No.341125

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-26

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-26
更新させていただきます。
普段、というか今までのサイクルより半日近く遅れての投稿です。
さすが年末近く、猫の手も借りたいとはこのことですね。

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2011-11-29 16:29:07 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:24554   閲覧ユーザー数:6241

 

 

 

この作品は【 恋姫†無双 】【 真・恋姫†無双 】の二次創作です。

 

三国志の二次創作である物に、さらに作者が創作を加えたものであるため

 

人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので

 

その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。

 

上記をご理解の上、興味をお持ちの方はそのままお進み下さい。

 

 

 

 

 

 

 

『敵将華雄!劉玄徳が一の臣、関雲長が討ち取った!!!!』

 

 

 

 

「――なんやて!?」

 

 

その凛とした声、自身の仲間が討ち取られたという宣言が耳に入った瞬間、張遼の動きが一瞬止まる。星はその隙を見逃さず、張遼に向かって龍牙を撓らせ、勢いよく叩き付けた。

 

 

「――っ!?」

 

 

だが相手は張遼。

神速の張文遠。その名に恥じない反応速度で、辛うじてその一撃を受けきっていた。

しかし勢いを殺しきれずに、そのまま数歩後退せざるを得なくなる。

 

再び距離の空いた両者の顔に、先刻までの余裕の笑みは無かった。

星と張遼。お互いに味方がやられている。

もちろん、前者と後者ではやられたという言葉の度合いが違うが。

 

 

 

そして緊迫する空気の中

 

 

「撤退や……!!華雄隊も残存戦力まとめてウチの隊に着いてきぃ!!」

 

 

悔しげに奥歯を噛み締めながら、隊を預かる者として、最良の判断を下した。

それが例え、目の前の相手との真剣勝負を害するものであったとしても。

 

 

「……張遼よ、私がそう易々とお前を逃がすと思うのか?」

 

「思うとらへんよ。ウチが殿(しんがり)や、命に代えてでも他の連中は逃がす」

 

 

先刻とはまた違う覚悟の色に染まった張遼の眼が、星を射抜く。

再び緊迫する両者の間に漂う空気。

殺気と殺気がぶつかり合う中、フッと突然一方の殺気が掻き消える。

 

 

「……ふぅ。行くがいい張遼」

 

 

星だった。

 

 

「どうゆうつもりや?アンタはそういう情けとは無縁と思うたんやけどな」

 

「なに。こちらにも些か事情があると言うことだ。貴様をここで討ったとしても左程この先の状況は変わらんよ。それよりいいのか?早くせんと後ろの獣どもが追い付くぞ」

 

 

その言葉に張遼は星の背後。

孫と曹の旗に眼をやり、舌打ちをする。

既に両軍が動き始めていた。

 

 

「……礼は言わんで」

 

「ああ、ついでに言うなら恩に着る必要も無い。ただ他の者が貴様を討ち取ろうとするのが気に食わんだけだ。真剣勝負を邪魔された私のささやかな気紛れだ」

 

 

そう言って星は酷薄な笑みを浮かべた。

 

 

「気紛れ、か。……そういうことにしといたる」

 

「それで構わんさ。だが、せめて追う振りだけはさせてもらうぞ。伯珪殿の立ち位置を危うくするわけにもいかんのでな」

 

 

星は槍を構える。

張遼もそれに倣い、自身の堰月刀を構えた。

にらみ合い、そして再び交錯する両者。

 

 

 

ガギィィン!!!!

 

 

 

甲高い鉄と鉄がぶつかり合う音が響く。

打ち負け、地面に膝を着いたのは、星。

打ち合うまで余裕だった表情には多少、驚きの色が見て取れた。

 

 

「張遼隊ぃ!華雄隊援護しつつ虎牢関まで下がるでぇ!気張りやぁぁ!」

 

 

膝を着いた星に見向きもせず、ヒラリと自身の馬に跨った張遼は撤退を先行させていた自身の隊に向かって駆けて行った。その口元は、悪戯を成功させた子供のように笑んでいた。

遅れて、膝を着いたままの星に趙雲隊の兵が駆け寄る。

 

 

『趙雲様、ご無事ですか!?』

 

「……張遼め、最後に本気で勝ちに来たというわけか。振りというこちらの油断を突くとは――面白い」

 

『ちょ、趙雲様?』

 

「後退する張遼を追うぞ。ただし、弓を射かけたりはするな。追い掛けるだけでいい」

 

『は、はっ!』

 

 

顔を上げた星の表情を見た兵は、直立不動の姿勢で命礼に了解した後、慌てて駆けて行った。能面のような無表情のまま、星は自身の手の中にある――穂先が欠けた槍を見やる。

一つ嘆息した後、汜水関への一番乗りを果たす為に星は馬を駆る。

友、公孫賛の――名と実(なとじつ)の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、星――趙雲隊は汜水関への一番乗りを果たした。

二番手は前線でいち早く動いた孫策隊。三番手は曹操軍。

奇しくも、先陣を任された公孫賛軍と劉備軍は両者に出し抜かれる形となった。

最も、公孫賛軍は星の隊が関へ一番乗り。劉備軍は愛紗が敵将華雄を破るという功積を上げていたが。この汜水関の戦い、功積を上げられなかった軍は無論、袁紹軍。

馬超軍は抜け目なく曹操軍の後に続き四番手。

孫策隊は袁術軍の客将であるため、まるまる袁術軍の功積に。

 

 

故に

 

 

「虎牢関では我が軍が先陣を切りますわっ!!!」

 

 

見せ場も無く、特別な功積も無かった袁紹軍。

名族の誇りに掛けて、といった雄叫びが日の暮れた汜水関に響いていた。

 

連合とは名ばかり。

各勢力が虎視眈々と名を求め競う最中で、その本質を見誤った名族の一幕であった。

 

 

 

 

 

 

 

公孫賛軍本陣。

困った様な表情をした白蓮の前に、舞流が頭を垂れていた。

 

 

「な、なあ舞流?」

 

「申し訳ないでござるっ!!」

 

「いや、あのな?」

 

「某、いつでも腹を切る覚悟は出来ているでござるっ!!」

 

「……なあ、これどうしたらいいんだ?」

 

 

ほとほと困り果てた様子で白蓮は、傍らに立つ四人に問い掛ける。

その内、三人は白蓮と同じく困った様な表情をしていたが、一人だけ……燕璃だけは冷静な目で頭を垂れる舞流を見据えていた。

 

 

「今回の先陣は趙雲殿だったはずですね、舞流」

 

「……そうでござる」

 

「なぜ貴方は独断先行をしたんですか?」

 

「と、殿と大殿の為になるならばと思い、功積を上げようと……」

 

「ふぅ……確かにその心掛けは立派だとは思います。ですが結果的に自身の隊を疲弊させ、実質次の戦で動かせないのは本末転倒というものです」

 

「むぅ……燕璃の言う通りでござる」

 

 

快活さが売りな舞流のテンションが目に見えて落ちて行く。

そんな舞流を見て嘆息する燕璃。

 

 

「普通なら軍規の元、公正な罰が与えられるべきですが……公孫殿?」

 

「ん?」

 

「いや、『ん?』では無くてですね。舞流への罰は如何様にするのですか?」

 

「うん……まあ、切腹は無しの方向だけどさ。これは星に決めてもらうべきだろ。舞流は星の先陣の役目奪っちまったわけだし」

 

「そうですね、白蓮様の言う通りだと思います。でも、その、星さん。戦力の少ない我が軍では指揮のできる将は貴重ですので、その」

 

 

雛里のおどおどした、しかしはっきりとした言葉に星は無言で頷いた。

そして舞流の前に進み出る。

 

 

「舞流」

 

「趙雲殿。先陣を奪ってしまった罪、申し訳ござらん。この身、如何様にでも」

 

「舞流。先ほどのことだがな、私の元にお前の部下達が来た。なんと言っていたと思う」

 

「む……某への不満でござるか?」

 

 

舞流の答えに、星は首を横に振る。

 

 

「真逆だ。彼らはな、お前の助命嘆願を願い出た」

 

「ふえっ?」

 

 

あまりに予想もつかない答えだったのか、舞流の口から普段は出ないような声が漏れた。

間近でその様子を見て、星は苦笑しながらも続ける。

 

 

「どうやら私がお前のことを死罪にでもするかと思ったらしくてな。正直少し傷ついたぞ。私は先陣を奪われた程度のことで立腹する将と思われているのか、とな」

 

「む?普通は立腹するものではござらんか?」

 

「お前がそれを言うか?主の為ならばと脇目も振らずに功を得(え)に走ったお前が。お前が自身の功積の為に突出したなら立腹もしよう。だが、お前は主の為と言った。故に、立腹はせんよ。私とてこの戦い、友の名を上げるために戦っているのだからな」

 

 

ポン、と舞流の頭に手を置く星。

その表情はとても穏やかだった。

 

 

 

 

 

「まあ、どうしてもなにか償いをしたいと言うなら私のツケている酒代を払ってくれればいいな。というかそうしろ」

 

「台無しだっ!!」

「台無しだろっ!!」

 

 

マジな目になった星に向けて、一刀と白蓮のツッコミが炸裂した。

 

 

「謹んで承るでござるっ!」

 

「受けるんですかっ?!」

 

 

滅多にツッコまない雛里の驚愕の声が陣中に響く。

重い空気はどこかへ消え去り、皆どこか楽しそうな表情を浮かべていた。

珍しく、燕璃も。

 

そんな燕璃の頬が横合いから伸びてきた指でグニッと突かれ、伸ばされる。

吃驚して、一歩下がるが指も一緒に着いてきた。

と、いうか一刀が着いてきていた。白蓮や星、舞流や雛里よりも上質の笑顔を浮かべて。

 

 

「なっ、なにをするんですか北郷さん」

 

「いや、燕璃の笑った顔って結構貴重だなって思ってさ。ほれ」

 

「わっ、ちょっ、ちょっと」

 

「ははっ。やっぱ笑った方が可愛いよ、燕璃は」

 

 

そう言いながら一刀は本気で嫌がられる前に指を離す。

燕璃は一刀に不機嫌そうな、憮然とした顔を向けるとそのまま本陣の外に足を向け、歩いて行く。

 

 

「燕璃?どこいくんだ?」

 

「物資の管理をして来ますっ!!」

 

 

それに気付いた白蓮が何の気なしに尋ねるが、返ってきたのはこれも燕璃にしては珍しい、口調を荒げた答えだった。

 

 

「…私、なんか悪いことしちゃったか?」

 

「いや、悪いのは俺だな確実に」

 

 

半べそになり掛けている白蓮の頭をポンポンと叩きながら、一刀は苦笑して燕璃の背を見送っていた。

 

 

 

 

 

 

洛陽。

汜水、虎牢の両関からから左程離れていない街。

その街中の一室で二人の人物が顔を突き合わせていた。

 

汜水関から後退し、たった今一仕事を終えてきた張遼。そして

 

 

「終わったで詠。依頼通り十常持の連中は全員始末したった」 

 

「ん、ありがと霞。……悪いわね、あんまり気持ちのいい仕事じゃなくて」

 

 

董卓軍軍師、賈文和の二人だった。

 

 

「ま、殺しは元々気持ちのええもんやないけどな。十常持みたいな糞なら別や。んで?これからどうするんや」

 

「貴方は虎牢関で恋と一緒に時間を稼いで。その内にこっちは月を逃がす算段をつけるわ」

 

「ま、恋は挑発で出て行く質やないから心配は無いな。でも、いくらなんでも限界はあるで?」

 

「……分かってる。ある程度耐えたら撤退していいわ。とは言ってもどこに撤退するんだって感じでしょうけど」

 

 

賈駆の眼がスッと細められ、口元には失笑が形作られる。

元々知名度は低く、戦場に出ていない董卓や賈駆はともかく、張遼や呂布は嫌でも戦場に出ることとなる。顔が割れれば逆賊董卓に与した者として追われることとなるだろう。

故に、逃げ場は無い。

 

 

「ふん。撤退するくらいやったら、少しでも粘って時間稼いだるわ。十常持を殺ったんもその為やろ」

 

「流石ね霞。まあそういうこと。できるだけ月の顔を知っている奴は少ない方がいいわ。あんた達はともかく十常持の連中はすぐに喋るだろうし。私達が洛陽を出るのを見逃さないでしょ。今回の暗殺は世の中のごみを掃除したとさえ思えるわよ」

 

「……ホンマに詠は月が大事なんやな」

 

「当たり前よ。……月のことは僕が護るんだから」

 

 

グッと机の下で拳を握る。

それは意思の表れ、誓いの証。

 

 

窓からは、冷たい月の光が差し込んでいた。

 

 

 

 

 

【 あとがき 】

 

 

 

真・恋姫†無双 真公孫伝 ~雲と蓮と御遣いと~ 1-26

【 汜水関閉幕 幕間 】

更新させていただきました。

 

 

 

 

今回、忙しすぎてあとがきを書く暇すらありません。

失礼ながら、あとがきは今回無しとさせていただきます。

また、更新が不定期になる可能性がございます。

ご了承下さいませ。

 

 


 
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