■■ 待つ風 咲きの丘
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「うーん、よく寝た」
太陽が水平線から随分上った頃にナミは目を覚ましベッドの中で伸びをした。
最近では見張り番に夜学を行っていたのも何巡目かして落ち着いたのだが
今度は自分の海図を描いたり調べ物をしてやっぱり夜が遅いのでついつい朝寝坊してしまう。
それも織り込み済みでサンジは朝食を用意してくれるので
それに甘えてゆっくりと身支度を整える。
着替えを済ませながらシャワーでも浴びてさっぱりしようかと思い
キッチンへ行く前に風呂場へ向かうことにする。
ユニットバスのある浴室の扉の前に辿り着いたナミは
鍵がかかっていないことを確認してから扉を開ける為にノブを回した。
「なんだ、便所か」
誰もいない筈の室内から声をかけられナミはガクリと肩を落とした。
そこにはシャワーで汗を流したゾロがバスタオルで体を拭っている最中だった。
勿論一糸纏わぬ姿である。
「あーのーねー(怒)」
ナミはこめかみに青筋を立てながらゾロを後目に浴室内に入るとシャワーを諦め洗面台へ進む。
「いい加減鍵閉めてって何度も言ってるでしょ!」
ゴーイングメリー号のユニットバスを使う際には鍵を閉めるのがルールなのだが
ルフィとゾロはすぐに忘れて使用するため
知らずに扉を開けてご対面という場面が何度もあった。
(被害者は主に3人)
なのでもう慣れてしまったナミは構わずヘアバンドで前髪を上げて洗顔を始める。
「まあ、気にすんな」
素っ裸の体を拭き終わったゾロはやっとで服を着始める。
別に今更きゃーっとかいやーなんて可愛らしい声を上げる気なんてさらさらないナミだが
人として最低限のマナーは守って貰いたい。
「アンタねぇ。
居ないと思ってる所に人がいるんだから
びっくりするでしょ。」
そう言えば、先日ゾロと遭遇したウソップはキャー!!(赤)と叫んでたし
ルフィの素っ裸を目撃したサンジはいやーッ!?(青)って泣いてたっけと思い出す。
そもそも野郎達はユニットバスを使うのは風呂の時だけで
それでも意外にゾロは頻繁に風呂を活用しているようで筋トレ後は汗を流し存外長風呂だったりする。
逆に綺麗好きなサンジはやることが目白押しなため普段は烏の行水だ。
「鍵壊れてるぞ」
洗顔フォームを流し終わったナミははぁ!?と言って顔を歪め
改めて扉を見て試しに鍵の施錠を確認すると確かに壊れていた。
「壊したんじゃないの?
やめてよね、アタシが入ってる時に急に入ってくるとかナシよ」
頭をタオルでガシガシ拭きながら横目でナミを見たゾロは鼻で笑う。
「どこぞのエロコックじゃあるまいし誰が入るか」
そうだ!サンジなんて態とらしく侵入してきそうだ。
ウソップに早々に直して貰わなければとナミが想像で身震いしていると
キッチンではサンジが盛大なくしゃみをかましていた。
「拝観料は10万ベリーね」
一瞬考えてからナミは覗かれた時の代金を算出すると
あまりの暴利ぶりにゾロが呆れて肩を竦める。
「なんだったら見せてあげようか?」
上半身裸のままゾロがナミの横を通って浴室を出ようとするので
笑顔でナミが挑発するようにキャミソールの裾をつまんで見せると
臍がチラリと覗く。
「アホか、いくら取る気だ」
「出血大サービスで20万」
「値上がりしてるじゃねーか」
あまりに不当で法外な価格にゾロはアホらしいと
頭を拭いていたタオルを肩にかけ浴室を出てしまう。
「ちょっと!シャツ忘れてるわよ」
ゾロからせしめようと思ったナミは残念そうにちぇっと舌打ちした後
浴室内に忘れられた着替え用のゾロのTシャツを見つけ
ゾロの背中に声をかけるとゾロが振り返るのでTシャツを投げてやる。
ドォォォォォオオオオオン!!
船外から大きな衝撃音が轟き、ゾロとナミは思わず顔を見合わせた。
「またなんかやらかしたわね」
ナミが大きくため息をついて肩を落とすと、
ゾロはふっと鼻先で笑ってから先に船外へ向かい
ナミも仕方ないと甲板へ向かうのだった。
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