアルティメットは移動して薄明の街中へと攻撃を仕掛ける。
まだ人の姿は少ないが、それでも早朝出勤の会社員や新聞配達、ジョギングランナーが居る。
ライジングアルティメットはその人々に向けて黒い視線と殺意を向けるが、神経断裂弾の弾幕がそれを遮った。警視庁だ。
「アギト…いや、未確認四号ッ?」
その部隊には、自宅が近かった北条透の姿があり、その彼の判断で備蓄されていた神経断裂弾を使用していた。
元々はグロンギ相手に高い威力を発揮していた断裂弾だが、敵は撃破すると光の輪に包まれて消失するアンノウンである。
肉体の組成がわからなければ神経断裂弾も効果が低く、アンノウンとの戦いでは用いられることがなかったのだ。
牽制を続ける状況で到着するGトレーラー。
「四号が人を襲うなんて…どうなっているんでしょうか?」
「落ち着きなさい、氷川くん。今は市民を守ることだけ考えなさい」
「ですが…」
「ですがはナシ!」
氷川と小沢の掛け合いの後、サウルチームが誇る警視庁最強戦力、G3-Xが出撃する。
だが接近戦は戦いにすらならず、Gツール最強の破壊力を誇るGXランチャーですら傷ひとつ付けられない。
圧倒的なパワーの前にG3-Xは行動不能に陥り、ライジングアルティメットは100メートルを1秒という超速度で走り出し、警察の囲みを突破する。
百メートル一秒は時速に直せば360キロ、ギルスレイダーの最高速度に比肩しうるスピード。
そのとき、まさにそのギルスレイダーに乗ってライジングアルティメットと併走するひとりのライダー。もちろん葦原涼=ギルスだ。
「お前、何者だ?」
「…」
「俺や…あいつ(津上翔一)とも違う、いつもの連中(アンノウン)とも違う…二年ぐらい前に現れた連中か?」
質問には応えず、ライジングアルティメットがギルスに視線を送ると、突如としてギルスの全身から炎が噴出す。
アルティメットフォームやダグバの使っていた思うだけで敵を焼き尽くす防御不能の技。ギルスの全身から嫌な色の煙が上がり、バイクが横転してギルスも路上に投げ出される。
そのギルスを受け止めたのは、復活し追いついた津上翔一=アギト。
既に変身とフォームチェンジを終えて、ライジングアルティメットのパワーに対抗すべく、その姿はアギト最大のパワーと耐久力を持つバーニングフォームだ。
「…!」
「あなたは…そんなことをする人じゃないでしょう、五代さん!」
「う、ウオオオオオオッ!」
ライジングアルティメットは自然発火攻撃を仕掛けるが、バーニングフォームはその名の如く炎の化身。
炎の攻撃に対しては先天的に耐性があった。すかさずアギトはシャイニングカリバーをベルトから召喚し、シングルモードで構える。
バーニングフォームの剛毅な外見に沿う一撃必殺の大技、バーニングボンバーを放つ。
だが、ライジングアルティメットは避けることもなく、そのまま受けきった。何事もなかったかのように。
「効いてない…?」
アギトも辛うじてライジングアルティメットの攻撃を防御できるようにはなったが、それでも一撃受けるたびに体力を大きく削られていく。
「うわあッ」
そうやって戦っている内に追いついてきたG3-Xの専用マシン、Gチェイサー。
乗っているのは氷川誠。G3-Xは装着していない。ライジングアルティメットに破壊され、生身で最大時速350キロというバケモノバイクを操って駆けつけたのだ。
「津上さん! 今、長野県警の一条刑事から連絡がありました! その未確認生物の弱点は…腰のバックルですッ!」
「バックル…!」
そのとき、ライジングアルティメットの全身に植物の根のような、生き物のような触手が纏わりついた。
不死身の男・葦原涼の本領発揮。先ほど自然発火で丸焼きにされたはずのギルスはエクシードギルスとなり、ライジングアルティメットを押さえつけている。
ライジングアルティメットも、自然発火能力で反撃しているらしくエクシードギルスの全身の関節からは煙が上がってはいるが、その延焼も燃えると同時にエクシードギルスの脅威の再生能力で治癒していく。
「やれッ、津上!」
「ハぁああ…ッ」
いつの間にか、日が完全に登っていた。
青空の中、昇る太陽を背に受けてアギトの姿が変わる。
バーニングの厚い装甲が剥がれ落ち、夜が明けるように光り輝く戦士、仮面ライダーアギト シャイニングフォームだ。
触手で抑え付けられたライジングアルティメットのバックルへと一直線に、アギトのシャイニングライダーキックが降り注がれ、アークルは再び破壊された。
エピローグ
長野からやってきた一条は、病院で意識を失っている雄介と再会する。
先に見舞いに来ていた友人で医者の椿秀一が云うには、植物人間状態とは異なり、肉体的にはなんの異常もなく呼吸も脳波も正常、医学的にはただ眠っているだけだという。
ただし排泄も食事もせず、ただ寝息を立てて眠り続けるだけの奇妙な状態。
「…夢の中にまで…寄り道しなくてもいいじゃないか」
そこにやってきた津上翔一。翔一は自らをなんと紹介すればわからなかったが、一条は立場上アギトの情報を聞かされており、雄介との付き合いからその正体を察する。
「キミ…アギトじゃないか?」
「え、なんでわかったんですか? すごいなぁ、刑事さん」
あっさりと認める翔一に、一条は驚くどころか笑って見せた。
どことなく雄介と同じく戦士とは程遠く、だからこそ戦士たるその人物に。
「だから、俺が五代さんを…」
「キミは悪くない。もし近くに居たら…私も同じように五代を撃っただろう」
「五代さん、最後の瞬間に抵抗しなかったように思うんです。俺の仲間(エクシードギルス)に縛られてたのもありますけど、それだけじゃないっていうか…」
「…あいつらしい。力に操られながらも…あいつはひとりの人間も殺さなかった。暴れながらも必死に押さえつけていたんだな…」
「俺、戦います。五代さんが守ろうとしたもの…この青空の下で…」
作品解説:小説というには大雑把すぎる内容からお分かり頂けると思いますが、プロットです。
ネタはあっても書けない、というアレなのでネタ晒し。
クウガとアギトが同じ世界だったらどうだろうか、という妄想の上で成り立っている補完用エピソードとなっています。
仮にアギトの世界に五代くんがいたら、間違いなくアンノウンと戦っているはず。
それがないのだから、五代は変身能力を失っている? でも変身能力がなくても五代くんはできることをしているだろう…色々と考えた結果、こんな感じ。
ライジングアルティメットはディケイドのアレ。
暴走してしまったのは、テレビ版のように克服する時間と余裕が五代くんになかったから。
それでも人を傷つけず、最後は自らシャイニングライダーキックを受けて倒れる、と。
最後の意識不明は沢木の力が変な風に干渉した結果。
アギト側としては木野アギトは未登場、世界観的にもう死んじゃってるしね。
クウガ側ばっかり描写して、アギトは戦うだけ。
次に龍騎やファイズと共演する時はもっと使いたいです。
最後に。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
よろしければ感想、指摘、批評、何でも構いませんのでご意見をお寄せいただければ、84gが喜びます。
何々と何々の間を埋める話が読みたい、とかそういうリクエストも募集中。
同じ世界観(全ライダーの世界観統一)でやっている別作品、仮面ライダーサカビトはこちら。
http://www.tinami.com/view/392081
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仮面ライダーが全て同じ世界観ならば、去年のヒーローも今年の悪に戦いを挑んでいるはずだ。
昭和ライダーシリーズでは、スーパー1とアマゾン以外は全て共闘が有った。
というわけで、全仮面ライダーが同じ世界観という前提で描く仮面ライダーサカビトでは、その共闘がなければならない…。
…ならないんですが、作中のメインストーリーが2010年とほとんどが終わった後なので、描きようがないことが判明。
ネタは溜まってるんですが、時間がないのでプロットだけで公開。