No.366140

東方天零譚 第二話

まっきーさん

セリフは一応、原作準拠ですが、一部見やすくなるよう改変しています。また、トランスサーバの設定はオリジナルで作ったので生暖かい目で読んでください。

2012-01-21 02:47:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:727   閲覧ユーザー数:717

「……」

ゼロは何も話さず、ただ毅然と立ち続けていた。

「ゼロ?」

と、少女が呼びかけても反応は無い。

だが、少女は反応が無くとも再度呼びかけた。

「助けて。おねがい助けて」

少女はゼロに助けを求めた。

すると、ゼロは近くに倒れていた緑色の服の男に素早く近づき、何かを拾った。

見れば、先ほど使われていた銃だと思われる。

それを拾ってすぐゼロは人形軍団に向けて射撃する。

銃弾を浴びて人形軍団は爆発した。

目の前の障害が無くなったことを確認したゼロは人形軍団が出現した通路の方へと走り出す。

傍にいた少女も慌ててついていこうと走り出し、今度は物理的に置いてけぼりを食らいそうになった天子も慌てて追いかける。

「こらーっ! 私を置いていくなー!」

と二人に追いついたあたりで天子が抗議の声を上げる。

「あ、えっと…ごめんなさい…」

走りながらとりあえず謝罪するが、少女は走ることに精一杯のようだ。

無理も無い。ゼロは結構速い速度で走り続けている。しかも目の前に出現する人形を蹴散らしながら。

だが天人である天子にとって、これくらいの速さなら追いつくことはたやすいことである。

「なんか必死に走っているからいいけど。落ち着いたら色々説明してよね」

あえて天子はこの場で問いたださず、おとなしく二人についていった。

そうしたことの理由として、一つは天子自身が少し周りに気をつかえるようになったことがある。

これは、自らが起こした"異変"をきっかけに様々な人間や妖怪などと交流した結果、いわゆる{丸くなった}からである。

そして、もう一つの理由。

ここまで展開についていけてない天子であったが、ここに来てようやく状況に慣れてきたのか、この展開がむしろ楽しくなってきていた。

今、自分の知らない何かが起こっている。

そう思えるだけでも、普段退屈な生活をしている天子にとっては行動理由となりえるのだ。

そんな訳で、ゼロが敵をばったばったと倒していくその光景を天子は楽しんで見ていた。

 

しばらく進むと、行き止まりにぶつかった。

少女は行き止まりの壁の近くまで進むと、そこで立ち止まった。

「あ! 行き止まりになっているわ…どうすれば…」

そう呟いた直後、少女の足元が崩れだす。

「キャアッ!」

悲鳴を上げて崩壊に巻き込まれようとしている少女へゼロはダッシュで近づく。

そして、素早く少女を抱えると、そのまま穴へと落下していった。

「えっ、ちょっと!」

天子が声をかけるが、二人は深い穴底へと落ちてしまったために見ることが出来ない。

「もぉ…しょうがないわねぇ…」

ヤレヤレといわんばかりの顔をして、二人の後を追って穴へと飛び降りる。

そして、飛行して穴底へと降りようとしたところで異変に気づいた。

「…あれ? なんで飛べないの!?」

いつもなら無意識にでも飛べるのだが、今は何故か飛べなかった。

必死になって自らの体を浮かそうとするが、体は重力に従って落下するばかりである。

「あっやだっぶつかるっ!」

みるみる地面が近づいて来る。天子はこれから来るであろう衝撃に供える。

だがしかし、予想に反して天子は軽やかに着地した。

「……え?」

考えてみれば、普段は飛行出来るから気にしていなかったが、そもそも自分は天人である。

であるならば、たかがこの程度の高さの落下くらいならば、天人である自分がダメージをくらうはずがないのである。

軽く肩透かしを食らった気分の天子に、少女が気遣いの声をかける。

「あの、大丈夫ですか? 結構高かったけど…」

「まぁこれくらいの高さなら平気よ。よゆーよゆー」

なんてことなさそうな顔をして返答した天子を見て大丈夫だと判断した少女は、軽く会釈をしたあとに周りを見渡した。

「どうやらここは前じだいの研究所のようね」

そう言って、間をおかずに喋り続ける。

「もしかしたらレジスタンスベースにもどれるトランスサーバがあるかもしれないわ」

と言って、奥へと進んでしまう。

ちなみに、ゼロはこの会話中返事をすることはおろか相槌一つ打つことはなかった。

随分と無愛想な奴ね……と天子はゼロに対する認識を持った。

二人は奥へと進んだ少女の後を追う。

すると、通路を進んだ奥で少女が立ち止まっていた。

見ると、瓦礫によって道が塞がっているようであった。

「だめだわ…くずれちゃってる。もどりましょうか?」

戻らないで、この瓦礫を吹き飛ばしちゃえばいいんじゃないかな、と天子が考えていると、

「下がれ!」

とゼロが鋭い声を上げる。

一瞬後に、瓦礫が吹き飛んだ。

そしてそこから飛び出てきた手は少女を掴むと、奥へと引っ込んでいく。

慌てて奥へと駆け込む天子とゼロ。すると、見慣れない物体が少女を掴んで浮いていた。

「だめ。は、はやくにげて…こいつにはバスターが…」

そう少女が言ったと同時に、背後の出入り口が瓦礫によって塞がれる。

このとき、一番行動が早かったのはゼロだった。

少女に当たらないよう、敵の胴体目掛けて射撃する。

だがしかし、これまで数多の人形を打ち抜いてきた弾丸がはじかれてしまった。

そして、敵は口を開くと、緑色の光線を打ち放ってきた。

それは一直線に壁にぶつかったあと、顔を上に向けることで天井を打ち抜く。

打ち抜かれた天井が落ちてきたため、天子とゼロは回避行動を取った。

「ふぅん。なかなか面白いじゃない」

そう言って、天子は要石を敵の胴体へと射出する。

だがしかし、天子の要石ですらはじかれてしまった。

「うそっ、私の要石まで!?」

射出型要石の威力はそこそこで、大抵のものなら打ち抜ける。しかし、まさかはじかれるとは思わなかった。

慌てて距離を取るが、狭い室内。大した距離は取れなかった。

一方のゼロは敵の人間であれば足の付け根あたりである部分目掛けて銃弾を放つ。

だがしかし、こちらもはじかれてしまった。

そうして、敵が再び口を開き、二度目の光線を放つ。

今度は地面をなぎ払うように光線を放ったために空中へ逃れようとジャンプするが、飛べないために地面へと落ちてしまい光線を食らってしまう。

「いたっ! や、やるわねこの人形!」

強気な発言をするが、天子は劣勢であることを理解していた。

要石が効かない以上、緋想の剣で斬れるかどうかもわからない。というより、元々緋想の剣は元々相手の気質を見極め、弱点の気質を纏って斬る剣である。

さっきはついノリで使ってしまったが、目の前にいる人形に通じるかどうかはわからない。

というか、今現在相手の気質が見えないのだ。どうも空を飛べないことといい、自分の能力や剣はどうかしてしまったようだ。

ゼロも攻めあぐねているようで、敵の色々な部位に射撃を繰り返している。だが大抵の部分ははじかれてしまっている。

唯一はじかれない頭部へと攻撃を集中しているが、その効果は微々たるものだ。

つまり劣勢。このままではこちらがやられてしまうかもしれない。

そう結論付け、どうにか状況を打破出来ないかと思考する天子の視界に、不意に光り輝く何かが見える。

「ん?」

ゼロも気づいたようで、そちらを見ている。

それは、薄いモニター(前にかっぱの所で見た)であった。

そこから、一本の剣がゼロの下へと投げられる。

投げられた剣は、緑色の剣であった。だがしかし、その刀身は見た感じ鉄では無かった。

「…ゼロ…コレヲツカッテ…」

「誰だ!」

「…ハヤク…、カノジョヲ…助ケナイト…サッ、ハヤク…」

そう言われて、ゼロは剣を手に取ると素早く壁を蹴りあがり、敵の頭部目掛けて剣を振り下ろす。

だがしかし、敵の光線によって迎撃されてしまい、地面へと落下する。

「ゼロっ!」

少女の声が響く。だが地面に打ち付けられたゼロは素早く起き上がることは出来なかった。

そこへ、敵はとどめを刺すために光線をゼロへと向ける。間一髪で天子がゼロを抱え光線を避ける。

「ほら、あんた! しっかりしなさい!」

ゼロに激を飛ばし、敵から距離を置く。すると、モニターから再度声がした。

「キミハ…ゼロノ、ミカタ…?」

「そうね! 今は味方なんじゃない!」

戦闘中でわりと余裕が無い天子は敵の光線を避けつつ答える。

「ソウカ…ナラ、キミノ…ケンノ…チカラヲ、メザメサセル…」

「えっ!?」

モニターから光が迸ると、天子の持つ緋想の剣が輝きだした。

そして、気質を纏った時と同じように、剣が緋色の気質を纏っていた。

「サァ…カノジョヲ…助ケルンダ…」

天子はゼロを地面に下ろすと、先ほどゼロが見せたように壁を蹴りあがる。

そして、こちらも同じく敵の頭部へと切りかかる。

今なら斬れる。天子にはその確信があった。

なぜなら、敵から黄色の気質が見えるからである。

気質が見極められた以上、気質を斬る緋想の剣なら斬れる。

そう直感で理解した天子は敵を見据え剣を握る手に力を込める。

このとき敵も先ほどと同じように迎撃態勢を取るが、ゼロの銃弾がアゴに当たり光線の発射が中止されてしまう。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」

飛び掛った勢いを乗せて、天子は緋想の剣を振り下ろした。

ザンッ!

敵を、気質を斬った感触を味わいながら地面へと着地する。

敵の体が硬直し、光り輝くのを見て素早く離れる。

ゼロは敵の拘束から解かれた少女の下へと駆け込んだ。

一瞬のち、敵が爆発する。

その爆発から、天子は逃れ、ゼロは少女をかばう。

爆発が収まったところで、ゼロは少女から離れた。

少女は、驚いた顔をして天子とゼロを見る。

「ゴーレムをたおしてしまうなんて…」

少女は天子のほうを見て呟く。

「すごい。あなたも人間なのに…」

人間、と言われて天子はムッっとした顔で抗議する。

「私は人間じゃないわよ。天人よ、天人」

「え?…テンジン?」

聞きなれない単語なのか、首をかしげる少女。

「それより、そっちの無愛想な奴にお礼でも言ったら? あなたのこと、庇ってくれたじゃない」

「あ!」

そう言われて、慌てて少女はゼロの方へと向き直る。

「ごめんなさい! わたし、あなたにお礼も言わずに…」

だが、言われたゼロは特に返事はしなかった。

少女は、特に気にした様子も無く話し続ける。

「これまでの戦闘でもすごく強かったし…やっぱりあなた、あの伝説の、ゼロなのね?」

「ゼロ…? オレの名前…か」

そう呟き、押し黙ったゼロは、

「うぅ、思い出せん…」

そう言って頭を軽く抑えた。

「長い間ねむっていたみたいだから、しかたないわ」

そう少女は言うと、申し訳なさそうな顔をする。

「無理やり おこしてしまって、ごめんなさい」

そう謝罪したあと、はにかむような笑顔で、

「そして…助けてくれてありがとう」

感謝の言葉を述べた。

少し間を置いて、少女は自分の胸に手を当てながら自己紹介をした。

「私の名前はシエル。こう見えても科学者なの」

科学者? それは一体なんだろう。

またもや天子の知らない言葉が出てきた。

「さっ、敵が来る前に私たちのベースへ」

そう言って歩き出そうとするシエルを、意外な事にゼロが引き止める。

「オレがその、ゼロじゃなかったらどうする?」

その問いに、シエルは迷うことなく、ゼロの目を見据えて答える。

「私にとっては、あなたはもうゼロなのよ」

そう言ったシエルは扉の前に行くと、

「あなたも来て。あなたにも色々説明したいから」

そう天子に言って、扉をくぐっていった。

残されたゼロは天子を一瞥するとシエルの後を追って扉をくぐる。

目が合ったゼロからは、何を考えているのか読み取れなかった。

やっぱり無愛想な奴。

そう思いながら天子は扉をくぐった。

その先には、見たこともない装置があった。

「運がよかったわ。トランスルームが生きてる」

もはや知らない単語についてはつっこむまい、と天子は思った。

「上に立って装置を起動すればベースにかえれるわ。さっ、はやく!」

急かされて、まずはゼロが装置の上に立つ。

すると、装置が動き出した後に、ゼロの姿が消えてしまった。

「えっ!? ちょっと、消えちゃったわよ!」

驚いて問いただす天子であったが、シエルは何のことだ? と言わんばかりの顔をして、

「転送しただけよ? ほら、あなたも早く」

と天子を促す。

しぶしぶ装置の上に立った天子は、はて、どうやって装置を起動すればいいんだろう? と首をかしげる。

「足元にボタンがあるから、それを押して」

シエルに言われて足元を見ると、"↑"と描かれているボタンがあった。

それを押すと、先ほどゼロがそうしたように装置が起動する。

そして、天子の目の前に半透明の長方形が現れる。

「え、なにこれ。どうしたらいいの?」

「今出来る操作がそのメニューには書かれているの。今は"ベースにもどる"って操作を選んで」

「選ぶってどうやって?」

「やりたい操作を見て、頭の中で決定! って思えば、それで大丈夫だから」

良くわからなかったが、とりあえず言われた通りメニューを見る。

項目の一つである"ベースにもどる"を見ながら頭の中で念じる。

("ベースにもどる"に決定!)

すると、一瞬にして視界が光に包まれる。

気がついたとき、天子は先ほどとは違う場所へと移動していた。

 

こうして、幻想郷とは違う謎の異世界に飛ばされてしまった天子と、

伝説のレプリロイドであるゼロの冒険譚は、始まりを告げたのであった。

 

 


 
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