僕は感じていた。背後からの冷たい視線が、僕を殺すように見つめていることに…
ここは夜の暗い裏路地。逃げ場などない…
ゾクゾクッ…
背筋が凍りつく僕に、暗い影からスッと姿を現した人物が話しかけてきた。
「少年。何を恐れているのだね?わたしに対しての恐れかい?それなら訂正だ。わたしは他人(ヒト)に幸せを運ぶ者だからね…」
話しかけてきたのはどうやら少女のようだ。月明かりが街路地のビルのせいで光を遮っているため、微かにしか姿は見えないが、その不気味に光る両目はこちらをじっと見つめ、睨み殺さんかのような冷たい感じだ。左手にはナイフを持ち、今にも襲ってきそうな体勢だ…
「ぶっ、物騒だね。こんなところでナイフなんか向けて。まるで僕を殺そうとしているみたいじゃないか」
「殺そうと?殺すんだよ、今から。ズタズタに、跡形もなく、何度も何度も突き刺し殺すんだよ」「なっ。なんでそんな。そんなことするんだ!!」
僕の必死の叫びに少女はゆっくりと答えた。
「君は生きていて楽しいかい?無駄に毎日をだらだらと過ごし、親の脛をかじって、へこへこと頭を下げて。腐れニートもいいとこだ」
「………」
「わたしは君に幸せを贈りに来たと言ったね。ヘタレで自決行為も出来ない君を…
“わたしが殺してあげるのさ”」
ズンッ
ドシュウ
「は、腹が…」
刺されたのか?僕は血が流れ出す下腹を抑えて言った。
「痛みはないはずだよ。プロだからね」
「い、いつもこんなことを…しているのか…こんなことをしても…誰も幸せになれない。ましてや君は…こんなことをして誰かが幸せになるとでも思ったのか?」
「ちっ」
ヒュッ
ドシュウ
「ぐあああっ」
少女は悔しさに歯を食いしばる。
「君にわたしの何がわかるんだ!!例え、君みたいな腐った人間だとしても、命は命だ!!殺して心が痛まぬ訳が無いだろう!!」
「じゃあ、やめろよこんなこと!!」
「もう話さないでくれるか…ターゲットに情が移る…」
バシュウ
ドサァ…
意識が…
無くなる…
「ゴメンねρ(・・、)」
「ああっ」
僕は、死ぬ間際に見てしまった。少女が、少女が倒れた僕に対して涙を流すのを。悔しかったんだろう。悲しかったんだろう。僕みたいなダメ人間でも『命は命だ』と言ってくれた。
僕みたいなダメ人間のせいで、あんな小さな少女を悲しませてしまった…
僕は、自分の無力さに大量涙を流し、絶命した…
理由も知ることも出来ずに。助けることも出来ずに…
ガチャリ
「片付きました、マスター」
『ああ、次は〇〇だ』
「了解」
プツン
「“罪人購うことなかれ。さすれば罪は償えん”、か…」
下を向く少女。涙をぬぐいとると、再び歩き出す。
次なるターゲットを目指して…
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ツイッターで上げた小説を修正してアップ。
心情を深く読み取ると、新たな発見が見えるかもしれないです・・・