「いいよなぁ・・・光の住人は・・・。いつもお日様の元でまっすぐなんだ・・・。ホント・・・うらやましいよっ!!」
言葉と同時にガキを思い切り突き飛ばす
「わっ・・・!」
ガキが尻餅をつきながら俺を見上げている
フン、無様なもんだな
「あ、待ってよ駿君!!」
それ以上会話をする気がうせた俺は、そのまま2人に背を向けて歩いて行く
後ろの方で何か声が聞こえたけど、無視だ
「もう二度と光なんて求めるか・・・!」
そうだ、もう二度と・・・・!
しばらくの間、知らない道を歩いて行く
歩きながら考えるのは、もちろん兄貴のこと・・・
兄貴はゴールのない暗闇から抜け出せたのか?
俺たちだけの太陽を掴む事ができたのか?
本当なら、今すぐにでも会いに行きたい
でも、兄貴が今どこにいるのかも知らないし。そもそも、会いに行けるわけがないのさ・・・
だって・・・俺はワームになってしまったんだから・・・
何で生きてたのかは分からないけど・・・
そんなのは関係ない。もう一度死ぬだけさ
こんな体で生きていたくなんかない・・・
俺は死に場所を求めて歩き続ける
10分、15分・・・・1時間、2時間・・・・・
そして、やっと見つけた・・・
町に流れる川にかけられている、少し大きめの橋
なぜか縮んでいるこの体なら十分に死ねそうな高さだ・・・
橋に向かって一歩一歩進んで行く
やっと死ねるかと思うと、思わず笑みがこぼれそうになる
でも、橋に近づくにつれて、人影も一緒に見えてきた
何でよりによってこんな時に・・・・!!
ん・・・?あいつは・・・
「・・・・ふぅ」
少女が一人立っている・・・
輝くような金髪に、きれいな赤い瞳を持つ、かなりの美少女だ
だが、少女の表情は決して晴れやかなものでなかった
少女の名前はフェイト・テスタロッサ
フェイトは今日で何度目かは分からないため息をついていた
フェイトは今、母親からの頼みで『ある物』を探しているのだが、それがなかなかうまくいかないのだ
母親に嫌われたくない・・・・
今、フェイトを支配しているのは、そんな依存にも近い感情だった
「このままじゃ・・・また、母さんをがっかりさせちゃう・・・最悪だ」
「最悪は、最高なんだよ。お嬢様」
後ろで、誰かの声がした
反射的に、その声の方へと顔を向ける
そこには、少年が立っていた
黒いコートに奇妙な装飾品を身に着け、頬には傷跡がある
「君は・・・・?」
その異様な少年相手にも、フェイトは至って冷静に会話を切り出した
だが、少年はその問いには答えなかった
「アンタ・・・瞳の奥に闇が見える・・・。アンタ、俺と同じ地獄を見たんだ・・・」
少年の言葉にフェイトは怪訝そうな表情を浮かべる
「君と同じ・・・地獄?」
「そうさ。誰からも必要とされてないのに、バカみたいな努力をして、捨てられる・・・。でも、本当の地獄はそんなもんじゃない。最期には一人で惨めに死ぬ道を選ぶのさ・・・」
まともな会話が成立しない少年にフェイトは背を向ける
それは明らかな拒絶だった
母さんが私を捨てるわけがない・・・。今は忙しいせいで少し怖くなってるだけ
いつか、必ず優しい母さんに戻ってくれる
フェイトはそう確信していた。だから少年を拒絶したのだ
「なんだ、行くのか?じゃあ、俺は先に地獄で待ってるよ。アンタも早く来ることだね・・・」
次の瞬間、少年は信じられない行為を始めた
橋から飛び降りるために、柵の上にのぼり始めたのだ
少年のこの異常な行動に我関せずを貫こうとしていたフェイトもさすがに止めに入った
声を出すよりも早く、少年の体にしがみついた
「なっ!?放せ!!」
止められるとは思ってなかったのか、少年は大きな抵抗もせず、再び橋の上へと戻された
「どうしてこんなことを!!」
フェイトは、自分でもここまで大きな声を出したことがないのでは?と、思うほどの大声で少年に怒鳴りつけていた
奇妙な姿の少年が、金髪の少女に怒鳴られる・・・
ハタからみればシュールな光景だ
「邪魔をするな!俺はこれ以上の地獄はもうたくさんなんだ!!」
「私は・・キミがどれほど辛い目に遭ったのかは知らない・・・でも、君のやろうとしたことが間違ってるってことは知ってる・・・!」
2人の口論は続く
「間違ってる?俺が死んでも悲しむ奴なんていないのに、何が間違ってるのさ!!」
「それは・・・!」
フェイトは一瞬、口ごもった
フェイトは少年のことを何も知らない。だから少年の問い・・・いや、心の底では救いを求めるその声に、なんと答えていいのか分からないのだ
「もういい!あ~あ、声をかけるんじゃなかった!」
少年は嫌味ったらしい口調でフェイトには1ミリも非がないことを言いながら去ろうとする
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仮面ライダーカブト×魔法少女リリカルなのは
俺は死んだ… 兄貴に殺してもらった… けど… なんで生きてるのかなぁ!?
しかも、目を覚ましたら、日なた側の住人に家族宣言されたよ、兄貴