No.327327

真・小姫†無双 #1

一郎太さん

続けて投稿。

ホイホイついていくのでした。

2011-10-31 20:28:49 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:13073   閲覧ユーザー数:9344

 

 

【CAUTION!】

 

この作品を読むかどうかは自己責任です。

 

気分を害しようと、それは自己責任です。

 

お金がないのも自己責任です。

 

彼女がいないのも自己責任です。

 

それでもいいという方は、文頭に

 

『(´・ω・`)やぁ』

 

と書き込んでからコメントしてください。

 

ではまた後書きにて。

 

 

 

 

 

 

 

#1

 

 

「………うぁ?」

 

ふと、覚醒した。身体が重い。思うように動かない。どうなっている。

 

「たしか留置所から釈放されて………ゴミを漁ってて………思い出した」

 

ひとつひとつ記憶を辿り、俺は思い出した。鏡だ。俺が捨てた鏡が、急に光ったと思ったら視界がブラックアウトしたのだった。

 

「それにしても……なんだコレ?」

 

視界はいまだ黒。だが、顔の前に柔らかい感触がある。それといい匂いもする。干したばかりの布団のような、思わず脱力しそうな香りだ。

 

「柔らけー」

「にゃにゃっ!?く、くすぐったいのだ!」

 

途端、目の前の布団が喋った。なんだ?最近の布団はスピーカーでも搭載してんのか?だが、俺は恐れないぜ。もっとこの感触を楽しんでやる。

 

「あー、気持ちいいなー」

「だ、だからくすぐったいのだ!いい加減………離れるのだぁ」

「ぐはぁっ!?」

 

そして、後頭部に衝撃。殴られたのか?後頭部を抑えて転がりまわれば、アスファルトではなく砂と土の感触。というか痛い。喧嘩には慣れてるが、これほどのパンチを持ってる奴なんかいなかったぞ。

 

「ってー…なんだ、コラ。てめぇはボクサーかなんかか!?」

 

痛む頭を抑えながら、俺は顔を上げ、そして見た。

 

「なんなのだ、お前は!いきなり鈴々の上に落ちてきて!」

 

可愛らしい声はそのままに、ものっそい長い武器(?)を構えている。視線を上げれば、紅い襟巻の上に可愛らしい青紫の瞳。うむ、美少女だ。

 

「……………」

「な、なんなのだ!やるのかっ?」

 

俺はゆらりと立ち上がり――――――

 

「パライソは此処にぃぃぃいいいいいっ!!」

「にゃにゃぁぁぁぁぁあああ!?」

 

――――――目にも止まらぬ速さで、少女を抱えて走った。

 

 

 

 

 

 

「で、お兄ちゃんは誰なの?」

 

少女を抱えて走った俺は、近場の街へやって来ていた。というか邑?

 

「俺?俺の名前は北郷一刀。小さい女の子が大好きなイケメンだ」

「?………えと、姓が北で名が郷で、字が一刀?」

「字?なんだそれ?姓が北郷で名が一刀だ」

 

ボロクサい木製の家がいくつか立ち並び、扉すらない家屋もある。むしろ小屋?途中で邑人らしき奴らとすれ違ったが、どいつもこいつも変態を見るような眼で見てきやがる。なんだよ、俺は別に手は出さないぞ?見て撫でて抱き締めて匂いを嗅ぐだけだ。

 

「ふーん。鈴々はね、張飛っていうの」

「変な名前だな。お前の親は三国志ファンなのか?というか姓がないのか?」

「さんごくし、ふぁん?姓はあるのだ。姓が張で名が飛」

「ふーん」

 

適当に生えていた木の実をポリポリとかじりつつ、少女と会話をする。

 

「あと……」

「?」

 

と、少女は俯いた。

 

「鈴々に親はいないのだ………」

「あー……そらすまんかった」

 

とりあえず、素直に謝る。俺も親はいないし、保護者も保護者であって血の繋がりはないからな。気持ちはわからなくもない。

しばらく気まずい雰囲気が流れたので、俺は話題を変えることにした。

 

「それより、此処はどこなんだ?」

「えと……幽州涿郡?の邑なのだ」

「なんで疑問形なんだ。ゆうしゅうたくぐん?んな街東京にあったっけ」

「とうきょう?」

「なんだ、知らないのか?東京ってのは、世界有数のメガロポリスで、その中心には2000年の歴史を誇る血筋のお偉いさんが住んで、食っちゃ寝、食っちゃ寝する大都市だ」

「………お兄ちゃんの話は難しいのだ」

 

やはり小学生には難しかったか。間違っちゃいないんだけどな。

 

 

 

 

 

 

しばらく話をしたが、どうも鈴々―――そう呼べと言われたから呼ぶことにした―――は頭がいいという訳ではないらしい。適当にそこらの大人を捕まえて、話を聞く事にする。

 

「おい、金を出せ」

「ひぃいいっ!?」

 

間違えた。

 

「冗談だ。ここは何処だ?」

「どこって……幽州涿郡の邑のひとつだよ!それがどうかしたのか?」

「使えねぇな」

「ひぃっ!」

 

無価値なその男を蹴飛ばして、俺は鈴々に向き直った。

 

「お兄ちゃんは乱暴なのだ」

「でもなぁ、向こうが勝手に人の顔を見てビビッてんだぞ?向こうの方が失礼じゃないのか?」

「言われてみれば、確かにそうかも」

 

素直な娘は可愛い。

 

「さて、それじゃ俺はそろそろ行くよ」

「え、もう行っちゃうの?」

「でも家に帰らないとなぁ。それに、これ以上鈴々と一緒にいると俺が変質者として捕まっちまう」

「ここが何処だか分からないのに帰れるの?」

 

馬鹿っ娘のくせに、痛いところを突いてきた。

 

「………………そういや、そうだったな。でも寝床を探さないといけないし」

「だったら、鈴々の家に来るといいのだ!鈴々しか住んでないから、気にしなくてもいいよ」

 

口調とは裏腹に、俺のTシャツの裾を握って上目遣いで見つめてくる。やめてくれよ、そんな眼で見られたら――――――

 

「お邪魔しまぁぁぁす!」

「またぁあぁあぁぁ!?」

 

――――――誘拐したくなっちまうじゃねーか。

 

 

 

 

 

 

それから鈴々の家で厄介になるうちに、それなりの事がわかった。まず、この邑はどうしようもなく貧しい。マックもコンビニもない。そりゃそうだ。こんな貧乏人のいる場所に店を出しても、採算なんてとれるわけがない。

 

「お兄ちゃん、遊ぼう!」

 

あと、鈴々は邑から嫌われている、あるいは少なくとも疎まれているらしい。毎日俺とだけ遊び、他の子どもに声をかける事をしない。適当にブラブラ歩けば、住人は俺達を避けるようにすれ違う。

 

「野菜は頂いていくのだ!」

「はっはっはぁ!今日はふろふき大根だぁ!」

「か、返しやがれぇぇえええっ!!」

 

鈴々と共に、近くの農家から野菜を頂いたり。

なんだよ。俺達は畑なんか持ってないんだから、少しくらい恵んでくれたっていいじゃねーか。まったく、これだから貧乏人は心が狭いってゆーか。

 

「しまった、味噌がない」

「にゃ?」

「というか、調味料もない」

 

大根をボリボリ齧る鈴々を横目に、俺もそれに倣う。うぅ……生の大根は辛いんだよぅ。

 

「そろそろ眠いのだ……」

「じゃぁ、寝るか」

「おやすみなのら………」

「おやすみ、鈴々」

 

夜には、同じ筵にくるまって眠る。ふかふかの布団が恋しいが、こうやって小さい女の子を抱いて寝る心地よさに勝てるわけもない。

 

「………幸せだ」

 

 

 

 

 

 

鈴々と幸せ家族計画を開始してから数週間が経過した。とりあえず飯の心配はないから生きていけるとして、どうにもつまらない。いや、鈴々がいるからロリコンの俺としては幸せなのだが、どうにもつまらない。

 

「という訳だ。頼まれてくれねぇか?」

「………仕方がないのだ。鈴々がやっつけてくるのだ」

 

こういう訳だ。あれほど疎んでいたくせに、賊が向かっているからと鈴々に頼みに来たらしい。大の大人がこれだけいるのに、情けない。奴らは隣に座る俺を無視して、鈴々の言質をとると、そのまま何も言わずに去っていった。

 

「………それじゃ、鈴々は行ってくるのだ」

 

そして、鈴々は元気なく立ち上がる。なんでこんな処女―――もとい、少女に頼むのかは知らないが、俺はその手を掴んだ。

 

「まぁ、待ちな、ジャンヌ=ダルクさん。いかに処女とはいえ、1人で革命を起こす事もないだろう」

「にゃ?」

「という訳で、俺も行く」

 

俺は立ち上がって、鈴々の頭を撫でた。

 

「でも、お兄ちゃんは強いの?」

「当り前だ。こう見えても英検4級だからな」

「えーけん?」

 

ちなみに漢検なら1級を持っている。横文字は苦手だ。

 

「ま、ちゃっちゃと終わらせて飯にしようぜ」

「うん!」

 

とりあえず、腹が減った。

 

 

 

 

 

 

「見ろよ、鈴々。人がゴミのようだ」

「いや、こっちに来てるのだ……」

 

遠くに見える賊の数は、だいたい300~400くらいか。対するこちらは2人しかいない。しかも1人、というか俺は武器もない。適当に鍋と包丁でも持って来ればよかったかな。

 

「さて、鈴々、俺に作戦がある」

「にゃ?」

 

誰が聞くという訳でもないのに、俺は鈴々の耳元に口を寄せる。髪から太陽の匂いが届き、心が暖かくなった。

 

「あれだけの数の賊って事は、リーダーがいるって事だよな」

「りーだーって何?」

「あー…首領の事だ。そいつが指示を出しているわけ。だから、その首領さえ倒しちまえば向こうは勝手に散っていくという作戦だ」

「おー、お兄ちゃんは頭がいいのだ!」

「鈴々の兄貴だからな」

 

義妹万歳。

 

「じゃぁ、さくっと終わらせるか」

「うん!」

 

俺と鈴々は、賊に向かって歩き出した。

 

   *

 

「おーおー、雑魚がこっちに向かってくるな。鈴々。さっき言ったようにカッコよくキめてみるんだ」

「わかったのだ!」

 

俺の言葉に、鈴々が前に出てその得物を一閃する。

 

「我は燕人張飛!丈八蛇矛の錆にしてやるのだ!」

 

この口上は俺が考えた。あと武器の名前も。なんかかっこよくない?いつか卍解とかしてくんねーかな。

 

「吾輩は猫である!名前はまだないっ!!」

 

そして俺も叫ぶ。声が届いたのか、俺の偉大なる覇気に気圧されてずっこける先頭の賊。

 

「我が肉球の錆にしてくれよう!」

 

俺と鈴々は、賊に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

「行け、鈴々!向こうの頭1つ飛び抜けてデカい奴がたぶん敵の首領だ!」

「わかった!」

 

鈴々が大振りに矛を振り回して、一度に10人もの敵を討ち払う。俺も負けていられない。

 

「頑張れ頑張れ、鈴々!ファイトファイト、鈴々!」

「気が散るのだ!」

 

怒られた。

 

「こっちの奴は丸腰だ!先にこいつを殺っちまえ!」

「甘い!猫パンチ!」

 

俺は軽く握った拳で賊の顔をブン殴る。弱いな、こいつら。そいつが怯んだ隙に、俺は敵の剣を奪い取った。

 

「あ、テメェ!!」

「猫ストラッシュ!」

 

逆手に持った剣を下から振り上げる。初めて人を斬ったが、なかなかの感触だった。

 

「もう少し練習しておくか。東京じゃこんなこと滅多にできねーし。三國無双も戦国無双も極めた俺なら大丈夫だろう」

 

ただ、シリーズ最初の方の作品の操作性には苦言を呈したいが。

 

賊共の悲鳴をBGMに、俺は愉快なハンティングを続けた。

 

   *

 

「敵将、討ち取ったのだぁ!」

「あれ、終わった?」

「イデデデデ―――」

 

鈴々の勝ち鬨が聞こえてきたのは、俺の周囲の生きている賊が、残り3人となった頃だった。なんだよ、折角人が人間知恵の輪で遊んでるっていうのに。足下を見下ろせば、手足が関節の構造を無視して絡まり、腰のベルト(?)で固定された3人の賊がいた。

 

「どうやら俺達の勝ちのようだな」

「だっ、だったらもう解放してくれよ!」

「仕方がないなぁ」

「本当か―――がっ」

「くくっ………生の苦しみから解放してやったぞ、喜ぶがいい」

 

適当に剣で首を突き刺し、順繰りに3度で悲鳴も聞こえなくなった。周囲を見渡せば、死屍累々。俺が殺したのが大体70人くらいだから―――おぉ!?鈴々の奴、1人で200人以上倒してるじゃねぇか!………………もし鈴々が『あの』張飛なら、当り前かも知れないが。

 

「お兄ちゃん!倒したよ!」

「お疲れ、鈴々」

 

背後から妹分の声がかかるなか、俺は賊の死体をまさぐっていた。

 

「何してるの?」

「んー、こいつら金目のもの持ってないかなーって」

「泥棒はいけないのだ!」

「あー、違う違う。こいつらだって、誰かから盗んだんだろ?だから、俺が本来の持ち主に返してやるんだよ」

「おぉっ!お兄ちゃんは偉いのだ!」

「まぁな」

 

鈴々はちょっと頭が可哀相だった。

 

 

 

 

 

 

結局、金目の物は賊の頭領しか持っておらず、銅銭と装飾品くらいしか収穫はなかった。まぁいい。知恵の輪を作ってる最中にアジトの場所は聞いたんだ。後で取りに行くとするか。

 

「それにしても、鈴々は強いな」

「にゃにゃぁ、気持ちいーのだ」

 

頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目を瞑る。なんて可愛いのだろう。

 

「それで、お兄ちゃんはいつお宝を返しに行くの?」

「へ?」

 

忘れてた。そういう設定だった。

 

「そうだなぁ…今日の夜にでも行くかな」

 

賊のアジトもさっさと確保しておきたいし。

 

「お兄ちゃん行っちゃうの?」

「え?」

 

思っていたよりも悲愴な表情で、鈴々が俺の手を握ってきた。

 

「鈴々は、そしたら今晩ひとりで寝なきゃいけないの?」

「それは………」

「鈴々は、お兄ちゃんと一緒じゃないと寝られないのだ………」

「鈴々…」

 

俺は心の内でガッツポーズをした。

 

「だったら……だったら鈴々も一緒に行くか?」

「一緒がいいのだ………」

「そっか…じゃあ、一緒に行こうな」

「あ……うんっ!」

 

ぱぁっと笑顔の花を咲かせる少女の頬を、そっと手のひらで撫でた。

 

………………柔らけー。

 

 

 

 

 

 

一度邑に帰った俺たちを迎えたのは、物言わぬ骸と内壊された小屋の数々だった。

 

「お兄ちゃん、これって………」

「賊の別動隊がいたみたいだな」

 

俺たち以外に生きている人間の気配はなく、すでに賊も去っていた事がわかった。

 

まぁ、気づいていたんだけどね。

 

普段は気にもかけない癖に、自分たちが危険だからと人より強いだけの幼い少女に人殺しをさせる。そんなクズ共なら死んだ方がマシだ。

 

「まぁ、俺は立派な紳士(ろりこん)だから一緒に戦ったんだけどな」

「何か言った、お兄ちゃん?」

「いや、なんでもないよ」

 

隣で見上げる鈴々の目に、うっすらと涙が浮かんでいる。あんな扱いをされていたのに、優しい娘だ。食指が動く。

 

「此処にはもう住めないな」

「そうなの?」

「あぁ、奴ら金品や酒だけじゃなく、作物も奪って行きやがった。納屋も壊されてるし、苗すらも食うつもりなんだろうな」

「せっかく皆が頑張って作ってたのに……」

「鈴々は優しいな」

 

頭を撫でるが、そこに笑顔はなかった。

 

   *

 

最低限の荷物をまとめ、俺たちは家を捨てた。俺たちの寝ぐらも、他と同じように荒らされていた為、ほとんど持っていけるものもなかったが。

 

「じゃあ、行くか」

「うん」

 

いまだ元気のない鈴々。じっと俺の方を見つめている。

 

「どうした?」

「えっと…手、繋いでもいい……?」

 

勿論ですとも!

 

内心を隠しながら、俺は少女の手を優しく握る。

今度こそ、俺たちは邑をあとにした。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

というわけで、#1。

 

また次回。

 

 

 


 
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