■■ 陽ノムクホウヘ
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喧騒の主はウソップで
メインデッキには様々な木材や道具を広げウソップ工場を開設している。
その隣ではルフィが何やら手伝いらしきことをしていた。
「なにやらかしたんだルフィ」
サンジは階段を降りると
ウソップ工場から少し離れたメインマストのベンチに腰を下ろし
たらいと芋と屑籠を置いて皮むきの作業を再開した。
「ナミの脚立壊したんだよ」
サンジの問い掛けにルフィの代わりにウソップが答える。
ナミのみかん畑の剪定に使う道具をウソップと遊んでいたルフィが壊してしまい
現在ウソップが修理している最中だった。
「もういいだろ~ウソップ~」
大人しく手伝いをしていると思ったルフィがうずうずとしていた。
手は木材を押さえているが既に腰は浮いて何処かへ行こうと浮き足立っている。
そんなルフィをウソップは宥めすかしてその場に留まらせていた。
「俺もゾロに肩車してもらいてぇっ!!」
ぶーと唇を尖らせるルフィのその発言に
サンジはピタリと手を止めバッと振り返りみかん畑を仰ぎ見る。
緑の葉っぱとみかんのオレンジ。
いやいやいやいやいや!!
サンジは見間違いかもしれないと
顔面を両手でコレでもかっというくらい力一杯擦る。
(目だけで良いと思いますよ/笑)
「あのなぁ、
あれは お前が脚立壊すから
ゾロが脚立の替わりしてくれてんだろ!」
すぐ傍にいるウソップの声がサンジにはやけに遠くで聞こえる。
それもその筈ウソップが言い終わらない内に
サンジは階段を駆け上がり
既にみかん畑に辿りついて衝撃の光景を目にしていた。
「テメェー!!
植物界代表がナミさんに何してやがるっっ!!!」
サンジの恫喝にゾロが嫌そうに首を巡らせ振り返る。
「ちょっと!急に動かないでよ」
ゾロが返事する前にナミの声が返ってきて
サンジはワナワナと打ち震えていた。
今目の前のゾロがナミの大事な所に
その緑の頭を埋めているではないか。(色々語弊有)
「サンジ君邪魔」
呆れるナミがゾロの肩に掛かった足を交差して首を絞めると
苦しげな声を出すゾロを前を向かせ作業を再開する。
「だってナミすわぁん!!」
膝を折って地面に向うサンジは
ゾロに対するあらゆる罵詈雑言を吐き出したあと
天を仰ぎ見てナミに対する懺悔を口にして
ナミに無碍にされて涙を流した。
「文句があるならみかんについた害虫と
脚立を壊したルフィに言って」
ココヤシ村から持ち込んだみかんの木についた害虫退治に
ナミの背が届かない所はゾロが肩車をしてナミを担ぎ上げている状態なのだが
サンジにはそれが羨ましい…いやいや、腹立たしいのだ。
「じゃあさ!じゃあさ!
俺が代わりに脚立になるよ!!」
紳士としてレディの役に立ちたいとサンジはゾロとの選手交代を申し出た。
「そう?じゃあ変わって貰おうかしら」
足場が確保できれば何だって良いナミがそう言うと
トレーニング中にかり出されたゾロにしても願ったり叶ったりだった。
重り代わりにちょこっと手伝ってくれればいい
なんて言われたが女一人の体重なんて高が知れている。
それに動いたら頭を殴ら首を絞められる。
替わろうと思ったナミとゾロだったが
2人はさあ!と両手を広げて待ち構えるサンジを見てピタリと止まった。
「サンジ君…鼻血」
白い目をしたナミがそう言うと
サンジの両鼻から赤い筋がすーっと走っていた。
「あっ!?いやいやナミさん!
これはナミさんとの密着じゃなくて!?
太腿の感触あわわわ
俺の後頭部がナミさんの大事な(ぶはっ)」
あわあわしながらサンジが弁解を試みるも墓穴を掘るのみで
さしものゾロも鼻血を吹く変態眉毛にバトンを渡すのも忍びなくて
仕方なしにため息をついてナミの脚立を続行する。
「あー!!?クソ毬藻!!
ナミさんの足首を気軽に持つんじゃねぇよ」
鼻にティッシュを詰めながらのサンジに言われ
カチンと頭にきたゾロは青筋を立てながらサンジを睨みつける。
「テメー、いい加減にしやがらねーとおろすぞ」
「俺はナミさんが心配なだけだ、ムッツリ毬藻」
この言葉にゾロの堪忍袋の尾がブチリと音を立てて切れた。
「テメーにだきゃ言われたくねぇぜ変態クソコック!!」
サンジも変態と罵られて黙っていられない。
「「かかってきやがれ!!」」
向かっ腹がたったサンジの鼻に詰めていたティッシュが
両穴からぽーんと勢い良く飛び出し
ゾロも刀を抜き構えようとした体の向きを変えると
その時ゾロの頭がグラリと揺れた。
「ちょっ!?ばっ!!」
ナミは急にゾロが動いたためバランスを崩したのだ。
後ろに倒れそうになるのを慌てて前のめりになり緑の頭を掴む。
「あーーっっ!?ナミさぁぁああん」
サンジが驚愕する訳は
ゾロの頭にずしりと重量感たっぷりのナミの実が二つ実ったからだ。
「ったく!!
危ないでしょ!!急に動かないでってば!
サンジ君は五月蠅いからあっちに行ってて!!」
ナミはゾロの頭を抱え込んだままゾロとサンジを一喝。
ゾロが悪ぃと謝りサンジもすごすごと退散した。
「重い」
ナミの抱え込んだ頭の持ち主が呟いた声が届いてややぁと片眉を上げる。
「もしかしてあんたも鼻血出してるんじゃないでしょうね」
先程までナミの重さなんてまるで大した事ないと言っていた癖に
どういう風の吹き回しかとナミはゾロの顔を覗き込んだ。
「変態グル眉と一緒にすんな」
これでもかと言うくらい厭そうに顔をしかめたゾロがぷいと視線を移す。
「あたしじゃ興奮しないって?」
こんなナイスバディ乙女を捕まえて失礼しちゃうわと
ナミがさらにゾロ茶化してみると、
ふとルフィ達の声が風に運ばれてくる。
「鼻っぷ!とっとと修理しやがれ!」
「なー俺腹減ったよ!昼飯前のおやつまだか?」
「だーっ!!お前らちょっとは黙ってろよ!」
「うるせー!あれだ!高枝鋏を作れ!
あれなら脚立もいらないからナミさんも危なくねぇ!!」
「それ美味いのか??」
ナミに追い払われたサンジがわーわーと言い
痺れを切らした助手のルフィも騒いで
そんな2人に言い返しながらもウソップが一生懸命修理を続けている様を
真っ直ぐ見つめていたゾロが口を開いた。
「仲間だからな」
その言葉にナミは目を丸めてそれからにやりと笑い
ゾロの頭の上に肘をついて頬杖をつき、
そうねと言ってゾロと同じように主甲板の仲間達を見つめると
ふわりと心地よい風がメリーの中を吹き抜けていった。
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