真・恋姫†無双~赤龍伝~第87話「帰ってきました天の国」
雷が落ちたような音と衝撃が辺りに響く。
それとともに、それまで誰も居なかったはずのこの場に、男女四人が姿を現した。
赤斗「くぅぅぅーーーっ」
雪蓮「痛ーーーい!」
冥琳「うぅっ」
恋「……痛い」
思い切り背中から落ちた赤斗たちは苦悶の声を上げた。
雪蓮「まったく、ここは一体どこなの?」
冥琳「どこかの屋敷なのか?」
落ちた時に打った場所をさすりながら、雪蓮と冥琳が辺りを用心深く見渡す。
赤斗「……ここは、……まさか!」
懐かしい光景が赤斗の左目に入ってきた。
恋「……赤斗、どうしたの?」
雪蓮「ここがどこか知っているの?」
赤斗「ここは、……先生の道場だ」
冥琳「何だと!?」
雪蓮「へぇ~。じゃあ、ここは天の国という事ね♪」
赤斗「……そうなるね」
冥琳「風見よ。ここは本当に天の国なのか?」
赤斗「間違いないよ。僕がここを見間違えるはずがない」
懐かしい道場の中を見回す赤斗の耳に、凄まじい勢いで近づいてくる足音が聞こえてきた。
恋「……誰か来る」
雪蓮「凄い気ね。虎徹のおじさん……じゃないわよね?」
赤斗「違うね」
赤斗以外は武器を無くしていたが、近づいてくる相手に備えて身構えた。
そして、道場の戸が勢いよく開き、一人の女性が姿を現した。
?「何者だっ! …… あっ」
雪蓮「え……」
冥琳「お主は……」
赤斗「関羽…さん……?」
道場に現れたのは右手に竹刀を持ち、ワイシャツにジーンズ姿の関羽だった。
関羽「風見殿に孫策殿!? それに周瑜殿に呂布! 何故ここに?」
赤斗「関羽さんこそ、どうしてここに?」
関羽「あの変な穴に吸い込まれて、気がついたらここに居たのだ」
雪蓮「そういえば、一緒に穴に吸い込まれたんだっけ」
冥琳「しかし私たちと違い天の国にきて、だいぶ時間が経っているようだな」
関羽「ああ。もう1週間はここにいるな」
雪蓮「一週間! 一緒に吸い込まれたのに!?」
赤斗「吸い込まれたのに時間差があったからかな?」
関羽「他に吸い込まれた者はいるのか?」
雪蓮「私たち以外は……」
冥琳「曹操の親衛隊の二人と……」
赤斗「それと僕たちだけだと思う。僕と恋が吸い込まれた後、穴が閉じていくのを見たから」
関羽「そうか……なら桃香様は無事なのだな」
赤斗「きっと無事ですよ」
雪蓮「……それにしても関羽。何そのカッコ?」
ワイシャツにジーンズ姿の関羽を見て、雪蓮が面白いものを見るように尋ねる。
関羽「こ、これは……今、世話になっているここの主が用意してくれたのだ」
赤斗「主!? やっぱり先生は戻ってきているんですね!」
赤斗は関羽に詰め寄る。
関羽「先生? 虎徹殿の事か?」
赤斗「ええ。……よかった。で、先生は?」
関羽「虎徹殿なら今は出かけている」
赤斗「そうですか。じゃあ、ひとまず居間の方に行こうか。道場じゃ落ち着いて話もできないから」
関羽「うむ」
冥琳「そうだな。今は落ち着いて話し合った方がいいだろ」
雪蓮「私、天の国のお酒飲みたーーい♪」
恋「……お腹空いた」
赤斗たちは道場から居間へと移動した。
雪蓮「ねぇねぇ赤斗。どうやって、こんな小さな箱に人が入ってるの?」
冥琳「風見よ。この天井の灯りは蝋燭ではないのか?」
居間に着くや否や、雪蓮も冥琳も居間にある物を物色を始めた。
赤斗「それは後で説明するよ。それよりも確認しておきたい事があるんだ」
雪蓮「確認? 何の?」
赤斗「まあね。僕があっちの世界で過ごしている間、こちらではどれくらい時間が経っているのかなと思って」
冥琳「それで、どうなのだ?」
赤斗「うーーん。十日…ぐらいかな……」
カレンダーを捲ったり、テレビのチャンネルを変えたりして日にちの確認をした赤斗が、少し驚きながら答える。
雪蓮「たったの十日? 赤斗が来て随分経っているのに?」
赤斗「うん。……驚いたよ」
虎徹「それは私も驚いたな」
雪蓮「なっ!」
関羽「こ、虎徹殿!」
赤斗「せ、先生!」
いきなり背後から虎徹の声が聞こえた事に驚いた赤斗たちは、いっせいに後ろを向いた。
虎徹「赤斗……帰ったか。それに……孫策殿たちも一緒か」
雪蓮「ひさしぶり~♪」
赤斗「先生もこっちに戻ってきていたんですね。安心しました。先生はいつこっちに帰ってきたんですか?」
虎徹「俺が帰ってきたのは、むこうに飛ばされた日の翌日だ。最初は夢かと思ったよ」
赤斗「そうですね。現実離れした出来事ですからね」
虎徹「それで何で孫策殿も一緒にいるんだ?」
赤斗「それは……」
説明を始めようとした赤斗の服を恋が引っ張った。
恋「赤斗。恋……お腹空いた」
赤斗「恋……そうだね。食事にしようか。先生。説明は食事を食べたあとにでも」
虎徹「……わかった」
雪蓮「じゃあ赤斗! 天の世界のお酒も用意してよね♪」
赤斗「はいはい」
虎徹「そうか。あの黒づくめの男は司馬懿だったのか」
赤斗「はい……」
今、道場にいるのは赤斗と虎徹、関羽の三人だけ。
雪蓮は今も居間で日本酒を飲んでいる。
冥琳も雪蓮に付き合っている。
恋は食べ終えた後、すぐに眠ってしまった。
赤斗と関羽は食事を終えて、道場で虎徹に今まであった事を説明した。
虎徹「司馬懿の目的が龍脈の掌握という事は分かった。だが、なぜ司馬懿はこちらの世界に来たのだ?」
赤斗「さあ、そこまでは分かりません。……先生には心当たりはないんですか?」
虎徹「……無いな」
赤斗「そうですか……」
関羽「話中のところ悪いんだが……」
赤斗「関羽さん?」
虎徹「何だ?」
関羽「今は司馬懿の目的を探るより、どうやって元の世界に戻るかを考えるべきではないのか?」
虎徹「戻る方法ね」
関羽「二人はどうやって私たちの世界に来たのだ?」
赤斗「どうやってって……」
虎徹「……」
赤斗も虎徹も回答に困った。
何故なら二人とも自分の意思で、関羽や雪蓮が居る世界に飛んだわけではなかったからだ。
関羽「……どうしたのだ?」
赤斗「すみません。分かりません……」
関羽「何だと……」
赤斗「僕も先生も赤い光に包まれて、いつの間にやら皆がいる世界に飛ばされたので……」
関羽「そう、なのか……」
赤斗「すみません」
どうやって蓮華たちがいる世界に戻るか。
これからどうするべきか分からないまま、その夜はこのまま更けていった。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。赤髪。左目は黒色、右目は輝く金色。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
龍の眼は、あらゆる情報を視認できる眼。使う事により赤斗の気も増える。しかし、消耗はそれ以上に多い。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
魏から姿を消していたが、赤壁の戦いに現れる。
能力値:統率5・武力5・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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※H24年11月14日:タイトルを「帰ってきました天の国」に変更しました。
主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。