No.313496

真・恋姫†無双~赤龍伝~第36~38話「徐州脱出」 ver.B

さん

今回の作品は以前投稿した36~38話の内容を少し変えたものです。

2011-10-06 05:42:57 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:3176   閲覧ユーザー数:2824

真・恋姫†無双~赤龍伝~第36~38話「徐州脱出」 ver.B

 

 

 

赤斗が曹操に保護されて暫くしたある日。

 

赤斗「ふわ~」

 

大きなあくびをしながら、赤斗は典韋と廊下を歩いていた。

 

典韋「赤斗さん、大丈夫ですか?」

 

赤斗「さすがに、眠いな……」

 

その夜、部屋で眠っていた赤斗は、典韋に起こされた。

 

大至急、玉座の間に集合してほしいとのことだっだ。

 

赤斗「こんな時間にどうしたんだろ?」

 

典韋「さあ、私も理由は分かりません」

 

赤斗「いったい何の用だろ」

 

そう言って赤斗は、典韋と一緒に玉座の間に入った。

 

赤斗「あれ、呼ばれたのは僕だけじゃないんだ」

 

玉座の間には、曹操軍の主要な面々が揃っていた。もちろん司馬懿もその中にはいた

 

張遼「やっほー、赤斗ーー♪」

 

赤斗が玉座に入ってきたのを見て、張遼が手を振ってきた。

 

赤斗「やあ張遼。元気だね」

 

張遼「そういう赤斗は、元気がないんとちゃう?」

 

赤斗「まあ、夜中だから、元気いっぱいとはいかないかな」

 

荀彧「そこ! うるさいわよ!」

 

赤斗・張遼「へーい」

 

そこに曹操たち三人が入ってきた。

 

曹操「全員揃ったわね。急に集まってもらったのは、他でもないわ。秋蘭」

 

夏候淵「先ほど早馬で、徐州から国境を越える許可を受けにきた輩がいる」

 

張遼「……何やて?」

 

曹操「入りなさい」

 

関羽「……は」

 

楽進「……な!」

 

赤斗「え……!?」

 

張遼「何やて……!」

 

荀彧「関羽……!?」

 

 

曹操「見覚えのある者もいるようだけど、一応、名を名乗ってもらいましょうか」

 

関羽「わが名は関雲長。徐州を治める劉玄徳が一の家臣にして、その大業を支える者」

 

張遼「なんで関羽がこないな所に……」

 

関羽「ん? ……お主は。……どうして曹操殿のところに? 寝返ったのか?」

 

赤斗「違う! 訳あって曹操のところにいるだけだ。……袁紹が徐州に攻め入ったとは聞いていたけど、君がここに居るってことは、曹操に助けを求めにきたのか?」

 

曹操「残念だけれど、少し違うわね。説明してくれるかしら?」

 

関羽「……私は、曹操殿の領地の通行許可を求めに参りました」

 

赤斗「袁紹から逃げるため、曹操の領地を抜けて益州に行くつもりか!」

 

関羽「……その通りだ」

 

楽進「なんと無謀な……」

 

李典「けど、まともに袁紹の大軍と正面からぶつかるよりは、マシやけど思うで」

 

赤斗「火れ…いや、孫堅には助けを求めないのか?」

 

関羽「…………孫堅殿が孫策殿に家督を譲ってから、江東の豪族が反乱を起こした。そのせいで助けには来れないそうだ………」

 

赤斗「豪族が……反乱?」

 

関羽「…………知らなかったのか?」

 

赤斗「……知らなかった。……それで曹操に」

 

楽進「それはそうだが、我々とて別に劉備殿の国と同盟を組んでいるわけではないだろう?」

 

曹操「そういうこと。それに正直、関羽もこの案は納得していないようでね……そんな相手に返事する気になれないのよ」

 

関羽「………」

 

張遼「ほんならなんで、こんな決死の使いを買って出たんや?」

 

関羽「わが主、桃香様の願いを叶えられるのが、私だけだったからだ。それに我々が生き残る可能性としては、これが最も高い選択でもあった」

 

張遼「……主のためやて。どっかの誰かさんみたいなこと言うやん」

 

一同が揃って、夏候惇を見る。

 

夏候惇「わ……私はこんなに愚直ではないぞ!」

 

一同「………」

 

夏候惇「誰か何とか言えよ!」

 

曹操「だから、これからその返答をしに劉備の元へ向かおうと思うのだけれど……。誰か、付いてきてくれる子はいるかしら?」

 

 

結局、城の留守を任された司馬懿以外、玉座の間に居た全員が付いてきていた。

 

荀彧「何で他所者のアンタまで付いてくるのよ」

 

赤斗「別に、ただ……最後まで見届けようと思っただけさ」

 

関羽「……感謝します、曹操殿」

 

曹操「さあ。その言葉は、無事に事が済んでから聞くことにするわ」

 

赤斗「無事に?」

 

関羽「それはどういう……?」

 

夏候淵「華琳様。先鋒から連絡が来ました。……前方に劉備の牙門旗。劉備の本陣のようです」

 

曹操「なら関羽、あなたの主の所まで案内して頂戴。何人か一緒に付いてきてくれる?」

 

荀彧「華琳様! 危険です。この状況で劉備の本陣に向かうなど、危険すぎます。罠かもしれません!」

 

夏候惇「せめて、劉備をこちらに呼び出すなどさせては……?」

 

曹操「でしょうね。私も別に劉備のことを信用しているわけではないわ。けれど、そんな臆病な振る舞いを、覇者たらんとしているこの私がしていいと思うかしら?」

 

夏候惇「ぐっ!」

 

曹操「だから関羽。もしこれが罠だったなら……貴方達にはこの場で残らず死んで貰いましょう」

 

赤斗「曹操!」

 

関羽「ご随意に」

 

赤斗「ちょっ、関羽さんまで」

 

曹操「それで……誰が私を守ってくれるのかしら?」

 

夏候惇「はっ!」

 

許緒「僕も行きます!」

 

典韋「私も!」

 

曹操「なら、春蘭、季衣、流琉、霞……それから、凛と赤斗も来なさい。残りの皆はこの場で待機。異変があったなら、秋蘭と桂花の指示に従いなさい」

 

郭嘉「はっ!」

 

荀彧「華琳様、お気をつけくださいませ。春蘭、絶対に華琳様のことをお守りするのよ!」

 

夏候惇「言われるまでもないわ」

 

曹操「流琉。赤斗にあれを」

 

典韋「はい」

 

赤斗「あれ?」

 

典韋「これです。赤斗さん、どうぞ」

 

典韋が花天と月影を赤斗に手渡す。

 

赤斗「曹操?」

 

曹操「何が起きるか分からないから、それは持っておきなさい。では関羽。案内してちょうだい」

 

こうして、赤斗たちは関羽の案内のもと、劉備の本陣への向かうのであった。

 

―――劉備の本陣―――

 

劉備「曹操さん」

 

関羽の案内のもと劉備の本陣へと訪れた赤斗や曹操たちを、劉備が諸葛亮や張飛と共に出迎えた。

 

曹操「久しいわね、劉備。連合軍の時以来かしら?」

 

劉備「はい。あの時はお世話になりました」

 

張飛「あーー! 赤いお兄ちゃんなのだ!」

 

張飛が赤斗に気が付いて大声をあげる。

 

劉備「え? 風見さん?」

 

赤斗「お久しぶりです、劉備さん。今は訳あって、曹操のところで世話になっています」

 

曹操「それにしても、今度は私の領地を抜けたいなどと……また、随分と無茶を言ってきたものね」

 

劉備「すみません。でも、皆が無事にこの場を生き延びるためには、これしか思いつかなかったので……」

 

曹操「まあ、それを堂々と行うあなたの胆力は大したものだわ。……いいでしょう。私の領を通る事を許可しましょう」

 

劉備「本当ですか!」

 

夏候惇「華琳様!?」

 

郭嘉「華琳様。劉備にはまだ何も話を聞いておりませんが……」

 

曹操「聞かずとも良い。……こうして劉備を前にすれば、何を考えているのかが分かるのだから」

 

劉備「曹操さん……」

 

曹操「ただし街道はこちらで指定させてもらう。……米の一粒でも強奪したなら、生きて私の領地を出られないと知りなさい」

 

劉備「はい! ありがとうございます!」

 

曹操「それから通行料は……そうね。関羽でいいわ」

 

劉備「………え?」

 

話がとんとん拍子で進んでいたので、曹操の言葉に劉備が固まってしまった。

 

 

曹操「何を不思議そうな顔をしているの? 行商でも関所では通行料くらい払うわよ? 当たり前でしょう」

 

劉備「え、でも、それって……!」

 

曹操「あなたの全軍が無事に生き延びられるのよ? もちろん、追撃に来るだろう袁紹はこちらで何とかしてあげましょう。その代価をたった一人の将の身柄であがなえるのだから……安いものだと思わない?」

 

関羽「……桃香様」

 

劉備「曹操さん、ありがとうございます」

 

赤斗「!?」

 

諸葛亮「桃香様っ!?」

 

張飛「お姉ちゃん!」

 

劉備の言葉に一同が驚く。

 

劉備「………でも、ごめんなさい」

 

曹操「あら」

 

劉備「愛紗ちゃんは大事な私の妹です。鈴々ちゃんも朱里ちゃんも……他の皆も、誰一人欠けさせないための、今回の作戦なんです。だから、愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないんです。こんな所まで来て貰ったのに……本当にごめんなさい」

 

そう言って劉備はぺこりと頭を下げた。

 

赤斗「……劉備さん」

 

曹操「そう。……さすが徳をもって政をなすという劉備だわ。……残念ね」

 

赤斗「…………」

 

曹操「不服そうね、赤斗」

 

赤斗「そりゃまあね。………正直言って………劉備さんの力になってあげたい。でも、今の僕の立場では………」

 

曹操「ふーーん」

 

 

関羽「桃香様……私なら」

 

劉備「言ったでしょ? 愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ意味がないって。朱里ちゃん、他に経路がないか調べてみて」

 

諸葛亮「……はい、もう一度候補を洗い直してみます!」

 

曹操「劉備」

 

劉備「……はい?」

 

曹操「甘えるのもいい加減になさい!!」

 

劉備「……っ!」

 

曹操「たった一人の将のために、全軍を犠牲にするですって? 寝ぼけた物言いも大概にすることね!」

 

劉備「で……でも、愛紗ちゃんはそれだけ大切な人なんです!」

 

曹操「なら、その為になら他の将……張飛や諸葛亮、そして生き残った兵が死んでも良いというの!?」

 

劉備「だから今、朱里ちゃんに何とかなりそうな経路の策定を……!」

 

曹操「それがないから、私の領を抜けるという暴挙を思いついたのではしょう? ………違うかしら?」

 

劉備「……そ、それは……」

 

曹操「諸葛亮」

 

諸葛亮「はひっ!」

 

曹操「そんな都合の良い道はあるの?」

 

諸葛亮「そ……それは……」

 

曹操「凛。この規模の軍が、袁術の追跡を振り切りつつ、安全に益州辺りに抜けられる経路に心当たりはある?」

 

郭嘉「はい。幾つか候補はありますが……追跡を完全に振り切れる経路はありませんし、危険な箇所も幾つもあります。わが軍の精兵を基準としても、戦闘もしくは強行軍で半数は脱落するのではないかと……」

 

劉備「……っ。朱里ちゃん……」

 

諸葛亮「…………」

 

劉備「そんな………」

 

曹操「現実を受け止めなさい、劉備。あなたが本当に兵のためを思うなら、関羽を通行料に、私の領を安全に抜けるのが一番なのよ」

 

関羽「桃香様……」

 

赤斗「劉備さん……」

 

劉備「曹操さん……だったら……」

 

曹操「それから、あなたが関羽の代わりになる、などという寝ぼけた提案をする気なら、この場であなたを叩き斬るわよ。国が王を失ってどうするつもりなの?」

 

劉備「…………!」

 

曹操「……どうしても関羽を譲る気はないの?」

 

劉備「…………」

 

曹操「まるで駄々っ子ね。今度は沈黙?」

 

劉備「…………」

 

曹操「いいわ。あなたと話していても埒があかない。………ならば劉備、賭けをしましょうか」

 

劉備「……え?」

 

 

曹操「聞こえなかった? 賭けをするのよ」

 

劉備「……賭け、ですか」

 

曹操「そうよ。互いに代表者を一人ずつ出し合って一騎打ちをするのよ。もし、あなたたちの代表者が勝てば、このまま私の領を通過するといいわ。けど、負けたなら関羽を通行料として頂くわ。力づくでもね」

 

劉備「そんな……」

 

関羽「……良いでしょう」

 

劉備「愛紗ちゃん!?」

 

関羽「大丈夫です、桃香様。ようするに私が勝てば良いのですから」

 

劉備「愛紗ちゃん……」

 

曹操「どうやら、関羽のほうが分かっているようね。では、そちらの代表者は関羽で決まりという事で良いかしら?」

 

関羽「ええ。構いません」

 

曹操「なら、こちらの代表者は……」

 

夏候惇「華琳様! 私が代表者に!!」

 

曹操「赤斗!」

 

赤斗「………はい?」

 

関羽「なに?」

 

夏候惇「華琳さまっ!!」

 

曹操「赤斗。あなたが私たちの代表者よ。よろしくね」

 

赤斗「曹操、ちょっと待って! 何がよろしくね、だ! 何で僕なんだ? こういった場合は夏候惇だろ!」

 

曹操「傷もすでに癒えているのでしょう。それにもし、あなたが勝てば孫堅たちのもとに帰っていいわよ」

 

赤斗「えっ?」

 

曹操「あなたが勝ってくれれば、私は関羽を手に入れることができる。負けてもあなたは残ってくれる。私に損はないのだから」

 

赤斗「…………」

 

劉備「風見さん……」

 

劉備に月や詠たちの借りを返すチャンスであるが、早く火蓮たちのもとに帰りたい気持ちもあり、赤斗は迷っていた。

 

曹操「あら、どうしたの? 勝てば孫堅のもとに帰れるのよ。あなたにも悪くない話だと思ったのだけれど……止めておく?」

 

赤斗「いや。やるよ……」

 

曹操「そう。決まりね。……なら早速始めましょう」

 

赤斗と関羽は無言で頷く頷いて、お互いに向かい合う。

 

関羽「悪いが、手加減はしないぞ」

 

赤斗「当然でしょう。僕も本気でいきます!」

 

そう言って、二人は武器を構える。

 

他の者たちは黙って成り行きを見守る。

 

曹操「始めっ!!」

 

そして、一騎打ちを開始する声が辺りに響いた。

 

 

曹操の一騎打ちを開始する声と共に、赤斗の花天と月影、関羽の青龍偃月刀がぶつかり合う。

 

赤斗「おっ!」

 

関羽に力負けして、赤斗は後方に飛ばされる。

 

関羽「はああぁぁーーーっ!!」

 

すかさず関羽は追撃をかける。

 

赤斗「破っ!!」

 

赤斗は追撃してきた関羽に対して、覇気を放つ。

 

関羽「この程度の覇気っ!!」

 

赤斗の覇気を意に介さずに、関羽は突っ込んでくる。

 

赤斗(“龍咆”は全く効かないか)

 

関羽「はあっ!」

 

赤斗「おっと!」

 

赤斗は、関羽の一撃を空中に飛んで躱して、関羽に向けて空中から斬撃を放つ。

 

関羽「くっ」

 

関羽も斬撃を青龍偃月刀で防ぐ。

 

着地した赤斗と関羽は再び向き合う。そして、打ち合いを始めた。

 

 

各自、それぞれの思惑を胸に戦いを見つめていた。

 

典韋「わ~」

 

赤斗と関羽の戦いを見て、典韋が声を上げた。

 

許緒「流琉、どうしたの?」

 

典韋「赤斗さんがあんなに強いなんて以外だなと思って」

 

許緒「確かに、この前一緒にご飯を食べた時も、強そうには見えなかったもんね」

 

典韋「とても、戦う人には見えないのに」

 

曹操「呂布と互角に渡りあえるだけの実力があるのだから、あれぐらい出来て当然でしょう」

 

典韋「呂布って、飛将軍呂布ですか? 赤斗さんって実はスゴかったんですね」

 

夏候惇「ふんっ」

 

夏候惇はつまらなさそうだった。

 

 

劉備「愛紗ちゃん、風見さん……」

 

諸葛亮「桃香様……」

 

張飛「大丈夫なのだ。愛紗なら、絶対赤いお兄ちゃんに勝つのだ!」

 

劉備「だけど……、それじゃ………」

 

諸葛亮「愛紗さんには、必ず勝って貰わなければいけません」

 

劉備「そうだけど………」

 

諸葛亮「…………冷たいようですが、愛紗さんが勝ってくれれば、私たちは何も失わずに曹操さんの領を通ることができます。風見さんを犠牲にしてでも、私たちは前に進まなければいけないんです」

 

劉備「そんな……」

 

 

二十合以上打ち合っただろうか、赤斗は関羽と互角に渡りあっていた。

 

関羽「さすがにやるな!」

 

赤斗「それは、こっちのセリフだね。さすがは関雲長!」

 

関羽「だが、私は負けるわけにはいかぬのだ! 喰らえ鬼神の一撃を!!」

 

赤斗「があっ!」

 

今までにない凄まじい一撃を赤斗を襲う。

 

奥義“龍鱗”で防御力を上げて防ぐも、防ぎきれなかった。

 

関羽「鬼神の一撃、思い知ったか」

 

赤斗「ハァハァ……本当に強いな、関羽。ハァハァ」

 

関羽「降参するか?」

 

赤斗「ふふっ……、負けるわけにはいかないのは僕も一緒。だから……、降参はしない」

 

関羽「……そうか」

 

赤斗の言葉を聞いて、関羽は構えなおした。

 

赤斗(このままじゃ勝てないな。……こうなったら、あれをやって見るか!)

 

関羽「……いくぞ!!」

 

赤斗「“月空”“流水”同時発動だ!!」

 

赤斗は、気を自分の周りに張り巡らせレーダーのような役割をする奥義“月空”と、相手の先の流れを読み攻撃の主導権を握る奥義“流水”を同時に発動させた。

 

虎牢関で呂布と戦って以来、赤斗は更に強くならなければいけないと思い、奥義の同時発動ができないか考えていた。

 

今まで試そうともしなかったが、大切な人たちを守るために、もっと力が欲しかった。

 

 

関羽(何だ、明らかに先ほどまでとは違う!? こやつ一体、何をした!?)

 

赤斗の変化に関羽も気がついて困惑を見せる。

 

曹操「あら」

 

夏候惇「何だと」

 

張飛「愛紗っ!!」

 

周りで戦いを見ていた者たちも、変化に気がつく。

 

“流水”で関羽の流れを先読みし、“月空”で気配や動きを察知している赤斗は、明らかに関羽より優勢であった。

 

典韋「赤斗さん……すごい」

 

許緒「うわー」

 

諸葛亮「そん…な……、愛紗さん……」

 

劉備「………っ」

 

 

赤斗(頭が、身体が熱い……。やはり奥義の同時発動は、無理があったかな……)

 

優勢に立ったはずの赤斗だったが、身体は機械がオーバーヒートしたかのように熱くなっていた。

 

赤斗(でも、このままなら勝てる!)

 

奥義の同時発動により、異常な力を手にした赤斗は勝ちを確信した。…………その時、赤斗の視界にある人物たちが入った。

 

赤斗「……月、詠」

 

一瞬だったが、洛陽で出会った二人がこちらを見ていることに気がついた。

 

そして、月たちに気を取られたほんの僅かな時間が、決定的な隙を作ってしまった。

 

関羽「はああぁぁぁーーーーっ!!」

 

隙を見逃さなかった関羽の一撃を、赤斗はまともに受けてしまった。

 

赤斗「っ!?」

 

関羽の一撃を受けて吹き飛ばされた赤斗は、背中から地面に落ちた。

 

意識を失いそうになったが、辛うじて意識を保つことが出来ていた。

 

劉備「風見さん!!」

 

月「赤斗さん!」

 

劉備と董卓の声が聞こえる。

 

赤斗「はぁはぁ……」

 

ヨロヨロと赤斗は立ち上がり関羽を見る。

 

赤斗(……負けられない。でも、もう奥義の同時発動はできないな)

 

関羽「まだ…戦う気なのか? これ以上やれば命に関るかもしれんぞ」

 

赤斗「お気遣いありがとうございます。だけど、ここで止めるわけにもいかないよ」

 

関羽「そうか。なら覚悟しろ。これで終わりだ!」

 

関羽が赤斗に向かって斬りかかった。

 

赤斗「疾風!」

 

関羽の攻撃が命中する寸前に赤斗は、“疾風”による超高速移動で一気に関羽の間合いから離脱した。

 

その距離は、およそ十五メートル。

 

関羽「なに!? お主まだ、それほどの力を」

 

関羽が驚いた様子で、赤斗を見た。

 

赤斗「次で終わりにしましょう。もう僕には殆ど力が残っていませんから」

 

そう言って赤斗は重心をやや前にして構えなおした。

 

関羽「……いいだろう」

 

それに応えて、関羽も青龍偃月刀を構えなおす。

 

赤斗「行きます」

 

そう言うと同時に赤斗は、関羽を目指し超高速で地面を駆ける。

 

先ほどまで、奥義を同時発動していた為か、赤斗の奥義“疾風”は過去最速を更新し、赤斗と関羽の間にあった十五メートルの空間はなくなった。

 

関羽「!!」

 

次の瞬間、赤斗が繰り出した最速の“疾風”により、まるで自動車にはねられたかのように、関羽の身体は宙を舞っていた。

 

 

劉備「愛紗ちゃんっ!」

 

張飛「愛紗ーーっ!!」

 

地面に叩きつけられた関羽のもとに、劉備たちが駆け寄る。

 

劉備「愛紗ちゃん、しっかりして!」

 

劉備は気を失った関羽の身体を抱き起こそうとしたが、曹操に止められた。

 

曹操「その必要はないわ」

 

劉備「曹操さん?」

 

曹操「劉備、約束通り関羽は貰うわよ」

 

冷たく曹操は劉備に言い放つ。

 

劉備「そんな! ……お願いします曹操さん! 待ってください!」

 

曹操「くどい! 春蘭! 関羽を連れていきなさい!」

 

夏候惇「はっ!」

 

曹操の命令で夏候惇が関羽の身体を担いだ。

 

曹操「じゃあね劉備。関羽の治療は私たちがするから安心しなさい。それと案内をつけてあげるから、益州でもどこへでも行きなさいな」

 

劉備「……」

 

張飛「待つのだ!」

 

劉備「鈴々ちゃん!」

 

関羽を連れて引き上げようとした曹操の前に張飛が立ちふさがった。

 

曹操「……退きなさい張飛」

 

張飛「嫌なのだ! 愛紗は絶対連れていかせないのだ!」

 

夏候惇「きさまっ!」

 

曹操「待ちなさい春蘭! 張飛。あなたは関羽を侮辱する気なの?」

 

張飛「え? どういう事なのだ?」

 

曹操「関羽は負ければこうなる事を承知で赤斗と勝負をしたのよ。それなのに、あなたがここで関羽を引き止めるという事は、関羽と関羽の武を侮辱するという事に他ならないわ!」

 

張飛「ぅ……」

 

曹操「分かったなら、そこを退きなさい!」

 

張飛「……」

 

曹操の気迫に負け、張飛は黙ったまま道を開けるのだった。

 

 

赤斗「本当にこれで良かったのかな……」

 

典韋「え?」

 

典韋に身体を支えられながら、少し離れた場所に居た赤斗が小さな声で呟いた。

 

赤斗「何だか、恩を仇で返した気分だな」

 

典韋「赤斗さん……」

 

赤斗「典韋。悪いんだけど、僕を劉備さんの所まで連れて行ってくれる?」

 

典韋「え、はい。分かりました」

 

典韋の力を借りて赤斗は劉備のもとに移動した。

 

赤斗「……劉備さん」

 

恐る恐る赤斗は劉備に声を掛けた。

 

劉備「……風見…さん…?」

 

力弱く下を向いていた劉備がゆっくりと顔を上げた。

 

赤斗「すみません。恩を仇で返してしまって」

 

劉備「いえ、……謝らないで下さい。風見さんが悪いわけじゃありませんから……。悪いのは……全部、私なんですから……」

 

暗い声で劉備は赤斗に答えた。

 

赤斗「……劉備さん。厳しい事を言うかもしれませんが、いつまでそうしているつもりなんですか? 今のあなたがすべき事はなんです?」

 

劉備「私のすべき事…」

 

赤斗「いつまでも関羽さんの事を悲しむ事じゃないでしょう」

 

劉備「赤斗さん?」

 

赤斗「今あなたがすべき事は、全軍が率いて無事に益州へと抜ける事でしょう!そうしなければ、関羽さんの敗北が無駄になってしまいますよ! その原因を作った僕が言う事じゃないかもしれませんが」

 

劉備「!!」

 

曹操「赤斗、流琉行くわよ」

 

典韋「は、はい! 赤斗さん、もう行きましょう」

 

赤斗「そうだね。じゃあ失礼します。関羽さんは僕が責任を持って…」

 

劉備「え…?」

 

月「…赤斗さん」

 

いつの間にか月と詠が、赤斗と劉備の近くまでやってきていた。

 

赤斗「月、詠。元気そうだね」

 

月「はい。赤斗さんのお蔭で」

 

詠「あんた、これからどうすんのよ?」

 

赤斗「それは……これから考えるよ。悪いけど二人とも、劉備さんのこと頼むね♪」

 

月「はい♪」

 

詠「しょうがないわね」

 

赤斗「じゃあね。また、どこかで会おう」

 

こうして曹操たちは劉備の陣をあとにした。

 

 

 

つづく?

 

 

~あとがき~

 

呂です。読んでくださって、ありがとうございます。

 

36~38話ver.Bでした。ver.Bでは赤斗が関羽に勝った設定になっています。

 

今後、ver.Bを続けるかは未定です。暇があれば書きたいと思っています。

 

 

真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介

 

オリジナルキャラクター①『風見赤斗』

 

姓 :風見(かざみ)

名 :赤斗(せきと)

字 :なし

真名:なし

武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。

 

本編主人公の少年。

身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。黒髪黒眼。

放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。

その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。

死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。

古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。

無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。

奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。

奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。

今回は秘技“龍咆(りゅうほう)”と“飛鶴(ひかく)”を使用。

“龍咆”龍が咆哮するが如く、相手に覇気をぶつける技。

“飛鶴”飛翔する鶴のように繰り出す、空中からの斬撃。

 

能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4

 

 

 

オリジナルキャラクター②『孫堅』

 

姓 :孫

名 :堅

字 :文台

真名:火蓮(かれん)

武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。

 

孫策(雪蓮)たちの母親。

身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。

血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。

孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。

この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。

 

能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5

 

 

 

オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』

 

姓 :諸葛

名 :瑾

字 :子瑜

真名:藍里(あいり)

武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。

 

諸葛亮(朱里)の姉。

諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。

温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。

一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。

政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。

 

能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4

 

 

 

オリジナルキャラクター④『太史慈』

 

姓 :太史

名 :慈

字 :子義

真名:嶺上(りんしゃん)

武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。

 

非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。

孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。

それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。

また、諸葛瑾(藍里)と仲が良い。

弓の名手でもあり、その腕は百発百中。

 

能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3

 

 

 

オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』

 

姓 :司馬

名 :懿

字 :仲達

真名:不明

武器:不明

 

黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。

曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。

色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。

 

能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?

 

 

 

オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』

 

姓 :不明

名 :不明

字 :不明

真名:不明

武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。

 

司馬懿の部下。

普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。

しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。

虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。

 

能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2

 

 

 

オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』

 

姓 :不明

名 :不明

字 :不明

真名:不明

武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。

 

司馬懿の部下。

性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。

司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。

寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。

 

能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3

 

 

 

オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』

 

姓 :不明

名 :不明

字 :不明

真名:不明

武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。

 

司馬懿の部下。

青い忍者服を着た長い白髪の女。

背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。

洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。

 

能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3

 

 

 

オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』

 

姓 :宮本(みやもと)

名 :虎徹(こてつ)

字 :なし

真名:なし

武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。

 

赤斗の古武術の師匠。

年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。

赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。

最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。

赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。

 

能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?

 

 

 

※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
12
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択