No.401052

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第四章 3話

TAPEtさん

嫌な事件って重なってやってくるんですよね……
経営学的な観点で見ると、人が同じ利益を得る時、ちびちびと多くもらう方がお得な感じがして、損する時はちびちび来るより一気に悪いことが重なった方が良いといいます。

なにを言いたいのかと言うと、まだこれ以上悪くなれるって話です(今までの話の流れでどうやってその意味が取れたのかはさっぱり)

2012-04-01 12:38:38 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2947   閲覧ユーザー数:2603

一刀SIDE

 

「……うん…」

 

体が重い…。

 

「うぅぅ…頭が…」

 

頭の中の誰かが鐘を鳴らしてるみたいだ。

どうなってるんだ?

 

外を見るともう明るい。

今何時ぐらいだ?

 

「すー……ふー」

「うん?」

 

隣からの寝息を聞いて僕は上半身を起こして横を見た。

 

「……すー」

 

雛里ちゃんが下着姿で寝ていた。

僕もなんか上半身は脱いでいた。

 

「え?」

「…うーん、一刀さん……」

 

と言いながら裸の雛里ちゃんが僕に絡んでくる。

 

いや、待って、落ち着け、僕。

昨日何があった?全然憶えてない。

昨日雛里ちゃんと一緒に呑んだ。呑み潰すまで呑んだ。

それから……なんとか潰れた雛里ちゃんを連れて魯粛さんの屋敷に戻ろうと思ったんだけど……そこから何も憶えていない。

 

「と、取り敢えず、服を…」

 

そこでちゃんと布団に適当に散らばっている服をもそもそ着ながら昨夜の記憶を巻き戻そうとしても、壊れたビデオテープのように酒を呑んだ所からは何も記録されてない。

雛里ちゃんは何か憶えているだろうか。

というより、昨夜あんなになるまで呑んで帰ってきたのに、ちゃんと布団の中に居るということは、少なくとも魯粛さんと真理ちゃんたち、最悪は蓮華や他の屋敷の人たちにも醜態を晒したということになる。もう色々と散々だ。

もう酒なんて絶対呑まない。

 

「…うぉぉ……頭いてぇ…」

 

二日酔いが激しい。水でも飲まないと頭とお腹がどうにかなりそうだ。

取り敢えず、水を探しに行くとしよう。

と、その前に……

 

「……あわ…」

 

肌が出ている雛里ちゃんにちゃんと布団をかけてから、俺は外に出た。

 

 

 

 

屋敷の構造が良く分からないまま、使用人に聞いてみたら魯粛さんたちが食堂に集まっているという話だったので、取り敢えず僕もそっちに向かうことにした。

 

ガラッ

 

「「「!」」」

 

食堂に入ると、一緒に座って居た蓮華と魯粛、そして真理ちゃんが同時に私の方を向いた。

 

「あ、よお」

「一刀!」

「北郷さん!」

「うわっ!」

突然蓮華と真理ちゃんが僕に走ってきて俺はびっくりした。

後いきなり叫ばれて頭が鳴る。

 

「昨夜のあれは一体どういうことですか?」

「そうよ、幾らあなたでもそんなの危険過ぎるわ」

「え?え?」

 

待って、二人とも何を言っているんだ。

 

「あの、ちょっと待って。二人とも取り敢えず落ち着いて」

「いいえ、昨日はあの騒ぎだったから何も言いませんでしたけど、今日となっては言わせてください」

「いや、だから、真理ちゃん」

「一人であんな数を相手にして、しかも鳳士元も一緒だったんでしょ?万が一でも何かあったら…」

 

え?

 

「待て、蓮華!僕が昨日何をやったって?」

「え?だから…」

「…北郷さん、念のためにお聞きしますけど、もしや昨夜のことを覚えていないのですか?」

 

その時魯粛さんが静かな声でそう聞いた。

 

「あ、はい、なんか、昨夜雛里ちゃんと一緒に酒を呑んだ後の記憶は全然ないのですけど…」

「…そうですか。お二方、その辺にして取り敢えず北郷さんを座らせてください。北郷さんも疲れてるはずですから」

「「……」」

 

魯粛さんの話を聞いて、二人とも引いてくれた。

そして、僕が魯粛さんたちが居た卓に座ると、真理ちゃんが荒い動作で水の入った杯を僕に渡した。

 

「……怒ってる?」

「当たり前です」

「……」

 

倉は…まだ寝てるだろうか。これ以上真理ちゃんになんか言ったら怖そうな気がするからやめとこう。

こんな怒ってる真理ちゃんは初めてだ。

 

「それで、昨夜の話ですが、どこから記憶がないのですか?」

「と…確か酔いつぶれた雛里ちゃんを連れてここに戻って来ようと思ったのですが…そこから気がついた時は部屋で起きていたってことです」

「…では何も覚えていないんですね。屋敷の前で起きたことは…」

「……」

 

さっき蓮華の話から察するに、何か良からぬことが起きたのは確かのようだけど…

 

「…何があったのですか?」

「…どうも北郷さんたちは、私の屋敷に訪れた刺客に遭遇したようです」

「刺客!?」

 

何だそれ。

 

「刺客なら、魯粛さんを狙う刺客が来ていたということですか?」

「はい…ですが、北郷さんにその刺客がバレて、その北郷さんの口を封じるためにかかった刺客を、北郷さんが制圧。他の刺客たちも外が騒がしいことに気付いた中の警備隊にバレて、撤収しました」

「……そんなことが…」

 

魯粛さんにそう言われたら、昨夜の記憶が少しずつ蘇ってきた。

 

 

昨夜、

 

僕は酔っ払って眠ってしまった雛里ちゃんをおんぶして屋敷に向かっていた。

僕自身もかなり酔っていたせいで、真っ直ぐ屋敷に行けず左右にぶらぶらしていたと思う。

でもおぶっていた雛里ちゃんだけは絶対離さなかった。

 

そんな中魯粛さんの屋敷にたどり着いた時、屋敷に向かう他の物陰があった。

僕は屋敷の役人などだろうと思って、彼に声をかけた。

 

「あ、ひょっと、すいまへん」

 

……酔ってるせいで舌が良く回っていない。

 

「!」

 

でも、僕の方を見たその者は、突然僕を襲いかかった。

 

「わわっ!」

 

突然の状況なものの僕はなんとか後ろに下がって奴の攻撃を避けた。

そして、雛里ちゃんをそこの壁に寄せておいて、持ってきた『鳳雛』を手にした。

 

「きしゃま…らにものら!」

 

酔ってるせいで舌が良く回っていない。

 

「ちっ!」

 

相手は僕の声に答えずに再び襲いかかった。

 

酔っている時でもちゃんと相手を傷つけてはいけないという考えはあったのか、なんとか相手を制圧することが出来た。

でも、そう思ったら周りかも彼と同じような気配がした。

 

「……きさま…らんのためにここにきた」

「……!」

 

その時、一瞬嫌な予感がした。

奴のような覆面をした数人に囲まれたという気づいたのと同時に嘔吐感が走って、そこからまた記憶が途切れていた。

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

そんなことがあったのだから、二人が怒ることも無理もないことだ。

 

「しかし、一体誰が魯粛さんを…?」

「…北郷さんが捕らえた刺客を審問しようとしたのですが、その場で舌を千切って自決。情報を手に入れることは出来ませんでした。ですが、心当たりはひとつしかありません」

「…それが誰なのですか?」

「現徐州刺史代理、張闓(ちょうがい)です」

「張闓…か」

 

張闓は、

徐州に居た陶謙の部下として、元は黄巾党だった。

陶謙の命を受け曹操の父、曹嵩を兗州に護送する途中、曹嵩が持っていた財宝に目を眩ませ曹嵩とその一家を殺し、金品を奪って逃げて盗賊となった。

以後このことのせいで曹操は徐州を攻め、かの徐州大虐殺と呼ばれる事件が起きるのだから、三国志に出る人物のうちにも最悪の人物に入るだろう。

まさかあんな奴が今徐州を治めているとは…

 

「一刀、張闓に付いて何か知ってるの?」

「少なくとも州を治められるような器じゃないことは確かだ。一体どうやってあんな奴が刺史の代理なんかを…」

「詳しいことは良く判りません。ですが元刺史の陶謙は病が酷くて正しい判断ができるような状況ではありません。その隙を狙ったのでしょう」

「でも、何故ここを狙ったのでしょうか」

「……街に入る時の門番たちの高圧的な姿勢を覚えていますか?」

 

僕はここ下邳の城に入る時兵士たちの態度を思い出しながら答えた。

 

「はい」

「彼らは何らかの言い訳を付けて、入ってくる商人や旅人から金や高価な品物を奪っています。恐らく、その裏には張闓が居るでしょう。その件について徐州の商人たちが私に多くの苦情を送ってきました。私も彼の蛮行をタダで見ているわけでは行きませんでした故に、私兵を使って何度か小商人たちを護衛したことがあります。彼がそれが来に食わなかったのでしょう」

「なんて奴なの?だからって徐州の商人のうち一番強い深月を狙うなんて、徐州の経済が潰れるかもしれないのよ」

「恐らく、そんなことに頭が回らない程の愚か者ということでしょう。ですが、私も徐州の民たちのことを考えるとそんな強気になるわけにも行きません。豫州の件で見たように、一人の商人でも、資金を持って、独占さえすればその地域の人々を自分の思うがままに出来ます。ですが張闓は元々民には何の心配もかけていません。経済的に彼に被害を与える前に、徐州の民たちが大きく揺れるのは明らかでしょう」

 

厄介なことだ。

民を省みない奴が頭になると、自分の欲望のために何でもするだろう。

しかも、自分の邪魔になる魯粛さんを暗殺しようともした。

 

「魯粛さん、僕たちにできることはないでしょうか」

「……」

「豫州での一件、お世話になりました。どんな形でもその恩を返すつもりです。僕たちにできることなら何でも言ってください」

「………恐れながら、これは私の問題です」

 

魯粛さんは長く考えた末にそう答えた。

 

「北郷さんはそのつもりでも、私は私の親友である百合の妹たちを危険に合わせたくはありません。もちろん、その二人が大切にしているあなたも一緒です」

「……」

「張闓が露骨的に私の命を狙ってきた今、貴方達がこれ以上ここに留まるのは危険です。今日のうちに、この城を去ってください」

「……」

 

魯粛さんの気持ちは分かる。

僕も言われた通りに彼女たちのことも考えたら、これ以上深く関わる状況は避けたいのも事実だった。

 

「…分かりました。雛里ちゃんに話して、昼間には直ぐに動きます」

「…そうしてくださると助かります。後蓮華さまは…」

「蓮華は……」

「!」

 

自分の名前を聞いて蓮華はビクッと動いた。

僕は蓮華の方を振り向いた。

 

「蓮華、悪いが、お前を連れて行くことが出来ない」

「!!」

「見ての通り、僕は危険な人間だ。僕が行く先にはいつも何か事件が起こるし、僕はできる限りそんな事件らに首を突っ込んでいく。そんな時孫呉の姫であるお前を一々護ってあげることが出来ない」

「……」

「蓮華が僕に付いてくるという気持ち自体を疎かにするつもりはないけど、残念ながら蓮華は自分が思う以上に重要な人だ。僕の手には負えない。ごめん」

「………っ!」

 

僕の断りの言葉を聞いた蓮華はそのまま食堂から出て行った。

 

「…すみません、魯粛さん」

「いいえ、私こそ、申し訳ありません。こんなことになってしまって…」

 

急に重なったいくつの事件が、最悪の状況を作っていたこの頃、僕はこの日が色々最悪だと思った。

これ以上悪くなることなんてできないだろうと思った。

 

そしてこの後、僕は最悪のお告げを聞くハメになった。

 

 

 

 

 

蓮華SIDE

 

分かっていたわ。

あんな返事が出るだろうとわかってはいた。

 

昨夜、私は深月が私に言った話のせいで夜遅くまで眠れずに居た。

そんな時、外から騒がしい音がした。

何事かって聞いてみると、屋敷に入り込もうとした刺客が居たのだけど、外でばったり会った一刀がそいつらの足止めをしてくれたおかげで侵入されずに済んだとかそういう話だった。

話を聞いた私は直ぐに一刀たちの部屋の居る所へ走って行った。

 

「一刀!大丈夫なの?」

「今寝ました。静かにしてください」

 

屋敷に残っていたうちの一人、諸葛均が一刀の部屋に入った私にそう言った。

もう一人は多分まだ寝てるのだろう。

新野に居た時でも、明命と仲良かったけど、結構こういうことに動じない性格をしていたと思う。

 

「あ、ごめんなさい」

 

って、良く見ると一刀と鳳士元が同じ寝床に居た。

 

「怪我とかはないの?」

「ないみたいです。酔った状態で戦ったみたいですけど、それでも北郷さんですから……強いです」

「…そうね。余計な心配をしたかもね…って、酔ってた?」

「でも、本当に心配なのはそこじゃありません」

「へ?どういうこと?」

 

私は諸葛均の言葉の意味がわからなくて問い返した。

 

「北郷さんと雛里お姉さん、外で一緒にお酒を呑んだみたいです。二人とも酒なんてろくに呑みませんし、いつも私たちの身の安全のことを考える北郷さんが酔いつぶれるまで酒を呑むというのも妙な話なんです」

「……それって、つまり私が原因ってこと?」

「…完全にそうとは言えませんけど、原因を作ったのは孫権さんです」

 

一刀と鳳士元のことばかり考えていた。

というより、この子はこの面子だとほぼ目立たなかった。

在る時はまったく居ないように感じた時もあった。

でも、この時ばかりは、彼女を鳳士元以上に手強く感じた。

 

「孫権さんは知らないかもしれませんけど、雛里お姉さんと北郷さんの絆は、ただ二人が互いを好きであることに留まる話じゃありません。北郷さんは雛里お姉さんが居ないと生きていけないんです」

「………」

「前に北郷さんが蓮華さんに例の『約束』をした時、その後直ぐに北郷さん倒れてましたのよね。アレって、単に雛里お姉さんが言ったことがショックだったからではないようです」

「どういうこと?」

「前に話を聞いたんです。北郷さんは、誰かに愛してもらえないと生きていけないんです。人に愛してもらえないと、北郷さんはあの時のように倒れたり、もしかすると死んでしまうかもしれません」

 

諸葛均の口調はとても真剣だった。

それが喩えではなく、本当に言葉通りの『死』を意味するのだと分かった。

 

「孫権さんは、北郷さんのことが好きですよね?」

「そ、…それは…」

「……それもはっきり言えないぐらいなら、北郷さんのためにも、付いてきて欲しくありません」

「!」

「孫権さんが私たちに付いてきて、そのせいでまた北郷さんと雛里お姉さんの間がぎくしゃくしたら、北郷さんの命に関わります。中途半端に北郷さんに関わるつもりなら、私たちは全力で孫権さんのことを阻止します。北郷さんのためにも、私たち自身のためにも」

「……」

「孫権さんは孫呉の姫です。今はまだだとしても、またいつかは孫呉に帰らなければならないかも知りません。その時また、北郷さんに自分と一緒に行って欲しいというつもりですか?もし北郷さんが私たちを捨てて孫権さんに付いて行ったら、孫権さんにその責任が取れるのですか?北郷さんのことを、雛里お姉さんや私程愛してあげられるのですか?」

 

私は諸葛均の問いに答えられなかった。

私は一刀に惹かれていた。一緒に居たいと思っていた。

でも、諸葛均が言っている程の責任を持つことが、私にできるのか。

私にそんな力があるのだろうか。

 

彼のことが好きなのかどうかも、まだはっきり言えない。

単に一緒に居たいという思いでここまで来た。

それだけでは、足りなかったのだろうか。

 

 

 

その夜、私は何も言い返すことが出来ず、その部屋を出た。

 

そして今、一刀に断りの告を聞いた私は、世界が崩れるかのような喪失感に陥っていた。

どこに行くかもわからずに、ただただ街を歩いていた。

 

行き先もなく歩いていたら、ふと周りから高い声で叫んでいる気がした。

横を見ると、馬一頭が暴走したようにこっちに向かって走ってきていた。

街を歩いていた周りの人たちが悲鳴をあげてその馬を避けていく。

そして、暴走した馬は真っ直ぐ私が居る場所に向かってきていた。

 

どうすれば良いのかわからなかった。このままぶつかってはいけないのに身体が動かない。

まるでこれ以上この世の何かのために動くことを拒否しているように身体が言うことを聞いてくれなかった。

このままおしまいだと思った瞬間、

 

とても聞き慣れた声が……

 

「せやっ!!」

「うおおっ!」

「孫権さま!」

 

まず手裏剣が馬の脚に刺さった。同時に鈴の音とともに、馬を素早い速度で何かが通っていった。

そして、それと同時私を昨日の深月がやったかのように何者かが襲いかかって、二人同時に街の端へ倒れてしまった。

 

そして次の瞬間、脚に手裏剣が刺さった馬は倒れると同時に首が斬られ、私と私をかばった者はその鮮血を浴びてしまった。

 

「きゃっ!」

「あうっ!」

「「蓮華さま!」」

 

とても馴れ馴れしい声に私の真名を呼ぶ二人の声を、私は知っていた。

 

「思春、明命!」

 

血のせいでちゃんと見えなかったけど、確かに二人の声、そして技だった。

 

「ちょっと思春殿、馬を斬ってどうするのですか」

「お前こそそれぐらいで馬が止められるか。そんな安着な対応で蓮華さまに傷ひとつでもしたらどうなると思っている」

「あの、私はそもそもなんで馬を傷つける必要があったのか聞きたいのですけど、普通に蓮華さまを助けた方が楽だったじゃないですか」

 

三人三色の声が聞こえた。

一人は誰だか知らなかったけど、私を庇ったぐらいだから、私のことを心配してくれていたのだろう。

 

「蓮華さま、立てますか」

「ええ、傷はないからね。血は浴びたけど」

「…申し訳ありません」

 

皮肉で言ったつもりはないけど、取り敢えず思春の手に掴んで立ち上がった。

 

「二人とも、どうしてここに?」

「それはこちらの科白です。蓮華さま、私たちが知らぬ間にこんな所にまで…」

「しかもご単身で…危険にも程があります」

 

そうか、お姉さまに言われのね。私を連れて帰ってくるように……。

 

「新野から牙莎の連絡があったのです。蓮華さまが徐州に向かったって。聞いて直ぐに向かって来ました」

「…そう、心配かけてごめんなさい。でも、もう大丈夫だから……」

「蓮華さま…?」

「もう…全部終わったから…」

 

私は、一刀と一緒に行くことが出来ない。

このまま孫呉に戻って姉さまと孫呉の栄光に邪魔にならないよう、静かに生きることしか……

 

「……何があったかは判りませんが、蓮華さま。取り敢えずお聞きしたいことがあります」

「え?何?」

「アイツは、北郷一刀は今ここに居ますか?」

「え?ええ、今私と一緒に深月の屋敷に…」

「…直ぐに奴に会わなければなりません」

「え、どうして?」

 

深月はまだわかるけど、一刀に用があるってどういうこと?

 

「明命、ここは私が引き受けよう。お前は呂蒙と一緒に魯粛さまの屋敷に行け」

「わかりました。蓮華さま、行きましょう」

「え、ああ、待って。私今ちょっと帰りづらいのだけど…」

「そんなこと言ってる暇ありません!」

 

何、何なの?

私を連れに来たんじゃないの、この子たち?

なんでこんな慌ててるの?

 

 

 

つづく

 


 
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