午前6時半。携帯にセットしておいた目覚ましが鳴ると、少年は目覚ましを止めて起床した。
「もう朝か」
少年……この話の主人公である工藤刹那は私服に着替えて2階から1階に降りた。刹那はリビングに入り、朝食を作るべく台所に立った。刹那が台所で朝食を作っていると、落ち着いた空色の長髪が特徴的な1人の少女が目をこすりながら降りてきた。
「お兄ちゃん、おはようございます」
「おはよう、リイン」
「お皿と飲み物の準備、しますね」
「頼む」
少女……彼の義妹である工藤リインフォースは台所に入り、刹那の邪魔にならないようにお茶や食器の準備を始める。刹那はリインが準備した食器に朝ご飯を載せて、テーブルに持っていく。
「「いただきます」」
兄妹は手を合わせて食事を始めた。
「今日は日曜日ですが、何か予定はありますか?」
「智樹と町を散歩する予定だ。お前はそはらと買い物に行くんだったな」
「はいです」
2人は楽しそうに喋りながら朝食を食べていった。朝食後、外へ出ると、近所の桜井智樹と見月そはらが待っていた。
「おはよう、刹那」
「今日は寝坊しなかったみたいだな、智樹」
「ひどいなぁ、俺でもたまには早起きするって」
「リインちゃん、おはよう」
「おはようなのです、そはらさん」
工藤兄妹はこれから共に行動する相手に挨拶する。
「2人共、元気でな」
「トモちゃんこそ覗きは駄目だよ」
智樹とそはらの台詞を最後に2組は別れ、刹那と智樹はのんびりと風都を散歩し始めた。
「この街もようやく落ち着いてきたって感じだな」
智樹は風都の象徴である風都タワーを見上げながら言う。刹那もそれに合わせて過去を振り返る。
「NEVERがやってきた時は特に大変だったな。新型のエターナルメモリを使う奴のせいでまともに戦えるのが俺とお前と翔太郎さんの3人だけだったからな」
「あのオカマもやたらと絡んできやがったからな、メダルを使う仮面ライダーが来てくれて助かったぜ!!」
「風花高校に殺し屋が出た時は、面白かったな。ドーパントがそはらの殺気に当てられて逃げたんだからな」
「普段からあの殺気を当てられている者としては複雑な気持ちだな…」
刹那と智樹はこれまでの戦いを思い出しては懐かしそうに語り、平和を噛みしめるように1歩1歩足を進めた。すると、途中の大きな桜の木がある風都公園で見知った顔の探偵がいたので刹那は声をかけた。
「翔兄、何をしているの?」
「おお、刹那と智樹か。依頼でペット探しをしているんだよ。お前らこそ何をしているんだ?」
「散歩しながらこれまでのことを振り返っていたんだよ、いろいろあったからな」
「そうか。いろんな出会いと別れがあったからな、照井との出会いとか…霧彦の死とかな……」
探偵……左翔太郎はソフト帽を深くかぶりながらしんみりと話す。じゃっかん雰囲気が暗くなる中、刹那はふと空を見上げた。
「そう言えば、あの時の女の子はどうしているんだろう?」
刹那は空を見上げながら1人の女の子のことを考える。
「あの子? ああ、幼い頃に1日だけ遊んだっていう翼が生えた女の子のことか?」
「そうだよ、翔兄」
「お前も隅におけねぇな、刹那。あんなに可愛い義妹と同居しているのに別の女の子を追いかけているなんてな」
「からかうのはやめろ、翔兄」
翔太郎が肘で刹那を小突きながらじゃれる。その時、空から何かが高速で飛来し、3人の前に着陸した。
「うわっ!」
「何だ、いったい!?」
3人は飛行物体が着陸の際に発した衝撃波に耐えられず、顔を手の平で覆う。20秒ほど立って刹那が手の平をどけた時、目の前に存在していた物を見て驚愕した。
「イカ……ロス……」
眼前に存在していたのは、後ろで2つに分けた紅い長髪に同じ色の翼、緑の瞳を持つというまさに天使というべき少女だったのだ。
「噂をすればなんとやらだな……」
未だ混乱している高校生2人とは違い、割と冷静なハーフボイルド。
「俺はハーフボイルドじゃねぇ!!」
電波を受信した翔太郎を放置し、イカロスは刹那に近づいた。
「すみません、遅くなってしまいました」
「それは、こっちも同じだ。そんなことよりもまずは再会を喜ぶべきだ。久しぶりだな、イカロス。ずっと会いたかった…」
「久しぶりです、刹那」
イカロスは挨拶した後、無言で刹那の左手を両手で優しく包み込んだ。
「刹那の手、8年も立っているのに相変わらず暖かい」
刹那もイカロスの手に自分の右手を重ね合わせる。
「イカロスこそこの8年の間にずいぶんと魅力的になった」
「刹那…」
「イカロス…」
すっかり蚊帳の外になっている翔太郎と智樹は2人を暖かく見守っていた。
「あれが、刹那がずっと探していた女の子か。確かにかなり可愛いな」
「刹那が御執心になるのも無理はねぇな」
「刹那、この8年間あなたと一緒に居たい、遊びたいと思うことが何度もありました。これが、好きという感情だということに気づくのに長い時間がかかりました」
「俺も好きだ、イカロス」
この日、1組のカップルが誕生した。
「良かったな、刹那」
「なんかこっちまで幸せになってくるな」
小さい頃から刹那のことを知っている智樹と翔太郎は素直に2人を祝福した。
「しかし、何でここが分かったんだ、イカロス?」
「士樹さんとアインハルトさんが教えてくれたんです、あなたがこの町で仮面ライダーとして暮らしていると…」
「あの2人か」
刹那は今もどこかでイチャイチャしているであろうバカップルを頭に思い浮かべる。
「後、士樹さん達と仲が良い大樹さんがこの町で暮らすための準備をある程度してくれた上で連れて来てくれました」
「大樹さん、あんたはいったい何を考えているんだ?」
普通とかけ離れた思考を持つ通りすがりの怪盗に頭を抱える刹那。久しぶりの会話を楽しむ2人に翔太郎が近づく。
「イカロス、この町で暮らすのは良いんだが、親御さんはこの件を御承知なのかい?」
翔太郎に質問された瞬間イカロスが固まった。
「話してなかったんかい!?」
「すみません、刹那に会うことしか考えていなくて…」
「ハハハ、ずいぶんうっかり屋な天使だな、イカロスは」
「智樹、イカロスは昔からこうだ」
イカロスの親の件はさておき刹那はイカロスと出会えたことを喜び、これからの日々に思いを馳せていた。
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主人公はライダーですが、まだ戦うわけではありません。
登場人物たちの顔見せといった感じですね。
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