【風花高校】
「へぇ、ようやくイカロスさんと出会えたんだ。良かったね、せっちゃん」
朝のHR前、刹那は同じクラスのそはらにイカロスと再会できたことを話していた。
「ああ…」
「あれ?あまり嬉しそうじゃないね。何かあったの?」
「実は、あの後イカロスが母親のダイダロスって人と話して正式に家に居候することになった」
「? それ、むしろ喜ぶべきだよね」
初恋の人と再会できたというのに意外とテンションが低い刹那にそはらは頭を傾げる。2人の話を聞いていた智樹が苦笑いを浮かべながらその理由を説明する。
「実はさ、リインが『お兄ちゃんのお嫁さんになるのは私です!』とイカロスに宣戦布告してさ、そっちとどう向き合うかで悩んでいるんだよ、刹那は。法律で2人の結婚は可能だからさ」
「ハハハ、せっちゃんは大変だね」
「翔兄とかにもよく相談して考えないとな」
3人がそんな風に話していると、クラスの担任が入ってきて、生徒達に席に戻るよう告げた。
「今日は、転校生の紹介をする」
担任の一報でクラス中がざわめく。
「入りたまえ」
担任の声と共に1人の転校生が入ってきた。その姿を見た時、刹那と智樹の目が点になった。
「転校生の威伽露主(イカロス)さんです」
「…よろしくお願いします」
目の前に転校生としていたのが、前日付けで工藤家の居候になったイカロスだったからである。
「あの子、すげー可愛いな」
「背中の翼も綺麗だね」
「あれだけ可愛いならせっちゃんが夢中になるのも無理はないね」
突如転校してきた美少女にそはらを含めたクラス中が釘づけになる。
(何故イカロスがここにいる!? そう言えば昨日)
★★★★★
「後、士樹さん達と仲が良い『大樹』さんという人がこの町で暮らすための準備をある程度(・・・・)してくれました」
★★★★★
(あの人、ディエンドライバーの力でイカロスを不正入学させたのか…)
「イカロスさんの席は工藤の後ろだ」
「分かりました」
イカロスは普通に刹那の後ろの席に移動して座った。
「刹那…、先程から黙っていますけど…どこか調子が悪いんですか?」
「少し驚いただけだ」
「そうですか」
その会話を聞いていた女子の1人が2人に質問する。
「イカロスさんと工藤君、知り合いみたいだけどどういう関係なの?」
「恋人だ(です)」
あまりに息の合った2人の返答に周りは騒ぐが、当の本人達は放置することにした。
「分からない事があったら俺に質問しろ。出来る限り力になってやる」
「私も力になるよ、イカロスさん」
「お世話になります、刹那、そはらさん」
★★★★★
【1時間目・世界史】
(よし、上手く書けたっと)
そはらは地図も含めてオーストラリア大陸について簡単に板書した。時間がないので少し子供っぽい感じだ。
(イカロスさんはちゃんと書いているのかな?)
そはらがイカロスのノートを見ると、
(っ!?)
そはらは愕然とした。ベートーヴェンの運命が聞こえてきそうなぐらいに素晴らしくイカロスのノートがまとめてられてあったからだ。
(…………)
惨めな気持ちになったそはらはノートを消して書きなおすことにした。
★★★★★
【2時間目・家庭科】
「すげぇよ、あの2人」
「もはや高校生のレベルじゃねぇよ」
家庭科では、ほぼ刹那とイカロスの独壇場と化し、もの凄いペースで料理が作られていった。作ったのは、2人共チャーハンである。刹那は出来あがった自分のチャーハンを味見した。
「まあまあだな。イカロス、お前のチャーハンを少し味見させてくれ」
「はい」
刹那はレンゲでイカロスがチャーハンを口に含んだ。結果、
「俺の負けだ」
「……家庭科だけは負けるわけにはいきませんから。特に、好きな人にだけは」
イカロスは刹那のチャーハンを食べた。
「自信を持ってください。あなたもなかなかの腕です」
刹那は素直に負けを認めて、両者は握手し、クラス中が2人の健闘を讃えた。
時間がないので割愛するが、それからの授業でもイカロスがその頭脳を見せつけたのは言うまでもない。
★★★★★
【放課後・帰り道】
刹那は智樹とリインにイカロス、イカロスに力の差を見せつけられて落ち込んでいるそはらと帰宅していた。
「まさかイカロスがあれほど凄いなんて思いもしなかったよ」
「1年でも大騒ぎでしたよ、謎の天才美少女が現れたって」
「すみません、お騒がせしてしまって…」
「気にするな、人間というのは突発的な出来事に弱いからな」
智樹、リイン、イカロス、刹那の順で喋りながらそれぞれの家に向かって歩く。
「そうだぜ、イカロス。平和が1番だが、多少は刺激がないと人間は生きていけないからな」
「智樹さん…」
智樹もイカロスを励ます。ちなみに、そはらは未だに喋る気力がわいてこないようだ。
「それはそれとして、お兄ちゃんは渡しませんよ」
リインがそう言って刹那の腕に抱きつく。
「リ、リイン」
「…それは、こちらの台詞です」
イカロスそれに対抗して刹那の左腕に抱きつき、両者の間で火花が散る。刹那は2人の行動に困惑する。
「ふ、2人共…」
刹那が呼び掛けても2人は返事せず、それを見ていた智樹は苦笑した。
★★★★★
風都の路地裏。その一角では、分厚い装甲の赤いライダーが1体の怪物と戦っていた。
「これで終わりだ!」
赤いライダー―仮面ライダーアクセル―は止めを刺すべく右手に持っていたエンジンブレードにガイアメモリと呼ばれる銀色のUSBメモリの様な物を挿入した。
≪ENGINE:MAXIMUM DRIVE≫
アクセルは両手で剣を持ち、Aを描くように怪物を切り裂いた。アクセルの攻撃に耐えられずに怪物は爆発し、後には何も残らなかった。
「メモリが排出されないだと!? ドーパントでは――――――まさか!?」
変身を解除したアクセル……風都警察署の照井竜はその状況に驚いていたが、あることに思い至って更に驚いた。
「ドーパントと似たような能力、倒しても排出されないメモリ……。これが、刹那の言っていた『フォルス』なのか!? また忙しくなるな」
そう言うと、照井はすぐさま自分の職場へと戻っていった。
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物語を奏でるための準備ももう終わりです。
そろそろ怪しい匂いが立ち込めてきます。
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