「それで、これからどうするんですか?お兄さん?」
二人並んで歩く中、風が一刀に聞いてきた。
「ん~、とりあえずあいつらの記憶があるかないか知りたい所だよな」
「それぞれのいる所へ行くだけでも多大な時間がかかりますし、全員が集まってくれるような事があればいいのですが~~・・・・・・」
「!」
一刀はそれにいくつか心当たりがあった。
「それだ!・・・・・・ただ、時は待ってくれねえし、今はとりあえず全員記憶無しの方向で考えよう」
「それが無難ですかね~~?」
「だと思う。さて、俺が消えない方法についてだが・・・・・・昔話や、民間伝承なんかを当たってみようと思う」
「昔話・・・・・・ですか~~?」
「おう。条件を満たせば願いが叶う・・・・・・とか、そういうのが無いか探そうと思う。風は何か知らねえか?」
「むう~~・・・・・・」
風は唸りながら考えている。
「そういえば・・・・・・」
「何かあるのか?」
「世界に散らばった七つの球を集めると、神様の龍が現れて願いを・・・・・・」
「・・・・・・残念だが、それは無理だ」
「おや?何故ですか~~?」
「球の場所が分からんと探しようがないし、分かったとしても、この大陸だけじゃなくて世界となると、何年かかるか分からん」
「あ~~、なるほど」
風が合点がいったように頷いた。
ドラ〇ンレーダーもなければカプセルにしまえる乗り物も無い。
なにより世界中回ってたら、この大陸の騒動をほったらかしにする事になってしまう。
「大陸限定で探さないと駄目だ。他には何か知らないか?」
「・・・・・・」
立ち止まって考える風。
「・・・・・・」
「おい」
「・・・ぐう」
風は立ったまま寝ていた。
「・・・・・・こいつは」
一刀は大声で起こそうと思ったが、ふと悪戯心が湧いた。
風の後ろに回りこみ、
つつーー・・・・・・
背中から腰にかけて指を滑らせた。
「ひゃあん!?」
身体をビクッと震わせ、風は起きた。
「お、お兄さん!何をするんですか!?」
いつものんびり口調の風が、珍しく声を荒げた。
「人が真面目に話してるのに、立ったまま寝てたうつけ者に天誅を下したのだ」
「普通に起きろ!と言って起こしてくれればいいじゃないですか!」
「それじゃあまた話の途中で寝るかもしれないだろうが!?これからはお前が重要な話の途中で寝たら容赦なく悪戯・・・もとい天誅を下すからそのつもりでな」
「うう~~・・・・・・とんでもない人についてきてしまいました。風の居眠り癖を利用して、自分の性的いやがらせを正当化するとは。お兄さんは大した策士なのです・・・・・・」
「いや、俺は真面目な話の途中に寝るのが許せないからやっただけだから!他愛も無い悪戯しようとは思ったけど、お前に対してエロい事しようとか思ってないから!!」
「本当ですか~~?」
風が訝しげに一刀を見る。
「本当です!他愛ない話とかだったら普通に起こしてやるよ。ほれ、足動かせ」
「分かりましたよ~~」
ふてくされながらも、先を歩く一刀について行く風。
結局、有益な話はそれ以上出てこなかったのであった・・・・・・
「へい!ラーメン二丁お待ち!!」
ある街のラーメン屋台にて、二人は食事を取っていた。
「待ってました!まずは腹ごしらえだ、いただきまーす!」
ズルズルズル!
「・・・・・・いただきます」
ズルズル・・・・・
勢い良く麺をすする一刀と、機嫌悪そうに麺をすする風。
「何だよ、さっきの事まだ怒ってんのか?」
「それもありますが、女性に奢らせて平気な顔をしているお兄さんの図太さに呆れているんですよ~~」
「この甲斐性なし」
風と宝譿からダブルで攻められる一刀。
一刀はこの世界の金を持っていなかったので星、稟と別れる前に分割で金を分けて貰った風に奢らせていたのだった。
「心配すんな。今は文無しだが、稼ぐ当てはあるからな。三倍にして返してやるよ」
「本当でしょうね~~?」
「俺は嘘は嫌いだ。実績もある方法だから、まあ任せとけ・・・・・・ズルズル」
「・・・・・・ズルズル」
疑わしい目で一刀を見る風。
一刀の稼ぐ方法。
それはやっぱり・・・・・・
「曇天の~道を~傘を忘れて、歩く彼女は~雨に怯えてるの~で~僕も~弱虫ぶら下げて~、空を仰ぐ~~・・・・・・」
おおおお!
「はいはい~、お代はこちらですよ~~」
風の持つ袋に、小銭が入れられていく。
一刀のポピュラーな金稼ぎの方法といえば、やはりこれであった。
外史から戻って来た後も、手がかり探しのかたわら、暇があればカラオケに入り浸っていたので、腕は落ちていなかった。
レパートリーも増えていた(ただし、ジャンルは偏っていたが)
そんな訳で
「もう一曲行くぜ~~!!」
この外史での初興行は、かなり好評であったとさ・・・・・・
興行が終わった後、二人は宿を取った。
簡素な夕食を取り、部屋へと行く。
「ふう」
どっかと寝台にダイブする一刀。
「どうだ?ちゃんと三倍にして返したろ?」
「そですね~~、まあお金の心配は少し消えましたかね~~?」
風はそう言いながら、椅子に腰を下ろす。
「ただ、節約の為とはいえ、お兄さんと一緒の部屋というのは身の危険を感じますが・・・・・・」
「俺は女ならなんでもいい訳じゃあねえぞ?」
「前の外史でのお兄さんと関係を持った女性は、三桁を超えたと宝譿が・・・・・・」
「デマ言ってんじゃねえよ宝譿!一桁だよ!!」
白蓮、華雄、麗羽、小蓮、三姉妹・・・・・・合計七人
「・・・・・・」
「何だよ?その沈黙は?」
「意外でしたね~。三桁は無いとしても、最低でも二桁は行っていると思っていたのですが~~」
「言っただろうが、誰でも良い訳じゃねえんだよ」
そう言って、一刀はふてくされたように横を向き、端の方へ行った。
「俺は疲れたからもう寝る、お休み」
一刀はそう言って布団に潜り込んだ。
「ふむ、ならば風も寝る事にしましょうか・・・・・・」
椅子から立ち上がり、明かりを消して風も布団に潜り込んだ。
一刀とは逆方向、やや中央寄りに位置取る風。
「それでは、おやすみなさい~~」
「おう」
それからしばらくして・・・・・・
「・・・・・・おにいさ~ん、起きてますか~~?」
背中越しに一刀に声をかける風。
「く~~~~・・・・・・」
一刀は熟睡しているようだった。
「むう、本当に寝ちゃってますね~~」
風は寝転びながら、今日起こった事を思い出していた。
三人で旅をしていて、流星が落ちるのを目撃して現場へ。
そこには頭から地面に埋まっていた一刀がいた。
出会っていきなり真名を呼ばれた。
その後、宝譿から伝えられた信じられないような話。
外史の存在。
そして、自分たちがいる世界はその外史から生まれた新たな外史。
後に世に出てくる数ある武将、軍師たちがすぐ側で寝息を立てている男、北郷一刀にもう一度会うためと言う極めて私的な理由で作られた世界。
魂のみを新たな自分に宿して、一からやりなおした世界。
「・・・・・・前の私も、そう望んだんでしょうかね~~?」
一人ごちる風。
宝譿を信じて、星と稟と別れた。
その時は、一抹の寂しさがあった。
一緒に旅してきた友人と別れたのだから。
もっとも・・・・・・
「お兄さんと一緒だと、寂しさなんて感じませんでしたけどね~~・・・・・・」
話の途中で寝ていた所を、変な起こし方されて怒った。
お金が無いとラーメンを奢らされ、とんだ甲斐性なしだと罵った。
一刀が歌い、自分はおひねりを回収していた。
結果、ラーメンの代金を本当に三倍返しされ、宿代も出来た。
色々あったが、本当に退屈はしなかった。
「ん~・・・それは良かったんですが~~・・・・・・」
ちらりと背中ごしに一刀を見る。
「す~~・・・・・・」
「ここまで普通に寝られていると、風には魅力が無いのかと自信が・・・・・・」
いや、さすがに無理やり襲われたりしたら勘弁だけれども。
意識する素振りすら見せないと言うのも何と言うか・・・・・・
「・・・・・・ふう」
複雑な心境で、ため息をつく風。
結局
色々と考えすぎて
風はその夜、中々寝付けなかったのであった・・・・・・
どうも、アキナスです。
星たちと別れた後の一刀たちの一日、どうだったでしょうか?
風は相方として、本当に良いキャラだと思います。
しかし、この様子だと一刀と恋愛関係に発展できるのか不安になりますが。
何か、仲の良い幼馴染(星たちに話した嘘設定でそうなってたけれど)って感じで、なかなか関係が進まなかったりして・・・・・・(汗)
そして次に一刀が出会うのは一体誰なんでしょう?
それでは次回に・・・・・・
「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲!!」
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おまけです。
星たちと別れた一刀たちは・・・・・・