風都埠頭。
ここの風は磯の香り。風都市民には馴染み深い港。
普段は平和の象徴たる埠頭だが、町の守護者と町の破壊者の戦いが繰り広げられていた。
町の守護者側は黒と緑の二色の戦士…風都専従仮面ライダーダブル。
タッグパートナーは白い身体に金の装飾を施された戦士、その名を仮面ライダーゲイザー=工藤刹那。
「半分怪人ンンーッッ! ハカイハカイハカイハカイッッ!」
敵は重装甲に四面、八本の腕を振り回す黒い怪人。
奇怪で奇怪なデザインと同じく、ダブルを見て怒涛の勢いで
「誰かと間違えてんのか? 《おそらく…アレは別の世界の記憶を移植されたフォルスだ》」
ダブル=左翔太郎の疑問に、二心同体のダブル=フィリップが右目を点滅させながら応える。
その怪人はガイアメモリの亜種、フォルスと呼ばれる
特性としては異なる時空に存在する記憶を発掘し、それを肉体に組み込む怪人。
秘密結社アロガンスの繰り出す改造人間で、別次元の戦士のレプリカといえる高い汎用性と応用力を持つ怪人だ。
「破壊せよ、破壊、はかい、ハカイ、破かイ、破壊だ…ハカイダーァアアアアッッ!」
独語に続き、全身から口笛のような音が響く。空気が淀むように波打っている。
その周囲に旋風が起きているが、いつも風都に吹いている心洗うような風とは異なる嫌らしい風だ。
「なんだこりゃあッ?《あの妙な音で次元を破壊している。興味深い》」
「つまり、どういうことなんだッ?」
「《そうだな。キミたちに理解できるように云えば…小規模なブラックホールのようなものだと思えばいい》」
「ぶ、ブラックホールっ? この風都でそんなものは作らせません…これで決めますッ!」
ゲイザーは腰に吊り下げたバインダーからカードを引き抜き、ベルトに入れる。
一呼吸で一連の動作として体に染み込んだ動作で必殺のカードを発動させる。
【
十枚の輝く光の壁がクラッシュフォルスとゲイザーの間に降り注ぐ。
これこそ仮面ライダーゲイザーの必殺技、ディメンションスラッシュⅡ。
光の壁の中をゲイザーが走り抜けることでゲイザーにエネルギーが充填、ゲイザーの剣は一撃必殺の威力を発揮する。
「《待ちたまえ刹那、相手は何を企んでいるかわからない、ここは――》」
「何を企んでるか分からないから早く潰す、って考え方もありますよ」
光速で壁の中を駆け抜けたゲイザーの刃がクラッシュフォルスの胴体に深々と突き刺さった…はずだった。
「な…に?」
間違いなくクラッシュフォルスの胴体に突き刺さり、確かに倒した――だが、四分の一。
先ほどまでの重装甲の八本腕とは比べるべくもないスマートな二本腕怪人に致命傷は与えていたが、それと同じ姿をした三体の怪人が一撃を放ったばかりのゲイザーを取り囲んでいる。
三体の発した口笛が、やはりブラックホールのような次元の穴を形成し、ゲイザーを瞬間的に包み込む。
「せ…っ刹那ッ! 《翔太郎、ルナジョーカーだ!》」
友人の危機に興奮する翔太郎に
これこそダブルの戦闘スタイル。直情型の左翔太郎が直感と条件反射で戦いを進め、冷徹なフィリップが知識と洞察を元に指揮する。
どちらかひとりでも完成しない仮面ライダー、左翔太郎の身体にフィリップの心を宿した二心同体、それがダブルだ。
【
ダブルが腰部に装着された奇妙なベルト――ダブルドライバー――からUSBメモリのような長方形の物体を抜き取り、色違いの箱を装填する。
するとどうなるか、こうなる。
左右で黒緑と色の違ったダブルの肉体は緑の部分が金へと変わる。
さきほどまでの姿は疾風の切り札サイクロンジョーカー、今の姿が神秘の切り札ルナジョーカー。
ダブル・ルナジョーカーの右腕は軟体動物のそれのようにしなり、伸び、空間の穴に吸い込まれつつある友人の手を掴んだ。
「よし、これで――《翔太郎、まだだっ!》
コンマ数秒ではあったが、友人を助けたという安堵が翔太郎側の意識に隙を作った。
ダブルの左側を擦り抜けるようにクラッシュの一体が次元の穴へと飛び込み、次元の穴の中にいるゲイザーに飛びついた。
腕が塞がっていてベルトにカードを装填できないゲイザー、重力の大竜巻から二人分の重量は引き上げるほどのパワーは無いダブル・ルナジョーカー。
この状況が示唆する未来、それはふたりとも共倒れ。クラッシュフォルスによって仮面ライダーふたりが死亡する。
「翔太郎さん、俺はもういいですから、戦ってください」
「ふざけんな! イカロスが…リインがッ、待ってるんだろうが! 簡単に諦めんなっ!」
左翔太郎は知っている。
愛する者が帰ってこないと分かったときの残された者の表情を。
父親が帰ってこないと知った関西少女、永遠に帰ってこない家族のために復讐を誓った刑事、兄を失い昨日に迷った妹…幾度となく見てきた。
彼はそれを許さない。もしそれが見ず知らずの他人であろうとも、その涙を一粒でも止めるために左翔太郎は命を懸ける。
「クラァアアアアッシュ! ハカイダァアアアッッ!」
クラッシュ・フォルスの分離した四分の一体はゲイザーのキックで破壊され、一体はそのゲイザーを道連れにしようと足掻いているが、残る二体は無傷で銃撃している。
弾丸一発々々が翔太郎の肉体を破壊すべく殺到し、小さく確実に体力を削っていく。
「ハカイダ、ハカイダ、キッカイダァアアアアーッッッ!」
「うるせえポンコツフォルス!《このままじゃキミの身体が持たないぞ、翔太郎!》
お前もうるせえぞフィリップ、俺の身体がダメになるなら…ファング準備しとけっ!」
ファングジョーカーは例外的にフィリップの身体に左翔太郎の魂が宿るフォーム。
仮にこの身体が死に絶え、文字通り魂だけになっても左翔太郎はこの友人を守り続けるだろう、だがただやられるつもりはない、最後まで諦めないのが
「…フィリップ! リボルギャリーだ! アレで…《ムリだ、翔太郎。リボルギャリーは…》」
「今、俺が破壊したからな」
絶望を告げるように次元断裂の旋風の中で立つ男、その腹部には奇妙なバックル…ダブルのベルトに似ているがメモリスロットルがひとつしかないロストドライバー。
フォルス怪人を率いる秘密結社アロガンスに所属する断罪の記憶、パニッシャーメモリで変身する戦士、仮面ライダーパニッシャー。
「云っておくが…照井とか他の連中も来れると思うなよ? あいつらは
「《仮面ライダーパニッシャー…こんなときに…ッ!》違ェッ! フィリップ!」
あんなヤツは仮面ライダーではない。
それが左翔太郎の云おうとした言葉だ。
かつて、パニッシャーと同じようにロストドライバーで変身していた仮面ライダーエターナル…大道克己にそう云ったように、仮面ライダーとは町を守る戦士に与えられる称号。
変身ベルトを持とうとも、その容姿がいかにそれらしくとも、いかに強くとも、町を泣かせる外道にその名を与えることを左翔太郎は許さない。
「…まあ、お前が妄想の中で何を思おうが関係ないな。
今のお前の現実は、手が塞がったまま俺とクラッシュフォルスの分裂体二体と戦わなければならない」
絶体絶命の危機の中で、ダブルの左翔太郎とフィリップは様々な作戦や状況を思考した。
だが、仮面ライダーゲイザー…工藤刹那の考えていることはたったひとつ。ここでゲイザーやダブルが倒されれば、自らが愛し、自らを愛してくれる人々が危険に晒されるということだ。
「翔太郎さん…いや、仮面ライダーダブルッ! リインを頼みます。イカロスには…なんとか穏便に済むように伝えてください」
「…待てッ! 刹那ッ!」
ゲイザー=刹那は、兄と慕う友の腕を始めて振り払い、空間の裂け目に落ちていく。
永遠にも思えるその一瞬が終われば、左翔太郎の絶叫が埠頭に響き渡る。
「っ、刹ッ、刹那ァーッ!《翔太郎っ、それよりも今は目の前の敵に集中しろ!》」
「俺もそうした方が良いと思うぞ? なにせ…こっちは三人だからな」
クラッシュフォルスの分裂体が二体、そして無傷の仮面ライダーパニッシャー。
それに対して、ダブルはクラッシュフォルスの攻撃で大きなダメージを身体に残し、目の前で仲間を助けられなかった。
その精神への負荷は、ダブルに重く圧し掛かっていた。
「《しっかりするんだ翔太郎ッ! 僕たちは戦わなければいけないんだッ!》
わかってるッ! わかってんだよッ! 俺にだってェッ!」
左翔太郎はフィリップのように賢くはないが決して愚かではない。
だがそれでも簡単には割り切れない。それが左翔太郎の弱さであり、そして最も強い部分でも有るのだ。
「…刹那ぁっ、お前が守りたかったものは俺が全部守ってやる! お前が帰ってくるまでなッ!」
友人は必ず戻ってくる。そう信じる相棒を見て、フィリップに既に憂いはない。
「…お前ひとりで、俺と二体のクラッシュフォルスと戦うつもりか?」
「うるせえ! 俺は!《僕は!》二人でひとりの仮面ライダーッ!
その上、今日はダチの分も戦う…《翔太郎、メモリチェンジだ。ここはヒートトリガー以外は考えられない…っ!》 おうっ!」
【
その姿はふたりの熱い攻撃性を表すように赤と青の姿、熱き銃撃手ヒートトリガーへと変わった。
「赤と青のハンブンカイジン…キッカイダー…? ゼロワン…?」
クラッシュフォルスの独語を無視してダブルは腕を振るい、静かにパニッシャーたちを指差した。
『さあ、お前の罪を…数えろッ!』
満身創痍、なれど戦意高揚さえしていれば決して折れない。これこそが仮面ライダーたる者の姿だった。
パラレルワールド、という言葉がある。
こことは異なる世界という意味だが、漢字を充てる場合は平行世界、平行宇宙、平行時間、といくつか考えられるが、どれも厳密には意味が違う。
平行宇宙とはベビーユニバース理論に基づく科学用語で、この宇宙と同じように生まれた別の宇宙を指す。
平行時間とはタイムトラベルを行った際に、過去の改変を行い、現在が矛盾する場合に用いる。
平行世界とは空間的な連続性はないが時間的な連続性を持つ時空…とはいえ、科学者や小説家と職業の違いこそあれ、結局は夢想の産物である空論…であるはずだった。
その世界はここに有った。
パラレルワールド、ここが平行宇宙・時間・世界、どれに属するかは誰も分からないが、それでも確かにそれがあった。
多数の空間が入り混じり、学園という形で互いに補填する形で共存を作り上げている。
他の世界では戦いに用いられる力を以って学業に勤しむ彼らは奇妙で、もしかしたらコメディのように笑いを誘うかもしれない。
このACE学園にはコメディのような平和が存在していた――昨日までは。
「…気付かなかったのか? 前杉士樹?」
「なぜ、それほどの高性能機を作り出す力がありながら、ディエンドライバーの力は抑制されていたか…」
この学校には仮面ライダーと呼称される者は多いが、この前杉士樹は少々例外的だった、
仮面ライダーに限らず、生徒たちの多くはパラレルワールドに類似する存在がいるが、前杉士樹にはそれが確認されていなかった。
前杉士樹こそただ一人の仮面ライダーアクエリアス…のはずだった。
アクエリアスは、ディエンドシステムという強化スーツを上回る高性能機であったが、強い力には比例して大きな危険が伴う。
その危険はACE学園を破壊し、多くの生徒たちを傷つけ、その中には士樹の友人も多く含まれていた。
助けを呼ぶ声、その中でただひとり、前杉士樹は懸命に戦っていた。
「…これはお前の責任だ、俺よ…?」
校庭に立ち並ぶ蒼い仮面ライダーたち。
前機種に当たるディエンドよりも特徴的なカードの意匠が小さく、代わりとばかりに
全員が同じ姿に同じ声、同等の力を携えて、ただ前杉士樹のアクエリアスとの違いは明確だ。強化スーツを通してでも伝わる針のような殺気は前杉士樹にはないものだ。
十三体のアクエリアスはACE学園の中でその有り余る力を振るい、多くの人々を傷つけた。
「どういうつもりなんだ、どうして…この学園を襲うッ?」
自分自身十三体を相手にして前杉士樹もダメージは限界に近いが、それでも媚びずに十三体の自分を相手に敢然としている。
「てめえが気に食わねえんだよッ、俺たちはァッ!」
「何が違うんだ、何が違うんだよォ…僕たちとォ…僕たちは…戦って、戦って、そして自分の世界を失ったのに!」
「不公平だろう? 我々は同じマエスギ・シキにも関わらず、君だけが幸せになる、そんなことがあっていいのかね?」
十三体は声こそ同じだが喋り方も心構えも異なり、全員が何かに疲れていた。
彼らは各々の世界で戦い抜き、それぞれの悪を滅ぼしたが、その代償として己の守るものを失い、ただ自分だけが空間を渡るという能力のせいで生き延びた。
流れて流れて、そして辿り着いたこのACE学園の世界では、自分と同じマエスギ・シキが幸せそうに笑っていた。
それが彼らの正義を眩ませ、この破綻した自殺なのか他殺なのか分からない混戦へと至った。
「お前を倒して、そのあとに僕たちで勝ち残りを決めて…勝ったヤツがこの世界でマエスギ・シキとして生きる」
「苦戦の結果、学校を破壊した謎の怪人十三人を倒した英雄として、俺たちの誰かが生きる」
他人を傷つけて幸せを略奪なんて出来ない、だが相手が自分なら奪ってもいい。
生きているのは辛いが正義が自殺を許さない、だが自分になら殺されてもいい…歪んだ正義が十三体のアクエリアスを動かしていた。
「だったら…これを受けてみろ!」
前杉士樹の変身するACE学園のアクエリアスは、自らの持つアクエリアスドライバーをスライドさせ、カードを挿入し、引き金を絞る。
これこそアクエリアスがディエンドから引き継いだ固有能力、カードに封印された仮面ライダーのエネルギーを戦士の形で開放する。
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アクエリアスの傍らに現れた赤い戦士、人格こそないが能力は果てしなく本人に近い自動人形。
これで数での優位を保って戦うのがアクエリアスの代表的戦術だが、十三体のマエスギ・シキたちもいつの間にか同じようにカードを銃に入れている。
「ちょッ、ウケるわー…なあ、お前らぁっ!」
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現れた十三体の黒いカブトは、悠然と歩いてゆったりとカブトと前杉士樹を取り囲む。
「…あのさあ、無駄だって」
「お前に出来ることは俺たちにもできる、なにをしようと俺たちは十三倍返しだ」
続いてカードを前杉がドライバーに入れ、召喚されたカブトはベルトの角型コッキングバーを操作すると異なる声で同じ言葉が放たれる。
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超加速の合図を聞き、十三体のアクエリアスとダークカブトも追従する…それがカブトの持つ時を操る超加速能力。
強力な能力ではあるが、当事者たちが全員加速してしまえばなんの意味もない。
F1カーは速い、しかし周りを走っているのもF1カーならば、あくまでも同じ土俵に立っただけにすぎないのだ。
「当然っ」
「無駄無駄無駄無駄っっ! 勝てねえよ!」
「そうみたいだね。でも僕には仲間が居る…この世界でできた、“僕”だけの仲間が…ッ!」
「おばあちゃんが云ってた…他人様の持っているものばかり欲しがる奴は、今持っている物も失う、ってな」
時の加速した世界、自分たち以外は誰も動けないはずの世界で、その澄んだ声に十三体のアクエリアスたちは動揺した。
学園の屋上に太陽を背に現れたの真っ赤な戦士、仮面ライダーカブト=天道総司。
「ここにも居るのか、天道総司ッ!」
「…おかしなことを云うな。太陽がふたつある、お前の云っているのはそういうことだ」
眼下に自分と同じ仮面ライダーカブトやダークカブトが集団暴れているのに、彼は自分は太陽と同じくただひとり、そう断言している。
だが、こことは違う世界には別の太陽もある。故にそこには彼とは別の天道総司も居るのだが、それは別の話。
「だが、キサマひとりでは…」
「何度も同じことを云わせるな。太陽が昇るのを止められないように…お前たちでは俺には勝てん」
戦々恐々とした空気を切り裂き、どこからともなく何かが飛んできた小さな機械は天道…ではなく、前杉士樹の手に収まった。
「…いいのかい? 天道?」
「こんな連中の相手を俺にさせる気か? さっさと片付けろ、前杉」
その小さなカブトムシのような機械、ハイパーゼクターを士樹はベルトに取り付け、その角のようなレバーに指を置いた。
「いかん! ハイパーゼクターかっ!」
「スイッチを押させるなーッッ!」
「ハイパー…クロックアップっ!」
【
通常のクロックアップでも時の流れを遅くさせ超加速を生むが、ハイパークロックアップはその上を行く神速。
繰り出す拳、繰り出す弾丸、全てが一撃必殺となる超速度は、十三体のアクエリアスとダークカブトの集団には攻撃や防御どころか、瞬くことも許さない。
十三×二、二十六体のダークカブトとアクエリアスは、なんの抵抗もできずに撃墜された。
その速さは時を止めるだけでなく、時間を戻るほどの速さまで至る。
前杉士樹は十三人の自分の分身たちに学園を破壊される前まで戻り、学友たちが傷つくという事実を無効化した。
何事もなかったように、というか本当に何事もなかったことになった学園で、激闘が有ったことを知っているのは時間を戻した前杉士樹と天道総司だけだ。
「…あれは一体なんだったんだ?」
「別世界の僕だそうだよ」
本来ならば平行世界とは観測できないからこそ平行世界と呼ぶ。
だが、前杉士樹は…というより、このACE学園のある世界では平行宇宙を観測することが難しいことではないらしく、アクエリアスに至っては平行世界を移動する機能まで付いている。
だからこそ、他の仮面ライダーではありえない『別の世界の同じ仮面ライダーが揃う』という事態が発生してしまったのだ。
「仮面ライダーアクエリアス。戦いの結果、自分の世界を滅ぼした
一体どれくらいの世界があるのかは分からないが、その中で敗れたアクエリアスたちが僕と成り代わろうとしたんだ」
「…下手なシナリオだな。俺が編集長だったらそんな原稿は受け取れないな」
なんで天道が編集長かはわからない。本気で分からない。
だが、とにかく状況的に釈然としない点が多すぎるというというのは前杉士樹も感じていることだった。
「ああ、いきなりすぎる。今ままでは何事もなかったのに十三人も敗戦の結果、この僕を殺そうとす…不自然すぎる。
…天道、この世界を任せられない?」
「お前は?」
「僕はあの十三体がどの世界を通ってきたのかを調べてみるよ。
誰かが…この世界に何かを仕掛けている、それでまた誰かが傷つく…そんな暴虐を許すわけにはいかない」
天道総司も行きたそうな顔をしたが、彼は世界を超える能力を持っていない上、かつもし次に攻めてくるのが別世界の自分だったとしたら、それを止められるのは自分しかいない。
太陽を止められるものがあるとすればそれは太陽だけ。この世界には護るべきものが多すぎる。
「ちょっと行ってくるよ、お土産は何がいい?」
「…その世界で一番いいサバを持って来い、お前の分も忘れずに、な」
「帰ったらサバミソパーティか、いいね」
「…どこだここ」
クラッシュフォルス四分の一に巻き込まれ、空間の中を転げまわって着いた先。
何の変哲もないどこにでもありそうな公園に、工藤刹那は居た。
空間移動中に倒したクラッシュフォルスに腰掛けて、ゴミ箱の中から新聞を拾って眼を通せば言語や文字、文化は同じだったが、政治家の名前やスポーツ選手の所属チーム、学校の名前、そんな間違え探しのような違いが見て取れた。
「さてと…どうするかな」
彼は大して慌てたそぶりもなく、腹部のベルト…ゲイザードライバーに目を向けた。
時空移動をしながら敵を倒すという無茶をしたせいか、クラッシュフォルスの攻撃か、カードを装填するはずのバックル部分が砕け、内部の部品が露出していた。
試しに色々と弄って見るが、ベルトは音も光も放たず、ただ沈黙している。
「あー…イカロス…今、どうしてるかなー…」
別の世界に来て帰る見込みがなくとも、最初に心配するのがそれというのも工藤刹那だからこそ。
「ここのどこだ…」
十三体の自分を撃破し、十三体の移動順序を遡って着いた先。
何の変哲もないどこにでもありそうな公園に、前杉士樹は居た。
持ってきたバイクに腰掛けて、ゴミ箱の中から新聞を拾って眼を通せば言語や文字、文化は同じだったが、政治家の名前やスポーツ選手の所属チーム、学校の名前、そんな間違え探しのような違いが見て取れた。
「さてと…どうしようかな」
彼は大して慌てたそぶりもなく、周囲を見渡した。
この世界の何かが十三体の自分を差し向けたのは間違いないが、その理由が分からないし、手がかりもない。
どこかにいる何か、それが別世界の自分たちを遣ってACE学園の世界を襲わせた。
「アインやヴィヴィオを心配させる前には帰らないとなー…」
別の世界に来て何の手がかりがなくとも、事件解決に疑問も持たない自信というのも前杉士樹だからこそ。
彼らふたりの来たこの世界は、仮面ライダーと戦いが溢れる世界。
そして彼らふたりは、未だ仮面ライダーを名乗らない少年、代々木悠貴=改造人間サカビトと出会うこととなる。
以下、【仮面ライダーサカビト その6 ゲイザー・アクエリアス編】へと続く。
というわけで、当作品は蒼き星さんの以下の作品からキャラクターや設定をお借りしています。
蒼き星さん、作品提供、ありがとうございました!
[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~](仮面ライダーゲイザー)
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
[ACE学園](仮面ライダーアクエリアス)
設定集 http://www.tinami.com/view/401701
プロローグ http://www.tinami.com/view/401705
第1話『終焉の後継者と古代ベルカの戦姫』 http://www.tinami.com/view/401708
ゲイザーは14話までの設定、アクエリアスは17話までの設定で書いています。
ふたりともD2と呼ばれるディケイド、ディエンドの後継機であり、高い戦闘力があります。
変身前の状態でも人間を超えた能力があり、大概の敵は物の数でもないふたりですが、ゲイザーはベルトが壊れて変身不能、アクエリアスは謎の敵の存在を見つけることができるか…?
と、戦闘以前のところでピンチ。刹那は変身能力を取り戻して愛する者たちのところへ帰れるのか? 士樹は事件の謎を解き明かすことが出来るのか?
そして全然登場しない代々木はちゃんと主人公できるのかっ!? っていうか84gはちゃんと続きを考えているのかっ!?
様々な謎が荒れ狂う仮面ライダーサカビト、執筆順調!
俺補正が掛かり、“そらおと”や“ACE”ではあまり活躍していないダブルやカブトが急激に強くなっています。
…三次創作なので、ACEのシスコンフリーダムな天道でも良かったんですが、二次創作的な原作フレーバー強めとなっています。
あなたのライダー募集中、詳しくは以下のアドレスを参照下さい。
http://www.tinami.com/lounge/collabo/article/78
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蒼き星さんの作品をお借りして製作された三次創作。
拙作のサカビト六部分の序章にも当ります。