第49話『学園祭編その14 武道会①予選、フェイト改変』
そろそろ時間になったので、準備をしなくちゃいけなくなった。
と言っても、僕にはやる事が無いんだけど。
「ネギ先生、がんばってください」
「本屋ちゃんもがんばるわね」
「お、ネギやんか」
いきなり横から声をかけられた。
そいつを見ると、生意気そうなガキにしか見えなかった。
こういう奴ほど死に急ぐと言うものだ。
「……誰だお前?」
「小太郎や! 犬上小太郎」
オレオレと主張してくる事自体怪しいんだが?
ああ、よく見るとやられ役のベジ……じゃない小太郎君じゃないか。
「ああ。小太郎か。何しに来たの?」
「もちろん賞金目当てやってまさかネギも?」
「そうなるかなぁ」
明日菜達と話していたアーニャが呆れる。
「コタローが参加しても予選で終わるんじゃない?」
「言ってくれるな。アーニャ」
「二人とも仲がいいな」
「違う!」
「何言ってるのよ! ネギ」
2人の息がピッタリ。
漫才とか合う気がするが、現実でやったら暴れそうだ。
「無詠唱による魔法か。一杯あるから迷うな」
雷の暴風、凍る大地、極光陽ってこれは駄目か。
最低6000度だから人が蒸発いや、消滅する。
「ネギの場合雷の暴風も無詠唱でしょ?」
「ネギ君の作った水晶の中ボロボロになってたし」
「まあ、魔力無しでやってみますか。そうですね、気限定で」
それならソニックブームや気功弾撃ち放題じゃないか。
本気でやらなければいいだけだ。
思考を巡っていると、刹那さんが真剣な表情で聞いてくる。
「ネギ先生は気を使えるんですか?」
「まあ」
「障壁無視の技使ってきたっけ?」
神鳴流を使えるし、別世界の技も使えるから有効法はかなり存在する。
最大限に気を利用すれば、魔を喰う存在にも対抗できる。
だから刹那さんや木乃香さんの父親にも教えてもらったわけだ。
教えてもらったのは今から数年後。
「ネギも参加するんやったら楽しめるやんけえ!」
「でも負けるんでしょ?」
「誰が負けるんやって!?」
小太郎とアーニャが喧嘩し始めた。
人の多い所で叫ぶのは止めなさい、と口には出さないが。
「で? 木乃香達は観客の方でしょ?」
「そうですね。このちゃんとのどかさんと夕映さんは不参加ですから」
「限界時間までネギ君まで居たかったんやけど?」
「……木乃香、のどか、行きましょう」
何かを悟りきった夕映さんが2人を連れて行った。
「じゃあ私も観客の方で見させてもらうね」
「予選だけだからつまらないよ?」
「ネギのだけ見るから関係ないわ」
アーニャは背を向け、観客の方へ向かった。
これで予選が始まる。
「行きますか」
「ネギ、ほどほどにしてね」
「わかってますよ」
予選会場まで向かった。
予選会場に到着すると、観客が数百人いた。
人が大勢いたが、やれやれ金の亡者達め。
朝倉さんが司会をやっていた。
「予選は4つのブロックに分かれて行います。
そこで生き残った32名が予選突破とさせていただきます。
ちなみに4つのブロックに分かれる理由は、260名って人が多すぎなんじゃあ! という事です」
観客が笑っていた。
アハハッ、260人ってえらい多いな。
「選手達はこちらに表示される番号に従い移動してください」
この世界では考えられない技術でウインドウ表示されていた。
ん~、明日菜さん達とは関係ないブロック、か。
移動してみると、前とは違う男、男、男だらけの祭り状態がいた。
前より多いから醜いし、ヤバすぎる。
「さてと」
う~ん、ゴミがごろごろといるな。
人が多いだけだから別にどうでもいいが、フードをかぶったクウネルがいるな。
力見せない方がいいのかな?
いや、関係ないな。僕の目的を邪魔するものはたとえ神であろうと容赦はしない。
どうでもいい考えを閉じて、目の前に集中することにしよう。
「ほう? 子供がこういう所に出たら駄目だぞ?」
子供じゃないって。
どうでもいいが、筋肉モリモリで2メートルもある人間って……
「摘んで場外にさせてやる」
「あ、手が滑った」
男に掌を向けて気合を放った。
男の体重に関係なく吹き飛ばされ、場外になった。
それを見た朝倉さんがマイクで叫んだ。
「お~っと子供先生が2メートルも超える男を吹き飛ばしたあ! まるで漫画とかにある気合で吹き飛ばしたかのようだ!!」
別にいいけどね。
「あの子供を集中的に狙え」
ある2名以外が突っ込んでくる。
「さて、微弱のソニックブームを発生させて吹き飛ばすか」
何も大人数でたかが子供一人に突っ込みに来るなんてやってられないな。
気を右腕に集中、出来る限りの加減をしながら音速で横切る。
風を起こし突っ込んできたゴミどもを場外へ吹き飛ばした。
「えっと、子供先生が不思議な現象を起こして大人数だった男どもを場外へやったぁ!!」
「すげええ!」
「キャアアアア」
「すごいわぁ」
観客からそれぞれの感想を述べていた。
その時、気の塊が僕の手前まできていた。
溜息を吐きながら軽く人差し指で弾き飛ばす。
「君、かなりやるね。俺と同じ気を使うようだ。しかも俺より気の使い方がいい」
「……とりあえず遊ぼうか」
「え?」
おもちゃを見つけた僕は気の塊を空中に生み出した。
驚愕した男は慌てて空中にある気の塊を潰そうとしたが、逆に向こうがつぶれた。
「くっ!」
「ニヤリ」
無数の気の塊を男の方へ飛ばした。
粘るなぁ。なら、もう終わらせるか。
僕は地面を蹴り、相手の懐に入りお腹に拳を入れた。
グフッ! とか言いながら倒れこんだ。
「……二人しかいない。しまったなぁ」
そういえばそうだ。う~ん、どうするか?
あ、明日菜さん達が、という期待を抱きながら別のブロックを見ると
「あはは、知ってる人たちばっかりってあれ? 愛衣さんに脱げじゃない高音さんもいる」
いつの間に参加してるんだか、もしかしてお金に釣られたのか?
予選が終わり、皆と集まっていた。
全員が呆れた視線で僕を突き刺していた。
さっきのソニックブームの余波で巻き込まれたとか何とか……。
「よし! 32名から16名になってるから賞金ゲットの可能性が増えた」
「ネギの場合、増えたとか関係ないんじゃない?」
「さっきの予選見てたんやけど、ネギ君、ソニックブーム発生させて場外させたやん」
「まさか全員が突っ込んでくるとは思いもしなかったですが」
あの光景を見た別の人達が僕を先に倒そうと一致団結して、攻めるような事するから吹き飛ばしただけ。
一般人を吹き飛ばすなんて簡単だし、しょーがないよ。
「ネ、ネギさん」
「どうかしたんですか? 愛衣さん」
「あ、あの……ネギさんは本当に強いんですね」
「愛衣ちゃん、ネギは強いんじゃなくて反則なのよ」
ひどい言われようですね。
確かに大人気なかったけど、さ。
そこで木乃香さんも刹那さんも頷かない!
「本選ではどうなることやら」
「そうだ!」
「どうかしたん? 明日菜」
「いや、木乃香じゃなくて」
「じゃあ、何ですか?」
「試合ではお互い本気でやらない?」
な、何だと!?
木乃香さんならわかるが、エヴァにも勝てない明日菜さんが何を言っちゃってるんだ?
「つまり、明日菜さんはこの世界、いや学園ごと消滅してもいいと?」
「今聞いてはいけない単語が聞こえた気がします」
「夕映、こういう時はスルーが一番や」
「明日菜は咸卦法があるからちょうどいいかもしれない」
「明日菜さんは自殺志望者ですか?」
刹那さんもひどい事を言うな。
「何でよ?」
「ほら、ネギ先生は無詠唱で千の雷もできるんですよね?」
刹那さんが僕に聞いてきた。
「そうですよ? だいたいの呪文はできますよ?」
「さすがサウザンドマスターの息子ですわ」
「いや、関係ないぞ」
高音さんが尊敬するような事を言うけど、エヴァの言うとおりまったく関係ない。
「無詠唱も禁止にすればいいわね」
「ソニックブーム発生祭りになるな」
その光景を想像したのか、明日菜さん達の表情が青ざめる。
マジで起こしたら学園が吹き飛ぶ。
その気になれば、地域が無くなってしまうんだけど……。
「どうでもええけどな。俺の事忘れんなぁ」
「いたんだ」
「私達はこれで失礼しますわ」
「あ、あのネギ先生、それでは」
愛衣さんと高音さんが用事を済ませるために行ってしまった。
この時間だとそろそろアレだろうと僕も知ってたし。
「そういえば、告白阻止のアレですね」
「ああ、俺もそうやったな」
「いってらっしゃーい! 犬太郎!」
「……もうええわ。ほんじゃな~」
忍者のように去っていった。
本当に犬太郎だな。
「小太郎君も大変やな~」
「告白阻止の仕事だからね」
「ネギ先生も言われていたのでは?」
「刹那さん、僕にとってはそんな些細なことどうでもいいんです。
問題はですね。ん?」
遠くからこちらに向かってくる気配一つ感じた。
超さんが僕達を見て、最後にリイスを見る。
「超か」
「これはこれはエヴァンジェリン、ネギ先生、バカレンジャー」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「それはどうでもいいんで。何か用ですか?」
一体何のようだと言うのだ?
最後に見た視線が明らかに警戒の視線だった。
対策を取る必要があるかどうか……
「ネギ先生、強いアルね」
「鍛えてましたから」
「必要ないほど鍛えてどうすんのよ」
「アーニャ、この世の中には知らない方がいいこともあるよ」
「私の事も本当は知らない方がいいんです」
その時、超さんがリイスを見た。
警戒してるな、と思ったら満面の表情を僕に向ける。
「おや? ネギ先生の彼女ネ?」
「違う!」
「違います!」
「全然ありえん!」
「……皆さんひどいです」
3人の否定に落ち込むリイス
落ち込む姿を見ると、権限の鍵と同質存在とは思えない。
「ふむ。なるほどネ。これはまいったアル」
「何しに来たんだ? 超」
「様子見してきたネ。その様子だとちょっとって感じ」
「そうか」
「私はこれで失礼するネ。ネギ先生、舞台で会おう」
超さんは背を向け、奥の方へ引っ込んでいった。
リイスを必要以上に警戒してたな。
対策取られるかもしれないが、リイスにとって関係ないな。
「これからどうするの?」
「修行に決まってます」
「エヴァちゃんのアレやな?」
「千雨さんも呼びましょうか」
「呼ぶんやなくて引き摺り出してくるの間違いやないん?」
「……それじゃあ僕は千雨さんを呼びに行きますので」
さっそく行動に移る僕は千雨さんの所まで走った。
~ハンバーガー屋2階~
1階はレジだった。
どうやら2階で食べる形式だ。
千雨さんの気配を辿って行くと、驚いた。
「千雨さん……何でフェイトと一緒なの?」
「知り合いですか?」
「おや? ネギ君か。ネギ君のことを知ってるみたいだったから誘ったまで」
「ナンパかと思った」
フェイトはジーっと座り、目を瞑っていた。
興味深そうに装置を見つめる千雨さん。
「何か悩んでるの?」
「名前が決まらない」
「え?」
「今まで悩んでいたんだけど、名前が思いつかない」
ああ、フェイトの目の前には装置が起動中だ。
名前を決めてくださいって部分だな。
「私も色々出したんですけど何かパッとしないとか」
「僕が考えようか?」
「ホントかい? じゃあ頼むよ」
「……ネギ先生、もしかして」
「千雨さんの言う意味が分かりません」
フェイト=運命。
ん? 他の言語で考えた方がいいね。
「じゃあ、シクザールってのはどう?」
「ドイツ語?」
「やっぱりそういう事にしておかないと、ね」
「運命という意味は変わらないんですね」
そこは変えたら駄目ですよ。
この装置、異世界の技術で発展したものだけど超さんの技術より低い。
「そういえば千雨さん、修行」
「予定も無いですしいいですよ」
「僕も行っていいかな?」
「う~ん、難しいなぁ。そうだ姿を変えてみよう」
フェイトのままだと誤解どころかこの世界に飲み込まれてしまう。
飲まれてしまったら最後、ここにいるフェイトが消滅する。
「姿を変える?」
「ちょっと待って、人目があるから結界貼るね」
空間を隔離した。
念のため、認識不可結界を張る。
「これでばれることは無い」
「こんな凄い結界まで貼れるなんて」
「そんな事いいから、姿を変えましょうか」
「どんな姿するの?」
「色々気をつけないと駄目だから性別も変更しておく方がいいかな?」
「僕が女性に?」
念話に切り替えた。
「そうじゃないと分かる人にはわかる」
「わかった」
フェイトの返事を聞いた後、念話を切断した。
「偽似性別変更だから気にしなくていいよ」
「まずフェイトと認識されないかどうか千雨さんで実験しようか。
それからだね。女性になるか、ね?」
「わかった」
「存在認識、再構成開始、終了、世界認識修復……完―」
完成と続くはずの言葉がブー音で遮られた。
「何だ?」
「エラー……エラー原因不明。妨害ありってえ?」
とりあえず、装置を停止させる。
妨害ってどういう事だ?
「故障じゃないんですか?」
「そんなはずはないんだけど」
一応、この装置はナノマシンで自動修復させるから故障しても瞬時に直ってしまう。
故障じゃなくて妨害が原因。
おまけに妨害されたという事はやっぱり超さん、か?
「仕方ない。千雨さんは先に行ってもらえますか?」
「え? わかりました」
千雨さんは立ち上がり、階段に向かおうとしたが、何かにぶつかった。
「……行けないのですが」
「あっ。この魔法陣で向かって」
地面に魔法陣を形成。
「これってどこに転移されるんですか?」
「エヴァンジェリンさんの別荘」
「わかりました」
千雨さんが躊躇も無く魔法陣を踏むと、魔法陣ごと消えた。
「これでいいか。妨害は後で調べるとして、権限の鍵で書き換えるか」
権限の鍵を右手に持って、フェイトを見る。
「覚悟はいい?」
「いいよ。いつでも」
目を瞑る。
ここで目を瞑られても困るんだけど。
権限の鍵に命令を記録させ、フェイトのお腹に突き刺した。
「っ!?」
「性別変更、組織改変、存在再構成、開始!」
フェイトの体が光りだす。
白く輝いてるフェイトの体の構図が変わっていく。
構図がもう変わらないところを見ると、完成したのだろう。
白く包まれた全身が元の状態に戻る。
「もういいよ」
「ん? ……こ、これは」
フェイトの体が変わっていた。
髪の色が黒くなり、肩より少し長い。眼の色はそのままだが、胸の部分はふくらみがある。
背は同じだが。
「ネギ君の背が少し小さく見える」
「小さく見えるんじゃなくて実際にそうなの」
声もちゃんと女声になった。
権限の鍵でやった方が早かったな。
「あ、そうだ。あくまで偽似だから一定以上のダメージ喰らうと元に戻るよ」
「一定以上のダメージ?」
「そうだなぁ。100あるとすれば残り5ぐらい?」
「全然平気じゃないか。魔力も以前より高いし」
そう。改変してしまったせいで、異世界の生命強化と同じレベルの強化になった。
潜在能力開放やさよさんの人間化とは違う。
全ての改変させているためである。
「とりあえず、別荘に向かおうか」
「そうだね」
フェイトの手を握り、エヴァの別荘まで転移した。
~エヴァの別荘~
到着してみると、轟音が響く。
どうやら、皆修行に励んでいる様子。
「フェイト、とりあえずここで休んでて」
「うん」
「ネギ、その子誰?」
「あ……明日菜さん」
明日菜さんがその子という理由は簡単。
僕より少しだけ背は高い。しかし、顔が幼く見えるからだ。
「え~と……」
「ルーシーと言います」
ええ? フェイトさん、ルーシーって何ですか?
「ルーシーちゃんね。私は」
「知ってます。ネギさんから聞きました」
フェイトが女性になじんでる。
まあ、水の、とか居たからどうでもいいんですが、違和感ありすぎです。
リイスが僕の隣まで来て、耳元で
「この人、フェイト・アーウェンクルスですよね?」
「そうだけど?」
「異世界のアレでどうにかなるって言ってたじゃないですか」
「妨害されてた。その妨害がどこからあるのか調べていないけど」
「危険じゃないんですか?」
「さあ~」
そう言った後、リイスは溜息を吐く。
大体予想は付くよ。多分、超さんのせいだな。
未来から来た人ならあの装置を防ぐぐらい容易いな。
僕の未来では消えてたけど……。
「千雨さん強化しようか」
「どうする気なん?」
木乃香さんの星光破壊、潜在能力開放状態ぐらいしかやってないし
「結局何をすれば?」
「パクティオカード発動して」
「わかりました。アデアット」
身長が小さめになった。
何で身長が縮むんだろうか?
調べた方がいいかもしれないけど、放置の方が面白いから放置で。
「これでいいのか?」
「口調が変わってる」
「魔法の打ち合いをすればいいかな?」
「魔法の射手のみだな」
「それで実力が上がるの?」
「限界まで撃ちまくればそれなりに慣れるだけだ」
明日菜さんは千雨さんの両肩に置き、何かを言った。
「がんばってね。千雨ちゃん」
「誰がやるん?」
「僕がしましょうか」
「「「え?」」」
明日菜さん達が唖然とした表情で固まる。
千雨さんも明日菜さん達を見て
「何か問題でも?」
「いや、ないな」
「無いわ」
「大丈夫や」
エヴァ、声が引き攣ってるぞ。
明日菜さんも木乃香さんも眼が泳いでるし、僕が何をしたんだ?
「では、お願いします」
ペコリと頭を下げるルーランルージュの千雨さん。
「よし、距離を取ってから打ち合おうか……大丈夫ですよ?
手加減は思いっきりしますね」
「あ、ああ……」
千雨さんと僕は10メートル間を取る。
それ以上離れても意味ない。
「そちらからどうぞ」
「雷の精霊500柱 魔法の射手 連弾・雷の500矢!!」
「光の10矢・集束 光の槍」
雷属性の500本の矢と光の槍が衝突する。
必死に光の槍を潰そうと物凄い速度でヒットしていく。
1秒経過した時、威力が同じなのか、結果は相殺で終わった。
「星光破壊を全魔力で撃ってくれない?」
「全魔力ですか? ネギ先生怪我するんじゃあ」
「大丈夫ですよ。ささ」
「公開しても知りませんよ!」
千雨さんはステッキをくるくる回転させた後、ステッキをこちらに構えた。
その姿が戦闘形態で恥ずかしくないのかなぁ。
「ビブリオルーランルージュ 光の粒子よ、我に仇名す存在に、罰を与えん 星光破壊」
全魔力使った影響で千雨さんは地面に膝を付く。
この魔力は、なるほど瞬動とか戦闘系を習わせれば中クラスの魔法使いには余裕で勝てる。
「計測完了したから消さないとね。…吸引消滅式……雷の暴風」
手を前に差し伸べ、雷の暴風を撃った。
星光破壊と雷の暴風が衝突した瞬間、衝突した魔力を中心に消滅していった。
「今の何?」
「吸引消滅式、今のようにぶつかった瞬間、消滅するよう設定した術式の事」
「すごいね。ネギ君」
フェイトじゃなかったルーシーが声をかけてきた。
「どんな強力な魔法でも吸引消滅式を組み込むことで消滅させられるぐらいだから」
「反則じゃない!」
「アーニャ、この術式は弱点があるの」
「え?」
「魔力の消費が激しいぐらいかな?」
「ちなみに、ネギ先生は?」
「10000の1も消費してないけど何か?」
今の僕はその程度の術式で消費なんて無い。
普通の人が使うと2,3倍消費するデメリットがある、という事を明日菜さんに教えた。
「なるほど、自分より強い奴に使うと有効的だけど、1対1では完全不利だな」
「そやな。多数対1だったら有効やけど、隙が出来やすいんやなぁ」
「習得する必要は無いって事?」
明日菜さんが首をかしげた。
わかんないって顔だね。
「大勢の攻撃を防ぐだけの役だったらアリと思う」
「そんな状況にならないから意味かな?」
「こんな魔法術式を習う必要はないですよ。千雨さん大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。倒れそうだ」
本当に顔色が悪そうになっていた。
「じゃあ直しますね」
権限の鍵を右手に生み出した。
鍵を見た瞬間、ぎょっとした千雨さんだが、僕はそんなもの無視して
「よいしょっと」
「うっ!」
背中から刺した。
痛みは無いはずなんだけどね。
魔力を回復させる。
「何か違和感が」
「我慢してください」
千雨さんの魔力限界値を調べてみるとちょっとだけ大きくなっている。
効果はあったようだが、まだまだ。
権限の鍵から魔力を流し終えた後、鍵を抜いてから消した。
「ネギ、それって反則じゃないの?」
「そんな事無いですよ? 武道会じゃあ反則負けですし」
「殺傷がある道具は禁止ってなってたから使えるんじゃあ」
権限の鍵をもう一度右手に出して、その辺にある建物に向けて降ると、建物が倒れる音がした。
地面に到達した途端、切れた部分から原子分解した。
「……そう言う事」
「振ったら切断、原子分解されちゃうから死んじゃうよ?」
満面の笑みをくれてあげたら、明日菜さんが必死に横に振っていました。
攻撃する気じゃなかったら切れないけど。
「そんな事どうでもいいけど、結局この子誰よ」
「僕?」
「ほえ~。僕っ子や!」
木乃香さんが目をキラキラさせてルーシーを見つめる。
フェイトは男だよ。今はルーシーって名乗ってるけど。
「ルーシー=シクザールって名前だよ」
「え?」
「ルーシーちゃんやな。よろしゅうな~」
拍手を求めていたが、ルーシーが僕のほうへ見ていた。
対応法が分からないのか。僕は答えたら、と頷く。
ルーシーはジーっと木乃香さんの手を見たが、そっと握る。
「うんうん。私は」
「ネギ君から聞いてるからいいよ」
「そっか。じゃあよろしくね。ルーシー」
「よろしく。お姫様」
「え?」
姫様の部分で赤くなる明日菜さん。
この頃は何も覚えてないから。
明日菜さんの反応を見たルーシーは誤魔化すように咳払いして
「明日菜さん」
「ええ」
お互い握手をした。
「あ~あ。ネギ君を狙う子がまた増えた」
「僕はネギ君の事友達以外見てないよ?」
そりゃそうだよ。ルーシーはフェイトで男だし。
水の、だったらわかるけど……このフェイトはあくまで友達だ。
そういえば、水のってどんな印象があったっけ?
魔法世界に行けば会える、か。
「さっきから夕映さん達がいないんですが」
「夕映達なら向こうの領域で魔法の特訓してたわよ。なんでもネギ先生の力になりたいとか」
明日菜さんが指差した場所はここからかなり遠い城だった。
あの中に僕の知らない物が存在するんだろうな。
「さてと再開しましょうか」
「だいぶ体を休めたので大丈夫だ」
「敬語だったり普通だったりややこしいわね」
「千雨ちゃん的には普通の方がいいんじゃない?」
まあ、そっちが素だから当然と言えば当然。
「じゃあ、これでいいのか?」
「ルーシーって強いのか?」
エヴァがルーシーを観察的な視線で見る。
ルーシーもエヴァを見て、僕を見る。
「試してみたら?」
生命強化してるからこの世界の人間より強いはずだ。
「貴様の実力、見せてもらおう」
「うんいいよ」
ルーシーは全身から魔力を開放する。
大量の魔力の影響で、周辺にスパークが走る。
プレッシャーを感じたエヴァは不敵の笑みを浮かべ
「フフフ……面白そうじゃないか!」
同じように魔力を纏うが、はっきり言ってルーシーの方が魔力が高い。
魔法は石化系列だけじゃない。僕が密かに記憶させといた魔法がある。
「どうなる事やら」
エヴァ対ルーシーの戦いが始まる、なんてね!
第50話『学園祭編その15 武道会②』へ
ルーシー=シクザール(ネギの世界から来たフェイト=アーウェルンクス)
権限の鍵によって存在改変した存在。
身長はそのまま改変させただけなので、何も変わらない。
髪の色も眼の色も黒くなっている。
水のアーウェルンクスと関係はなく、この世界のフェイトとも関係ない。
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第49話