僕が残業を終えて自宅に戻る途中のことです。
真っ暗な道の隅に、ノースリーブのワンピースを着た、小さな女の子が膝を抱えてうずくまっていました。
時刻はもう午前三時過ぎで、夏とは言え半袖ではかなり肌寒い夜でしたので、
僕はその女の子のところへ近寄っていきました。
アスファルトに革靴の音が反響して、やけにうるさく聞こえました。
それでも女の子はうずくまったままで、僕は眠っているのだろうかと考えました。
暗がりでよく見えなかったのですが、女の子が着ているのは赤いワンピースのようでした。
側に黒いごみ袋があり、鼻を衝く厭な臭いがしました。
僕と女の子の距離が一メートルほどに縮まったとき、僕は女の子が眠っているのではないと気づきました。
それに、ワンピースを着ていたわけでもないと。
女の子は、裸でした。
首をぐるりと赤い線が取り巻いていて、そこから流れた血液が彼女の体を包んでいたのです。
血だまりがまるでスカートのように広がって、遠目にはワンピースに見えたのでした。
本当はすぐにでもその場から逃げ出すべきだったのでしょう。
でも、魔が差したとでもいいましょうか、ぼんやりとした頭で彼女の傍へ歩み寄りました。
肩に手を伸ばしました。血の気を失った皮膚は白く輝いていました。
ぬらっとした冷たさを覚えると同時に、彼女の首がアスファルトに転がりました。
黒目勝ちの可愛らしい顔立ちをしていました。
そのとき私は、どうしようもなく彼女が欲しくなりました。
それからしばらくして、私は結婚しました。
美しい妻にそっくりな娘も、もうすぐ五歳の誕生日。
プレゼントには、赤いワンピースを渡そうと思っています。
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ほんのりホラーな短編。