No.302686

真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part47 敗軍

見習いAさん

魏√アフターの創作です

2011-09-18 18:15:00 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2628   閲覧ユーザー数:2282

呂布さんを突破した俺と秋蘭は撤退する晋軍と合流

魏・蜀連合軍の追撃を振り切ることに成功した

 

「生きてるか北郷?」

 

「・・・・・なんとかね」

 

あれからずっと秋蘭の背中にしがみついたままだった

かっこ悪いにもほどがある・・・・・

しばらく進むとやっと本隊の野営地に到着した

 

「おいそこの、後ろは怪我人か?」

 

槍を持った兵が声をかけてきた

 

「うむ、休ませてやりたいのだが、どこへ行ったらいいかな?」

 

槍兵がこちらをのぞきこんで来る

 

「一刻を争うわけでもなさそうだな、診療所は負傷者でごった返してるから、すまんがそこらで休んでくれ」

 

「そうさせてもらおう」

 

槍兵はそう言うと立ち去ってしまった

そこらと言われても、周囲は逃げ延びた負傷兵で一杯だった

 

秋蘭は馬を降りると手綱を引いて人気の少ないところを探した

野営地から少し離れたところの木に馬を繋ぐと、さすがに疲れたのか尻からぺたん、と日陰に座った

 

「北郷も休める時は休んでおけ」

 

「そうさせてもらうよ」

 

馬から降りた俺は、秋蘭の隣に座ると膝に頭を乗せようとした・・・・が、殺気を感じたので自重しておいた

 

「まったく、貴様と言う男は・・・・・」

 

秋蘭の膝から頭を引いた俺は、秋蘭の肩にぶつかりそうな距離に腰を寄せた

ふぅっと一息つくと、改めて周囲を見渡してみる

 

「これが、負け戦なんだな」

 

魏に来てから数多くの戦いを見てきた

だけど、考えてみると負け戦を経験したことがなかった

 

俺達の目には地獄が映っていた

あたり一面に横たわる負傷兵は一体何人いるのだろう

足が切れた者、腕が切れた者、頭部から血を流している者

満足な治療を受けられず、助けを求める声が至る所から聞こえてくる

 

ここに来る途中、倒れた兵が水を求めてきた

その兵に手を差し伸べようとしたんだけど、秋蘭が止めた

誰にも手を出してはいけないんだ                     

「華琳が厳しかった理由、やっと分かった気がする」

 

負けることの意味を知っているから、負けないために妥協を許さない

華琳の厳しさはやさしさだった

 

「もし、倒れているのが皆だったら・・・・・」

 

皆が倒れ助けを求める光景を想像したら、頭がおかしくなってしまいそうになった

 

「北郷」

 

「ん」

 

秋蘭が真剣なまなざしで声をかける

 

「我等は武人、戦場で死ぬのは本望だ。だがな、死して主を救えぬ無念、それだけが恐ろしい」

 

「・・・・・俺は、秋蘭が死ぬなんて望んじゃいない」

 

そんなの、受け入れる自信がないよ

 

「ふふ、もちろん死ぬ気などないさ。華琳様の天下をもう一度見るまでは、な」

 

秋蘭に迷いはなかった。だけど、なぜか儚く思えた

 

「なぁ秋蘭」

 

「なんだ?」                      

「この戦いが終わったら、何しよっか」

 

「ふむ、華琳様の世を作り直さねばならんからな、また忙しくなるだろうさ」

 

「そうじゃなくて」

 

「違うのか?」

 

「う~~ん、個人的なこと?」

 

「個人的なこととは?」

 

「例えば・・・・秋蘭の子供が欲しい」

 

「・・・・・・・・なッ!!」

 

秋蘭は顔を赤らめてしまった

 

一瞬の間の後

 

「子供か、ふふ、それも悪くない。だが北郷、桂花に続き私となれば大変だぞ

華琳様とて黙っておるまいし、姉者も凪も、下手をすれば雪蓮達も大騒ぎになるかも知れん」

 

「・・・・・その時は・・・・がんばる」

 

「まさに種馬か」

 

こんな雰囲気、場違いだと思うけど二人で笑ってしまった

 

「華琳も、春蘭も、皆戻ってくる、もう一分張りだ!」

 

そう、もう少しであの日常が帰ってくるんだ

その後、突然眠気に襲われた俺は眠ってしまったらしい

なんだかやわらかい枕に包まれていたような・・・・・

 

しばらく休憩していると

 

「先発部隊の生き残りは集合しろってよー」

 

生還者が集められた                   

「皆、よく生き残った。しばし後方で休めぃ!」

 

魏蜀連合よりも遥かに多い兵力を持つ晋は、一度や二度負けても兵を入れ替えれば済む

こうして、俺達は苦もなく許都潜入に成功することとなった

 

俺ら敗残兵が隊列を組んで許都へ帰還していると、途中、大部隊とすれ違った

風達を攻める第二部隊だろう

 

「何人いるんだろ」

 

「華琳様のこと、二度の敗北は許されん。恐らく一陣の倍以上の兵力が投入されたのだろう」

 

物凄い数だった

この数に攻められたらひとたまりもない

 

「皆を助けるには、我々が一刻も早くこの戦いを終わらせねばならん」

 

2陣の大部隊とすれ違い終わったのはそれから1時間以上かかった

 

 

《許都》

 

 

今、秋蘭が以前確保していた隠れ家の一つに来ている

ここはまだ見つかっていないようだ

 

「潜入できたのはいいけど、これからどうするんだ?」

 

「うむ、そろそろ話してもいいだろう」

 

秋蘭は懐から書簡と階級章を取り出した

 

「これは?」

 

「前線指揮官から華琳様への嘆願書、それと部隊長の階級章、もちろん偽造だがな」

 

「よくできてるな」

 

二つを手に取ると目を凝らしてみてみた

魏の物とはまったくつくりが違う

 

「これが作れたのは明命のおかげさ、内通者との橋渡しになってくれたからな」   

明命は先行して潜入していると聞いてたけど、そういう役割だったのか

 

「ここからが本題だ。まず、我々は嘆願書と階級章を使い華琳様の王宮へ直接潜入する」

 

「だろうと思った・・・・・」

 

無謀なのは分かってるけど、それしかないか

 

「潜入したら、私の合図で明命が王宮に火をつけ混乱を起こす。その混乱に乗じ、私が華琳様を抑える

その隙に、北郷は華琳様の部屋を単独で目指してほしい」

 

「ちょっと待ってくれ、華琳の部屋に行けたとして何をすればいいんだ?何があるんだ?」

 

今回の潜入の目的は華琳奪還でもなければ華琳を捕える事でもない

華琳の部屋を目指すことだ

けれど、華琳の部屋に何があるのかまったく分からない

 

「うむ、ここからは全て推察になってしまうのだが、張三姉妹が行方不明なのは知っているな」

 

「うん」

 

張三姉妹とは一度も会えなかった

あの反乱以来、その姿を誰も見ていないそうだ

 

「これは桂花からの情報なのだが、反乱の数日前、張三姉妹が華琳様に呼ばれていたらしい」

 

「・・・・まさか」

 

「そのまま華琳様の部屋に監禁されている可能性が高い」

 

「どうして3人を」

 

「3人を手元に置かなければならない理由、恐らく太平要術の書が関係しているのではないか」

 

「それじゃ、全ての元凶は太平要術の書?」

 

「それも分からん。そもそも太平要術の書が一体なんなのかも分かっていない

それに華琳様がいつ太平要術の書を手に入れたのか、本当に手に入れたのか

別の理由で三姉妹を監禁しているのか、三姉妹は本当に監禁されているのか、全て謎なままなのだ

それでも今は、張三姉妹を解放することが解決への一歩になる可能性に賭けるしかないのだ」


 
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