桔梗√ 全てを射抜く者達 第40射
視点: 桔梗
わしは馬に跨り、零陵の城に向かって進んでいる。
伏兵に襲われていないのは、先日の人狼部隊の蜂による襲撃がかなり効果的だったということだろう。
この戦が終わればようやく次は成都への進軍で、成都が落ちれば、一刀に会える。
そんなことを一刀から預かっている無限バンダナを触りながらわしは思い出す。
この無限バンダナ本来は額に当てて、頭の後ろで結ぶ物らしいが、わしがそれをやってみても似合わなかったので、髪止めの紐として使っている。最初は帯に短し、襷に長しと思っておっだが、もう慣れた。
この無限バンダナはとても便利なモノじゃな。気が付いたら、懐に弾が補充されていて、無くなることがない。
なるほど、一刀がいつも重宝するのも分かる。
以前、天の国にはこのようなものがあるのかと聞いた事があったが、こっちに来てから手に入れたモノらしい。
ならばどこで手に入れたのか聞いたら、貂蝉という絶世の美女から貰ったと一刀は言っておった。
わしはその貂蝉を見つけたモノには褒美を取らせるとお触れを出したことがあったが、今の所見つかっていない。
そういえば、洛陽に同姓同名の筋肉隆々の少々?変わった踊り子?がおると月様が言っておったな。
「桔梗様、幾ら伏兵の心配がないからと言ってそのような顔をしていたら兵達が動揺します。もっとしっかりしていて下さい。」
「う?なにか変な顔をしておったか?」
「はい。眉間にしわが寄っていましたよ。」
「左様か。気をつけんとな。ときに、杏里よ。真桜から預かっておるアレは問題無く動かせるのか?」
「はい。全機問題無く動きます。少しばかり大きいので、運搬に時間が掛かるため、バラして運搬中です。
広場に着いたら、即座に組み立てて、何時でも使えるようにします。組立てが出来る工兵の選別と割り当ては決定していますし、全ての工兵に通達済みです。さらに、工兵の配置もアレを運搬している兵の後ろについていますので、広場に到着すれば、すぐにでも組立てが行えます。
訓練だと、組み立てに最短で八半刻(15分)も掛かりません。」
「うむ。さすがじゃな。では、わしは星や鈴々と共に前線に立つぞ。」
「はぁ……。止めても行くんですよね?」
「当然じゃ。喧嘩と酒は華。人生に無くてはならん。」
わしは杏里に指揮を任せて前線へと向かうために、馬を走らせる。
これ以上此処に居たら杏里の毒舌が始まる。何でわかるかって?杏里がため息をついてすぐに、一瞬だけ笑顔になったからだ。
アレは毒舌開始の合図だ。正直今は聞きたくない。いつもなら、笑って済ませることが出来るのじゃが、戦前は勘弁して貰いたいところじゃ。
じゃから、逃げた。ほら、孫子も言っておるじゃろう?さんじゅーろっけー逃げるに如かずとな。
兵達の行列の横を馬で走り、前線に辿り着く。すると前線では、縦と槍を構えた兵と星と鈴々が城と睨みあっていた。
どうやら、黄巾党が出て来るのを待っているようだ。だが、基本黄巾党は阿呆の集団らしいので、いつ出て来るかわしらにはわからん。
曹操の軍が銅鑼を鳴らしたら、黄巾党が出てきたなんて言う風のうわさが存在するぐらいだ。桃香様のくしゃみで出て来るなんてこともありそうだ。
だが、できるのなら、スモークグレネードを城の中で爆発させてからの方がこちらの損害は少ない。
なぜなら、あのスモークグレネードを喰らっている敵の方が倒しやすいからじゃ。
場合によっては、戦わずして相手を無力化することができるかもしれぬ。
その方が、黄巾党を取りこんで戦力を上げることが出来るやもしれぬ。戦力が上がれば、成都の攻略が容易になるかもしれぬが、スモークグレネードを使う前に向こうから突撃してきたら戦になるから、こちらの戦力が落ちてしまう。まあ、その辺は博打じゃな。わしにはどうしようも出来ん。
武器を構えたまま門を睨みあっていると、銅鑼が二度鳴った。
この銅鑼はあのからくりを使う合図だ。そのからくりはが天の国の知識を参考に真桜によって作られた。たしか名前は……
投石機と言ったな。
投石機によって投げられたスモークグレネードはわしらの遥か頭上を越えて行く。
おぉ!凄い高さじゃな。わしの投擲であの高さにいこうとすれば、間違いなく腰がガコッっていうじゃろうな。紫苑もそれは同じじゃろう。
そして、投石機によって投げられたスモークグレネードは次々と城の中に落ちて行く。目標から逸れて城の外に落ちるモノは全くなかった。
流石は真桜じゃな。この調子であれも完成させてもらいたいモノじゃ。
赤い煙が立ち上がると共に、砦の中から阿鼻驚嘆が聞こえて来る。
そして、砦の門が開き、中から咳きこみながら賊が出て来る。誰もが戦意は無く、武器をしていない。
門が開いた事で、中に空気が入り易くなり、煙が腫れて行く。
煙が腫れるのを確認したわしは銅鑼を鳴らす。総攻撃の合図だ。
わしは豪天砲を構え、戦意の無い者や武器を持っていない者を無視して、一気に中に流れ込む。
戦闘はほんの一部で起こっただけで、すぐに砦は制圧された。
消化不良な気がするのじゃが、戦って誰かを殺すよりかは良いじゃろう。
「桔梗殿、あのスモークグレネードとやらの武器、効果絶大ですな。」
そう言って、声をかけてきたのはメンマを食べている星だった。
その後、桃香様からのお呼びで、本陣へと向かった。
視点:一刀
此処の生活もだいぶ慣れてきた。
美味い飯に住み心地の良い牢屋、衛生的な服を囚人たちに提供したため、殆どの囚人と看守を手中に収めてしまった。
看守の一部を味方に引き込めなかったのは、劉焉の一族に忠誠を誓っているからだ。あのボンクラに君主として認めて忠誠を誓っているのは余程の馬鹿か、親に洗脳されてきたのかのどちらかだろう。俺は馬鹿に着ける薬は持っていないし、あの洗脳を解く方法も知らない。
それに、仲間に入れても、何かしらの行動を起こす時に失敗する要因になりかねない。
碌な武器は相変わらず、調達できないのは、味方に引き込めなかった看守に優秀な奴が居て、刃物類の管理が厳しいからだ。
川に魚を取りに来た時に時間をかけて、弥生時代のように、俺は石を岩で擦って尖らせようとしているが、そう上手く行かない。
かなり掛かったが、指に切り傷を作ることが出来るぐらいの切れ味を出すことができた。
マジで、時間掛かった。人間本気になれば何でもできるというが、あながち間違いではないと俺は思う。
どうじに、こんな作業を日常的に行っていた石器時代の原始人ってすごいなと感心もした。
そんな時だった。看守達の話声が耳に入ってきた。
こういったところで外部の情報が入って来るのを知っていた俺は作業に集中しているそぶりを見せながら、聞く耳を立てる。
「おい、知ってるか?荊州の黄巾党が劉備によって討伐されたらしいぞ。
しかも、今すぐ劉焉様が今の地位を放棄して、劉備に降らなければ、次はこの益州を攻めると宣言してきたらしい。」
「らしいな。だが、所詮劉備は田舎出の小娘。益州を攻めて来る度胸なんぞない。攻めると言っているのも嘘だ。
仮に攻めて来ても、劉焉様の軍によって返り討にあるだけだ。よく正義は勝つと言うだろう?我々が負けるはずがない。」
「それも、そうだな。董卓と同盟関係にあり侵略者である劉備が我々に勝てるはずがない。」
俺は必死に笑いを堪える。ヤヴァイwwどんだけ笑いのつぼ押すつもりだ?吹き出しそうになるわ。
コイツら馬鹿か?劉備が田舎出の小娘?その程度の奴だったら、誰も劉備に従うはずがないし、同盟を組んだりもしない。
正義が勝つ?俺から言わせてみれば、正義であること戦いに勝つかどうかなんてのは無関係だ。
正義が勝つなら、俺の妹や両親、祖父も死ななかったはずだ。そして、劉焉が正義?あんな戦をやる様な奴が正義だと?
それを本当に信じているのなら、無知蒙昧も此処まで来ると滑稽の域に達するな。
…って、月様達と同盟組んだのかよ!うわぁ、何この時間差一人ツッコミは!今時こんなツッコミ見たこと無いぞ!!
巴郡からちゃんと逃げきれているのなら、桔梗様もその同盟に入っている。
とすると、国家連合が出来あがったと考えて良いだろう。できれば、名前が『晋』だと嬉しい。
俺が国家連合の名前を『晋』としたのには大きな理由がある。
俺の知っている歴史では、三国時代の後は『晋』と言う国が治めていた。
晋は魏の国から生まれた国。そんな国が魏と違ったところで発生すれば、どうなるのか?
考えられることは幾つかあるが、同じ名前の国が存在していては不都合だと思う司馬炎は『晋』と言う名の建国はなされないだろう。
そうなれば、おそらく違った時代の流れが発生する。結果、平和が長く続く可能性が生まれるかもしれない。
そんな良いように考えた結果、俺は国家連合の名前を『晋』にして欲しいと桔梗様に言ってある。
さて、そろそろ暴動か脱獄について真剣に考えないとな。
視点:蓮華
今日の労働も終わり、私達は牢屋に戻された。横では『うるふ』が『きんとれ』という運動をしている。西には変わった習慣があるのねと最初は思っていたけど、彼に対して興味を持ち始めてからは、上半身裸で動く彼の体を観賞している。もう、見慣れたいつもの光景。
『うるふ』の筋肉が動くのを見て、男らしさを感じ、胸がキュンとなるのは此処だけの話。思春が聞いたら怒りそうね。
『きんとれ』が終わった『うるふ』に私は声を掛けられた。彼の真剣そうな声に私はドキッとしてしまう。
「なぁ、孫権。」
「どうしたの?うるふ?」
「今から言う事は絶対に他言無用だ。不用意に他の者に知られてはならない。黙って聞いてくれ。」
「う、うん。分かったわ。どうしたの?秘密を言う気になったのかしら?」
「その通りだ。」
「で、どんな秘密かしら?貴方の事だから、私を吃驚させるの秘密だと思うから、とても興味があるわ。」
「実は俺は天の御遣いなんだ。」
「え?」
『うるふ』が天の御遣い?ってことはあの射撃狼?反董卓連合で孫呉を侮辱した男?私は『うるふ』の言葉に唖然としてしまう。
でも、自然と怒りという感情は出なかった。
それは『うるふ』に惚れている所為か、姉さまが私に身につけて欲しいと望んでいた孫呉の王族としての器量かは分からない。
それから、『うるふ』の話が続いた。天の国で兵士をやっていたこと、益州に来たこと、反董卓連合で董卓側についたこと。
話が終わると、私は『うるふ』に対して質問した。
「でも、いきなりそんなことを話して、何のつもり?」
「近々、ここで反乱を起こすか、脱獄しようと思っている。」
「!!………それで、今そのこととどう関係あるの?」
「暴動を起こすにしても、脱獄するにしても、協力者が必要だ。」
「なるほどね。脱獄か暴動を起こすのなら、『うるふ』と私とで協力した方が成功率は上がると考えた。
それで、協力関係を築き上げるためには後ろめたい秘密を無くしておこうということかしら?」
「その通りだ。それに、アンタなんか……放っておけないから(孫呉の王族という意味で)、助けたいと思っただけだ。」
「そ……そう//////私のこと放っておけない(女という意味で)ね」
もしかして、私のこと一人の女として見てくれているのかしら?
そそそそそそうなの!!嘘!『うるふ』が私のこと!ふ…ふーーーん、私達って両想いだったんだ//////
ふふふふふ。此処から出れたら、私は『うるふ』のお嫁さんにされてしまうのかしら?でも、私は孫呉の王族だから、嫁に行くんじゃなくて、『うるふ』を婿として迎えないといけないわね。でもでも、『うるふ』は恰好良いから姉さまが惚れてしまったら大変ね。
姉さまに見つからない様に、私の親衛隊としてずっとそばに置いておいたら大丈夫よね。
でも、そうなると、男に対して厳しい思春が怖いわね。でも、思春は『天の御遣いは一騎当千の
駄目よ!蓮華!今はそんな取らぬ狸の皮算用をしている場合じゃないの!しっかりしなさい!
今はどうするかをちゃんと『うるふ』と話し合わないといけない。
「でも、『うるふ』。考えなしに出ても、此処は劉焉の領地の中心。また捕まるだけじゃないかしら?」
「孫権のいう通り劉焉に捕まっちまうかもしれない。
だが、今此処で何とかしないと、もっと事態は悪化するかもしれない。」
「どういうこと?」
「孫権は劉備に会った事あるか?」
「あるけど、それがどうしたの?。」
「今日、看守の話を盗み聞きしたんだけどな。荊州の黄巾党が劉備の手によって滅ぼされたらしい。
そして、劉備達の戦の相手として選んだのが、此処益州を治める劉焉だそうだ。」
「それだったら、劉備達が此処を落とすのを待っていたら、駄目なの?」
「一時期はそれも考えたが、戦争になれば、俺の持っている天の弓を奴らは使いたがるだろう。
使い方はまだ教えていないが、このような状況ならば、今まで以上の拷問をしてでも使い方を吐かそうとするだろう。
俺自身は拷問に耐えられるように訓練されているから問題無いのだが、孫権や此処の人達を人質にされると困るな。
……唐突な話だが、俺は天の国では兵士をやっていたから、人殺しは日常茶飯事だ。罪悪感もあるが、俺にはこういう生き方しかできない。
だが、そんな人殺しの俺は自分にある規則を課している。その一つが『助けられる命は救う。無駄な人殺しや怪我をさせたりはしない。』だ。
この規則に乗っ取れば、俺は孫権や此処の人達を無駄な危険にさらすわけにはいかない。
ならば、手段は二つ。有志を募り、被害が最悪になる前に、此処で暴動を起こすか、孫権を連れて脱獄するかのどちらかだ。」
「分かったわ。私も協力する。
貴方は誰かを騙すような人じゃないのは知っているし、劉焉に良い様にされたままっていうのも、孫呉の姫として許し難い屈辱だわ。
でも、暴動と脱獄、どっちにするの?」
「俺としては脱獄を選びたい所だ。」
「暴動を起こすのではなくて?」
「あぁ。確かに、ここで、暴動を起こせば、この収容所の制圧はたやすいだろう。だが、その後をどうするかだ。
大所帯になればなるほど、動きが制限される。見つかり易くなる上に、食料の確保が難しくなる。更に、他の収容所の者を助けたいと言う者が現れたら、分裂してしまう。そうなれば、たとえ、此処から解放したとしても、全滅になる可能性が高い。」
「確かにそうね。で、脱出の方法は?」
「夜中、俺が掘った穴がある。建物の構造とかを調べ尽くして、穴を掘ったから、穴が食堂に繋がっているようにしてある。
そこから、食堂に出て、包丁を武器にして、天の弓が保管されていると思われる所を襲撃する。
孫権はその間に俺が指定した場所で待機していてくれ。場所は明日外に出た時に言う。俺は天の弓を手に入れたら、指定した場所に向かう。
合流後、収容所の塀の脆いところから脱出する。そして、その後は、ひたすら真っ直ぐ逃げる。
すると、川がある。俺がいつも魚を取っている川だ。あそこに竹で作った船を1艘用意している。後はそれで川下りってわけだ。
決行の日は雨の日が良いな。視界が悪くなる上に、雨音が邪魔してくれるおかげで、発見されにくくなるだろう。」
「なるほどね。偉く準備が良いわね。」
「当たり前だ。俺にはやらなければならないことがある。此処でくたばるつもりは無い。」
「そうね。私もそうよ。ねぇ、『うるふ』、良かったら、その……私の傍に居てくれないかしら?(恋人として)」
「良いぞ。(仲間として)」
「//////」
「どうした?孫権?顔が赤いぞ??」
「何でもないわ!さあ、もう寝ましょう!」
私は布団の中に潜り込み、必死に寝ようと努力したが、結局寝れなかった。
どうも、黒山羊です。
今回のお話は如何だったでしょうか?
桔梗さんのところばっかりグダグダ書いても不評なようなので、あっさりすっぱり終わらせちゃいましたww
荊州攻略は終わったので、次回から、北郷一刀&蓮華脱出編です。
脱出と言えば、MGSシリーズってMGS4を除けば、絶対にスネークもしくは雷電が捕まってしまいますよね。
んで、脱出に結構苦労するんでよね。MPOに至っては操作が慣れなくて、迷子に何度なったか。
MGS3では、目を回して下呂を吐く等、色々脱出方法があって楽しかったですね。自分の中ではMGS3が名作です。
さて、北郷一刀は上手く脱出できるのでしょうか?蓮華の勘違いはどっちに向う?
では、また次回と言うことで、最後の挨拶を今日は呂蒙さんに今日の挨拶をお願いしております。
呂蒙さん宜しくお願いします!
え?緊張して目を回して倒れちゃった?ちょっと!ディレクター!どうするんですか!
読者の人が凄い待っていたのに、このオチは無いと思うのですが!え?時間がないからお前が閉めろ!
無理!無理ですって!え!!もう5秒前!!
ティロ・フィナーレ( ̄ー+ ̄)
あ!声優さんは亞莎と同じだけど、作品間違えた!……………たわば!
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うわぉ!気がつけば、この長編も40話目!と驚いている黒山羊です。
とりあえず、焼酎で祝いじゃ!あれ?焼酎っていつも飲んでいなかったっけ?
最後になりますが、
現在私は2本長編作品を書いています。
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