No.404460 真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ五2012-04-07 22:07:12 投稿 / 全10ページ 総閲覧数:10743 閲覧ユーザー数:7858 |
「申し上げます!賊の軍勢約二千、ここより三里先に展開しています!」
「ありがとう。・・・よし!思ったより状況は悪くない」
「でもこちらの兵力は精々四百余り。敵勢の五分の一です」
「だからこそ、ここを先に押さえたかったんだよ」
「確かにここなら大軍が展開できるような道は正面の一本しかあらへんし、
そんなに道の幅も広くない。これだけの数でも十分戦えるちゅう事やな」
「はい、ここを押さえる事でまず策の第一歩は成功したと言えます」
「ほんなら、次はどうするんや?当然、先鋒はウチに任せてくれるんやろ?」
「待ってください、張遼殿。ここは私に先鋒を務めさせてください」
「何言うてんねん、丁奉。先鋒は一番強い奴が務めるって決まっとるんや。
この中じゃウチが一番強いに決まっとるやろうしな」
「しかし、ここは『待ってください』・・・諸葛亮殿?」
「この戦では、まずここで敵を迎え撃つのが基本です。それに、張遼さんも
丁奉さんも他にやってもらう役割があります」
「・・・わかった。軍師殿の策に賭けた以上は従うのが道理やしな。でも先鋒
でないんなら、ウチは何をするん?」
「それはですね・・・」
~賊side~
「お頭!前方三里に軍勢がいやすぜ!おそらく県令の軍勢じゃないかと」
「ああ~ん、性懲りも無く俺らと戦おうってのか?おいっ!数はどの位だ」
「およそ二百五十ってとこですぜ」
「はっ、その程度でやろうなんて今度の県令はアホ野郎だな。まあいい、ちょいと
これだけの数で脅しゃ、またすぐ逃げるだろうぜ。・・・おいっ、野郎共!
前方にいるアホ官軍を蹴散らすぞ!そうすれば、街のお宝や女共は俺達の
好き放題だ!・・・但し、一番いいのは俺のもんだがな。ガハハハ!」
そのお頭の一声で、賊の軍勢はわれ先にと殺到する。賊共の頭の中にはもう
略奪する事しかない。前にいる軍勢など目に入っていない。
・・・・・それが地獄の入り口である事などこの時の賊の一団には思いも
よらなかったのである。
「来ました!皆さん、準備はいいですか!?」
『応!』
「いいか!合図をするまで勝手に攻撃をするなよ!一糸乱れぬ攻撃こそが
この戦の勝敗を分ける鍵だ!」
「では、手筈通りに。槍隊はご主人様が、弓隊は丁奉さんの指示に従ってください」
そうこうしているうちに敵勢は迫って来る。
「おいっ、まだか、もう目の前に来てるぞ」
「まだだ!焦るな!今、槍をふりまわしても当たらないぞ!まだまだ引き付けてからだ!」
あと十歩位か・・・よし!
「今だ!槍隊、手筈通りにいけ!」
俺の声と同時に槍隊の面々は一斉に槍を上から地面へ叩きつけるかのように振り下ろす。
『ぎゃぁぁぁぁぁ!』
その瞬間、槍衾の射程に入っていた敵は全てその犠牲になった。
「よし!もう一度同じようにだ!いいな、突くんじゃない、叩きつけろ!」
『応っっっ!!』
同じように何度か繰り返すと目の前に転がるのは賊の死体ばかりになっていた。
何人かは側面から回り込もうとするが・・・
「弓隊!あの回り込もうとしている者達に向って一斉射です!」
丁奉さんの的確な指示により残らず射抜かれる。
「さすがです、丁奉さん。安心して正面の敵だけにあたれます」
「いえ、北郷殿こそ。あなたが正面の敵を粉砕してくれるからこそ私も落ち着いて
敵にあたれるんですよ」
「さあ、大分敵も焦れてきたな」
「はい、後ろの方からもだんだん出てきてます。後は・・・」
「しっかり頼んだぞ、張遼さん」
~霞side~
「ほう、見事なもんやな」
ウチは諸葛亮から別命を受けて別働隊を率いて賊の連中の側面を衝く位置に来ていた。
「さあ、敵さんもだんだん焦れて来とるみたいやし、そろそろ次の手や」
決めた通りに合図を送り、隊を小分けさせる。
「ほんじゃ、まずは一番隊からや。手筈通りに一撃加えたら離脱やで。ほんなら、開始や!」
ウチの合図と共に一番隊が敵勢の真横から攻撃を加え、反撃の整わないうちに離脱する。
「次!」
そして今度は二番隊が別の側面より攻撃する。
「次!」
続いて、三番隊、四番隊と次々に現れては一撃離脱を繰り返す。
そしてある程度たったら一番隊が違う側面から攻撃をしかける。二番隊以降もそれに続いて
一撃離脱を繰り返す。
すると敵勢は浮き足だってきた。そりゃ、あちらさんからしたら四方八方から敵が出てきて
あたかも大軍に囲まれているかのような錯覚を覚えるに違いない。
「軍師殿の策はすごいなぁ~、こりゃ、ウチが敵の大将でもやばいな」
「張遼様!あそこを」
「おっ!?あれが敵の大将やな。うまい具合に手薄になったで。よし!これから最後の仕上げや!
ええか!雑魚に構うな!狙いは大将首一つや!行くでー!突撃!!」
~賊side~
「くそっ!どうなってるんだ、一体!?」
敵は小勢、数で押せばすぐ終わるはずだった。今まで戦った官軍の連中はいつもそうだった。
しかし、今回の連中は何かが違った。正面から当たっても槍の餌食になり、側面に回り込もうと
すれば、矢で射られる。
「お頭!どうすれば・・・」
「うるせぇ!数はこっちの方が上なんだ!とっとと全員であたって来い!」
くそっ、先鋒の連中だけでカタがつくと思ったのによ!
「お頭!側面からも敵が!」
「何だと!・・・でも小勢じゃねえか。とっとと迎撃だ!」
ちょっとヒヤリとしたが所詮は小勢、迎撃に出たらあっさり引いていきやがった。
あっちにもちょっとは小賢しい事を考える奴がいるみてえだが、こんなもんよ。
「それじゃ、改めて正面に『お頭!今度はあっちから!』・・・ちっ!だから迎撃を『お頭!こっち
からも』・・・何だと!こんなに出てくるってまさか知らないうちに敵の大軍のど真ん中に誘い
こまれたっていうのかよ・・・ええい!落ち着け!一つずつ迎撃しろ!お前らも俺の周りにいる
ばかりでなくって迎撃へ行け!」
よし、これだけの数で迎撃に向かえば大丈夫だろう。少し周りが手薄だが、迎撃さえ終われば
後は・・・
「お頭!」
今度は何だって・・・何ぃ!
「北郷殿!あれを!」
「よし!うまくいった!頼むぞ、張遼さん!」
「張文遠、見参や!敵将、覚悟しい!!」
「畜生!このアマ、粋がりやがって!俺に勝てると思って・・・」
「遅いわ、ボケ!!」
ドシュッ!!
張遼さんの一撃で一瞬にして賊の大将の首が飛んだ。
「敵将!この張文遠が討ち取ったりー!!」
張遼さんの声が戦場に響き渡る。
「ひぃっ!お頭がやられた!」
「こいつら、化けもんだ!逃げろ!!」
頭が討ち取られた事により賊の軍勢は散り散りになって逃げ去った。
「賊の軍勢が逃げていく・・・」
「俺達勝ったんだ!」
「やったぞ!」
味方の兵からは次々と喜びの声があがる。
「まだだ。無事に帰れるまで気を抜くな」
「まだ警戒を解かないでください。賊の残党が襲ってくるかもしれません」
「北郷殿と諸葛亮殿の言う通りです。ここはまだ戦場です」
浮き立つ兵達を落ち着かせる。
「おお~い!北郷、やったで!!」
「ああ、ありがとう、張遼さん。あなたのおかげで『霞や』・・・えっ!?」
「だから、ウチの事は霞って呼んでや。諸葛亮もな」
「でも、いいの?それって真名だよね?」
「もちろんや。ウチ、二人の事めっちゃ気に入ってん。だから、受け取ってや」
「ああ、ありがたく預かるよ。霞。俺の事は一刀って呼んでくれ。それが俺の
真名みたいなものだから」
「私の真名は朱里です。よろしくお願いします」
「一刀に朱里、確かに受け取ったで。これからもよろしく頼むで!」
「「ああ(はい)!」」
賊を討ち取った俺達は街へ戻って来た。そこに待っていたのは・・・
「あれ、水鏡先生?」
「雛里ちゃんも、どうしたの?」
「皆様、おかえりなさい。一度は断ったものの、やはり何かお手伝いできる事は
ないかと来てみたら、出撃した後だと聞いて・・・」
「・・・私も朱里ちゃんのお手伝いが出来ればって」
「そうだったんだ。ありがとう、二人共。でももう大丈夫、賊は退治してきたからね」
「それは、先程戻って来られた方から聞きました。しかし、本当にこの兵力で・・・」
「そりゃ、天才軍師である朱里の策が大当たりっちゅう事やな」
「あなたは?」
「ウチは張遼。二人と一緒に戦ったもんや」
「この人が賊の大将を討ち取ったんです。霞さんの武力がなかったら私の策なんて成功
しなかったかもしれません」
「そないな事ないって、この戦の一番手柄は間違いなく朱里や。ウチが保証したる」
「そうだな、朱里の策があればこそ俺達も動く事ができたわけだし」
「そうですよ、諸葛亮殿は間違いなく天才軍師です」
「はわわ~そんなに褒めないでください~~//////」
皆からお褒めの言葉をもらった朱里は顔を真っ赤にしていた。
「でも朱里だけやないで、一刀の存在が皆を奮い立たせたんや」
「えっ!?別に俺、何もしてないけど・・・」
「何を仰いますか。北郷殿が指揮を執ってくださらなかったら、我らもこの街も、今頃賊の
餌食になっていたでしょう。感謝してもしきれない位です」
「そんなに言ってもらえるとは・・・少し照れるな」
「ふふ。さすがは『天の御遣い』でいらっしゃいますね」
「えっ!?何で・・・」
「はわわ!水鏡先生が何でそれを・・・」
「水鏡殿、それは確か管輅殿の占いの・・・」
「そうです『天より飛来する一筋の流れ星。流星は天より御遣いとこの世の理を超越せし知恵を
持ちし軍師を伴いて、乱世を鎮める力とならん』という占いのです」
「・・・そないな占い信じてへんかったけど、一刀と朱里がそれやっちゅうのなら、信じられるで」
「私もです。というよりそうであってほしいです」
「い、いや改めてそういう風に言われると・・・なあ、朱里」
「は、はい、そんなこの世の理を超越するなんて・・・」
「でも、朱里ちゃんは私や水鏡先生が知らない事をいっぱい知ってる・・・」
「はわわ!雛里ちゃんまで」
「・・・それならば、お願いがあります!どうか、北郷殿にここの県令になっていただきたい!」
「ええっ!?いきなり何を言い出すんですか、丁奉さん。それに俺が県令って、そんな許可が出る
わけが『その辺りはご心配なく』水鏡先生?・・・どういうことで?」
「宮廷内部に何人か知り合いもいますので、北郷さんを県令にする事位でしたら、何とかいけると
思いますよ。それにここは二度にわたって県令が逃げてしまった地です。今更中央から来る人も
いないでしょうし、なり手があるのなら、あえて反対はしないでしょう」
「しかし、勝手に決めるわけにも・・・ここの住民の人達の気持ちは『それは問題無しやと思うで』
・・・霞?」
「ほら、見てみ。城の外」
霞の言う方を見てみると・・・
「北郷様~!どうか、我らの県令様になってください!」
「あなた様がこの地を治めてくだされば、我々も安心できます!」
「俺達、義勇兵で戦った者全員も兄ちゃん、いや北郷様に力を貸すぜ!」
住民の人達だけでなく、一緒に戦った義勇兵の皆まで・・・
「・・・わかりました。皆が俺に少なからず期待してくれているのであれば、及ばずながら力となり
ましょう。朱里もいいね、それで」
「はい!ご主人様ならそう仰られると思ってました」
「よっしゃ、決まりや!これから忙しくなるで~」
「えっ!?・・・霞もここにいてくれるの?」
「言ったやろ、ウチは一刀と朱里が気に入ったんやって。ウチに出来る事いうたらこの腕を揮う事位
しかないけどな。これから街を治めるんや、殴り合いをする係も必要やろ?」
「ありがとう、霞。頼りにしているよ」
「そないに改めて言われると照れるやんか~」
「ふふ。及ばずながら私もお手伝いさせていただきます」
「いいんですか?水鏡先生」
「戦は不得手ですが、政の方でしたら多少はお役に立てるかと」
「あ、あの、私もお手伝いします。朱里ちゃんみたいにはなれないですけど」
「雛里まで・・・ありがとう」
「良かった・・・これでこの街の復興も叶うというものです。私も北郷殿・・・北郷様のために微力
ながら尽くす所存です」
「微力なんてとんでもない。こちらこそよろしくお願いします、丁奉さん」
「よっしゃ~、全て丸くおさまったところで、今日は戦勝とこれからの未来を祝して宴会やな!」
「いや待て、そんないきなり宴会っていっても準備とか『準備ならできてますよ』・・・手回しの
良い事ですね、水鏡先生・・・よし!じゃあ、これから皆で頑張る門出に乾杯だ!」
こうして一刀と朱里は戦乱の世の表舞台に身を投ずる事になったのである。
これから待ち受ける運命の道のりはまだまだ遠い・・・
「こら~、一刀~!ウチの酌では飲めへんちゅうのか~!」
「霞~、飲みすぎだって」
「はわわわわ」
続く(でしょう)
あとがき的なもの
意外と早く再会できました。mokiti1976-2010です。
戦闘描写は初めてなので、とりあえずはインスピレーション的な
感じで書いてみました。・・・おそらく皆様の目には戦闘描写な感じには
見えてないかもしれませんが、ご容赦のほどを。
そして今回霞の別働隊が使った「隊を小分けにして入れかわり立ちかわり
四方八方から攻め寄せる」という戦法は、島津義弘が使った方法を真似て
みました・・・でもちゃんと出来たかな?
それでは次回、外史編ノ六にてお会いいたしましょう。
追伸 これから一刀達に独自ルートを歩ませたほうがいいのか、この勢力ごと
どこかの陣営に属させるほうがいいのか・・・独自ルートだったら他の
勢力との均衡を図る為に何人かオリキャラ入れる必要があるだろうし・・・
悩み所です。
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結構早く書けましたので
外史編ノ五をお送りします。
初の戦闘描写なのでお見苦しい点も
多いかと思いますが、そこはご容赦を。
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