No.406138

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第四章 4話

TAPEtさん

一難去ってまた一難

2012-04-10 18:13:45 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3345   閲覧ユーザー数:2931

真理SIDE

 

「……」

「…北郷さん」

 

孫権さんが出て行った後、北郷さんと私は部屋(雛里お姉さんは向こうの部屋に居ます)戻って来ました。

部屋には誰も居なくて、遙火ちゃんは恐らくかばんの中に居るはずです。

昨日アレ以来に左慈さんの機嫌を直すために頑張っているみたいですけど、まだ戻って来ません。

 

でもそんなことよりも、戻ってきた北郷さんがさっきから一言も言わず寝床に腰を下ろして頭を俯いています。

雛里お姉さんもまだ寝てるみたいで、今北郷さんを慰めてあげられるのは私だけです。

 

「北郷さん」

「……うん、何?」

 

私が二度目呼んだ時、北郷さんはやっと気づいて私の声に応えてくれました。

 

「私は、北郷さんが孫権さんを連れていかないと言ってくれて嬉しかったです」

「…え?」

 

孫権さんを連れて行くことは、私たちにとって色んな危険な要素が伴うことでした。

私が孫権さんに言ったように、今の私たちは、ある程度の覚悟もなくただ安着が気持ちを持って付いて来ようとする人を受け入れられる程の余裕が有りません。

しかも孫権さんは孫呉の姫、例え本人にその覚悟があるとしても、その人を連れて行くことで北郷さんが背負うべき責任が如何に重いものなのかを知っているから、私たちとしては北郷さんがそれを背負って欲しくないとしか思えなかったのです。

 

でも、一番の理由は

そんな北郷さんの選択が、孫権さんより雛里お姉さんや私のことを大事にしてくれているからだと思っているからです。

 

 

 

……いえ、ほんとは、どっちなのでしょうか。

私は…北郷さんにとって雛里お姉さん程愛されているのでしょうか。

きっと今は違うと思います。

私のことなんて、遙火ちゃんみたいに妹ぐらいにしか思っているはずです。

それも仕方ありません。だって北郷さんには雛里お姉さんしか居なかったわけですから。

 

でも、せめて今からは、

 

「北郷さん、私、北郷さんにずっと言いたいことありました」

「………?」

 

言わなきゃ……

ちゃんと、私の気持ち…

 

もう独りぼっちで、ただ寂しさを慰めてもらいたくて一緒にやってきた私じゃないから。

 

「私、北郷さんのこと…」

 

 

 

「一刀様!いらっしゃいますか!!」

「てわわーっ!!」

「うわっ!」

 

突然部屋の扉が開いて怒鳴り声が聞こえて、私は告白の途中だったにも関わらずびっくりしたあまりに北郷さんに抱きついてしまいました。

 

「周泰?何故ここに居る」

 

部屋を開けたのは、新野で出会って、豫州でも助けてもらった明命ちゃんでした。

そして、その後ろには豫州で出会った呂蒙さんも居ます。

孫権さんを連れに来たのだと思いますけど、こんなに早く来られるはずがありません。

……その孫権さんも何故かここに居ますけど…

 

「それが、ちょっと厄介なことになっちゃいまして…」

「一刀!」

「蓮華、一体何の騒ぎだ?」

「はぁ……はぁ…私も良く……なんか走らされちゃって……助けて」

 

なんか孫権さんは瀕死状態でした。

 

「うわわ、蓮華さま、しっかりしてください!」

「誰の…せいよ…」

「そ、孫権さま!」「蓮華さまー!」

「…なにこれ…」

「てわわ」

 

私にも判りません。

 

 

 

 

雛里SIDE

 

「……あ…わ゛わ゛」

 

 

頭が痛いです。

もう一生お酒なんて呑みません。

 

「一刀さん…?」

 

一刀さん…というか誰もいません。

もう日も結構昇ってるみたいなんですけど…私、今凄く気持ち悪いです。

 

そして、外がなんか騒がしくて、更に頭がずんずんと鳴ってます。

ちょっと静かにして欲しいです。

 

「……ま!」

「…ふぁ…さま!」

 

……というか

 

「うるさい…」

 

黙って欲しいです。

というか黙らせます。

そしてもっと寝たいです。

 

がらっ

 

「うるちゃいでしゅうううう!!!」

「「「「「………」」」」」

 

……あわ、静かになりました。

 

「雛里ちゃん、お前な」

「わーっ!雛里お姉さん、服着て、服!」

「…服?」

 

…と言われて自分の体を見ると、

下着姿で外に出ていました。

 

……

 

「あわわ!!//////」

「と、取り敢えず、これで隠せ」

 

私はその場に座り込んで一刀さんが自分の上着を脱いで私にかけてくださいました。

 

「はぁ……何だこのカオスな状態」

「あわわ、ごめんなさい」

「いや、雛里ちゃんのせいじゃないよ。戻ってもっと寝てもいいよ?」

「いいえ…なんか、完全にさめちゃいましゅた」

「だよねー、僕もさっきまで頭真っ白だったのに、雛里ちゃんがそうして出てくるからもうパニクっていられないよ」

「皮肉ですか?」

「まさか(棒読み)」

 

なんか凄く失礼な気がするのですけど、私がいけなかったのと、後頭が痛いから何も言いません。

 

「で、周泰、後呂蒙、お前たちなんでそんなに慌てているんだ。この際倒れた孫権は二の次にして」

 

それって大事じゃないんですか?

 

「はっ、そうでした!一刀様、実は一刀様に持ってきたものがあります」

「持ってきたもの?」

「はい」

 

そう言いながら、周泰さん(なんで居るんでしょう)は背負っていた籠を下ろして、中から細長い包みを出しました。

 

「なんだ、これは……?」

「見たら分かると思います。私はこれ以上触れることは出来ませんので…」

「……?」

 

一刀さんは頭をかしげつつも、その包みに手をつけました。

そして、包みの中身をちょっとだけ確認した一刀さんは顔を青ざめて直ぐ様それを包み直しました。

そして周泰さんの顔を見ました。

 

「コレをどこで手にした…」

「……」

「いや、まだ言うな…。取り敢えず蓮華を連れて中に入ってろ。真理ちゃん、倉と左慈呼んできてくれ。親子喧嘩してる場合じゃない」

「てわわ、どうしたんですか、北郷さん?」

 

一刀さんの顔にはあまり余裕が見られなかったので、代わりに私が真理ちゃんを促しました。

 

「真理ちゃん、取り敢えず、早く二人とも呼んで。周泰さんたちも、蓮華さんを中の寝床において座っていてください」

「てわっ、はい」

「わ、わかりました」

 

真理ちゃんが部屋に入って、周泰さんと呂蒙さんが蓮華さまを連れて中に入ると、私と一刀さんだけが残りました。

 

「…一刀さん?」

「……」

「一体、中身に何が入ってたのですか?」

「……『刀』だった」

「刀?」

「刀…呪われた刀…『氷龍』」

「!」

 

その名を聞いた途端、私も一刀さんのように驚く他ありませんでした。

 

「で、でも、あの刀はあの時長江の洞窟の中で……」

「ああ、確かにあの時僕の手で壊したはずだ……残ってるはずがない…」

「ただの見間違いではないのですか?」

「同じ感じだった…近づいた途端、刀が何かを囁く。そして並み以上の精神力でも、アレに耐えることは難しい」

「……」

 

一度は一刀さんが壊した刀。

そして一度は一刀さんを殺した刀。

この世に残っているはずの刀。

なのにどうして今またここに現れたのでしょうか。

 

 

 

深月SIDE

 

「何度も言っても、帰ってくる言葉は同じ。中には入らせません」

「連中は無断侵入者です。いくら大商人魯子敬さまでも、州牧の命を逆らっては…」

「いつからあなたたちのやっていることが州牧の命になっていますか」

 

今私は、屋敷に入って来ようとする兵士たちを食い止めています。

私の後ろでは、私の私兵たちが、もし一歩でもこの屋敷に足を踏み入れる無礼者の首を切り落とそうと待機しています。

 

「あなた達が関門調査を言い訳に強奪、暴行、罪なき人に賄賂を要求するなどと数々の蛮行を行なっていることはこちらも重々承知の上。何度を言っても同じ。今この屋敷に居る客たちは、我ら魯家の大事な貴賓ばかり。彼女らに手を出すことは、この魯子敬に手を出そうとするのと同じことだと思ってください」

「っ……張闓さまがタダでは見届けないはずです」

「そうですね。張闓に報告するつもりならこうも伝えてください。私がこれ以上彼の野蛮な行為をただで見届かないと。私と私の大切な人たちに手を出そうとしたその罪。高くつくだろうと」

「……」

「…もう帰るぞ。既に一人は捕まえている。そいつを問い詰めればなんかの口実でも出てくるだろう」

「ああ」

 

……!

 

「今日の所はこのまま引き上げましょう。しかし、いつまでもこの徐州で張闓さまに逆らったまま居られるとは思わないことです」

「貴様ら、聞いていたら命が惜しくないようだな!」

「麋竺!」

 

後ろで剣を抜こうとする秘書、麋竺を止めて、私は手下たちに扉を閉じるように命じました。

 

「……困ります、麋竺。あなたは商人です。人の挑発に決して乗ってはいけないのが商人です。あなたも解っているはずです」

「申し訳ございません。しかし、奴らの蛮行はもはや見てられない状態です。昨夜の刺客も張闓の手下だと考えれば……」

「…私も流石にこのまま座視しては居られませんね。ですが麋竺、私たちにはもっと私たちらしい戦い方があるのです」

「それは……」

「そう、私たちは商人。なら、それを最大限まで生かせてこそ、相手を滅ぼす強い一撃こそないものの、相手の息の根を止めることはできるのです」

「………」

「…ある意味、そっちの方が根暗なやり方ではありますが」

「ろ、魯粛さま?!」

「冗談です。さて、私は蓮華さま方を見に行きますので、あなたは万が一また連中が潜り込んでないか監視してください」

「承知致しました」

 

麋竺にそうお願いして、私は蓮華さまを探しに向かいました。

周泰あの娘が北郷一刀さんの居る場所を聞いていたので、恐らくそこへ向かったでしょう。

 

 

 

 

「皆さん、ここに集まっていたのですか」

 

部屋に入ると、鳳統ちゃんたちと蓮華さまと一緒に来たその部下たちが集まっています。

 

「…どうしたのですか、皆さん。そんな真剣な顔で……」

「深月」

「外の連中は追い払いました。屋敷内には入れません」

「そう……」

 

蓮華さまの顔には、少し血気が抜けていました。

一体何が……

 

「さて、周泰、話してもらおう。この刀を一体どこで見つけて、どうしてここまで持ってきたのかを…」

「はい」

 

円卓には、細長い包みがあって、皆明命ちゃんに視線を集めています。

何やら深刻な雰囲気ですので、しばらくは様子を見てみましょう。

 

「この剣は、豫州の麋竺、もとい、糜芳さんの屋敷で見つけたものです」

「糜芳の屋敷…だと?」

 

糜芳というのは、麋竺の弟として、豫州での事件の黒幕でもあります。

彼はあの時捕まえた後、今糜家の掟どおり、その財産を没収して徐州から追放しています。

何人か彼を監視させていますが、今は与えた青洲のある小屋で大人しくしています。

 

「はい、調査中に残っている例の蜂蜜を作るための阿片を回収するために、彼の屋敷を捜索したのですが、その時誰かが中でこの剣を見つけたのです」

「……被害は?」

「…知らずに剣を持った兵士がそこに居た兵士5人ほどを殺し、後、私と思春殿が制圧するために、剣を持ったその兵士さんもまた殺さなければなりませんでした」

「……」

 

話を聞くに、中にあるのは恐らく剣のようですね。

しかし、ただの剣としては報告の内容がなにやら物騒です。

 

「それで、孫策はなんと?」

「はい、誰にも近づかないように釘付けておいて、直ぐに雪蓮さまに報告しました。そしたら、雪蓮さまが…」

「僕に与えろ、と」

「……はい」

 

北郷さんはとても複雑な顔をしていて、それは他の鳳統ちゃんや諸葛均ちゃん、倉ちゃんも同じです。

 

「雪蓮さまご自分も、この剣については嫌っていましたし、私たちではどうすることも出来ませんでしたので…」

「…まぁ、あいつの思惑がわからなくもないのだが…あとお前たちが言ったのだろ?僕がこの刀を壊したことは」

「はい、でも同じ剣なはずはありません」

「当たり前だ…」

「じゃあ、何?最初から二つあったってこと?」

「それもありえない、あの刀はひとつしかなかったんだ」

「じゃあどういうことなの?」

「僕もわからないよ!なんでアレがまだこの世に残ってんだよ!」

「!」

 

蓮華さまの問い詰めに、北郷さんが苛立たしい声で怒鳴り付けて、私も蓮華さまも、他の人たちもびっくりしました。

 

「…あの刀が残っていて一番不愉快なのは僕だ。あんなものがこの世に幾つもあってたまるかよ」

「北郷一刀さん」

 

私はそろそろ自分にも説明してもらいたいと思いました。

 

「私にも分かるような説明を頂けるでしょうか」

「……」

「あの剣が豫州の出来事と何か関係があるであれば、私にもそれを聞く権利はあると思いますが…」

「…分かりました」

 

北郷一刀さんは、そう言いながらその包みを解きました。

そしたら、中から薄い青い色が入ってる剣が出てきました。

 

「妖刀、『氷龍』です」

「妖刀?」

「言葉通り呪われた剣で、以前も何度も出会ったことがあります。人の欲望を増やして、その欲望を叶う力を与える剣です」

「……?」

 

私は自分が聞いた言葉の意味が良くわからずに居ました。

 

 

 

 

一刀SIDE

 

魯粛さんはどうも理解してくれないようだ。

そりゃ知らない人が聞いたら全然分からないだろうと思う。

あそこで黙って聞いている呂蒙もまったく分かっていない様子だ。

 

こういう時に左慈が出てきて欲しいのにいくら呼んでも倉も左慈も鞄から出てこない。

一体何をやってるのだか…

 

「よし、雛里ちゃん、頼んだ」

「あわわ、わ、私ですか?」

 

困った時の雛里ちゃん。

 

「え、えっとですね…私たちも詳しいことは判りませんが、あの剣には、人が秘めている欲望を晒し出して、その人がその欲望を叶うためにどんな手も使うようにしてしまうのです」

「しかし、どうして単なる剣にそんな力が」

「だから、『妖刀』だというのです。信じられないだろうと思いますけど、ここに居る私たちや、あと蓮華さまも見ましたよね。白鮫の時に…」

「私は話は聞いたけど、実際には見てないわね。ただ、最後に出てきたあの化物は…」

「化物?」

 

魯粛の疑問に僕が代わって答えた。

 

「以前、糜芳以外にこの剣の力を使った者を見たことがあります。最後には剣の意志に体を乗っ取られ、人間の形すら失った異様な形の怪物になっていました」

「……!!」

「詳しいことは判りませんが、恐らくこの剣が暴走してそんなことになったと思います」

「では、もしや糜芳もそんな風に…!」

「今は離れていますから、恐らくそんなことはないだろうと思います」

 

周泰が魯粛さんを安心させるためにそういった。

 

「というか、恐らく糜芳があの騒ぎを起こしたのは、『氷龍』のせいではないでしょう」

「あれ?そうなの?」

「『氷龍』の力が発揮されるのは、その人がそれを握っているだけだ。周泰も運ぶ時は感じただろ?」

「はい、思春殿と一緒に交互に持ってきてなければ、私もつい剣に気をとられたかも知れません」

「…は?」

 

思春…?

甘寧が来ている?

 

「蓮華、甘寧は今どこにいる」

「そういえば、遅いわね。そろそろ来てくれるだろうと思ったのだけど…」

 

甘寧が一緒に来ている。

今周泰たちがここに来て小一時間ぐらい経っているのに帰って来ないというのは……。

 

「じ、じつは…!」

 

その時呂蒙が口を開けた。

 

「何だ、呂蒙?」

「あ、あの、ここに入ってくる時に、関門の兵士たちと喧嘩がありまして…ですね」

「関門の兵士がこの包みに関心を持つ目が良からぬことを考えていると思って、強行突破してしまったのです。そして逃げてるうちに蓮華さまにばったり会って…思春殿はあのまま時間を稼ぐために逸れたのですけど…」

 

二人の説明、そして帰って来ない甘寧…

嫌な予感が

 

「そういえば…」

 

そしてその嫌な予感にトドメを刺したのは魯粛さんだった。

 

「張闓の兵がこんなことを言っていました。『連中の一人を捕まえた』って」

 

ぁぁ…。

 

「まさか、思春殿が捕まるはずがありません!」

「そ、そうよ。思春はとても強いのよ?」

「しかし、彼らはたしかにそう言っていました」

「もしかしたらこっちに迷惑かけないように態と捕まったのかもしれない」

 

甘寧は割りとそういうところはあっさりしてるからな。

 

「ど、どうしましょう。直ぐに助けに行かないと……」

「そうだな。でも、甘寧のこともそうだが先ずはこっちから片付けよう」

 

僕はそう言って『鳳雛』を取り出した。

 

剣を見ると、『氷龍』がまるで壊れることを拒むようにガタガタと震えていた。

 

「悩んでいてもしょうがいないし、こんなものを残しておいた所で百害あって無益だ…周泰たちも異議はないな」

「はい、元々そのつもりで持ってきたのですから」

「よし、じゃあ、とりあえず、楽な方から片付けるか」

 

僕は『氷龍』に向かって『鳳雛』を振り下ろした。

『氷龍』ガラスが割れるかのよなキーンという音をしながら真っ二つに割れた。

 

 

 

 

甘寧SIDE

 

「……ふっ」

 

何、一度は牢屋というものも見てみたかったのだ。

 

手に鎖がつながっているし、剣は奪われたが、髪の中に隠しておいた針を使えばこんな牢屋いつでも出られるし、武器がないからと言って城を通る人々からものを奪う雑兵どもに遅れをとる私ではない。

北郷一刀が無事にあの剣を片付けて、蓮華さまとのことが片付きそうになった頃には出よう。

 

しかしこの徐州の輩、幾らなんでも質が悪すぎる。

どこに行ってもろくな連中が人々を治めていない。

この国ももう終わりだな。

 

「いや、もうとっくに終わっていたか」

 

その時、外から誰か入ってくる音が聞こえてきた。

中に入ってきた兵士と巨躯の男が一人、私が捕まっている牢屋の前に立ち止まった。

 

「……何だ?」

「この女です」

「ほう、なかなか上玉だな」

「当然です。そうでなければここまで張闓さまをお連れしてもいません」

 

…こいつら、まさか私を慰み者にでも使うつもりか?

面白いことを思うものだな。

いいだろう。

貴様らがその牢屋の扉を開く音を、貴様らが黄泉路へ向かう道しるべにしてやろう。

 

「…てめぇ、俺を馬鹿にしてるのか?」

「え、い、いえ、決してそのようなことは…お言葉を選べませんでした、もうしわけございま…」

「もういい

 

 

 

 

死ね」

 

巨躯の男の声が終わると同時に、奴は持っていた剣が隣の兵士の頸を貫いた。

 

「が、あぁ……」

 

兵士はろくな声も出せずにそのまま死んでしまった。

 

「なっ…」

 

それを見ていた私は驚愕した。

今まで私も散々人を殺してきたが、このような殺し方をする人間をみたことがなかった。

まるで人間の命を子供が虫を踏みにじるかのように簡単にやってしまうその巨躯の男を再び見た時、私は何かに気づいてしまった。

 

一つは、その男の目が完全にイッてることと、

 

「おい、そこのお前」

「は、はいいっ!」

「…今晩この女を俺の閨に連れてこい。あとこいつを適当な所に始末しておけ」

「わ、わわわかりました、張闓さま」

 

奴の、兵士の血で赤くそまったその剣が、元は青い刃を持っていることであった。

 

 

・・・

 

・・

 

 

 


 
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