街並みがすごい勢いでうしろへと流れていき、数百メートル先で現場へとたどり着いた。
「いた!」
銀色のイカ型の未確認だ。
俺の到着と同時に逃げまどう人々の群れにあの墨(?)を吐こうとしている。
「く…超変身!!」
俺は紫に超変身して、皆と未確認の間に割り込む。
間一髪、墨のバクダンは俺の装甲にあたり皆を守ることに成功する。
「お前は…クウガ!」
「やっぱり、言葉が…。でも…」
「邪魔をするなら…先に殺してやる…死ね!」
未確認事件の中盤、いつのまにか奴らは人間の言葉を話せるようになっていた。
これで少しは話し合いの余地が生まれるかもと少しは思ったんだ。
でも、奴らの考え方は全く俺たちと異なっていた。
『あの時未確認の奴が言ってたんだ、俺たちが苦しむほど楽しいって』
42号の事件の時初めて狙われている人の声を聞いた。
何で殺されなくちゃいけないんだって言ったからこう答えた。
『理由なんてないよ。だから…殺させない』
『奴らは我々と同じ姿を持ち、今では我々の言葉さえ話すようになった。それなのに、奴らは我々の感情を無視して殺戮を続ける…価値観の違いは決定的だ。』
その時一条さんが言っていた。
話し合いの余地なんてない。
だけど、0号と長野で戦った時、知らないうちに涙を流していた。
やっぱり、コレを使うのは気持ちいいことじゃない。
ましてや、華琳たちのように己の信念の為に拳を振るうわけでもない。
『皆に笑っていてほしいんです!』
それはこっちから見た勝手なエゴかもしれない。
それでもいい。
逃げ惑う人々の中には見知った顔ばかりだ。
でも、俺の知ってる表情はどこにもない。
ただ怯え、恐怖に顔が歪んでいる。中には泣いている子供もいる。…俺が戻ってきてみたかったのは、こんな顔じゃない。
だから、俺は戦うしかないんだ。
どんなにつらくったって、皆を守れるなら…皆が笑顔でいてくれるなら。
噴煙が晴れた先に俺が立っているのを見て、14号は明らかに狼狽する。
「貴様…あそこでダグバと一緒に封印されていたはずじゃ…そうか、封印は…」
「ダグバ…あいつも復活しているのか!?」
「何?貴様グロンギの言葉が話せるのか?」
奴らからすると俺の言葉はグロンギ語に聞こえるらしい。
「だが、貴様に話すことなど何もない…俺のゲゲルの邪魔をするならば、死ぬがいい!」
14号がもう一度墨を吐こうと身をわずかに反らす。
と、俺も衝撃に耐えるため身構える。
他の色に比べて断然弱いけど、やっぱりイタいもんは痛いよ…
コンマ一秒の間を置き、14号の口から墨が発射される。
「避けんか馬鹿者!!」
「へ?」
もう少しで着弾するというところで俺と14号の間に割って入る影があった。
その影は墨の球を寸分たがわずド真ん中で切り裂き、割れた球はそれぞれ民家の屋根にあたってしまう。
もうこの一帯は避難も完了していて、中には人もいないはず…
春蘭がそれを知っていたかは疑問だけど。
「危なかったな!貴様も早く逃げんと危ないぞ!それにしても北郷は先に行ったくせに到着しとらんじゃないか」
「はぁはぁ、春蘭、あんたバカなの?それが北郷でしょ!」
遅れてきた桂花が息絶え絶えにフォローする。
「桂花貴様!私をバカにしているのか!?
さっきの北郷は赤かったではないか!こいつは紫だろう!」
「ていうか、城から出るとき青に変わったじゃないか、春蘭」
「貴様、私の真名を!」
…久しぶりに理不尽なキレられ方をされた気がする。
ああ、一から十まで説明しなくちゃいけない、これが春蘭だったんだ。
「これでいいかな、春蘭」
俺は敵を牽制しながら紫から赤へと超変身する。
「おお、北郷、貴様どこにいたんだ。先に行って遅れてるなどたるんでる証拠だぞ!!」
「華琳」
「あとで」
「…とりあえず春蘭見ててくれる?」
「待て!北郷!貴様だけにいいとこどりをさせるものか」
「春蘭。今この場になぜ桂花たちがいるのかわかってるの?」
「それはもちろんあいつの討伐にきまってますよ」
と14号を指さしながら、華琳の問いに答える。
…あいつ、攻撃してこないなぁ。
なんでだろう。
「まぁ、5割は正解よ。残りの5割は一刀の戦力を見ることにあるのよ」
「…なるほど」
分かってくれたか春蘭。
「続けなさい、一刀」
「はい」
俺はもう一度紫へ超変身する。
「あ、春蘭。その剣かしてくれる?」
「む?構わんがどうするのだ?」
ひょいと剣を差し出す春蘭。
「ありがと」
剣を構えた瞬間、その剣は見慣れた剣へと変化した。
「貴様!私の剣をどこへやった!?」
「春蘭。大丈夫だから少し黙っててくれないかしら?」
「うん。後でちゃんと返すから心配しないで」
「むぅ…」
華琳相手にはオールOKな春蘭も幾度も戦ってきたもう一人の相棒みたいなものだ。
突然わけのわからい事態に巻き込まれてしまって納得できないのも無理はない。
「やるなら早くやってこい。そのかわり私の剣が戻ってこなかったら…分かってるだろうな」
「わかってるって」
俺が構えなおすといったん緩みかかった場の空気は一瞬にして引き締まる。
「話は終わったか」
「ああ」
「俺に準備の時間を与えるとは馬鹿なヤツ」
「準備?」
「死ね!」
14号の怒号とともに口から墨が吐き出される。
だけど、俺の世界で何度となく体験した技だ。
一条さんとの特訓も覚えている。
「死ね!死ね!」
幾度となく14号は墨を撃ってくる。
衝撃はある。でもぶれるまでじゃない。
爆風の中をただひたすら14号めがけてまっすぐ突き進む。
「死ね!」
もうヤツとの距離は数メートルまで迫っていた。
「おおおおおおおおおおぉぉぉ!!!」
俺は14号の弱点である腹部の噴出口に剣をつきたてる。
「うぅ!!…なぜ…」
俺の刺した場所から血が流れ、リントの文字が浮かび上がる。
そこから輝く亀裂がヤツの体を這いまわり、ベルトに達した次の瞬間。
ヤツの体は大きな爆音とともに破裂した。
「ふぅ…うわ、重」
クウガの変身を解く。と同時に紫の剣になっていた春蘭の件は元の姿を取り戻す。
「ありがと、春蘭」
「うむ。変わってるところはないようだな。というより少しキレイになったような…
ところで北郷、奴はなぜ爆発したのだ?火薬を使ってた様でもなかったが」
「よくわからないんだよね、なんかこう…すごい力でバーン…と」
「なんだ、その要領を得ない答えは…」
身振り手振りで説明するがどうも理解できないようで嘆息する春蘭。
「御苦労さま。一刀」
「兄ちゃんかっけー!!」
季衣が俺の胸にヘッドダイブする。
「うぐっ…ありがと、季衣」
今のおれは以前と大して変わらないから…胸が痛い…
「兄様。お疲れ様です」
「うん。流々たちも大変だったろ?」
「いえいえ」
近くにとててと寄ってきて目をキラキラさせながら、労をねぎらってくれる。
優しいなぁ。
「他にも色ってあるん?」
「んーと…赤、青、緑、紫、白、黒…あとミレニアム特別バージョンの金の力と、赤のまま真っ黒になるのもあるよ」
「『みれにあむ』?『ばーじょん』?赤のまま真っ黒ってどういうこっちゃ」
「なんかね、『やるぞー』って思ったら全身バチバチってなって、金の力出てくるんだよ」
「あかん。全然わからん」
「もうできないんだけどね」
「できへんのかい!」
突っ込みながらあれの頭を軽くはたいてくる霞。
恐らく彼女のなかでは軽くなのだろう。
…頭、痛い。
「で、あなたたち。一刀の戦いを見てどう思った?」
華琳は軍師陣に話を振る。
「いや、どうもこうも現象が超常的すぎて理解しかねてます~」
風はあきらめたように首を振る。
「しかも、その全身性器男の情報は蚊ほどの役にも立たないし」
「うぅ…ごめん」
痛いところを突かれた俺は素直に謝るしかできなかった。
あぁ~なんでもっとちゃんと榎田さんの話を聞いとかなかったんだろうか。
桂花も理解できない事態に頭を悩ませてるようだ。
「まぁ、やはり現状としては一度体験している一刀殿の意見を尊重するのが妥当かと思います」
「そうね。何はともあれいったん城に戻りましょうか」
「「御意」」
とその時。
「かっり~~ん!」
門の方から唐突に華琳の真名を呼ぶ声。
この国ではこれだけ華琳の真名を気軽に呼ぶ奴はいない。
俺以外は。
振り返ると、そこには何度か見た顔。
「孫策さん…」
ちらと華琳を見ると、なぜか少しめんどくさそうな顔をしている。
「何かしら、雪蓮。あなたたちが来るのは半月後のはずだけど」
「やーねぇ。私はもう当主じゃないのよ?家督は蓮華に譲ったし。ほらほら、おもてなししてよ~」
「あなた…そんなこと言ってるとまた冥琳が禁酒令だすわよ?」
「うぅ…あれは悪夢だったわ。蔵に忍び込んで樽にお酒残ってる~って、思って飲んだら冥琳が先手打って無味無臭の麻痺毒入れてるし…
…で、そっちの男は?」
「…お察しの通り。『天の御遣い』北郷一刀よ」
「ふぅ~ん。あんたが」
そう言って俺を見た孫策さんの目には隠してもいない殺気がこもっていた。
10話くらいかかってやっと話が進みそうです。
このへんまでは、プロローグみたいなもんです。
次回からは本格的に他国も絡んできます。
三国合わせて未知の軍団と戦うのは無印とかぶるところが多々あるかと思われます。
次回は出来るだけ早く書き終わるといいなぁ。
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いつも通りです。
今回はギイガ迎撃~雪蓮接触です。