No.375570

あの日、若い俺らの

男子高校生がだらだらと、半分ノンフィクションな感じで(過去文発掘)

2012-02-10 01:38:04 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:210   閲覧ユーザー数:210

 

授業中の暇な時間

動かない携帯を開けては閉じる

そんな俺は松島浩二高校二年

 

 

 

一応彼女のはずの子からの返信が最近ない

 

 

 

忙しいのかな?

 

 

やることもないので友人にメールを送る

相手の高校は午前中のみの授業だから

今頃は家にいるか帰宅途中だろう

 

---------------

 

宛先:島原

件名:暇

内容:

 

暇ー

そういやお前に貸した漫画いつ返す気?

 

---------------

 

はい送信

 

 

くだらない文だが暇つぶしにはちょうどいいだろう

 

 

 

「…縦弾性係数がこれだからこっちが横弾性係数で…」

先生の話しは聞こえてるけど聞いてはいない

そもそも何の授業だっけ?

工作?設計?生産だっけ?

あいまいだからわからない

ま、いっか

 

その時机の上の携帯が流行りの女歌手の歌を奏でる

明るい元気溢れる歌声で恋を面白おかしく歌った曲

先生の視線が痛い

さすがに最前列で着うた大音量はマズかったか

 

 

 

「お前、しまえよ携帯は」

 

 

 

怒った声色で言われた

「はーぃしまいまーっす…って何書いてんのぉっ!?減点!?」

「当たり前だ馬鹿、いい加減にしろよな」

注意と同時に出席簿に記入しだした先生を焦って止めるが手遅れ

教卓に乗り出して見た出席簿には俺の名前の列に『減点1』の文字

ふぎゃぁああ!?

「うっわぁ!最低!」

脳内だけで叫んで収まる俺ではないので実際に言葉としても叫ぶ

先生はもう無視して黒板に向かっている

「松島~諦めろ」

友人もどきたちのからかい

「お前は黙ってろ!」

「我が儘だねぇまっつぅ、自業自得だよ」

「うっるさ~い!」

と立ち上がりながら振り返り声をあげた途端に頭に衝撃

周囲からは笑い声

前に向き直れば先生と出席簿

そして無言で開かれたそれにまた赤ペンが走る

さっきと同じ列に

「そんな!せんっせい!俺、信じてたのにぃ!!」

「教師を信用するな信じちゃいけないのは権力者 お前らに一番身近な権力者は今は教師だ」

 

 

 

うわぉ…サイッテー…

 

 

 

そこで授業終了の鐘が鳴る

何故うちの先生は性格・口が悪いんだ

他もそうなのか?

ふてくされながら先ほど鳴った携帯を開く

 

 

 

新着メール有り…っと

 

 

 

メールは授業中に送った他校の友人からの返信

 

---------------

 

件名:Re:暇

内容:

こっちはこれからバイトだから忙しい

漫画は昨日兄貴が持ってったから返却日延長!

 

---------------

 

こちらも最低…

島っちよ!何故兄貴に見つかる場所に放置した!

嫌がらせか?これは俺への嫌がらせなのかぁ!?

 

 

 

「何~?彼女からメールかな、まっつぅ~?」

背後から抱きつきながら覗き込んできたのは美島隆介

中学時代から同じ学校の仲間の一人だ

 

 

お前の言うとおり彼女からだったら嬉しかったのにね…

「彼女じゃねぇよ男だ男、島っちからの不幸のメール」

背後の美島に携帯画面を向けて確認させる

 

 

島原も中学時代は同じ学校だったが高校で俺たちとは別れた

あっちは普通科の高校

こっちは工業高校

 

 

 

「あぁ、島ちゃんか!生きてたんだ?」

「そりゃそうだろ」

「てっきり悪の組織から闇討ちにあってるかと…」

「お前、どこまで本気なわけ?」

「そだ、知ってる?悪の組織の下っ端は《団体職員》なんだって!」

「…もうお前ちょっと離れてくれ…」

 

どこか違う世界に旅立とうとしている美島を後ろの席に押し戻す

 

・・・と

 

「なんだぁ、二週間も梨華ちゃんからのメール無しなんだ?」

「んなっ!!?」

いつの間にか机に置いておいた俺の携帯が坂田川の手の中に!

しかも勝手に履歴を見るなぁっ!!

慌てて取り返すが怒りは収まらず

 

 

「坂田川智幸…やるな貴様…わしから携帯を奪うとは」

「は?おめぇ何キャラだ?アホか?」

「問答無用!死ねぇい!!」

叫びながら立ち上がり坂田川に首締めをくらわせる

相手もそのままやられているわけもなく暴れ始める

 

休み時間恒例の周囲も巻き込む仲間割れ

 

 

 

周りの席の人はいい迷惑

「ちょっとあんたらこっち来んなって!イタタタ!痛い痛いって!!」

首を締めたまま坂田川の反撃の押し倒しを受ける

後ろに倒れそうになったときに美島の机を押し込む状態になって

 

椅子と机に挟まれた美島が騒いでいた

他の皆さんは離れた場所から観戦していたりする

 

アホに思われてる・・?まぁ、その通りだけど

なんとなく興がそれたな

 

 

やーめよっと

 

 

 

「悪い美島っ全て悪いのは坂田川だからこいつを煮るなり焼くなり好きにしろ」

そう言って坂田川を解放しながら美島の方へ突き出す

「…俺としてはまっつぅも一緒にドロドロに溶けるまで煮込みたいね…」

うわ…美島様お怒りのご様子…

「…っで?梨華ちゃんとはどうなんだよ?」

ふいに坂田川が制服を整えながら話題を戻す

俺もはずれたワイシャツのボタンを止めながら返す

「…どうって…何が?」

「だからさ…」

そこで言葉を切った坂田川が俺の耳元に近づく

「…ヤッたのか?って聞いてんだけど?」

それだけ言うとまた元の位置に戻って俺の机に腰掛けた

背後では美島が返答を待っている気配

「・・・まだヤッてないから!」

自棄になり正直に本当のことを言う

えぇ、ヤッてませんとも!

それどころかキスもさせてもらってませんが何か!?

 

 

「ねぇねぇ知ってる?60まで童貞守ると妖精になれるらしいよ?」

「お前はホント黙ってろ!」

またもや美島の怪奇発言

どこから仕入れた情報だよそれ…完全にガセだろ

それが事実だったらモテない男が妖精化しまくってるはずだ

日本は妖精で溢れかえるという見方によっては

 

なんともファンタジーというかメルヘンな世界…

 

 

…嫌だ

 

 

俺の想像だと顔はオヤジのままの妖精

嫌すぎる…

俺的には美女の妖精さん希望!切実に!

半裸なら尚良し!

 

 

アホな妄想から現実に戻るとまだ美島が語っていた

「だからさ、皆して妖精にならない?同窓会は妖精になって集まるのさ!」

「ヤダ!絶対ヤダ!」

「えーつまんねぇのっ、じゃあともちゃんはー?」

「俺?俺は無理、童貞じゃねぇもん」

 

 

 

そこで会話停止

 

 

 

俺と美島が揃って坂田川を見つめる

「なにぃ!いつ!?誰と!?」

「誰っていってもお前らは知らないやつだよ年上だし」

サラッと何ほざきやがったこの野郎ー…

 

 

 

「…もうこの話題は止めよう…繊細な俺の心が痛い…」

なんか美島の《童貞守って妖精さん計画》に参加したくなった…

あくまで気持ちが揺らいだだけで参加はしないけど

 

 

 

「そういえばまっつぅ彼女の話しの途中だったよね?」

「…う」

美島は不親切にも話しを戻そうとしてくれちゃっている

「ヤるのか?」

「黙れこの裏切りエロ男が!」

坂田川、お前はもう仲間ではない!

と、脳内で切り離す

安い友情なんてこんなもんよ

「男は皆エロいんだから今更な気がするぞ?」

なんかまた話しがズレてる

「もう、とにかく俺はこの女とは別れる!」

 

 

言ってしまったー

 

 

よし別れよう、うん

それが良い

返信が来ないのもきっと嫌われたからに違いない

別れればお互い新しい相手を探せるし!

 

 

「あれ?別れるの?何でー?」

「最近メール返ってこないし会えてもいないし」

「お前って日に何回メール送ってた?」

坂田川が机から降りながら言う

「…返ってこないのは忙しいのかと思ってずっと送ってない…」

そこで坂田川の眼光が鋭くなる

「ダメだな」

「は?」

「女なんてのは気紛れなんだから男が何度かメール送って気が向いたら返してくれんだよ、十回送って一回返ってきたら喜べ」

「今更遅い!明日と明後日休みだから別れてくる!」

 

 

 

ホント

…今更遅いんだよ馬鹿野郎…

 

‐‐‐

 

月曜日の朝

 

教卓を背に床に座る

よく見るとホコリやチョークの粉で汚い床なのは見なかったことにする

 

ポケットの携帯が振動しながら音楽が鳴る

メールは島原から

 

---------------

 

件名:Re:Re:Re:Re:Re:暇

内容:

今週の休みにでもうちに遊びに来れば?

そのとき漫画も返すから

 

---------------

 

 

今週は始まったばかりですよ島っち…

でも予定はないのでたぶん行けるだろうな

と考えていたら教室の黒板側のドアが開いた

 

 

「おはよ~ぅ、まっつぅ~…」

「眠そうだな美島?」

「うん、ちょっと二日酔い~」

「はぁ?」

「ううん、冗談冗談」

白々しい笑顔を作りながら席につく美島

冗談…に聞こえない…

 

俺だって飲まないわけじゃないけど二日酔いになるくらいまでは飲んでないぞ

 

しかも学校の前の日に飲むなよ・・・

 

 

SHRの時間が近づくにつれてクラスに人が満ちてきた

当然坂田川も登場

自分の席に鞄を投げるとそのまま俺の席にやってきた

何がしたいかはわかる

俺の別れ話の経緯が聞きたいのだろう

 

 

「やぁやぁ 久しぶりー松島くん、さてどうだったのかな?例の話は?」

ほらやっぱり

しっかも楽しそうな顔しやがって

俺は席に戻りながら考える

隠す必要もないから話すけどね

 

 

 

「あー…、なんかフられた」

 

 

 

沈黙

 

 

 

「…ん?」

「だからぁ!フられたんだよ!俺が!」

「ふ、フるつもりだったお前が…なんでまた?」

あ、今こいつ笑いこらえてやがるだろ?

声が震えてんぞコラ

背後の美島の表情は見えないが何かしら反応はあっただろうな

はいはい

おかしいですよねぇ

フるつもりで電話かけたら逆にフられたなんてねぇ

しかも相手はもう別に好きな人がいるときたもんだ

不幸だ…きっと俺は今不幸なんだ

フったならまだ精神的な余裕があったものを…

 

 

「…ぷっ…ぶはははははは!!!…ぐはっ!」

教室の前の方では突然笑い出した坂田川の笑い声に

 

すかさず俺が殴ったことによる苦鳴が続いた

 

‐‐‐

 

その日の放課後、美島が帰ろうとした俺を引き止める

手には何かの紙

 

 

「ねぇまっつぅも入らない?」

「あ?何に?」

「えっとね《妖精さんの会》!」

紙をこちらに掲げながらの発言

書いてあったのは一番上に《妖精さんの会、会員名簿》となっていて

その下には何人かの氏名が記入されていた

 

 

わぁお

 

 

驚いたね、結構加入しちゃってる奴がいるもんだ

「悪いけど俺はヤダ、他をあたってくれ…って…ええ!?」

サラッと読み飛ばそうと思っていたら気になる名前を発見した

あれ?

これ先生じゃね?

しかも保健の…

美島がそのことに気づいたみたいで説明する

「そうそう、職員室も回ったんだよ俺!偉くない?」

「保健の先生が妖精さんの会って…言ってることとやってることが矛盾してませんかこれ…」

少子化がどうのってあんた言ってませんでしたかぁ!?

「うーん、色々あるんだよきっと」

美島の笑顔に泣けてきた…

 

 

 

もう脳内を切り替えよう

 

 

 

さぁて明日は良いこと起きるかなー?

ははははは!

自棄だ自棄!

 

 

あぁ、同窓会が怖い

オヤジ顔の妖精飛んでたらどうしよう

 

なんて考えるようでは俺も何かしらが終ってるに違い無い…

 

 

 

…End

 

 
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