No.299673

異聞~真・恋姫†無双:二六

ですてにさん

前回のあらすじ:今後の行動方針決定。目指すは大商人! そして、一刀は閨ちーとを発動させた。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

ちと重たい話が次々回ぐらいまで続くと思われます。

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2011-09-13 23:32:45 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8436   閲覧ユーザー数:6039

幽州組の出発は一日遅れることになった。腰が立たない状況の人が多数発生した為だ。

・・・うん、本当にすまない。でも、なんか色々感情が高ぶって、気づいたらそうなっていたんだ。

 

華琳曰く『想いを交わす女性が増える度に、精力が増す規格外の種馬』って感想を頂いた。

ちなみに、動けなくなった皆の世話をテキパキと中心になってこなしてくれたこともあり、また一つ頭が上がらなくなった。

あとは華佗に疲労回復促進の鍼を打ってもらい、皆、なんとか一日で快復しつつあるという状態だ。

 

「しかし、北郷の氣は精の力と密接に関係しているが、まさかここまでとはな・・・。

包容量がまた増加して、お前の身体の回復も一気に進んだようだぞ。

相手をする女性にとっては、へとへとに疲れ果てるだろうが・・・」

 

華佗の呆れた口調の言葉に、ぐうの音も出ない。

なんでも、まぐわう度に精力の影響で体内の氣が活性化して、自己治癒能力も活性化してるとか。

自分で言うのもアレなんだが、なにこの種馬能力のチート化。

 

・・・身体能力の最強化とか、千里眼とか、そういうチートに憧れていた時期があったけど、なんつーか、本当に俺って・・・。

いや、自分で言うのはよそう・・・。うん、いろいろ体育座りしたくなるからな!

 

「・・・主、いやはや私ともあろうものが情けない。まさか、ろくに立てなくなるような鍛え方をしていたとは思いませなんだ」

 

寝具の上で上半身だけを起こし、身体を休めている星に絶賛平謝り中の俺。

武官ほどの体力の無い稟や雛里はまだ意識があやふやだったりするし、

鈴々も意識はあるが、どこかぼんやりしていて、俺や桃香辺りが交代で常に付いていたりする。

 

「あー、うん、いや、あれは俺が悪いというか・・・久し振りに星と繋がることが出来ると思ったら、

なんつーか歯止めが利かなくなったというか・・・」

 

「この世界の身体はやはり初めてだったゆえ、最初こそ痛みを覚えましたが。

あっという間に記憶に残る快楽と身体の感覚を、主に繋げられてしまいましたしな。恐ろしい手管であらせられる。

今の主から与えられる、あの気持ちよさは、生娘には異常な感覚に取り付かれ、忘れられぬように成りかねませんぞ、ふふっ」

 

「あー、うん、なんか…ごめん。あれかな、雛里とかまずいってことかな」

 

「いやいや、私とて思い出すだけで、身体の芯が熱くなるのを感じまする。

ずっとあの世界が蕩けてしまるような感覚を味わっていたい・・・そんな魔性の誘いですからな。

 

全員・・・むろん、私もですが、今晩も抱いてやらねば収まりますまい。

そして、出来ればゆったりとしたやり方で、やんわりと高ぶりを鎮めてやるのが宜しかろう。

 

・・・主自体は、その辺りの調整ももう出来るでしょうからな。変にがっついてない主というのも寂しいものですが」

 

「あ、あはは…そんなに前はがっついてるように見えてたんだ…」

 

華琳さまさまです。

この年で余裕を持って、夜の営みを楽しめるようになったのは、彼女が全力で受け止め続けてくれたお陰。

 

「…まぁ、愛紗が言ってたなぁ・・・最初に相手されてたら、多分いろいろまずいことになってたって」

 

「最初が私であったことを感謝して頂きたいものですぞ。

あれだけ身体中を隅々まで刺激されてしまえば、素直な気性の愛紗や雛里が相手なら、今頃、完全に慾の虜になっておりましょうな」

 

愛紗の記憶を取り戻した時の、独特の艶のある表情を思い出し、思い切りかぶりを振る自分がいる。

いかん、アレを認めてしまうと、自分でも気付いてしない何かに目覚めそうで。

まして、下手に実現可能な状況というのがさらにタチが悪い。

 

「…それは、星の性質に心から感謝だな…。本当に、ありがとう」

 

「なにかそれで礼を言われるのも、女としては複雑ですが、今回に関しては良しとしましょう」

 

「そうそう。話が済んだところで一杯やりましょうよ」

 

当然のように話に割り込んできたのは、徳利を肩に下げた雪蓮だった。

手にいくつかの杯も見えるので、星と呑もうとやってきたのだろう。

 

「俺は雛里や鈴々の様子を見に行くから、また後でご相伴しようかな。ただ、雪蓮。冥琳の許可は出ているの?」

 

夕時というのはまだ早すぎる時間。冥琳があっさり肯是するとも思えない。

 

「そんなわけないじゃな~い。勿論目を盗んでやってきたのよ♪

冥琳は一刀をどう抱き込んで、孫呉の復興を加速させるか、今頃部屋で唸ってるわよ」

 

「やっぱり巻き込む気は満々なのな…って、冥琳に全投げってどうなんだよ・・・」

 

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。一刀が袁術を誑かしてくれれば、すぐに解決よぉ♪」

 

「…あの袁家を誑かす、って無理だと思うんだけどなぁ」

 

「ああ、袁紹みたいな感じじゃなくて、単純に世間知らずから来ている阿呆っぷりだから。側近の張勲が腹黒いから注意は必要だけど」

 

腹黒い、か。この世界は武人の誇りとか、謀略・策略をあまり良しとしない傾向がある。

 

が、優れた武なぞ持たない俺からすると、搦め手だろうがなんだろうが、むしろ勝つ為に出来る手は何でも打つべきだ。

人道から外れるのはさすがにどうかと思うけど、進むべき道を見失わなければ、武力も戦略も外交も謀り事も、全部使い方に過ぎない。

 

…張勲さんか。接触してみるべきなんだろうなぁ。

 

「ふーん。ただ、交渉の余地は十分ありそうだね」

 

「あ、一刀が悪い顔してる~。そうだったわよね、冥琳以上に手段に拘らないのが一刀だったわ」

 

「うん、大事な人たちを守れるなら、自分の誇りなんて『くそ食らえ』だ」

 

きっぱり言い切る。雪蓮のような立場ならまた違ってくるだろうけど、俺の立ち位置でそれを迷うことは無い。

 

「ふふ、そういう一刀だから、私は離したくなくてしょうがなくなるんだけどね。ま、今だけは冥琳に譲ってあげる。顔を出してあげて頂戴」

 

どことなく嬉しそうな顔で、さらっとトンデモ発言をする雪蓮を華麗にスルーして、星とも目線を合わせると、

了解しましたぞと頷いてくれたので、俺は即行動とばかりに立ち上がる。

 

「星。それじゃあ、また晩に」

 

「相判り申した。少しでも体調を整えておくとしましょう」

 

足早に去る背後から、雪蓮の非難めいた声が星を責め始めているのが聞こえたものの、俺はあえて目的の部屋へ急ぐのであった。

 

 

こん、こん。部屋の扉をノックする。

 

「冥琳、入っても大丈夫かな?」

 

「…ん、北郷か? ちょうど良かった、入ってくれ」

 

扉の向こうから、冥琳の返事。そして、扉が誰かの手で静かに開けられていった。そうか、明命がついているのか。

 

「一刀さま、時間を取って頂いてありがとうございます!」

 

「明命、気にする必要はないよ。俺たちの間で妙な遠慮は不要だろ?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

軽く彼女の頭を撫でてから、思案顔をしながら竹簡に筆を入れている冥琳の斜め前の椅子に腰を下ろす。

唸っていると聞いていたものの、冥琳の眉間に皺が寄っている様子は欠片も無く、雪蓮の誇張表現だったのかと安堵する。

 

病魔の元を断ったとはいえ、華佗の言を取れば、再発の可能性を無くすためにも、無理は禁物と聞いている。

隙あらば根を詰めかねない、冥琳の性格を考えると…明命や雪蓮に依頼しながら、業務量の監視も必要かと感じている。

 

「北郷、顔に出ているぞ。お前に叱られるのは怖いからな。ちゃんと自制するし、厳しいと思えば、容赦なくお前を巻き込むよ」

 

「冥琳の仕事に関する自制、ってのは信用できないな。もちろん、身体のことを考えて俺を巻き込んでもらうのは構わないんだけどさ。

手伝いついでにちゃんと仕事量を制限させてもらうかな」

 

「ほぉ…では、北郷の目の前に山のような竹簡が積まれることになるだろうな」

 

「今さら。もう慣れっこだよ」

 

「それは頼もしいことだ。本気で当てにしているよ」

 

「任されないでか」

 

二人で笑い合う。

冥琳と過ごす、穏やかな時間を。前は殆ど作り出せなかった、こんな時間を増やそうって、勝手に決めているんだ。

 

「さて、北郷。別に私は孫呉の復興策で頭を悩ませていたわけではないんだ。

独立を果たすにせよ、袁術を傀儡として実権を握るにせよ、それについては北郷が籠絡してくれればそれで済むこと。

血も流れずに一石二鳥というやつだ」

 

「冥琳まで…冥琳まで…雪蓮と同じことを言うなんて…」

 

先程垣間見た、穏やかなそれとは程遠い、意地悪く笑う冥琳。

おまけに口から放たれた言葉は、あの自由人(と書いて雪蓮と読む)と全く同じ内容とくる。

途端に俺は深い絶望に包まれ、この世の不条理を嘆き始めるに至った。

 

「ふふ、無論自前の兵力は集めるがな。まぁ、今回の私にはそればかりに感けては…と、北郷? 北郷ー?」

 

記憶が解き放たれたと同時に責任感も解き放ってしまえですねヨクわかりますよエエ。

だって冥琳心労抱え過ぎていたもんねイロイロしょうがないよね。

もう一回得られた生だもん自由に生きたいよね。うんいいんだよめーりんきみのぶんまでぐはぉ!?

 

「…いい加減帰ってこないか。お前一人にあのじゃじゃ馬を任せておいたら、今度はお前が病んでしまうだろう?

そんな無責任なことはせんよ」

 

腰の入った素晴らしい振り下ろしです!…などと明命が絶賛しているのと、頭頂がえらくズキズキするのを合わせて判断すれば、

冥琳が意識が飛んでいた俺に目覚ましの一撃を振り下ろしてくれたのだろう。

 

「おぉぅ…ご、ごめん、冥琳。あまりの絶望になんか意識遠くなってた」

 

「まったく…私の良人になってくれる男がこの程度で絶望されては困る。ふむ、しかし、身体が本当に身軽になったものだ。

あの病魔はよっぽど私を根深く浸食していたようだな」

 

「冥琳…」

 

「冥琳さま…」

 

「二人共そんな辛そうな顔をするな。今だからこそ、こうして振り返ることが出来る。そして、未来のことを考える事もな」

 

そこで一旦言葉を切り、冥琳は明命と目線を合わせ、軽く頷いた。続きの話は、明命から…ということらしい。

少し緊張しているのか、明命は瞳を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしてから、俺に向き直る位置を取った。

 

「一刀さま、お聞かせ頂きたい事があるのです。もし、かつてのように私が母親になったとして、

私が望めば周邵も一緒に天の世界に連れて行ってくださいますか?」

 

それは、避けて通る事が出来ない、母親の経験を持つ明命だから言える、重たい、重たい一言だった…。


 
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