No.328619

真・小姫†無双 #9

一郎太さん

というわけで#9
どぞ。

2011-11-03 00:16:01 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8514   閲覧ユーザー数:5938

 

 

 

【CAUTION!】

 

 

この作品を読むかどうかは自己責任です。

 

気分を害しようと、それは自己責任です。

 

お金がないのも自己責任です。

 

彼女がいないのも自己責任です。

 

それでもいいという方は、文頭に

 

『(´;ω;`)ブワッ』

 

と書き込んでからコメントしてください。

 

ではまた後書きにて。

 

 

 

 

 

 

 

#9

 

 

黄巾党の討伐が終了した。どうやら首領の張角は曹操が討ち取ったらしい。あのツインドリルも来ていたんだな。

 

「うぅ…主様ぁ………」

 

と、諸侯の代表者会合に出向いていた美羽と七乃が戻って来る。美羽は涙目で俺に抱き着いてきた。

 

「よしよし、どうしたんだ?」

「れ、麗羽に馬鹿にされたのじゃ……」

 

蜂蜜色の頭を撫でながら問う。誰だ?

 

「お嬢様の親戚の袁紹さまですよ。なんでも、私達の旗が変だとか。

「なんと失礼な奴だ。美羽は気にしなくていいんだぞ。言いたい奴らには言わせておけばいいんだ」

「それに、伯符にも笑われたのじゃ!」

 

誰?

 

「客将の孫策さんですよ。出会った瞬間にお腹を抱えて大笑いしてましたねぇ、そういえば」

「ふーん」

 

パイオニアとはいつの世でも孤独なものだ。あの価値が認められるまで、あと数年はかかるのかもな。

少女の頭を撫でながら、腹にしがみつく身体に反応しないように、俺は必死で下半身に力を込めるのだった。

 

 

 

 

 

 

軍を引き連れて南陽へと戻る。部隊長達(はーとまんず)に兵を任せて城門をくぐれば、通りの向こうから小さな2つの影が駆けてきた。

 

「兄様ぁぁぁぁああっ!!」

「ご主人様ぁぁぁっ!!」

 

あの呼称と声は、流琉と朱里だ。そんなに俺が心配だったか。愛い奴らよ。

 

「流琉ぅぅぅっ!朱里ぃぃぃっ!」

 

2人を抱き締める為、俺も駆け出す。俺達の距離があと少しとなったところで、2人は地面を蹴った。

 

「ただいばはぁっ!?」

「「馬鹿ぁぁあぁぁあああ!!」」

 

次の瞬間、朱里の靴が俺の顔にめり込み、流琉の拳が俺の鳩尾を打った。

 

「バカバカバカっ!なんなんですか、あの旗!?なんで『典』じゃなくて料理道具なんですか!?」

「流琉ちゃんはまだいいですっ―――」

「よくないよっ!?」

「―――私のに至っては暗号じゃないですか!あれはどういう意味なんですか!?」

 

二撃を喰らって崩れ落ちた俺をぽかぽかと叩きながら、2人が問い詰める。あぁ、旗を使う機会があったんだな。

 

「最初に旗を掲げた時、兵隊さんなんて皆茫然としてたんですよ!?3000人の男の人たちが口をぽかんと開ける姿なて初めて見ましたよぉっ!」

「そうですよ!それに賊なんて、流琉ちゃんの旗を見て出張料理屋と勘違いして、戦う間もなく捕まっちゃったんですよ!?」

「なんだ、被害がなくてよかったじゃないか」

「あ、確かに………って、そうじゃありません!街の人たちなんて、帰ってきた私達を見て皆目を逸らすんです!恥ずかしいですよぉ……」

 

しばらくの間、顔を真っ赤にした2人+雛里に俺は叩かれ続けた。

 

 

 

 

 

 

霊帝崩御。その報せが俺達のもとに届いたのは、黄巾党の討伐から帰ってひと月経ってからの事だった。

 

「れいていって誰?」

「はわわ、知らないんですか!?」

「美羽、知ってる?」

「知らんぞ」

「帝ですよ、お嬢様」

 

いちいち玉座の間に集まるのも面倒なので、最近は執務室に主だった将が集まる事となっていた。俺の言葉に美羽は首を振り、七乃が補足する。

 

「って事は、これからパレードがあるのか?そういや昭和天皇が崩御した時はコンビニも閉まってたな」

 

思えば、24時間のコンビニのシャッターが下りた姿を見たのは、あれっきりだ。

 

「ご主人様の言ってる事はよくわかりませんが、弔問の者を立てる必要があります。ただ、此度の報は帝の崩御ですので、太守である美羽ちゃん本人が行かないといけないかと」

「妾か?めんどくさいのぅ」

 

口では不満を漏らしながらも、それ以上わがままを言う事もない。美羽の成長が窺えた。お兄ちゃんは嬉しいぞ。

 

「では、私とお嬢様が向かえばよろしいですか?」

「そうですね。黄巾党もあとは残党程度ですし、将を連れていかなくても問題はないと思います」

 

七乃の言葉に、雛里が首肯する。

 

だが、弔問が実行される事はなかった。出立の準備をしている最中に、また新しい報告が入ったからだ。

 

 

 

 

 

 

「董卓とな?」

「はい、なんでも何進大将軍に招致されて洛陽に入ったのですが、今では幼い帝を傀儡に悪政を敷いているとの事です」

 

美羽の親戚の袁紹からの檄が届いた。内容はいま朱里が説明した通り。諸侯を集めて董卓を討とうというものだった。

 

「お主らはどう思うのじゃ?」

「情報が少なすぎますね。董卓さんがどのような人物かは知りません。奇妙な事に、本人に関する情報はほとんど入ってきませんから」

「はい、袁紹さんの檄文も、どこまでが本当なのかわかりませんし」

 

美羽に問われ、軍師たちが説明する。

 

「でもでも、困っている人がいるなら助けてあげたいのだ!」

「そうだよ!助けてあげよう、兄ちゃん」

 

鈴々と季衣は、悪政という言葉に反応していた。2人に乞われ、だが俺は首を振る。

 

「朱里、雛里。お前達はどう見る?」

「………可能性は半々かと」

「はい。実際にこの檄と通りの場合と、権力を手にした董卓さんに、袁紹さんが嫉妬して戦を起こそうとしているともとれます」

「ですが、すでに近隣の街でも董卓の悪政の噂は広まっています。ここで参加しなければ、我らに正義はないと取られかねません」

「だろうな」

 

2人が言った通りだ。どちらの可能性もある。時間があれば調べられるのだが――――――。

 

「それも無理そうだな」

「はい。斥候を放ち、戻ってくる頃には戦線は開かれているでしょう。どうする、美羽ちゃん?」

「麗羽の言う通りにするのは癪じゃな………じゃがのぅ」

 

説明を受け、美羽も理解したようだ。決まりだな。

 

「俺達は連合に参加しよう」

 

俺の言葉に、鈴々と季衣はもとより、軍師や流琉も頷いた。

 

「そして、幼い帝を助けて、仲良くなって一緒に遊ぼう」

「「うん!」」

 

誰の返事かを言う必要はないよな。武将×1と智将×2は頭を抱えて唸っているし。

 

 

 

 

 

 

反董卓連合への参加が決まってから十数日。俺たち袁術軍は2大関所のひとつ、汜水関の近くへと到着した。

 

「………どちら様の軍でしょうか?」

 

俺たちが掲げる旗を見て、金色の鎧に身を包んだ兵士が引き攣った顔で問いかける。

 

「あの……南陽より馳せ参じました袁術様の軍です………」

 

それに朱里が応じる。もっと堂々とすればいいのに。

 

「袁術様の軍でしたか。失礼いたしました!すでに他の方々もお揃いです。代表者の方は大天幕までお越しください」

 

それだけ伝えると、使いの兵は去っていった。

 

「さて、誰が行く?」

 

どうやら、これから軍議があるらしい。

 

「美羽ちゃんと七乃さんじゃないんですか?」

 

俺の言葉に雛里が首を傾げるが、俺は首を振る。

 

「いつも言ってるだろう?」

「え…?」

「そんな定番な人選はつまらん」

「は?」

「という訳で、毎度恒例のあみだクジを行う」

 

そういう事となった。

 

    *

 

「じゃあ頑張ってな」

「はわわ……無理にも程がありますよぅ」

「ご主人様…本当にこの2人に任せるんですか?」

 

朱里と雛里が頭を抱える。

 

「朱里たちは心配性なのだ」

「そうだよ。ボク逹だってちゃんとやれるよー」

 

見事当選を果たしたのは鈴々と季衣。取り得る選択肢の中で、もっとも智略から遠い2人が選ばれた。

 

 

 

 

 

 

───大天幕。

 

反董卓連合発起人の袁紹をはじめ、大陸中の諸侯が集まるなか、ひと際逆の意味で存在感を放つ2人の少女がいた。

 

「………貴女方はどちらの軍からいらっしゃったのですか?」

 

袁紹が頬をヒクつかせながら問うのは、紅の髪と桃色の髪を持つ少女。

 

「美羽はメンドくさがって本陣で休んでるのだ!」

「鈴々、打ち合わせと違うよ!えと…袁術、様の体調がよろしくないので、めい、めい───」

「名代として来たのだ!えと、鈴々が張飛で、こっちの春巻頭が許緒なのだ!」

「ちょっと!そんな紹介の仕方はないだろ!?誰が春巻頭だ、このチビっ娘!」

「なにおー!?季衣だって鈴々と大して変わらないのだ!」

「なんだとー!?」

「やるのか!?」

 

喧嘩が始まってしまった。鈴々を見知っている劉備と関羽、公孫賛はぽかんと口を開いている。

2人を止めたのは、パンパンと手を叩く音だった。

 

「はいはい、喧嘩はそこまでよ、2人共。前に会った時はそんな素振りも見せなかったくせに、いきなり仲違いなんてしないの」

 

聞き覚えのある声に、掴み合っていた2人はそちらを振り向いた。

 

「あっ!前に会ったお姉ちゃんなのだ!!」

「ホントだ!こないだは、ご飯いっぱいくれてありがとうございました!」

 

声をかけたのは、曹操だった。後ろには夏侯淵の姿もある。鈴々は見た顔だと口に手をあてて驚きを露わにし、季衣はぺこりと腰を曲げて頭を下げた。

 

「覚えていてくれて光栄よ。それより、今は軍議の最中なのだから、少し大人しくしてなさい」

「「はーい」」

 

彼女の言葉に、2人は素直に席につく。そしてようやく、軍議は再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

「ただいまなのだ…」

「疲れたぁ…もうあんな所行きたくないよ……」

 

軍議から帰ってきた2人は意気消沈だった。

 

「どうしたんだ?」

「難しい話がいっぱいあって、それで、鈴々たちが先鋒になったのだ………」

「はわわっ!?」

「あわわ…」

 

朱里と雛里が顔を青くする。

 

「鈴々がいけないんだよ。『あんな関なんて、どかーんと吹っ飛ばしてやるのだ!』なんて言うから」

「それを言ったら、季衣だって『あんなの楽勝だよ!』って乗ってきたのだ!」

 

いつものように喧嘩を始める2人を他所に、流琉が口を開く。

 

「それで、どうするんですか?攻城戦って言っても、たぶん敵は出て来ないと思うんですが………」

「ふむ……朱里と雛里はどう思う?」

「……………そうですね。董卓軍は攻め込まれる側ですし、挑発して引き摺り出すくらいしかないでしょう」

「汜水関に籠るのは、華雄将軍と張遼将軍だそうです。前者は猛将として知られ、後者は智武兼ね備えた将として有名です。上手く引き摺り出せればいいのですが………」

「ご主人様の所為ですよ?鈴々ちゃんと季衣ちゃんに駆け引きなんて出来る訳ないじゃないですか………」

 

そこで俺にふるか。まぁいい。

 

「そうだな。じゃぁ、今回は俺が前線に出よう。流石に鈴々たちに舌戦は無理だろうからな」

「え、お兄ちゃんが出るの?だったら鈴々も出るのだ!」

「ズルい!ボクが出る!」

「ちょっと、2人共やめなよ……」

 

鈴々と季衣が今度は別の理由で喧嘩を始めてしまい、流琉が宥め役になった。

 

「どっちがいいと思う?」

「ぶっちゃけ、どっちでもいいです………」

「あわわ、朱里ちゃぁん……」

 

朱里に至っては、暗い影を背負ってしまった。戦の前だというのに、なんという態度だ。

 

「じゃぁ、俺が一緒に出る将を決めてもいいか?」

「はい、いいですよぅ………」

「本当にいいんだな?」

「本当です」

「本当に本当だな?」

「本当に本当です!ご主人様が決めてください!」

 

自棄になった朱里が、ぽかぽかと叩く。俺は、共に前線に出る将を指名した。

 

 

 

 

 

 

――――――城壁。

 

汜水関の上から、見張りの兵と共に大地を見下ろす影が2つ。1人は巨大な戦斧を肩に担いだ銀髪の女性・華雄。もう1人は、偃月刀の石突を石畳に立てた袴姿の女性・張文遠。数倍の敵軍を見下ろしながら、2人は言葉を交わす。

 

「めぼしいところで言えば、中央が袁紹で左翼に曹操と西涼の馬騰、右翼に孫策と公孫賛。で、前曲に………誰だ?」

 

各位置に立った旗をひとつずつ眺めながら、華雄は首を傾げる。彼女の視線の先には、何やら壺を抱えた熊の絵が刺繍された旗があった。

 

「あぁ、アンタは黄巾党本隊の討伐に参加しとらんから知らんのか。あれ、袁術やで?」

「はぁ!?あの袁家の者か?何故にあのような牙門旗なんだ?」

「知らんわ。でも、一発で分かるからええんとちゃう?」

 

どうでもよさそうに張遼は首を振る。実際に黄巾党討伐の時には思わず噴出してしまったが、実際に敵として現れれば、ウザったいことこの上ない。

 

「………まぁよい。で、袁術軍のうち、前線に配置されているのが………『萌』とは、また何というか………それと…あれはどう読むのだ?」

「なんやろな?でも『萌』の方は、前は袁術の本陣に立ってたで。ま、あん時は賊程度やったから出さんかった武将がおんのかもな。ま、ウチらの方針は籠城や。華雄も下手な挑発に乗りなや」

「分かっているさ」

 

どうやろな。その言葉を張遼は飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「………ご主人様」

「どうしたんだ?」

 

隣に立つ妹が無表情で問いかけてくる。俺達はいま美羽の軍のさらに前方に出てきており、汜水関に立ち向かっていた。

 

「なんで、私が此処にいるんですか?」

「だって、俺が前線に出る将を決めていい、って言ったじゃん」

「言いましたけど……私、軍師なんですけど」

 

俺の隣には朱里の姿。

 

「でも智『将』だろ?嘘は言ってない」

「うぅ…ご主人様の馬鹿馬鹿馬鹿ぁ………」

「ほら、泣かないの」

 

ついには涙目になってしまった朱里を抱き上げ、頭を撫でてやる。

 

「安心しろ」

「ご主人様……?」

「朱里が死んだら、隠してある(えろ)本はちゃんと処分してやるからな」

「死にたくないですよぉ……ふえぇぇん!」

 

冗談はさておき、死なせるつもりなどない。

 

「だったらどうして連れてきたんですかぁ」

「そりゃ、あれだ。守るべき妹がいた方が、俺の強さが5倍くらいになる」

「雛里ちゃぁぁぁん!助けてぇぇぇぇっ!!」

 

朱里の泣き声が、谷間に木霊する。

 

   *

 

「ごめんね、朱里ちゃん……朱里ちゃんが死んだら、ちゃんと(えろ)本は私が引き取るから………」

「にゃ?何か言った?」

「いえ、ただの追悼です」

 

一刀たちの後方では、雛里が合掌していた。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

自由すぎる。

 

 

あと1個。

 

 

 


 
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