No.394079

IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 コラボ小説 第二話~光輝と唯

突然、現れた男の娘は異世界の人間だった。光輝とは違う世界の人間が現れたのだ。それを千冬達に相談しようと持ちかけるが、アムロは唯との対話を望んだ。その真意は?

2012-03-18 22:01:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1421   閲覧ユーザー数:1386

 アムロさんと唯さんが話している間、僕とお母さんとエリスさんは僕の部屋で待機していた。アムロさんが聞きたいのは唯さんからあのプレッシャーのことなんだろうけど……でも唯さん自体は自分の信念をしっかり持った優しい人っていうのも感じれたから大丈夫だよね?

 

「ねぇエリスさん? いい加減この服装止めるよ?」

「ダメだって! 今日は一日これでいようよ。いいですよね、織斑先生?」

 

 ベットの上にエリスさん、僕(女装)、お母さんと座っているのだけどなんていうか……こう挟まれえると緊張してしまう。今、この部屋に入って来た人からみるとただのガールズトークにしか見えないだろうけど真ん中の人は列記とした男ですからね。

 

「そうだな。たまにはいいだろう。光輝、今日一日はその服装でいるんだな」

「や、やだなぁ。織斑先生が御冗談を言うなんて……」

「誰が冗談と言った? 私は本気だったんだが……」

 

 い、意外だ。まさかお母さんがそんなことを言うなんて……! 

 

「僕はき、着替えますからね!」

「光輝くん、着替えちゃうの?」

 

エリスさん、そんな子犬みたいな上目遣いをしないでくれ! そんな目をされたら僕は……! 断ろうにも断れないじゃないか!

 

「わ、分かったよ……くぅぅぅ」

「えへへ、やったね!」

 

 そんな無邪気な笑顔を向けられると胸がズキズキ痛くなるのはなぜだろう……。また僕は男として大切なものを無くした気がする。

 

 そんな僕とエリスさんのやり取りをお母さんが苦笑いしながら見ている。

 

「は、恥ずかしいんであまり見ないでくれると嬉しいんですが……」

「お前は昔から反応が面白いからな。ずっと見てたいぐらいだ」

「さすが織斑先生! 分かってらっしゃる!」

 

 当たり前じゃないか、とお母さん。ふ、二人してからかって……。でもこの二人ってけっこう仲が良いよね。確か、学年別トーナメントの時ぐらいからかな?

 

 それにしても唯さんとアムロさん、大丈夫だろうか? 心配だよ……。

 

 

 

 千冬の部屋には唯と待機状態のHi-νガンダム――アムロが向かい合わせでいる。第三者から見ると、とてつもなく不自然な光景だろう。

 

[すまないね。初対面でいきなり悪いとは思っているが……]

「構いませんよ。俺も貴方と話してみたかったんですから」

[ありがとう。君自身からは強い想いを感じる。仲間を護りたいという純粋な気持ちがね]

「ありがとうございます。俺は手を伸ばす。それだけです」

[良い考えだ。でも問題はそこじゃない。君からその想いと同じぐらいの狂気を感じるんだ。だが君自身の想いじゃない、と言えばいいのかな? まるで別の人間が君の中に居るような……それに君の心に深い闇を感じる]

 

 唯は焦ってしまう。アムロの核心ついた発言に言うか言うまいか迷うが、腹をくくって決めた。

 

「それは、俺の中にいるもう一つの人格――ユリのことです」

[もう一つの人格? 詳しく話を聞かせて貰えないだろうか?]

 

 唯は自分の世界の事や生い立ちについて話した。特定の人物しか知らない唯の真実を。

 

 唯は幼きころに両親に売られ、ある病院で人体実験を施され人間離れした力を手にし、その過程で右目が金色になった。それ同時にユリと言うもう一人の唯が。唯の中に眠る狂気が表に出た人格。

 

そして最近ではユリの正体が紫のメダルのグリード、ギルということが分かった。今は仲間を護りたいという唯の欲望で押さえつけているが、それも時間の問題でこのままだとユリに身体を支配されてしまうということ。

 

アムロの言う唯の心の闇は自分が人間ではなくなってしまったことに対する絶望からだと考える。

 

「こんな能力を持ったばかりに俺は人間じゃなくなった……ユリにも支配されてしまう。みんなにもばれたら俺は、仲間を失う。そんなの嫌だ……!」

 

 唯は今にも泣きそうな表情だ。自分が人間ではない異常なものだと知られた時、仲間や一夏、千冬の家族はどんな反応をする? 唯には最悪のことしか浮かばない。

 

[君はどうして一人で背負いこもうとするんだ?]

「俺自身の問題、だからです。みんなを巻き込むわけには……!」

 

 唯も前の光輝と同じように仲間を護る為に自分が犠牲になるという考えだった。それは唯の優しさでもあったりするのだが悪い所でもある。

 

[光輝も君と同じように家族に捨てられて研究所に実験材料になっていたことがある]

「織斑が、ですか?」

[そうだよ。あの子は幼いころからズバ抜けた直感力、洞察力と高度の空間認識能力を持っていたが、普通の子供とは違うのが嫌だったんだろうな。両親は研究所に売ったんだ。それから光輝は身体の隅々まで調べられた。時には殴られ蹴られの暴行も受けて、更には同い年の子を目の前で殺されたりして身体的にも精神的にも追い詰められていったんだ……]

 

 唯はそれを静かに聞いている。アムロの口調からそれが光輝にとってとてつもなく辛い記憶であるのを覚った。

 

[だがあの子は隙を見て研究所から逃げた。逃げたはいいが食料も何もない状態で衰弱状態の彼は倒れた。だが、そこで千冬に助けられた。そして今に至っているんだ]

「あいつにそんなことがあったなんて……アムロさんは直接聞いたのですか?」

[それもあるが、光輝の記憶を覗かせて貰った時があってね。その時に直接聞いたんだ。この事をみんなに言うのは怖いと言っていたが、自分の事を知ってもらう為にもいつかは言う気でいる。どんな反応でも構わないから信じている人たちに隠し事はしたくないと……]

 

 唯は光輝の過去を知り、何を思うか? 彼がどうなるかは彼自身しか分からない……。

 

 

 

夕食も済まし、風呂にも入ってきて光輝の部屋に戻って来た二人。千冬に許可を貰って唯を光輝の部屋で寝泊まりするようになった。一応、一夏にも挨拶しに行き唯曰く「男でも女でもスタイルが良いのは変わらないな」とのこと。聞いた一夏はちんぷんかんぷんである。

 

「どこの世界のIS学園も男子に飢えているな……」

「そっちもなんだ……お互い変な事で苦労するね」

 

光輝と唯は夕食の為、食堂に行く際に大勢の女子に阻まれた。多くの女子が唯を見た途端、一気に接近してきたのだ。それはもう押しつぶす勢いで。始めは男と信じられなかったが唯が説明し、全員納得。しかしこれが災いの元である。

 

 男子だと分かった途端、食事中まで付いてきて騒がしいのだ。知らない者が見ればハーレム状態だが二人からすれば迷惑なだけだろう。

 

「ご飯を食べるのにここまで疲れたのは久しぶりだよ、全く」

「同感だ。飯を食べる時ぐらいゆっくりしたいってのに……」

「そうだね~。あ、そう言えば寝るときどうする? このベット、シングルだし二人一緒に入るわけにもいかないしさ」

「俺は一緒でも構わないぞ」

「へ? でも狭くないかな? なんなら僕が床で寝るからさ唯さんはベットで寝なよ」

「それじゃお前が辛いだろうが。それにお前の身長ならそんなに面積を取らないだろ?」

「おぉ~、確かに。……って! 遠まわしにお前は小さいからな、って言ってるようなもんじゃないか!」

「あ、ばれたか。でも事実だろ?」

「た、確かにそうだけど……身長の事は言ってほしくないのに……」

 

こいつ面白いな、とか思う唯。なんというか反応が面白かったりと、光輝は身長の事でからかわれたりするのが多かったりするのである。がんばれ光輝!

 

「わ、悪かった。だが俺は本当に一緒でも構わないぞ。本当なら俺が床で寝るべきだがな……」

「じゃ、じゃあ一緒にベットで寝よう。それじゃあ唯さんが辛いでしょ?」

「……それさっき俺が言った台詞だな」

「こ、細かいことは気にしない!」

 

 光輝の顔がほんのり赤いのは気のせいだろうか? やっぱりこいつは面白いと思う唯であった。

 

 

 

「ん……何時だ?」

 

 俺は寝ぼけた頭で時計を見る。午前一時……二時間ぐらい前だったか、寝たのは? まだ寝れるな。

 

 ふと、俺は織斑の顔を見る。まぁどう見たって女子にしか見えないな……。束や愛琉が見たらすぐに女装させそうだ。織斑はそれを受け入れそうにはなさそうだけど。

 

「さてもう一回寝ますかな……この感触は?」

 

 左手首を織斑に握られてるらしく、織斑自身は寝ているのだが取れそうにない。取る必要もないから別にいいけどな。

 

「唯さん……どこかに行っちゃ嫌だよ……」

 

 そう言う織斑の目から涙が一筋流れていた。静かにそれを拭う。一体どんな夢をみているんだろう? 言葉からすると暗そうなイメージだな……。

 

 しかし、こいつは強いと俺は思う。俺と同じような運命にあっているのにこいつは強く生きている。それどころか人を信じて光を伝えようとする。脅えている俺とは違って……強いよ。

 

「そんなことないよ……自分に自信を持って……」

 

 俺の考えてることが分かるのか!? いや、寝息を立ててるから寝ているだろうが、ビックリするな。

 

 仲間想いの優しさを持った人間はそうそういない。こいつみたいに純粋な人間もいない。織斑――いや、光輝ならアムロさんの言った通りになると思う。

 

 ありがとう光輝。お前のおかげで少しづつ勇気が出てきそうだ。お礼も込めて髪を撫でる。一瞬、手首を握る手が強くなった気がしたのを感じて俺は再び眠ることにした。

 


 
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