No.381747

真・恋姫†無双~恋と共に~ #70

一郎太さん

マジこいSをやってみた。以下感想。

・マルさんの立ち絵が可愛すぎる
・藤原さんの荒川ネタはズルい
・心たんハァハァ

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2012-02-22 16:55:40 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:7967   閲覧ユーザー数:5730

 

 

 

#70

 

 

玉座に集まった面々は、それぞれの面持ちをしていた。ある者は至極真面目な表情をしつつ、ある者は昼食に何を食べようかと思案しながら、ある者は懐の仮面の効果的な活用法を検討しつつ、ある者は立ちながらにして眠り、ある者はその眠りを妨げようと無駄な努力をしながら、言葉を待っていた。

 

「皆さんお揃いのようですので、これより朝議を始めさせて頂きます」

 

司会進行役の少女が、碧色の頭に乗った魔女帽子を押さえながら、上目遣いで告げる。

その言葉に、真面目に開始を待っていた者はようやくかと居住まいを正し、それ以外の者は、雑念から思考を呼び戻した。

皆の視線を受けて魔女帽子の少女がそのツバを抑える横で、ベレー帽をかぶった少女が、言葉を引き継ぐ。

 

「我らが…この荊州と益州を手中に納めた事で、大陸の情勢も、残すところあとわずかとなりました」

 

ほんの少し言葉に詰まるも、予てよりその地の将であった2人の女性と1人の少女は、たいして気にした様子もない。というより、一部白髪に染めた黒髪の少女は、玉座に座する主に、その熱っぽい視線を注いでいる。

進行役の少女は、その視線に気づきながらも、敢えてそれを無視して話を続けた。

 

「ご存知の通り、北東の曹操さん、そして西の孫策さんです」

 

その事は皆も承知で、特に反応も見せない。

 

「曹操さんは、袁紹さんと公孫賛さんの領土を手に入れ、実質河北四州を得ました。兵力はおよそ30万です。次に、孫策さんも同じく袁家の財と兵を手中に納め、その兵力はおよそ15万。そして」

 

一度言葉を切り、少女―――朱里は言葉を続ける。

 

「我らは、練度は劣りますが、その兵力は、およそ12万です」

 

誰とも知れず、息が漏れる。その戦力差を鑑みての溜息か、それとも根無し草の状態からここまで復興できた事への感嘆か。

と、ここで傍らの床に蛇矛を立てた少女が口を開いた。

 

「じゃぁ、次はどっちを相手にするの?」

 

鈴々だった。直情型の将故の単純思考。しかし、それ故に本質を突いている。残す勢力が2つとあらば、どちらも討ち倒さねばならない。両方を相手どらなければならないのならば、問題となるのはその順番だ。

しかし、朱里は首を横に振る。その動作は端的に、他にも問題はあると示していた。事実、愛紗はそこに触れる。

 

「何かあるみたいだな」

 

それを受け、雛里が朱里に代わって口を開いた。

 

「はい。漢の国に限っていえば、その2つで間違いありません」

 

その言葉に、老将が追随する。

 

「という事は、外、という訳ね」

 

紫苑だった。降将であったが、恋や香と友誼を持っていた故か、とうにこの陣営に馴染んでいた。それは桔梗や焔耶も同様である。

 

「はい。五胡に関して言えば、涼州が北西にてそれを留めてくださるので、問題はありません。益州の西は山岳地帯で、簡単には攻め入って来れませんし」

 

西は自然の要害、北は董卓と曹操、東は孫策。となると、残るは――――――

 

「だったら、残るは南、ってわけだね、朱里ちゃん」

 

漢に属さず、されど馴れ合わず。大自然の広がる南蛮の国だった。

 

 

 

 

 

 

主の言葉に首肯を返し、朱里は続ける。

 

「はい。明確な敵対や侵攻の意志は見せていませんが、それでも相容れない仲である事は否定できません。そうですよね、桔梗さん?」

 

朱里は、旧くから益州の柱であった将に問う。返したのは、若い将だったが。

 

「あぁ。私達も直接対峙した事はないが、国境の邑々で、南蛮の兵により被害を受けたという報告は上がっていた。そうですよね、桔梗さぃだっ!?」

「儂の出番を取るな、目立ちたがり屋が」

 

ゴツ、と拳骨が落ちる音が鳴る。その様子に苦笑を返しながら、今度は雛里が口を開いた。

 

「あ、あはは……えと、これまでの政もあり、民は桃香様の統治に好意的です。ですが、我々が此処益州にやって来てから日が浅いのもまた事実です。いくら辺境といえど、それを疎かにしてしまえば、その評判が下がってしまいかねません。また、孫策さんにしろ曹操さんにしろ、討って出るならばほぼ全軍を投入しなければならないでしょう。その隙に、南蛮から攻め入られないとは限りません。後顧の憂いは早めに断つ必要があります」

 

その説明に、皆が頷く。五胡だけでなく、南蛮もまた漢の外に属する。自分たちの都合に合わせてくれる道義も理由もない。だが、彼らは、また分かってもいる。このように述べるという事は、その為に動く策を軍師の2人が立てている事を。

実際に、朱里と雛里がその為の策を口にしようとする。しかし、それを遮る者がいた。

 

「どうしたの、星ちゃん?」

 

曹操の軍より戻ってきた、星だった。彼女は顎に人差し指と中指を当てながら、何やら思案している。しばらくの間そうし、皆が口を挟まなかったが、ようやく思い至ったように言葉を口にした。

 

「いや、曹操殿のところで一刀殿と話したのだが――――――」

 

何かを口にしかけた彼女の言葉は、続く驚愕の声に遮られる。

 

「「「「一刀殿っ!?」」」」

 

桃香、愛紗、朱里、雛里の4人だった。彼が曹操のもとに身を寄せている事は、皆も知っていた。合流した星の口から、それを聞いたからだ。紫苑や桔梗たちが特に驚いた様子も見せないのは、彼の者の人柄を知っているが故だろうか。

 

「何をそう驚いておる?」

「だだだだって、『御遣い様』だよっ!?なんで名前で呼んでるの!?」

「何を仰る、桃香様。汜水関と虎牢関にて、我らは武を競い合った。武人は、その武にて互いの人と為りを知る。私は彼の者を知り、彼の者もまた、私を知った。ただそれだけですが?」

「せせせせ星っ!?貴様、仮にも敵となる者を親しげに呼ぶなどっ!」

「愛紗も相変わらず堅物だな。それを言うならば、恋や香は、かつて一刀殿と共にあったのだぞ?」

「私ですかっ!?」

 

突然話をふられ、恋を起こそうとずっと肩を揺すり続けていた少女が振り返った。

 

「えと、えぇと……まぁ、一刀さんだったら別に不思議ではないかなぁ、と………」

 

彼をよく知る者の肯定も受け、星は言葉を続ける。

 

「まぁ、それはいいとして。一刀殿の昔話を聞く機会があったのですが、その時に申しておりましたぞ。彼はかつて大陸をまわり、南蛮にも足を運んだ事があると」

 

その言葉に、今度は、皆の視線が一斉に香へと向けられた。星からだけではなく、全員からの視線を受け、えぇと、えぇとと今日は口籠りながらも、なんとか弁明に挑む。

 

「えぇと……私は行った事ないですよ?」

 

自身の返事に残念がる溜息が返される事に申し訳なさを覚えながら、香はなおも恋の肩を揺する。ようやく瞼を開いた恋は、眠りながらにして話を聞いていたのか、皆が望む言葉を口にした。

 

「んと……美以は、恋と一刀の友達………」

 

ある種予想通りの言葉に、皆が驚愕の叫びを上げる。

 

 

 

 

 

 

落ち着きを取り戻した軍師の少女達は、恋の言葉に、顎に手を当てて考える。これまで彼女達が練ってきたのは、断片的にしか知り得ない南蛮の情報から、どのように彼の地を征するかだった。

しかし、ここに来てその方針は良い意味で変更を余儀なくされる。

軍師の片割れは、驚きに落としそうになる魔女帽子を両手で抑えながら、問いかけた。

 

「あわわわ………それで、恋さん……、孟獲さんはどのような方なのですか?」

「………んと、可愛い…猫みたい」

「まさか、子どもなのか?」

 

その返事に、愛紗が問いを重ねる。

 

「ん……南蛮は、みんな子ども………にゃーにゃー言ってる……」

『………………』

 

皆が閉口する。無理もない。ひとつの国を征する者が、恋の言葉を信じるならば、可愛らしい子どもなのだ。

そこで、ふと思い出したように桔梗が呟いた。

 

「そういえば」

 

皆の視線が、恋から桔梗へと移る。

 

「国境付近からの被害報告なのだが……その内容は、すべて強奪だった気がするな」

「そうなの?」

「はい、桃香様。畑を荒らす、店から食料の強奪、あるいは食事処の厨房で暴れる………といったものばかりでしたな」

 

再びの沈黙。武将は呆気にとられ、智将は沈思黙考している。軍師の少女たちの頭の中では様々な策―――征圧ではなく、同盟のための策―――が飛び交い、取捨選択されていた。だが、それを遮る声。主のものだ。

 

「だったら私達の方針は決まってるね」

 

主の性格をよく知る軍師は彼女を振り返り、頷く。主もまたそれを肯定と受け、告げた。

 

「南蛮の孟獲ちゃんと、友達になろうっ」

 

南征が開始された。

 

 

 

 

 

 

数日の準備期間を経て、南へ赴く部隊が編成された。とはいえ、大規模のものではない。部隊はほぼ輜重隊。そして、南特有の病を知る朱里からの指示で加えられた、医療兵。それを率いる将は、4人。

 

「…暑い……セキト、だいじょぶ?」

「わふぅ……」

 

孟獲の友人である客将、恋。同じ名の愛馬の上で、舌を出しながらぐでっている愛犬を気遣っている。

 

「ふむ、段々と生えている植物も見慣れぬものになってきたな」

 

白い衣服を身に纏った、青髪の槍使い。セキトの件で恋と友誼を深め、また香に次ぐ恋の世話係として加えられた星。なぜ香ではないかというと、武将のいなかった袁術の大軍をまとめていた実績を買われ、劉備軍の調練を任された為である。

 

「そうじゃな……くそっ、胸が蒸れてたまらんわ」

 

益州の出であり、南蛮被害の多かった邑への案内も兼ねて参加した、特殊弩の使い手。胸元をパタパタと扇ぐ度に、その大きな塊が揺れている。

 

「はわわ……世界は不公平ですぅ………」

 

そして、上述の通りに医療にも通じている軍師。金色のショートカットの髪を揺らして、たぷたぷと揺らぐ果実を見上げている。声音とは違い、その瞳には羨望と妬みの光を湛えていた。

それはともかくとして、朱里は話題を変える。

 

「南蛮は自然が濃いという事もあり、我々が作るような住居はないと聞きます。果たして、どの辺りにあるのか……」

「うむ。儂も以前、行軍の命を受けて入った事はあるが、結局奴らを見つける事はできなかった」

「下手をしたら、単純距離以上の行軍を考えなければならなくなるかもしれませんね」

 

かつて一刀と恋が南蛮を訪れた時もそうであった。少女たちは洞窟や木の上をねぐらとし、精々が快適な眠りの為に、洞窟内に葉を敷き詰めたり、あるいは鳥の巣のように枝葉を集めたり、という程度であったと、恋は朧気ながら思い出す。そしてその記憶をきっかけとして、この地に来た時を思い出していた。

 

「………どうした、恋?」

 

と、足を止めた恋に気づいた星が、声を掛ける。

 

「………こっち」

 

その問いには返さず、恋は右手に見えた枝を、方天画戟のひと振りで払った。

 

「いきなりどうした………む?」

「どうされました?」

 

背後でその様子を見ていた桔梗は何かに気づく。その視線はじっと切り拓かれた空間に注がれ、何かの違和感を感じ取っている。同様に朱里もそこを見つめるが、特に何かを発見できたわけでもない。

 

「なるほどのぅ。見てみろ」

「はわわっ!?」

 

違和感の正体に気づいた桔梗は、朱里の襟元を掴んで自分の視線と同じ高さまで持ち上げる。そして、朱里もそれに気がついた。

 

「………あっ!ここだけ枝の伸び方が違います!」

 

じと眼を凝らして見れば、枝々が伸びている幹の反対側と、その部分だけが枝の長さが違っていた。そこだけ見れば、陽の当たり方の違いで起き得る事であるが、それだけではない。枝の先が、妙に尖っていた。

 

「ん……前に来た時、一刀が刀で斬って…道、作ってた………」

「ふむ。ならば……」

 

星の理解も得た恋は、かつて一刀がしたように枝を斬り払って道を作りながら、その空間を進んでいった。

しばらく歩くと、開けた空間に到着し、そこで、皆は異様なものを目にする。

 

 

 

 

 

 

「なんだ、これは……?」

「はわっ!?はわわわわわ………」

 

地面に突き立てられた4本の長く太い枝。それは植物の蔦とは違った何かが巻きついている。そのうちの1本を目にし、朱里は震え、桔梗の着物の裾にしがみついた。

 

「蛇……のようじゃな」

「はわわわわ………」

 

巻きついていたのは、爬虫類の骨。朱里が怯えているのは、そこに大蛇の頭骨を見つけてしまったからだった。

 

「合わせれば2丈(約6m)はありそうだな………南蛮の者は、このような大蛇も退治てしまうほどの武の持ち主なのやもしれぬ………手合せが楽しみだな」

 

その武のほどを想像し、星は眼を細める。そして。

 

「違う………これは……恋と、一刀が食べた………」

 

桔梗と朱里の視線を受け、星は眼を逸らした。

 

「それで、ここからの道は分かりますか、恋さん?」

「………ここで、美以たちと会って、それで邑まで連れてってもらったから……わかんない。セキトは、わかる?」

「くぅん……」

 

星からジト目を戻し、朱里が恋に問うが、恋はふるふると首を振る。話を振られたセキトも、申し訳なさそうに耳と尾を垂らす。雨や植物の匂いなどで、その痕跡を追う事が出来ないようだ。

 

「では、本日はここまでとしましょう。ちょうど皆が休める広さもありますし」

「そうだな。陽もだいぶ暮れてきた………今日はここまでとする――――――」

 

軍師の言葉を受け、星は部隊に指示を出す。陽は傾き、密林には薄暗がりが満ち始めていた。

 

 

 

 

 

 

――――――翌朝。

 

「――――――起きろ」

 

ゆさゆさと肩を揺すぶられる。

 

「起きろ……恋!」

「………………………………ん」

 

名を呼ぶ声に恋は返事をし、ゆっくりと瞼を開いた。

 

「………………?」

 

そして、寝転がったまま、首を傾げる。将だけでなく、兵たちも皆、恋へと視線を注いでいた。腕の中で眠っていたセキトのふさふさとした身体を抱きながら、恋は上体を起こす。

 

「わふっ」

「………………セキト?」

 

そこで星の足下にいる愛犬に気づく。

 

「セキトが………2匹?」

 

愛犬は目の前にいる。腕の中にも愛犬がいる。再度首を傾げる恋に、朱里がおずおずと切り出した。

 

「恋さん………」

「……?」

「その……腕の中にいるのは、誰ですか?」

 

言われて、恋は視線を自身の胸元へと下げる。

 

「…………」

「おなか空いたにゃー………zzz」

 

腕の中には、猫耳に猫グローブの少女。小さな身体を恋の身体に擦りつけている。足下まで視線を向ければ、地面に横たわる3人の虎少女。

 

「……美以と、ミケと、トラと、シャム………んと、美以が孟獲」

『―――――――――っ!?』

「なんにゃぁっ!?」

 

驚愕の叫びに、緑色の髪をした猫耳少女が跳ね起きた。

 

 

 

 

 

 

「ここが美以の邑にゃ!」

 

劉備軍の兵とともに朝食を終えた美以の案内で、恋たちは南蛮の邑へと到着した。

 

「ふむ……邑など見えませぬな」

「何言ってるにゃ!あの洞窟が美以の部屋で、あっちがミケとトラとシャムのだにゃ!それで、あの木の上にあるのが――――――」

 

小さな怒りの後、嬉々として邑を説明する美以を放置して、朱里は美以の言うところの邑を見渡す。

 

「噂通りですね。建物はなく、自然の中で生活をしているようです」

「そうじゃな………って、暑いのだから、お主らは離れぬか!」

「いやにゃ、厳顔は柔らかくて好きなのにゃ」

「ミケが右のおっぱいを取ったから、トラは左にゃ」

「………zzz」

 

ぶんぶんと身体を震って3匹の猫娘を振り落とそうとするが、3匹ともお気に入りの寝床からは離れようとしない。トラの言葉の通り、右の胸にはミケがしがみついて顔を埋め、左の胸ではトラが同様にしている。『酔』の文字が書かれた左の肩当てには、シャムが乗っかって寝息を立てていた。

 

「あ、あはは………はわっ!?」

 

そんな1人と3匹に苦笑を洩らしながら、再度邑を見渡した朱里が、南側の密林の入口を見て、驚きの声をあげる。目を引くのは、倒された木々や、何かで抉られたような傷跡を残す幹。だが、彼女が震えて桔梗にしがみついた理由は、そこではない。

 

「えぇい、朱里までもかっ!?」

「ふぇぇぇええんっ!」

 

4匹目の少女に抱き着かれた桔梗は驚きの声を上げつつも、とうとう大人しくなる。そして、彼女もまたそれを見つけた。

 

「………なんじゃ、あれは?」

 

蛇の頭骨。それは、昨日の夜営地で見つけたものと、形は同じだった。だが、その大きさが異なる。人間の横幅ですら人間の身体よりも大きく、また縦はそれ以上。それは、先述の木々の隣に据えられた巨大な石の上に鎮座していた。

 

「のぅ、ミケ」

「にゃ?」

 

むにむにと右の乳房に頬を押し付けていた少女に、桔梗は問いかける。

 

「あれは、なんじゃ?」

「あれかにゃ?あれは、大魔王の頭の骨だにゃ!」

「はわわ……大魔王………」

「そうにゃ。前はあいつにミケたちの邑が襲われていたにゃ。でも、一刀と恋が退治してくれたにゃ!」

「そうなのか、恋?………って、おぉぅっ!?」

 

名前が出てきた仲間を振り返る。そこには、ミケ達と同じような顔をした少女達に、わらわらと囲まれる恋がいた。

 

 

 

 

 

 

「ますます恐ろしいな、一刀の奴は」

「蛇に呑み込まれて………はわっ」

 

大魔王討伐物語を聞いた桔梗は感嘆の息を吐き、朱里はそれを想像し、パタリと気絶した。

 

「ん……凄い硬かったから、斬れなかった………」

「恋の力や一刀殿の刀でも斬れぬとはな」

 

いつの間にか物語に合流した星も、目を丸くしている。

 

「それで、恋たちはなんで来たのにゃ?」

 

そして、星と共にやって来ていた美以が、恋に問いかけた。

 

「んと………朱里………」

「気絶しておるな。まぁよい。儂が説明しよう」

 

どう説明したものかと恋が振り返った軍師は気絶中だ。桔梗が引き継ぐ。

 

「お主らが漢の邑で悪戯をすると陳情が上がっていてな。それを辞めて欲しくて来たのだ」

 

朱里ならばもっと別の説明をしたであろうが、ここにいるのは幼い少女達だ。桔梗は出来るだけ柔らかな言葉を選んで説明を続ける。

 

「悪戯かにゃ?そんなのはしていないにゃ!」

「だが、漢の邑まで出てきて、食べ物を勝手に持っていってしまうのだろう?」

「にゃ……でも、美以たちも、いつも食べ物が手に入るとは限らないのにゃ………」

 

事実、彼女たちは農作を行なわない。よって、果物を採るか、得物を狩るしか食料を得るみちはない。

 

「そうだな。だが、だからといって他人に迷惑をかけてよいという訳ではない。これはわかるな?」

「………わかるにゃ」

「にゃ………」

 

母親のように諭す桔梗の言葉に美以は猫耳と尾を垂らし、他の者たちも瞳を伏せる。

 

「だから、我らは同盟を結びに来たのだ」

「どうめい?」

「あぁ。南蛮の果物はその実も大きく、美味いと噂だからな。お主らがそれを分けてくれるなら、我らも、日持ちする食料を分けてやろうという訳だ。普段は自分たちのとったものを食べ、足りなくなったらそれを食べるといい。どうだろう?」

 

彼女たちに、漢の金銭感覚はわからない。また、それを使用した売買も同様だ。よって、朱里は原始的な物々交換を持ち出した………持ち出す予定だった。当の本人は気絶中であるが。

 

「どうだ?」

「わかったにゃ!でも、条件があるにゃ!」

「ほぅ、条件とな?」

 

どこまで美以が理解したかは分からないが、彼女は即断した。そして、条件を持ち出す。

 

「食べ物の交換だけじゃなくて、漢に遊びに行ってみたいにゃ!」

「は?」

 

思わず呆気にとられる。条件でも何でもなかった。

 

「漢は美味しいものがたくさんだからにゃ!これから遊びに行って、ごはんを食べさせてもらうにゃ!」

「あぁ、それくらいならかまわんだろう………って、これからか?」

「そうにゃ」

「………流石に全員は無理だぞ?」

「大丈夫にゃ。美以とミケとトラとシャムが最初は行くにゃ。それで、次は他の者たちも行くにゃ」

『にゃ!』

 

家来たちも同調する。

 

「………よいのだろうか?」

「某に聞くのか?」

「はわ……4人であれば、大丈夫でしょう」

「朱里……起きた?」

 

問いに問いで返した星とは別に、気絶から目を覚ました朱里が口を開いた。

 

「はい、お騒がせしました。一度にそれほど大勢でなければ、問題はありません」

 

軍師の許可も得た事で、桔梗も了承の旨を伝える。

 

「らしいぞ。では、これから遊びに行くとするか」

「行くにゃ!ミケ、トラ、シャム!遊びに行く準備をするにゃ!他のみんなは、桔梗たちにあげる果物を準備するにゃ!」

「「「にゃ!」」」

 

そういう事となった。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

――――――益州・成都。

 

「あら、桔梗。おかえりなさい」

「あぁ、戻ったぞ」

 

遠征から戻ってきた友を、紫苑が迎える。と、そこで彼女は気づく。

 

「あら……貴女、どこか雰囲気が違わないかしら?」

「そうか?………まぁ、紫苑のようになるのも、悪くはないと思っただけよ」

「………は?」

 

城内へと向かう桔梗の腕の中には、幸せそうにスヤスヤと眠るミケとトラ、そして肩にシャム。

 

桔梗の母性が目覚めていた。

 

 

 

 

 

 

おまけ その2

 

 

「おかえり、朱里ちゃ―――」

 

執務室にて、軍師の帰還を迎えた主が固まる。

 

「あわわ!?朱里ちゃんが色っぽい恰好だよぉ………」

「はわわっ!そんな事言わないでぇ……」

 

友達の証という美以の言葉に逆らえず、朱里は、ミケたちと同じ格好をしていた。

 

「あわわ……えっちなのはいけないよぉ………」

「やめてぇっ!?」

 

帰還の道すがら、部隊の士気がかつてないほどに高かった事は、内緒にしていた。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

という訳で、マジこいSをやった。

○○と○○がなかったのは、マジ泣けた。

一番のお気に入りは辰子さん。

あれはズルい。

 

という訳で(2回目)、#70投稿。

前回まで魏メインだったので、今回は蜀編。

タイトル通り、主人公は一刀くんだけじゃなくて、恋ちゃんも含むので、頑張ってもらった。

 

次回も蜀編かな?

まぁ、わかんないけど、楽しんでもらえたら何よりです。

 

ではまた次回。

バイバイ。

 

 

 


 
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