No.403933

木津千里 無題

offeredさん

年齢制限がいつまで経っても上がらない

2012-04-07 01:20:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:787   閲覧ユーザー数:787

「木津さん、どうしました? ボンヤリとしている様ですが。」

「……はい、大丈夫です。」

 

 本当は嘘。 ここ数日ずっと、先生のことばかり見ているもの。

 

「そうですか、顔が熱っぽい様ですが」

「……先生?」

 

 薄ぼんやりとした視界に一杯、先生の顔が映り、その白い掌が視界を塞いだ。

男の癖に少し冷たい……それとも私が熱くなったのか分からない。

厭ね、きっちりしないのって。 でも、触れられていると気持ちが良い。

 

「誰か、保健委員は居ませんか?」

「……先生、私は大丈夫です。出席数を落とす位なら座ってます」

「大丈夫だと思ウナ、マリアの国の大人、病気でスグ死なない事有るヨ。 カゼになり易くなるけどナ」

「それはそれで非常に危険に思われますが……」

「もうすぐ授業が終わりますから、先生がすぐ連れて行けば良いと思います」

「可符香さん、ですから保健委員……いましたっけ? では委員長……今回の病人は千里さんですね」

「先生! 委員長の僕が居るじゃないですか! 酷い!」

「分かりました、先生が連れて行きましょう。 連絡事項は特にありませんのでホームルームは無しです」

「……いつも通りじゃないですか」

 

 チャイムのあと、先生の言うまま背中に寄りかかり、首に手を回す。 少し白檀の香りがした。

 

「先生……思ったよりも肩幅が広いのですね」

「木津さん、少し揺れますよ」

 

先生がスっと立ち上がる。 頼りないと思ったのに、躯の軸すらぶれない。

寄りかかっていると心臓の音が聞こえてしまう様な気がして、少し怖い。

……今は私だけの先生でいて欲しい。

 

そっと肩に顎を載せると先生は少しビクりとした。

何時までも負ぶさって居たいのに、あっという間に保健室へと着いてしまった。

 

「ちょっと横になってください、具合はどうですか?」

「さっきよりずっと……熱っぽいです」

「それはいけませんね、今日は保健の先生が休みなので、車で病院へ行きましょう」

 

去ろうとする背中を抱き留めて引き寄せる。 胸が苦しい。

 

「先生、苦しいんです……ブラのホックを外してもらえませんか?」

「お安いご……教師として出来ません! いずれ大切な生徒に手を出す鬼畜教師として報道され……」

「先生、大切な生徒として、人として……助けてください」

「仕方有りません……後ろを向いてください!」

「苦しい……、振り向けない」

「ええい! こうなったら!」

「あふっ……」

「すみません、すみません!」

 

正面から回した手に背骨辺りをなぞられ、思わず身を捩ってしまう。

先生の胸に顔を埋める形になり、とても心地よい。

目を瞑ったまま手探りで、一生懸命に助けようとしてくれている。 凄く嬉しい。

震える手でブラの結合部分に触れ、しっかりと摘んだみたい。

 

「すみません、外しますね」

 

プツっと音がして拘束が解かれ、勢いで肩から紐が滑り落ち、脇の辺りで止まる。

私は慌てて体を離そうとする先生の襟を掴み、耳元に口を寄せる。

 

「木津さん!」

「先生……あの日からずっと、待っていたんです。 ずっと、熱っぽいんです」

「いけません! ああっ!」

 

ベッドの上に、先生が覆い被さる形で二人横たわる。 先生、私は……。

 

「先生、わたしのこと、忘れてませんか?」

「あなた、いつからそこにいたの!?」

「ずっと」

「邪魔しないで! 私たちはまた結ばれるの。 今度はちゃんと記憶に残すのよ!」

 

ストーカー女は私を見て薄ら笑いを浮かべる。 なんて忌々しい!

 

「記憶に無いって、本当はそんなこと無かったんじゃない?」

「適当なことを言わないで! 私と先生は同じベッドで!」

「じゃあ、あなたが最初に寝ていたベッドは何処なの?」

「壁側から二つ目のベッド……ここよ!」

「では、先生と寝ていたベッドは?」

「壁から一つ目のベッド……。」

「あなたが、寝返りを打って先生の懐に転がり込んだとしたら……?」

「それは無いわ! だって、だって……。 ずっと見ていた訳じゃないでしょ!?」

「見てたから……ずっと」

 

膝が笑い、視界が歪む。にじり寄ってくる常月纏を撥ね除けることが出来ない。

心の中に在った疑念、先生と私は……。

 

「直ぐ分かるよ。 ほら……」

「やめなさい」

「こんなにしちゃって」

「だって、先生が!」

 

指が私の体を無遠慮に触れる……痛い、やめてよ!

 

「きついよ、息を吐いて力を抜いて」

「やめてよ、そこに触れて良いのは先生……だけっ!」

「常月さん!止めてください! 私がいけないのです、だから彼女を責めないでください!」

「……わかりました。 先生が言うから止めてあげます」

 

彼奴の居なくなった保健室、先生は私の乱れた服を直す。 私は天井を見つめたまま泣いていた。

嘘。 先生、私の気持ちは何なのですか? ……もうわからない。

私は先生と関係を持っていなかった。 好きになる理由なんて無かった。

頭がおかしくなる……。 何よ、この気持ち。

 

「木津さん、先生が送ります」

「……優しくしないで。 一人で帰れます」

 

帰り道はどう帰ったか分からない。 只、空一面の灰色の雲が広がっていた事は覚えている。

……あの日からずっと先生のことを想い続けてきた。 でも、私は何を想い続けてきたの?

私は、先生が好き。 ぐうたらでいい加減でも好き。 喜んでいる顔が好き。

好きになった理由なんて無い……理由は無くなった。 

 

頭を掻き毟ると、大事に伸ばしてきた髪がプチプチと音を立てて十数本抜け、切れた。

あんなに強く引っ張ったのに、大して切れないものね……。

そうね、きっと大事にしてきた気持ちも簡単に切れないはず。 きっとそう。

 

そうよ、私は先生が好き。 理由なんて後から作ればいいもの。

空はますます曇って行くけど、私の心は晴れやか……いえ、雷光の様に輝いている。

私はひたすら先生の家に向かい歩いた。 先生……今、会いに行きます。

 

いつの間にか辺りは真っ暗になり、程なくして大粒の雨がザラザラと落ちてきた。

工事現場に積まれた土砂が崩れ、スコップが私の前に倒れてきた。

 

 カラララ…… カラララ……

 

私はスコップを牽くときの音が好きだ。 時折大きく跳ねる感覚が心地よい。

摩耗したアスファルトに削られ、先端は鋭く研ぎ澄まされていく。

お気に入りの制服が濡れ、躯に張り付いて少し不快だけど、今は良いの。

 

 カラララ…… カラララ……

 

長い髪が顔にまとわりつき、鬱陶しい。 ……鬱陶しかったら、なおせばいい。

鬱陶しい状況も、このスコップで取り除ける。……突き刺して払いのければいい。

道の真ん中に陰を見つけ、立ち止まる。 つきまとう忌々しいモノよ、消えてしまいなさい。

 

 

先生の家に着き、玄関を叩く。

 

「……はい、どちら様でしょう」

「先生、私です。」

「……木津さん?」

 

カラカラ音が鳴り、先生の家の戸が少し開く。 ……先生は一言もしゃべらない。

いやだ、私は服を汚してしまったものね。

 

「木津さん、制服についた赤いシミ……」

「やだ、汚れた服で……恥ずかしい。ごめんなさい、先生。 どうしてもお会いしたくて。」

「まさか」

 

素早く戸に手を差し込んで玄関に滑り込み、スコップの背で逃げる先生の頭を叩く。

その様子を見た交君が泣き出したので、縛り上げて口をガムテープで塞いだ。

先生が倒れている姿に見とれるけど、今のうちに縛ってしまわないと。

 

「……あ……木……津さん……?」

「先生、先程はごめんなさい。」

「……木津さん、いけ……ません」

「私、気付いたんです、愛って明瞭な物じゃないって……だから。」

「木津……さん」

 

濡れたセーラー服のホックを外すのは大変だけど、今の私たちには必要な過程ね。

先生はネガティブな事を言うから、スカーフを猿ぐつわにして黙って貰った。

下着が白いせいで胸が透けてしまっている、自信がないのに。

 

「先生、恥ずかしく無いですよ、私のも後で見せてあげますから」

 

舌先で触れると、先生は目をつぶったまま身もだえした。

やり方はよく分からないけど、直接聞きながらやれば良いわね。

 

「先生、私を感じてください。」

「ううっ……う……」

 

そっか、猿ぐつわしてたんだっけ、でも喉を鳴らしたり呻いたりしているから大丈夫ね。

喜んでくれて嬉しいけど、邪魔が入る前に契りを交わしてしまわないと。

……でも、こんなに大きくなった物が入るのかしら?

 

ブラとショーツを脱ぎ捨てると、ぺしゃりと音を立てて畳の上に落ちた。

先生の袴を下ろして着物をはだけさせる。手足を縄で縛っているせいで半脱ぎの状態になってしまう。

少しあばらの浮いた華奢な躯と相まって、とてもいやらしい。

 

先生の上に乗り、肌と肌で触れあう。 冷え切ってしまった私の躯には丁度いい温かさね。

猿ぐつわを解いて口づけすると、私の髪が先生の顔にかかった。

 

「木津さん、なぜこんな……」

「先生、愛しているって言って下さい。 私はあなた以外要らない、好きです。」

「……こんなの間違ってますよ」

「過ちは……いずれ許されます。」

 

私は先生を導き、体の奥へと受け入れていった。

先生に寄りかかり、首筋に口付けをした。

 

おわり

 


 
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